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No.14323の一覧
[0] 【習作】ネギま×ルビー(Fateクロス、千雨主人公)[SK](2010/01/09 09:03)
[1] 第一話 ルビーが千雨に説明をする話[SK](2009/11/28 00:20)
[2] 幕話1[SK](2009/12/05 00:05)
[3] 第2話 夢を見る話[SK](2009/12/05 00:10)
[4] 幕話2[SK](2009/12/12 00:07)
[5] 第3話 誕生日を祝ってもらう話[SK](2009/12/12 00:12)
[6] 幕話3[SK](2009/12/19 00:20)
[7] 第4話 襲われる話[SK](2009/12/19 00:21)
[8] 幕話4[SK](2009/12/19 00:23)
[9] 第5話 生き返る話[SK](2010/03/07 01:35)
[10] 幕話5[SK](2010/03/07 01:29)
[11] 第6話 ネギ先生が赴任してきた日の話[SK](2010/03/07 01:33)
[12] 第7話 ネギ先生赴任二日目の話[SK](2010/01/09 09:00)
[13] 幕話6[SK](2010/01/09 09:02)
[14] 第8話 ネギ先生を部屋に呼ぶ話[SK](2010/01/16 23:16)
[15] 幕話7[SK](2010/01/16 23:18)
[16] 第9話[SK](2010/03/07 01:37)
[17] 第10話[SK](2010/03/07 01:37)
[18] 第11話[SK](2010/02/07 01:02)
[19] 幕話8[SK](2010/03/07 01:35)
[20] 第12話[SK](2010/02/07 01:06)
[21] 第13話[SK](2010/02/07 01:15)
[22] 第14話[SK](2010/02/14 04:01)
[23] 第15話[SK](2010/03/07 01:32)
[24] 第16話[SK](2010/03/07 01:29)
[25] 第17話[SK](2010/03/29 02:05)
[26] 幕話9[SK](2010/03/29 02:06)
[27] 幕話10[SK](2010/04/19 01:23)
[28] 幕話11[SK](2010/05/04 01:18)
[29] 第18話[SK](2010/08/02 00:22)
[30] 第19話[SK](2010/06/21 00:31)
[31] 第20話[SK](2010/06/28 00:58)
[32] 第21話[SK](2010/08/02 00:26)
[33] 第22話[SK](2010/08/02 00:19)
[34] 幕話12[SK](2010/08/16 00:38)
[35] 幕話13[SK](2010/08/16 00:37)
[36] 第23話[SK](2010/10/31 23:57)
[37] 第24話[SK](2010/12/05 00:30)
[38] 第25話[SK](2011/02/13 23:09)
[39] 第26話[SK](2011/02/13 23:03)
[40] 第27話[SK](2015/05/16 22:23)
[41] 第28話[SK](2015/05/16 22:24)
[42] 第29話[SK](2015/05/16 22:24)
[43] 第30話[SK](2015/05/16 22:16)
[44] 第31話[SK](2015/05/16 22:23)
[45] 第32話[SK](2015/05/16 22:50)
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[14323] 幕話8
Name: SK◆eceee5e8 ID:89338c57 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/07 01:35
   幕話8


「というわけで2-Aの皆さん。3年になってからもよろしくお願いします!」
 教壇の上。先生はわたしたちの前で笑顔のままそういった。
 クラスメイトは気楽にはしゃぐ。

「みてーっ、学年トップのトロフィー」
「おおー、みんなネギ先生のおかげだねっ」
「ネギ先生がいれば中間テストもトップ確実だー」

 まあバカレンジャーがこの成績を維持できれば希望はある。もともと底辺がそろって平均を下げていたのだ。この間のようなトップを維持するはさすがに無理でも最下位ってことはないだろう。

「万年びりの2-Aがネギ先生を中心に固い結束でまとまったのが期末の勝因。クラス委員長としても鼻が高いですわ」
 うれしそうに雪広が言う。
 デフォルトで後ろに大輪のバラを背負っているようなやつだが、ネギ先生が絡むと暴走しがちであるため、こういうときはいやな予感しかしない。
 右ひざを突いてネギ先生の手をとる雪広に、ミニスカでやるなと突っ込みたいが、ギリギリと歯を食いしばって我慢する。
 ここ最近は忙しかったから麻痺していたが、こういうクラスメイトの暴走はやはりなれない。

