・Scene 48-7・
淡々と、よどみない動作で聖機人の両手足、及び背部の亜法結界炉を破壊していく姿は、それをただ突っ立ってみているだけの存在も合わせて、中々人間性が現れているなと、アウラは安堵の息混じりに思った。
『―――ダグマイア・メストと……エメラさん?』
「ええ、念には念をと言うヤツで、急遽呼び出しを掛けてみたのですが……」
間に合ってよかったと、背中に見た事も無いような巨大なユニットを背負った曲線美のシルエットを有する聖機人に乗るユキネに、返事を返す。
『やっぱり、アウラ様の考えだったんだね』
「―――お気づきでしたか」
『あの子がダグマイア・メストを使おうと考える筈が無いもの』
ユキネはそう言って、クスリと笑う。
『使えるものは使う、とか普段から言っておきながら、肝心な所でプライドとかが邪魔しちゃう人だから、アウラ様の判断は正しいと思うよ』
「そう、でしょうか……」
穏やかな声で言ってくれるユキネに返しながら、アウラは周囲を見渡す。
破壊された市街地。割れて捲れ上がった石畳。そこに倒れ伏し煙を吹いている何機もの聖機人。
『―――あの子が前に出ても、きっと同じ風だったと思う』
「……そう、でしょうか」
考えていた事をズバリ突かれてしまっても、やはり、その思いを捨てる気にはなれなかった。
凛音を眠らせ、ラシャラ共々スワンに退避させて、後の指揮は全てアウラが取った。
間違いなく味方を犠牲にする事を前提とした作戦を。
それゆえの当然の結果がこの惨事なのだから―――覚悟はしていたとは言え、やはり考えてしまう。
―――アイツなら、もっと上手くやってくれたのではないかと。
無論それは、アウラの願望でしかない。
途中―――どころか決定的な部分まで、確かに凛音が指揮を振るっていたのだ。後の状況は流れに任せるしかないと言う状態だったのだから、凛音の指揮のまま変わらなかったとしても、今現在の状況とほぼ等しくなる事は必定と言えるだろう。
『アウラ様は、自分の選択に後悔してる?』
「―――それは、凛音をこの作戦から遠ざけたことに関して、でしょうか?」
明らかな年長者としての落ち着きを持って尋ねてくる女性に、アウラは躊躇いがちに応じる。通信モニターに表示される白い髪の美女は、穏やかな眼差しで頷いた。
『そう。アマギリ様に無茶してもらった方が良かった?』
「まさか」
以外にも一言で、直ぐに断言できた。
「聖地で、血まみれで空から降ってきたあいつを見て血の気が引きましたよ。その後、此処で二週間も眠り続けていた、その寝顔を見ている時も、最悪な気分でしたね。あんな姿をもう一度見せられるくらいなら―――……」
思うままに呟いていると、通信モニターに映されたユキネの顔が、微笑ましげにアウラの事を見守っている風に見えた。何故か、背中が痒くなるような感覚に襲われる。
「……なんでしょうか?」
『マリア様には内緒にしておくね?』
「何をですか!」
身を乗り出して突っ込んでも、フフフと棒読みで笑いを返されるだけだった。
「おからかいになられるのであれば、是非とも凛音にやってもらいたいものなのですが……」
溜め息混じりに言うと、ユキネが少し申し訳無さそうに微笑んだ。
『今のアウラ様、あの子が他の人達よりも大切になっちゃたから、だから、あの子以外の大勢の人の犠牲よりも、あの子が無事で済んだ事を喜ぶ自分自身の事を、何より責めてるみたいに見えたから』
少しは、気が紛れてくれたら嬉しかったんだけれどと、ユキネは弱い微笑みを見せる。
アウラにとってその言葉は、自分の及びの付かない部分を引き出されてしまったようで、言葉に詰まってしまう。
「それは……」
『そういうの、誰でもあるものだから。―――アウラ様たちの様な立場だと難しいかもしれないけど、余り、思いつめない方が良いと思う』
