昼寝
本陣に戻ってきた一刀の様子。
「ぅぁぅぁぅぅぁあああ……」
呆けていて、どうも意識も変だ。
「大丈夫ですか?」
沮授が心配して尋ねる。
「清泉……」
一刀は沮授の姿を確認してぽろぽろ涙を流し始める。
「ぅえええぇぇん……こわかった。こわかった……」
「……とりあえず、その頭を置いてきてはどうでしょうか?」
「頭?」
一刀が手に持っている物体を見てみれば、それは敵兵の生首。
ここで、戦場の音を思い出してみよう。
ズバッ、ズバッ!
……ドサッ
の、ズバッは敵を切った音、ドサッは飛んできた生首が運悪く一刀のところに落っこちてきた音であった。
「……ひ、ひひ、ひひひひひひ………」
生首とご対面してまたまた様子が変になる一刀。
「持って行く」
呂布がその生首を取りあげて、どこかに持っていった。
「ぅえええぇぇん……こわかった。こわかった……助けて……」
「しっかり抱いてあげますから」
汜水関で慰めた時のように、しっかりと一刀を抱きしめる沮授。
と、そこに呂布が戻ってくる。
「ごはん」
それだけ言って一刀を無理やり食事の場所に引っ張っていく。
食事とおやつと睡眠に関しては、呂布と一刀の関係を断てる者は存在しない。
仕方なく、沮授も一緒に一刀にくっついていく。
一刀は左手に呂布、右手に沮授をつなぎ、傍目には美女二人に囲まれた幸福者だが、本人の顔は顔面蒼白でとてもそうは見えない。
呂布は、一刀を傍に置いて、たらふく昼食をとると、今度は
「昼寝」
と言って一刀を自分の、というか一刀の天幕に引っ張っていく。
一刀の昼食は、というと、とても食べられた気分ではないので、何も食べていない。
沮授は普通に食べたようだ。
天幕に入ると、
「寝る」
と言って昼寝を始める呂布。
一刀もしかたなく沮授に抱かれながら呂布の傍に寝る。
「し、しっかり抱いて」
「大丈夫です。いつも一緒ですから」
やっぱり、ここ!というときは沮授は一刀に優しい。
一刀はがたがた震えるのを沮授にどうにか抑えてもらっていた。
数時間後……
「出撃」
目を覚ました呂布が物騒なことを言い始める。
「えっ?!!!」
驚愕の一刀。
「お、お願いだ、恋。もう行きたくねえ!お願いだからここに残してくれーーっ!!!」
一刀は泣いて呂布に懇願するのだが……
「一緒。突撃」
ドドドドドッ
「ウギャーーーーーー!!!」
は、早い……
こうしてみると、一刀にとって、袁紹の説得は、呂布の説得に比べれば赤子の手を捻るが如く簡単なものであったのだ。
というより、呂布を説得できる人がいるのだろうか?
董卓なら大丈夫だろうか?
何かあったら董卓に頼まなくてはならないかもしれない。
そんな不憫な一刀を見送る軍師達、即ち賈駆と沮授。
「何か、本当にかわいそうに見えてきた」
「ええ、だから私が夜慰めてあげるのです」
恥ずかしげもなく言う沮授を、賈駆はちょっと冷やかしてみたくなる。
「……人の旦那をとやかく言うのもなんだけど、どうしてあんな男がいいの?