「はいっ、先生。ちょっと意見が」
「はい、鳴滝さん」
「先生は10歳なのに先生だなんてやっぱり普通じゃないと思います」

 おっ! やるじゃないか。双子のツリ目。
 なかなかの指摘である。クラスメイトもざわめいた。
 これで正常に戻ってほしいがまあ無理だろう。

「それで史伽と考えたんですけど、今日これから全員で学年トップおめでとうパーティーやりませんか?」
「おーそりゃいいねえー」
「やろうやろう、じゃあ暇な人は寮の芝生に集合!」

 ほらな。
 最近のわたしは強いんだ。いままでのわたしだった机に突っ伏して心の中で突っ込みを入れていただろうが、いまとなっちゃあこれくらいどうってことはない。
 予想通りすぎて泣けてくるだけだ。

「わあ、パーティーですって千雨さん。楽しそうですね」
「……楽しくねえよ。わたしはこの非常識なクラスメイトの事情を知ってある程度納得するようにはなったが、関わりたいとは思わない」
 声をかけてきた相坂に小声で返事をする。
 わたしは前から関わりを避けていたのだ。事情を知ったからといっていきなり社交的になれるはずもない。
 わたしはバックを持って立ち上がった。

「あっ千雨さん」
 ちっ、見つかった。
「なんですか、先生」
「あ、あの……えっと」
 ぎろりとにらみつける。
 先生は言葉に詰まった。
「わたしはちょっと体調が悪いので帰ります」
 ごちゃごちゃ言わずにそれだけを言い捨てて、逃げ出した。
 先生が背後で何か言っているが、まあ無視だ。
 あいつはクラスメイトと仲良くやればいい。変な縁が出来ちまったが、もともとあいつはわたしが関わりたくない筆頭の人種、魔法使いそのものなのだ。
 いまだに電話やなにやらでしゃべるくらいになつかれちゃいるが、それとこれとは話は別だ。
 基本的にわたしは先生ともクラスメイトたちとも一線を越えて仲良くなる気はない。

「千雨さん。でないんですか?」
 先生から逃げ出していると、横から声がかけられた。
 わたしの声をかけた綾瀬がいつもどおりのポケっとした顔のまま横に並んでいる。
「まあな。性に合わない。出ても雰囲気悪くするだけだろ……ああ、自虐的な意味じゃなくな」
「わかってますよ」
 肩をすくめて返事をすると、綾瀬がかすかに微笑みながら返事をした。
 こいつはわたしのことを割りとわかっている。
 べつに友達がほしい根暗な娘が、友達の輪に入る勇気が足りなくて……と言う訳でもない。
 そのような展開を改善することにかけて2-Aの右に出るものはない。ウチのクラスで交流の少ない人間は全員自分から交流を避けているものだけだ。
 筆頭はエヴァンジェリンとわたしである。

「つーわけで帰る」
「そうですか、それではまた明日」
「ああ、また明日」

 軽く手を上げて振り返らずに、わたしはその場を後にした。


   ◆


「あっ、千雨さん」

 教室で別れたはずの先生が寮の前に立っていた。
 なんで、寮の前で先生が待ち伏せてんだよ。

「何か用ですか?」
「あ、あの、さっき体調が悪いって言ってたので」
 そういうと先生はどこからともなくどくろマークのついたビンを取り出した。
 ギャグでやってんのかこいつは。

「これおじいちゃんから貰ったよく効く腹痛薬です。お一ついかがですか?」
「結構です。それよりもどうやってここにきたんですか? 学校からの電車には乗ってませんでしたよね」
「あ、はい。飛んできたんです」
 そういって軽く背中の杖を揺らす先生の頬をムニリとつまんだ。
「真昼間から飛んでんじゃねえよ、このアホ」
「い、痛いです千雨さん」
「だったら反省しろ、はったおすぞ。べつにそれは飛ぶ必要ないだろう? 電車に乗り過ごしたなら次を待て。ダイヤどおりに来る電車に間に合わないならそれは自分が悪いんだ。魔法で自分の失敗を補填するな。それだから魔法使いが嫌われるんだよ」