遠くの誰かよりも、親しい隣人に慈しみを覚えるのは、当然の事だ。ユキネはそんな風に、アウラが後ろめたさを覚えたアウラ自身の想いを肯定した。
『だからって、ウチの女王陛下みたいな強かさを身につけられても、それはそれで困っちゃうけど』
「中々、あの領域に到達するには修行が足りないと思います」
冗談めかして付け加えられた言葉に、アウラは苦笑交じりに頷いた。
すこしだけ、気持ちが軽くなった事に感謝の念を覚える。
「―――さて、と。キャイア、剣士は……」
『ん、もう、ちょっと……力入れすぎてコアを潰しちゃっても拙いし、難しいわね』
気分を切り替えてとばかりに一息ついた後で、アウラは倒壊した家屋に埋もれる剣士の黒い聖機人の前に自らの機体を膝を付かせていたキャイアに尋ねる。
キャイアは、四肢をもがれ、首すら残っていない、最早聖機人としての体を成していない剣士の聖機人の、罅割れたコアの外殻を破ろうとしながら応じる。
亜法結界炉が停止し、エネルギーの循環がなくなったために機能しなくなった透過結晶製の外殻だったから、強引に叩き割らなければ中の人間を引きずり出す事は不可能だった。
透過結晶一層で装甲も兼ねている訳だから、例え皹混じりと言えど、それ相応の強度があって、力の入れ具合が言うとおりに、難しいらしい。
『ここから出したら、喫水外に浮上させたスワンの宮殿部の中の一室に、隔離だっけ』
「―――不満か?」
事前に聞いていた、剣士奪還後の対処プランを言うキャイアに、アウラも曖昧な表情で尋ねる。
『囚人用の拘束服の着用は必須で、尚且つ窓の無いなるべく閉鎖した空間に―――とか、言ってたじゃない。それじゃあ保護と言うよりそれこそ監禁、拘束よ。―――そこまでする必要、あるのかしら?』
「慎重論は唱えすぎるに越した事は無いという状況だと言うのは、もう解っていると思うが……お前が納得行かないという気持ちは解るな。それでなくとも、スワンの宮殿など、本来ならシトレイユ女王の寝所でもあるのだから」
キャイアの立場なら、実務的な意味でも反対したくなるのは当然だろうと、アウラも頷く。
尤も、キャイアの場合、感情面からの反対の気持ちが大きい事は当然―――キャイア本人も―――理解していた。
『そりゃあ、うん―――解ってはいるのよ。今の状態の剣士だと、また……』
直ぐにガイアの支配下に入ってしまう可能性があるから。
キャイアは、想像したくない未来であるが故、後を続ける事は出来なかった。
その未来を防ぐために必要だと言う事もわかっていたから、愚痴以上のことも言えない。
喫水外とわざわざ指定しているのも、エナを媒介にした遠距離通信による干渉の危険性を唱えてと言う理由だったから、納得するより他無い。
それでも、と作業の手は止めずに、チラリとキャイアは視線を横にずらす。
そこには、キャイアと似たような―――尤も、コアを破壊しようとしている彼女と違い、そちらはコアだけ残して周りの機能を破壊している途中だったが。
『剣士も、と言うことは当然、姉さんも、なのよね……』
「―――そうだな。あの最後の一撃のお陰で、キャイア、お前も理解できただろう?」
『理解なんて、したく、無かったわよ……』
あえて冷淡な言葉をかけるアウラに、キャイアはつらそうな顔で漏らす。
自分の意思で、剣士を救うのに協力する。
姉は確かにそう言っていた。
ガイアの思惑に反発して、ある程度は自由意志を用いることが可能なのだと。
―――しかし。
剣士の行動停止に成功しかけた最後の一瞬、姉はこれまでの演技による敗北を忘れ去ったかのように、キャイア達に牙を剥いてきた。
何体の聖機人を切り刻んできたか解らない、禍々しい輝きを放つ大鎌を振りかざして。
メザイア・フランは、明らかにキャイアたちを殺すつもりに見えた。
先ほどまでの会話のうちに見えた彼女の本心―――剣士を救いたいと言うその気持ちを前提に考えれば、少女たちを害する理由などありえない筈なのに。