とりたてて美男子というわけでもないし、強くもないし、農業はまああれだけど、めちゃくちゃ頭がいいわけでもないし。
どうもボクには理解できない」
「そうですね。いくつかありますけど、一つは私達に希望を与えてくれたことですね」
「希望?」
「ええ。一刀が来る前は、袁紹軍は退廃的な雰囲気が漂っていたのです。
麗羽様が皆の意見を聞かず、わがままを押し通していました。
参謀や将軍も対立をしていて、とても全員が冀州を豊かに強くするという感じではありませんでした。
麗羽様のなさっていたことは、悪政というほどではないのですが、善政とは言えず、あのままでは冀州は次第に衰退していったことでしょう」
「そ、そうだったの。想像もできないわね」
「ええ。それが、一刀が来てからと言うもの、私達参謀の考えた意見を麗羽様に認めさせることが出来るようになりました。
一刀のおかげ……で、参謀や将も一つにまとまることができました。
今の強い袁紹軍があるのも、一刀のおかげと言って過言ではないでしょう」
一瞬の間が、沮授の葛藤を表しているようだが、賈駆にはその背景が分からない。
「ふーん。あの男がねえ……」
「私と菊香は一刀が来た時から行動を共にしてきました。
希望を与えてくれた彼に魅かれていくのは、必然だったのでしょう」
「まあねえ、それはわかるけど……」
「それから、一刀はどことなく抜けているようなところがあって、それなのに何でも言うことを親身に聞いてくれて、そして時々的確な助言をしてくれて、そんな風に話をしているうちにみんな一刀を頼ってしまうのです。
それも彼の魅力の一つでしょう」
「ふーん……」
「だからといって、詠が側室になっていいわけではありませんから。
一応念を押しておきます」
「なななななんでボクがあいつの側室になるなんて思うのさ?」
思わずうろたえる賈駆。
「みんな知っていることです。
詠が鬱憤を晴らすといっては一刀と親密に話したがっているのを」
「ななななにを言っているのか全く分からない。
ボボボボクはあいつのこと何とも思っていないから」
「それが間違いないことだと信じています」
「ととと当然でしょ!!」
賈駆は逃げるように去っていった。
数十分後、呂布隊が戻ってきた。
先頭は魂が抜けたような一刀。
今度は生首なし。
「あはは………あはは………あはは………」
先ほどに輪をかけて様子が変な一刀。
そして、またまた呂布に連れられて、今度は夕飯を食べて、今度は夜の睡眠をとるために一刀の天幕に向かう。
「寝る」
またまた眠り始める呂布。
その隣には沮授に抱きしめられている一刀。
「清泉……」
「何ですか?」
「やりたい!」
「ちょ、ちょっと、呂布がいるのに!」
「もうだめ。死を見たからか、逆にやりたくてたまらない!」
死をその手で感じて、子孫を残す渇望がでてきたのだろうか?
「そ、そんな。いや、恥ずかしい。
止めて!見られてしまいます」
と、沮授がクレームをつけたのが聞こえたのか、呂布が、むくっと起き上がり、二人の様子(既にほとんど裸)を見て、
「邪魔しない」
と言って自らも服を脱ぎ去り、二人の傍でまたくーくーと眠り始めてしまった。
二人が裸なのに、自分だけ服を着ているのが悪いとでも思ったのだろうか?
こうなると、もう何も二人の行為……というか、一刀を抑えるものは何もない。
一刀もそんな呂布を見てより大きくなる。
最初のうちは、やめてとか大きすぎるとか言っていた沮授であるが、結局何時間も一刀を受け入れ続けたのであった。
一刀の気持ちも落ち着いてきた。
この3人の奇妙な関係は、次の日も、そのまた次の日も続いた。
こうして、沮授は寝るとき(と、やるとき)に同じ閨に呂布がいても平気になり、業に戻った後には田豊もそれに同調して、一刀が寝るときは沮授、田豊、それに呂布が同じ閨で寝るようになったのであった。
一刀の閨は3人寝ても余裕なように大型化してあったので、4人寝てもまだまだ大丈夫!
これで、ようやく、夫婦生活が営めるようになった。
若干異常な状況ではあるが、呂布は3人の夫婦生活に干渉することなく、一刀の傍で(裸で)幸せそうに眠っている。
田豊、沮授、呂布はお互いに真名で呼び合うような仲になっていった。
一刀もそんな3人をみて、まあいいかと思うのだった。
自分自身も、呂布の裸体を見ながらすれば、よりエキサイトするし、と。