 以前に説教した内容だが、やはり先生は魔法が当たり前の世界の出身ということもあって、認識がまだまだ甘い。というより学園の許しを得たことがかなり心理的にプラスに働いているようで、余計にアクティブになっているような気さえする。
 まあ学園の対応を見る限り、わたしが過剰に反応しすぎだったわけだし、こいつにしたってわたしの説教なんかが、学園長たちの言葉に勝るなんて考えているはずがない。
「あっ……ごめんなさい」
 だが、ネギはわたしの言葉にシュンとうなだれた。
 意外と素直だ。
 それに嫌いという台詞にいやに反応する。
 涙目になった先生にさすがに罪悪感が沸いた。
 ポリポリと頭を書きながら言葉を続ける。

「イヤ……別に先生方がそういう方針ならわたしが言うべきことじゃないかもしれません。かかわらないって言っといて文句だけ言うのもなんなんですが、まあ、治したほうがいいってわたしが思うだけです。別段マギステル・マギになれないとかって話じゃありませんよ。わたしが勝手にそう思うだけですから。学園側が先生を許している以上、わたしみたいなのが何かを言う資格はありませんし。でも、魔法を使わなくてもよい場面で魔法を使っていたら、またばれますよ。それに魔法使いじゃない人間はいい気はしないでしょう、そういうのには」
「いえ、これからは気をつけます。マギステル・マギになれたとしても、千雨さんに嫌われるのは嫌ですから」
「…………そうですか」
 なんなんだこいつは。一発ぶん殴っておいたほうがいいんじゃないか?。
 にっこりと笑う先生にわたしの中の得体の知れない感情が揺さぶられる。
 こいつの一番恐ろしいところはこういうところだ。わざとだったら対処しようがあるが、天然では手に負えない。宮崎や相坂を髣髴とさせる。
 ちなみに相坂は学校である。あいつは寮の付近までは出張れない。

「あの、パーティーにこないんですか」
「ええ。わたしはあんまりなじめないので帰ります。ついてこないでください」

 変人集団と思っていたクラスメイトは魔法使いを含んだ正真正銘の人外軍団だったことを知って、わたしは今までよりさらにクラスメイトとの交流が少なくなった。
 このような行事は今までもたいてい欠席していたが、今はそれに拍車をかけている
 部屋に向かうわたしに当たり前のように先生がついてくる。
 この先生は人の言うことをよく聞く割に、変なところで思い込みが激しく頑固だ。今回もわたしをパーティーに出席させようとしているのだろう。

「ボクは千雨さんにも出てほしいのですが」
「わたしがこういうのに出ない生徒だってコトはウチの連中は全員知ってますから」
「い、いえ。その……」
「なんですか?」
「いえ……その、ボクが千雨さんに出てほしいんですけど」
「…………顔を赤らめないでください。告白前の小学生ですかあなたは」
「こ、告白だなんてっ」

 先生がさらに顔を赤くした。こんなところを委員長に見られたらどうなることかわからない。
 なにやらわからないが、相当になつかれてしまったようだ。
 べつだん悪い気もしないが、歓迎される事態というわけでもない。

「い、いえ、そういうわけでは。あっそうだ、宮崎さんや綾瀬さんも来ますけど」
「あいつらはわたしのことをよく知っているので、わたしが行かないのを気遣ったりはしません。むしろいったほうが驚かれるでしょうね」
「そんなことありません。友達と一緒にいないほうがいいだなんて!」

 ありえない話を聞かされたように先生が驚く。
 いつの間にかわたしたちは寮の部屋の前まで来ていた。
 このままだと部屋の中までついてきそうなので、振り向いて釘をさしておくことにした。

「先生。正直魔法使いに混じりたいとは思わないんです。わたしは自分がたとえなんであれ、やっぱり魔法使いとは無縁で暮らしたい。だからパーティーにも行きません」
「っ!?」

 ショックを受けたような顔をする先生を尻目に、玄関を閉めた。
 そのまま部屋に戻りカバンを投げ出し、制服を脱ぐ。
 プルプルと震えていた体を抱きしめる。

「うわあああーっ! やっと開放されたわー」

 今日はルビーもいないし、ホームページの更新でもするとしよう。

「ほんとにもうなんなんだ。ふつーの学園生活はこうじゃないだろ。ったくなんだってんだよ、みんなして! もっとふつーにだべって、教師に文句言ってテストの話やらドラマの話をしていろよ! 魔法だの忍者だのロボだのは小学校で卒業しとけっての。ったく、あーっ、もう!」