そんな事をしても利するのは怨敵たるガイアのみだと言うのに―――姉は、それを成そうとしたのだ。
洗脳と言う物は、洗脳されている本人に自覚が無いからこそ、恐ろしいのだ。
『姉さん、ガイアに……』
「此処までを見越したガイアに、そう命ぜられていたと言う事なのだろうな。知らぬ間に―――いや、知っていても言わない、言う必要が思い浮かばないのか」
キャイアにとっては嫌いな男の言葉だったが、納得せざるを得ない現実があった。
「だが、形はどうであれ、取り戻す事が出来た。剣士だけ、と言うつもりで挑んで、この結果は僥倖だろう。―――ガイアの意図を妨げる意味でも」
『そう、ね。そうよね。―――ダグマイアが飛び出してきたときは、本当に驚いたけど……』
溜飲を下げたと言うのも事実だと頷く一方で、その一端を担ったのが、半ば絶縁状態と化している少年たちである事が、やはりキャイアには引っかかる所だったらしい。
当然その気持ちは理解できていたから、アウラは申し訳無さそうに微苦笑を浮かべるより無かった。
「ああ、お前がメザイア先生に突っ込む直前に私が急遽呼び出しをかけた。―――凛音の最悪の中でも最悪の予想が、本当に当たってしまったものだからな。ユキネさんを剣士に当てる以上、他に当てが無かった」
『―――と言うことは、何? アイツ、ひょっとして姉さんが本当は剣士やユライト先生と同レベルの状態でガイアの支配下にあるって、初めっから解っていたの?』
「恐らく、な。終ぞ明言は避けていたようだが、こうなった上で改めて考えると、そうとしか思えない」
実に嫌そうな顔を浮かべるキャイアに、アウラも同感だと苦笑を浮かべる。
「今回は早い話、アイツとガイアの”化かし合い”、だった訳だからな。取っ掛かりとしてユライト・メストが本当はガイア側だったと理解した段階で、それを利用した罠をお互いが張り合っていたと言うことだろう。―――結果として、我々の勝ち、と言っても良いかもしれんな」
『そうだな。一本取られたと、そういう場面なのだろうな、私は』
巌のような声。重く、暗い。聞くものに絶望感を覚えさせる、そんな声が辺り一体に響き渡った。
何処からとも無く。無線機越しだと言うのに、背筋に悪寒を覚えさせるように。
『―――ちち、うえ……!?』
メザイアの聖機人を解体していたエメラの作業を見守っているだけだったダグマイアが、驚愕の声を漏らす。
聖機人を恐れおののくように後ずさりさせながら、空を、見ていた。
アウラも釣られて、彼と同様の方向を見上げ―――そして、後悔した。
燕尾の装束に、肩に白いマントを靡かせて。
―――映像では、ありえない。
確かな存在感を有する、ババルン・メストが、アウラたちを睥睨していた。
「ババルン・メスト……!?」
『アウラ・シュリフォン、それにナウアの娘だけか……アマギリ王子本人の姿が見えぬな。よもや、異世界の龍そのものは姿すら見せず、その上最後の仕掛けには何処で捨て置いたかすら忘れていたような、無能の手で妨害されるとは。―――天晴れ見事なりと、賞賛せざるを得んな』
『父上……あなたに、とって』
一片の苦渋の態度も見せず、しゃあしゃあと言い切る父であるはずの人間の言葉に、ダグマイアが震える声を漏らす。
その声、恐怖に揺れる言葉こそが、ババルンにとっては至福なのだろうか。楽しそうに唇の端を持ち上げて、笑みと見えなくも無い凶相を浮かべて口を開いた。
『塵も無能も使いよう、と言った所か。―――少し見直したぞ、息子よ』
『あ、あぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
『ダグマイア様!?』
元より、見てくれ変わらぬまま異形へと変貌していた父の存在が許容しきれるようなものでは無かったのだろう。
期待をかけられていたのだと言う一縷望みを捨て切れなかったと言うのも、きっとあるだろう。
