「ここが俺の住む家なんだけど」
「そうですか」
私の隣にはどこか申し訳なさそうにこちらに向いて苦く笑う男の前。そして目の前には一件の高級住宅。
別に選り好みするってわけじゃないけど、やっぱりボロ家よりだったら高級住宅に住む方が精神的にもいいわけで。
25000ゴールドものの大金をそれこそ帝都下の下水道にぶちまけるようにしてオークのシャム・グロ=ヤラクに叩き付けたらしいけど、この人はどこで稼いできたんだか。
そういえばあのオークの執事って結構な頻度で城へ続く橋下で気絶している噂を聞くんだけどホントかしら?
やっぱり人前に姿を現さない城主の執事なんかストレスがアレで堪らないのかもしれない。
頭がおかしいと評判のグラアシアも街中をうろついているし。
見回りの憲兵さん、さっさとあいつをしょっ引いてくれないかしら……。
「まぁ、よろしく頼むよ」
「分かりました、ご主人様」
まぁ、今シロディール内は皇帝暗殺だかで荒れているらしいけど、こんな豪邸のメイドになれたのは幸運かもしれない。
いっちょ私も親元を離れて一念発起してみるかとシロディールに来たものの、アンヴィルじゃ仕事はないっていうし、クヴァッチはなんか燃えてるし。
道中の街や村に立ち寄ってはみるものの、どこいっても不景気で仕事云々よりも明日のご飯すらままならない自分に涙したのも最近のこと。
途中で襲ってくる野盗や山賊の装備をかっぱらって売っていった方がウハウハになれるんじゃないかと思ってしまった私に罪はあるまい。
でもそんな一寸先は闇なんて生活とてもじゃないけど続けられない。
……結局襲ってきた山賊たちには真っ裸になってもらったけど。
結局ダラダラとスキングラードまでやってきてしまった私は既に心が折れかけていた。
そんでもって友愛の心で譲ってもらった装備品を売りながらその日その日をため息に混じりに過ごしていたんだけど。
日々のやるせなさを道具屋の経営をしているガンダーに愚痴り続けて幾星霜……ついに私に救いの手を差し伸べてくれる方が現れたのだっ!!
ガンダーの話じゃ全身をミスリル鎧で包んだこのインペリアルの人は、大きすぎる自宅の管理に四苦八苦しているらしい。
まぁ、あとはトントン拍子に仕事のない私と人手が欲しいご主人様の間でめでたく契約が結ばれてたわけである。
その家に取り付けるであろう召使いの区画の手配を受けるガンダーと共に「計画通り!」とにやり笑ったのはここだけの話。
だってあんな高価すぎる家を買うなんて人は、このスキングラードでもそれなりに有名だったもの。
回想終わり。
で。
これからお世話になったりお世話したりするご主人様の家に入って、まず私は感嘆の息を漏らした。
なにこれー、なにこれー?
360度見回しても一級の調度品やら家具やらばっか。
入り口に置いてあるお出かけ用とも見れる革靴でさえやけに光って見える。
暖炉の前に置かれている趣のあるテーブルとかワイングラスとかどこの絵本の世界ですか。
「……気に入った?」
「え、あ、はい! もちろんです」
おっと危ない。
あまりの豪華さに隣のご主人様が空気になってた。
後はご主人様から中をしっかり案内してもらう。
にしても案内されたって目に入るのはふかふかの絨毯だったり、銀一式の食器だったり、相手がいるのかどうかは知らないがとにかくでっかいダブルベッドだったり。
もう、ここに住むことができるなんてメイドの身分でありながらも舞い上がっちゃうくらい。
私が住む召使い区画は地下の倉庫を半分に分けられた場所なんだけど、ベッドもメイドに与えるには随分と質のいいものだし、持ってきた荷物全部を収納できそうな箪笥があったりと良待遇。
もうやばいです。ここに来る前に野営地で見た星空が記憶から抹消されそうです。
「それでなんだけど、俺以外に住んでいる人がいなくてね。管理とか一人に任せちゃうけど大丈夫?」
「ええ、もう任せてください! こんな豪華な家に住まわせてくれるだけでもう、ご主人様には感謝感激ですよ!」
ああ、もうシロディールにいる名前も覚えらんないような多くの神様なんかどうでもいいよ。
私の目の前で笑ってくれるご主人様だけが私の神様です!
でもこの人って冒険家って言ってたけどこんな家買うにはそんな職業じゃ釣り合わないのよね。
帝都お抱えのトレジャーハンターだったりするのかしら。
なんて疑問から出たご主人様の答えに、私はどうにもならなくなった運命を呪ったわけで。
「戦士ギルドのマスターに」
「えっ」
「あとアークメイジだろ」
「えっ」
「まぁ他にも人には言えないギルドのマスターとか」
「えっ」
「あとブレイズもやってる」
「えっ」
「ああ、それと本棚にある魔術書とか弄らないようにね。取り込まれるから」
「えっ」
「あと錬金術用の管理棚も開かない方がいいかも。反抗的な植物とかあるし」
「えっ」
「薬瓶も丁重に扱うこと。割れたりして中身が飛び散ると街単位で危険だから」
「えっ」
「あと興味本位で展示箱の武器とか振り回さないでね。家壊れるから」
「えっ」
「たまに身の程知らずな死霊術師とかどっかの信者とか、よくわかんない賊とかもカチコミかけてくるから気をつけてね」
「えっ」
「それじゃ頑張ってね」
えっ?
<あとがき>
話の主人公のメイドさんはオリジナルキャラだよ!!
原作のメイドさんはキャラ的にアレだからなかったことにして差し替えすることにするよ!!
更新頻度なんて信用ならないよ!!
俺得。