 パソコンを立ち上げて、伊達メガネを取り外す。
 カメラと簡易スタジオで背景を固めて準備完了。
 さあ、これからはわたしの時間だ、
 服を着替えて、化粧を調え、くるりと回って、ハイ、ポーズ。
 鏡で確認して、にっこり笑う。パシャリパシャリとシャッターきって、撮った写真を取り込んで。
 編集して加工して、あっという間にそこそこの顔が美少女へ。
 うん今日もばっちりだ。パソコンの画面にはばっちり衣装を決めた美少女がうつってる。
 よし今日もいっちょうネットでわたしを待ってるみんなにサービスするか!


「オッケー、今日もちうは華麗だぴょ―ん」


 ここ数日できなかった命の洗濯を始めよう。


   ◆


 アイスワールド>でも気持ちは分かるよなー。ちうたん美人だしー
 ちうファンHIRO>そうだねー。ネットアイドルの中では一番綺麗だよー
 ちう>えー? そんなことないよぉー。

 カタカタをキーボードで返信する。打ち込んだ文字にニヤついてしまう。うむうむ、やっぱりわたしはすばらしい。まあトップは当たり前だ。
 そして当然トップの座に慢心したりもしないのである。

「でもありがとみんなー、今日はお礼にニューコスチュームお披露目するよー」

 大き目の帽子とセットのキャラコスをしながらくるりと回り、手で帽子を押さえる振りをして、帽子の裏に隠れた遠隔のボタンで私自身の写真を撮る。タイマーは手間がかかりすぎる上、ポイントが絞りにくいためだ。この辺のこだわりもわたしをトップアイドルとして君臨させる一要素だろう。
 セーラー服からゴスロリ、魔女っ子からバニーまで。
 古目のものから最新物までアニメキャラもばっちりカバー。次は最近のお気に入りは魔女っ子戦隊モノの敵役。

 そう、これこそがルビーをドン引きさせ、エヴァンジェリンに弱みとして握られながらも抜け出せない長谷川千雨の秘密の一つ。
 麻薬のようにわたしを至福のときへと導く隠し趣味。
 ネットアイドルちうである。

 ああ、なんて気持ちいいのか。
 これであと数日はあのクラスメイトにかかわりながらも頑張れそうだ。
 アップしたデータの反応を見ながら、カタカタとランキングをチェック。
 二位に二倍ちかい差をつけてちうが独走だ。

「よし、来た来たー。ぶっちぎりのトップ!」
 ルビーと関わろうが、吸血鬼と関わろうが、子供先生と関わろうが、いずれはNET界のNo.1カリスマとなってやるという野望は消えていない。
 まあこのままならいつか、すべての男たちがわたしの前にひざまずくだろう、と半ば本気で考えながらふふふと笑う。

 フォトショップでお肌を修正。
 ネットにアップして、反応を確かめながら次の衣装を考える。
 チャットにはこまめに顔をだして、わたしの美貌に驚嘆する男どもをコントロール。
 笑みが止まらない。いやーやめられないよな、やっぱりさ。
 ルビーには超人願望なんてないといわれたが、それは自己顕示欲のなさに起因するものでなく、確固たるちうとしての誇りがあるからだ。あいつは正しい。崇拝される立場はなかなかにいいものなのだ。
 今だけは、魔術師としての思考を切り離し、そんな俗っぽいことを考える。
「まあ、表の世界では目立たず騒がず危険を冒さず、リスクの少ないネットの世界でトップを取るってのが一番だよな。魔法なんて真っ平だぜ、本当に――――」


「うわー、きれいですね。これ千雨さんですか?」


 キーボードを打っていた手がぴたりと止まった。
 おいおいおいおいちょっとまて。おかしいだろ。
 なんだよいったい今の声は。
 いやわかってるんだよ。心の奥底では。
 でもさあ、こういうのってやっぱりあるだろ。信じたくないとか夢だと思いたいとか。
 現実逃避ってやつだよな。
 わたしは意外と現実から目をそらすことが多かったりするんだが、最近ではルビーが現れたときも吸血鬼に襲われたときも平静を装えた。
 魔法使いに吸血鬼もなかなかのもんだとほめてくれったけ。
 だけどさ、さすがに今回ばかりはちょっと無理。