一度目ならば、何かの間違いかと疑うことも出来た。
でも。
この期に及んで改めて突き立てられた現実に―――無能であり、不要な存在だと言う烙印を、既に遥か昔から押されていたと言うこの現実に、遂にダグマイアの心は限界を迎えた。
衝動的な行動の赴くまま、聖機人を飛翔させる。
如何なる力を持ってか天に佇むババルンへと向かって、剣を構えて。
それが何を意味する行動なのかすら、ダグマイアには気付けていないのかもしれない。呼びかける従者の言葉も耳に入らず、突然現れた父と言う不思議すら、理解できぬ。
父に向けて、剣を振るう。
―――”親殺し”。
乗り越えるべき壁として対峙し、堂々とそれを乗り越えて見せろと言う、いつか凛音が言っていたような比喩としてのものではない。
正真正銘の”親殺し”が成ってしまいそうな、その、刹那。
『ダグマイア様!!』
二度目の従者の少女の悲鳴は、突如横合いから出現した黒い聖機人に、ダグマイアが弾き飛ばされた時に発せられた。
「黒―――ユライト・メストか!?」
凄まじい圧力を無防備な横合いから喰らい、地に叩き返されて行くダグマイアの青い聖機人。
従者の少女が、誰よりも早く反応して赤い乗機を駆け出させて、主の機体を落下の衝撃から保護しようと全身で抱きとめる。
聖機人の質量と落下エネルギーを、僅か一機のみの出力で支えきれる筈も無く、無理な体勢で地面と期待の間に割って入ってしまった時点で、主共々立ち並ぶ家屋に叩き付けられるという結果は決められていた。
轟音と共に粉塵が撒き散らされ、二体の聖機人が家々の瓦礫の中に沈む。
『ダグマイア、エメラ!?』
「キャイア、上に集中しろ、あれは―――!」
剣士の機体のコアを抱えたまま落下したダグマイアたちの下に踏み出そうとするキャイアを、アウラが鋭い声で押し止める。
『でも!―――……あれ、は。そんな』
反論しようとして、それでもアウラの言葉に従って上を、ババルンとその背後に寄り添うように立つ黒い聖機人の姿をはっきりと目撃してしまったキャイアは、驚愕と共に声を震わせた。
『……ガイア』
黒い聖機人。姿かたちから、先ほど戦線を離脱したユライトのものに違いなかった。
だが、その装備は、先ほどまでの狙撃銃ではない。
片手に、身に余るような巨大な盾―――盾のようなユニットを構えている。
その姿に、少女たちは見覚えがあった。
「―――ガイアの、コアユニット……!」
『ガイア、あれが!?』
アウラの言葉に、ただ一人聖地での決戦の実情を知らぬユキネも、驚愕の声を漏らす。
その恐怖に歪む声こそが、喜びと言うことなのだろうか。ババルン・メストは凶相に愉悦の笑みを交えた。
そのまま、手を掲げ軽い動作で振り下ろす。
「来るぞ!!」
ガイアのコアユニットを所持する黒い聖機人は、ババルンの動作の示すままに、機動を開始した。
身構える少女たちを差し置いて、しかしガイアが降り立ったのは。
『しまった、姉さん!』
解体途中だった、メザイアの黒い聖機人の前。その行動の意味は明白だ。
何しろメザイア本人が言っていたのだ。
”自分こそがガイアにとっての本命”だと。
ならば、それを回収しようと思うのは道理。
慌てて踏み込もうとするキャイア達に、しかしユライトの黒い聖機人は、ガイアのコアユニットを掲げる事で応じた。
「―――っ!!」
その意味に気付きアウラは戦慄する。
ガイアのコアユニットを構成するパーツが、分割線に沿って中央から割れ、竜種の顎のようなその凶暴な内部をさらけ出したのだから。
大気が震えるほどの、膨大なエナの集約が始まる。
「いけない!離れないと―――っ!!」
『でも、姉さんが!』
『言ってる場合じゃない!―――でしょ?』
反論しようとするキャイアに、想像でしかこの後に起こる展開が解らぬユキネが口を挟む。ガイアに向かって集合するエナの密度は、彼女の常識が許すような生易しさは感じなかったからだ。
