■1にちめ
今日から新米ハンターとしてデビューである。
とはいえ何をすればいいかまったく分からん。
本棚に入っていたハンター雑誌とやらには目を通してみたがまったく意味が分からない。
なんだよヘルブラザーズとかセレブハンターって。
この【狩りに生きる】の編集部はどんな人材を活用しているのか疑問だ。しかも弟子が代筆しているし。
とりあえずおっさんが譲ってくれた装備を入れてある箱を開いてみた。
元々俺が着ていたマフモフ一式と骨○○とかいう以下にも基礎装備ですよといった感じの武器が一通り揃っていた。
自称最強ハンターだったんなら、あんたが現役使用してた武器を残しておいてくれりゃいいのに。
というか鎧はくれないのか、マフモフとか暖かいだけで普段着と大して変わらないだろうが。
名前通りもふもふとした肌触りは気持ちいいけどこんなんでモンスターと戦うのかよ……
といってもタダで小屋までいる以上文句は言えない。仕方なくマフモフの服を着込んで、武器には一番使いやすそうな片手剣を選んだ。
双剣に嘗ての中二心がざわめいて振り回してみたが、うん、両手で剣扱うとか初心者には無理です。
その点ハンマーとかは簡単そうだけど……重い。
こんなん持って山を走り回るとかそれだけで死んじゃう。
というか笛ってなんだ笛って。武器じゃなくて楽器じゃないのか、コレ。
あ、ボウガンとか弓は遠距離攻撃だからチキン的に安心できるけどパス。
だって弾とか矢の代金が勿体無さ過ぎる。
とりあえず形だけはハンターもどきになったので、仕事を貰いに村長を探してうろうろしていると、注連縄で縛られた青い巨岩の前の焚き火の傍でうとうとしてるばあさんが居た。
どうやらこの人がこのポッケ村の村長であるようだ。
ヨイヨーイとかヒャァとかふにゃふにゃと覚束無いしゃべり方なもんで何を言ってるのか良く聞き取れなかったが、ポンと1500Zもお小遣いをくれる辺りいい人なのだろう。
気の乗らないハンター業だったが、少しやる気が出てきた。
とりあえずはお試しにとばあさんが見せてくれた仕事の中から一番簡単そうな雪山草摘みを選ぶ。
ばあさんの好意で契約金は掛からないけれど報酬は300Z。
少ないが実績が無い以上文句は言えない。
ばあさんの隣にいるアイルーに話しかけた所、上から下まで品定めするようにジロジロと見られた後、「余り使えそうにないな」等と言われた、失礼な。
睨んでやるとごほん、と咳払いをした後「精進したまえ、力がついたと思ったらわたくしに話しかけるが良い、いつになるか知らぬが」と恐ろしく上からの目線でのたまいやがる。ようは力がつくまでは話しかけるなということですか。この雌猫が。
しばらく雌猫と睨み合いをしていたのだが、ばあさんにさっさと行けと言われたので雪山に向かうことに。
30分ほど歩くとテントが張ってあるのを発見した。どうやらここが雪山での仕事の拠点のキャンプであるらしい。
近くに置いてあった青い箱の中に補給物資が入っていた。
地図に応急薬にホットドリンク、砥石・ボウガンの弾・肉焼きセット・毒入りの瓶…と随分トンでもない物もある。
肉焼きセットは実生活でも非常使えそうなのだが、どうやらこれは返却しなければいけないらしい、残念だ。
にしてもホットドリンクの毒々しいまでの赤色が怖い。マフモフの服が暖かいので飲まなくても大丈夫そうだが、これは気になる。
恐る恐る一口舐めてみた所、苦味のある唐辛子のスープ、といった味をしていた。
かなり辛いけれどコレは癖になる味だ。作り方が知りたい。
とりあえず中に入っていたものは全部貰うことに。
準備も整ったのでいざ雪山に足を踏み入れると、丁度湖の畔だった。雪山の風景を映し出す湖は何処か幻想的で美しく感じられた。なんともハンターの仕事というよりはピクニックに来た気分である。
トナカイがちらほらと見受けられたが、下手に野生動物に手を出して怪我をしたくなかったのでスルー。
今日はあくまで草積みだ草積み。
崖をロッククライミングして洞窟の中に入る。氷で出来た空洞内は水晶のように光を反射して鏡の部屋の中にいるようである。辺りを見回しながら歩いていると氷の結晶みたいなものを見つけた。手に持っても融けないのでもって帰ることにする。袋に詰め込んでいると妙な爺に会った。話しかけたら薬草をくれた。こんな辺鄙なところにもいい人はいるものである。
道沿いにまっすぐ歩いていくと淡い白色の草を見つけた。どうやらコレがターゲットの雪山草のようだ。辺りにいくつか群生していたので、5本抜き取る。これであとは帰るだけ、なんと簡単な仕事であろうかなんて思っていたらトナカイがこっちに向かって突進してきた。え、と思った次の瞬間には衝撃が来て、そこで俺の意識は途切れた。
目が覚めるとキャンプ場に倒れていて、近くに引き車を持ったアイルーがいた。助けてくれたようなので感謝を伝えると、どうやら金を取るらしい。詳しく聞くと報酬の3分の1だそうだ。ガッデム。
最早山に登る気にはなれなかったので村に帰った。
ばあさんに以来の雪山草を渡しに行くと、どうやら俺がトナカイにやられた事を聞いていたらしい。「ガウシカにやられるヤツも珍しいのう」などと笑っていた。雌猫が憐憫の表情を向けていた。死にたくなった。
もう今日は何もする気になれなかったのでさっさと小屋に帰った。途中でおっさんに肩を叩かれて、「大丈夫なんとかなるさ!」と慰められた。この仕事を続けていけるか少し不安になるが、やるしかないのであろう。疲れたし体も痛いので寝ることにする。果たして生きていけるのか、人生の先行きが難しいポッケ村であった。