 ギギギと後ろを振り向けば、バカ面さらしてきょとんした顔の先生が立っていて
「あ、スミマセン。やっぱり千雨さんにも来てもらいたくて……ドアが開いてたので……」
 そんな間抜けなことを言っている。
 うっすらと赤くそまった顔はわたしのコスプレ写真が移った画面から外れている。というかむしろ、わたしの体から外されていた。

 ちらちらと向けられる視線をたどれば露出した太ももがあった。
 バニーガールのレオタードってさ、水着と同じ程度の露出度だけど、こういうところだとやばいよな。いや水着だろうと、部屋でやったらただの変態的なプレイにゃかわりない。
 わたしはこんな退廃的なプレイを楽しむような嗜好はないし、この先もやる気はない。
 画面越しとはまた違う羞恥心でわたしも顔が赤くなる。

「あ、あの。千雨さんは魔法使いとは関わりたくないっていいましたけど、あのクラスにいる魔法使いは千雨さんとぼくだけで……だから、ボクは千雨さんが来たくないなんていわれると……あの」
 ゴチャゴチャうるさい。
 まあこの先行うことは唯一つ。
 テンパって言い訳をしだす先生を横目に、わたしは大きく息を吸い込んで、


 部屋中に響き渡る叫び声を上げたのだった。


   ◆


「――――いいか、くそがき。ドアが開いてたからって勝手に入ったら犯罪なんだよ。わたしはあんたの事情を少しばかり知ってるからいいが、これを事情に明るくない生徒にやったらぶん殴られてもおかしくないんだからな」
「うう、ごめんなさい、千雨さん」
 正座したネギに説教をする。
 服はいまだにバニーガールの格好だ。つまるところレオタードである。
 冷静になるまえに説教を始め、着替えるタイミングを逃してしまった。
 というより頭が沸騰していて、そんな当たり前のことを思いつかなかったのだ。
 お綺麗ですね、などと当たり前のことをほざくネギ先生のほっぺたを存分に伸ばしてやった後、わたしは部屋の中で先生相手に道徳の授業を行っていた。

 先生のほっぺたには真っ赤なもみじが咲いている。
 当然の刑罰だろう。
 乙女の部屋に無断で侵入して柔肌をのぞいたのだ。本来なら包丁で刺しても許されるはずだ。
 理不尽に怒って、口答えしたらほっぺたをグニグニともてあそんで、反論しようとしたら服をつまんでため息をはいて、先生の言葉をけん制する。
 正直数ヶ月前に勝るとも劣らないくらいに白熱してしまった。
 そんな手を使いながらいじめたおしたあと先生を解放する。

 すでに三十分近い。さすがに寒くなってきたので止めたが、本来なら夜までこのバカを説教しても良かったところだ。
 先生はふらふらとしながらも、わたしの説教に対してかけらも反発心を抱いていないようだった。
 ごめんなさい、といい頭を下げる姿にはマジで反省の色しかない。
 素直すぎないか、こいつ? 詐欺やら悪い女やらにだまされないか心配だ。

「まあ、これからは気をつけてくださいね。神楽坂と同居してるんでしょう。あいつに同じことしたらしゃれになりませんよ、きっと」
 さすがに罪悪感が沸いてきた。そろそろ着替えもしたいし、わたしは許してやるかという気になり、偉そうに先生に言った。以前と違ってわたしと先生だけの催しだ。わたしからの許しですべてが完結するそういう議論。
 わたしはネギに忠告をしながら立ち上がる。

「はい、わかります」
「わかりますって……まさか、着替えを覗いたことでもあるんですか?」
 さすがにドン引きだ。
「いえ、教室で服を吹き飛ばしてしまったときや、前に間違ってベッドに入ってしまったらすごく怒られましたから。あとはお風呂で胸の大きくなる魔法をつかったら失敗してしまったときもですけど」
「あー……。そういや相坂が……。まあ、それは怒るだろ」
「いえ、たまたま……」
「そんなたまたまなんて起こる訳ないと思うけど。いやまあ、別に神楽坂がいいならいいんだけどさ」
 話を続けたくもない。
 最後の最後でとんでもない話を聞いたような気もするが、触らぬ神に、ということでさっさと送り出そうと先生を促した。

「そういえば先生は、なんの用だったんです?」
「えっ?」
 口調を改めて、問いかけると、首をかしげる先生。
「いや、だからなんでわたしの部屋に来たんですか? 何か用があったのでは?」
「えっ、あ。そうでしたっ!」
 突然大声を上げる先生。
「ボクは千雨さんを呼びにきたんです」
「よぶ?」
「はい。2―Aがテストで学年一位を取ったお祝いパーティーにやっぱり千雨さんも出てほしくて!」
 さっきわたしが断った問答はなんだったんだ。
 それは小さな親切で大きなお世話の典型だ。しかしわたしはそれよりももっと気にかかることがあり、文句を言う前に先生を問いただす。

「……先生、もちろんうちのクラスメイトには断ってきたんですよね」
「えっ?」
「だから、わたしを呼びにいくから席をはずすとか何とか、誰かに言ってからきたんですよね」
「いってませんけど?」
 きょとんとした顔を返されても困るんだ。わたしは頭痛を抑えながら、先生をたたき出そうと肩をつかんだ。
 時計を見る。かなり時間がすぎている。これは結構やばいんじゃないか?

「あのですね。それじゃああいつらが先生を探してるに決まってるでしょう。わたしはいいので、先生はすぐに戻ってください。先生が主役みたいなものなんですからいなくなったらパーティーも何もないでしょうから」
「えっ、でも千雨さんも」
 肩をぐいぐいと押して玄関に向かわせるが、先生はいまだにわたしを気にかけているのか、玄関先から動こうとしない。
 わたしをどうしても連れて行きたいようだ。
 ああ、もう根負けだ。レオタードのままいくわけにゃあ行かんが、着替えていくべきだろうかとため息を吐いた。
 先生に先に行っていてくださいといおうとして、わたしは直前で動きを止める。
 玄関の外から聞きなれた声が聞こえてきたからだ。
 つまり、

「もうどこ行ったのよあいつはー」
「いま先生の声じゃなかったー?」
「ああ、長谷川の部屋にいるんじゃないのか?」
「千雨ちゃんの部屋? なんで?」

 愛すべき我がクラスメイトが先生を探しにきたらしい。
 ぼけた先生がパーティーのことを忘れて寮に帰ってしまったとでも思ったのだろう。こいつは連絡手段を持ち歩かない。
 それに気づいて玄関向こうに声を上げようとする先生の口を間一髪でふさぐ。
 もごもごとうごめく先生を胸元に抱き寄せた。

 冷や汗がたれる。
 これはやばい。というか先生はもう少し空気を読んでほしい。
 ここで先生に玄関を開けられたら、いま外にいる連中が見るのは玄関先で先生と一緒にいるレオタード姿の長谷川千雨だ。恥辱で軽く死ねる自信がある。

「……んあぅ!?」

 と、なれない感触で微くんビクンと体が震えた。
 もごもごと先生が胸元で動いている。
 レオタード一枚で胸元に先生の頭。どんなサービスなのか。
 自分の上げた奇声で顔が真っ赤になったのを自覚した。だがここで放せば先生が声を上げてしまうだろう。
 羞恥心に耐えながら、黙ってろ、という意味と力をこめてギュっと抱きしめる。
「…………んっ、ちょっと先生。あんま動くなよ……ちょ……あっ、いやっ……ひぁ」

 ああ、黙らせるのに抱きしめたのは間違いだった。
 後々思えば息が出来なくて苦しがっていたのだとわかるが、このときはそんな考えは浮かばなかった。
 もぞもぞと動く先生が色々とやばい部分をこすっている。
 密着した胸元に先生の息がかかる。その熱さに腰が砕けそうになる。
 顔が際限なく熱くなるのを感じる。
 やばい思考がぐるぐると頭の中を回っている。変態かわたしは。
 玄関先からは依然声が聞こえてくる。
 外にはかなり人数がいるようだ。かなりやばい。
 これでは出て行くわけにも行くまい。

「ねえねえ、チャイム鳴らしてみようよ」
「そうね。長谷川さんに先生のことを聞いてみましょうか」
「千雨ちゃんに電話すればよかったね」
「だね、ちょい無駄足だったかも」
「千雨ちゃんはいつもいないからねー」
「ここまで来ちゃったし、部屋にいるならいいじゃん。ついでに先生のことしらないか聞いてみようよ」
「そうですわね。もしかしたらネギ先生が千雨さんのことをお誘いに来ているのかもしれませんし。ああ、それどころか千雨さんと一緒に部屋の中に、なんてことも……」

 まさか委員長までいるのか。邪推ともいえない台詞がやばすぎる。
 押しかけられてもこっちは対応できないんだよ。
 先生に声を上げられても終わりだ。
 外からの言葉通りにチャイムが鳴るが、返事は出来ない。
 ピンポーンとやけに響く音に冷や汗をかく。
 格好が格好である。先生を奥に追いやって玄関先で対処するには時間が足りない。八方塞がりだ。
 口をふさいだまま。ズリズリと部屋の中に撤退する。

「…………っ!? っ」
「んっ、くあ……あっ!? ちょ、ちょっと先生っ! てめえ、あばれんなよ、おい。少し黙ってろ。ばれるとわたしがとばっちりを……って、うわっ!?」

 先生を引きずりながら、後ろ向きに進む。反射的に強く抱きしめられた先生が身じろぎをし、それに気をとられたわたしは、そこにあった衣装に足をとられてすっころんだ。
 ドタンと、割と大き目の音がする。
 血の気が引いた。
 わたしの想像どおり、外の連中もその音を聞きつけて――――

「なになに、いまの音」
「いやー、怪しい感じだねえ。密会がばれて浮気相手と逃げ出そうとしたら転んじゃったときみたいな音だよ」
「どんな音ですか、それは」
「パル、駄目だって勝手に開けようとしちゃ……」

「浮気ですって! もしやネギ先生がっ! はっ、まさか居留守!?」
「いいんちょ、さすがにそれはないでしょ。だって千雨ちゃんだよー」
「いやー、そんなことはないね。実は結構ラブ臭がしてるような気がしてるんだよね! 甘酸っぱい感じで!」
「まあハルナの世迷言はともかく、千雨さんは意外と先生と仲がよかったはずですが」
「うん、そうだね。この間も外で一緒に掃除をしてたみたい」
「あーそうね。ネギは結構部屋では長谷川の話をしてるかな」
「ちょっと! それ本当ですの、アスナさん!」
「んっ、玄関のカギあいてるじゃない。ちょっと千雨ちゃん、いないのー?」

 ガチャリとノブが回り扉が開く。
 カギは開いている。そりゃそうだ。
 先生がカギが閉まってなかったとわたしの部屋に入り込み、わたしは先生を見つけてずっと説教をしていたのだから。
 つまり玄関のカギは開けっ放しだったということで、

 わたしは無我の境地でそのときを受け入れた。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 玄関を開けた神楽坂たちと目が合った。後ろからはクラスメイトが勢ぞろい。
 わたしはレオタード姿に簡易な上着を一枚きりで先生を胸元に抱きかかえ、先生を上に抱えて地面に横になっている。
 先ほどからのセクハラで上着がはだけ、わたしは羞恥でまなじりに涙まで浮かべている
 雪広と朝倉の目が怖い。
 あの早乙女まで驚いた表情を隠せてもいないってんだから深刻さもわかろうというものだ。
 ああ、無我の境地ってのはこういうことか。
 わたしは一斉にあがる叫び声を聞きながら、ネギ先生と神楽坂の騒動を思い返していた。

 ほんとに悪いな、神楽坂。お前の話を笑って聞いていたけどさ、これは当事者になったら笑えない。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ストーリーが進む本編と必須イベントの幕話でした。なんだかんだいっても絶対に常識人ではない千雨女史の必須イベント。ここの千雨はどう考えてもネギ先生に手を引かれてついていくようなキャラではないので、余計被害を食いました。
 前の話と合わせて先生が出張り気味ですが、次回から数話はほとんど先生は出なくなります。
 あと、ストックを作っていく作業に投稿が追いついてきているので、来週の投稿はいままでの文章量は確約できません。一話分ならたぶんいけますけど、今後どうするか迷い気味です。投稿はするつもりです。
 それでは来週、またよろしくおねがいします。



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