―――危険すぎる。生存本能が直接行動を訴えかけてきているようにすら感じさせる。
剣士のコアユニットを抱えているキャイアを、アウラと共に両脇から抱え、そのまま有無を言わさずに飛翔。
飛翔してどうなるものかすらわからなかったが、とにかく、何よりもまずあの黒く危険な顎より遠くへと離れなければと、少女たちの心は一致していた。
『―――やれ』
少女たちの無様を嘲笑うかのように、天に座するババルンが、自らの半身たる聖機神ガイアに告げた。
その瞬間。
圧縮され加速されたエナの凄まじい奔流が迸る。
ガイアのコアユニットの開口部より放たれたそれは、大地を抉りそのまま削り溶かし、家々を塵の一つも無く粉砕し、それで止まる筈も無く王城の外壁を、その奥の離宮を丸ごと焼き尽くし、その彼方に広がる深い天然樹の茂る森をこの世界から消滅させた。
少女たちはその激しい奔流から避けるように、ともかく遠く、遠くへと、遮蔽物に紛れながら逃げ惑う。
崩れ落ちた家屋の下敷きとなっている筈のダグマイアたちの無事を確認する猶予も無く、まだ生きていたであろう破壊されたシュリフォンの聖機人の中に居る聖機師たちの事を思う暇すらなく。
背後に満ちる白い破滅の光と、ババルン・メストの高笑いの音から。
そして、永遠に感じるほどの刹那の時が終了して。
「―――無事、かっ!?」
『何とか……』
『今のが、ガイア……』
最終的に舞い散った大きな瓦礫の山に埋もれるような状態で身を伏せていたアウラたちは、光の奔流が収まったと同時に身を起こしていく。
辺りを見渡す。危険すぎる動作ではあったが、それに気付けるほど落ち着いた精神状態ではなかった。
王都を包囲していた飛空艇艦隊が、突然巻き起こった破壊の現象に、慌てふためいているのが見える。
それも当然だろう。何本もの道が抉れ、城の四分の一近くが消滅してしまったとあれば。そして、抉られた森の向こうに、海の所在すら見えてしまえば。
凄まじい威力、相表現するしかない一撃だった。
「ガイアは……?」
『―――消えた』
『居ない……そんな、姉さんも』
空に浮いていたババルンの姿は無かった。
その下に居た筈の、光の奔流の発生源に位置する場所には、既に黒い聖機人の姿が無かった。
そして、黒い聖機人の足元に転がっていた筈の、メザイア・フランの聖機人のコアユニットもまた、姿を消していた。
「回収に来たと言うわけか、メザイア先生を……」
『そんな、姉さん、せっかく……!!』
想像は、あながち外れではないとアウラには思えた。そうであるから、言葉を聞いたキャイアもまた、認められないという声を震わせるのだろう。
『―――剣士だけは、無事だけど……こんな、これがガイアの力』
剣士の機体のコアユニットを抱きかかえたユキネの言葉が、この場においての唯一の救いかもしれなかった。
「最後の最後に、これかっ!」
自国の王都の惨事を見て、アウラは言うべき言葉を見つける事が出来なかった。
自らの油断が招いた結末―――そんな自戒すら超越してしまいそうな、どう足掻いても抗いようが無い暴力を見せ付けられたようで、沈むよりも先にそれを成した存在への怒りが湧き上がる。
許せる筈が無い。
認められるはずが無い。
抗えない存在など。抗う気持ちが湧き上がらない自分など。
「これで、ますますお前だけに任せて置けなくなってしまったぞ、凛音……っ!」
無意識に漏れた言葉は、縋るような響きにも聞こえた。
・Scene 48:End・
※ 主人、公……?
まぁ何ていうか、光鷹翼VS光鷹翼ってのもきっと楽しいには違いなかったんですが、それをやると、
今後対決予定のラスボスがラスボス(笑)にしかならないんで、こう言う形に落ち着きました。
殿下、最後に出そうかなとも思ったんですけど、それはそれで女の子達の頑張りが前座に成り下がり
そうでしたので、最後までお休みに。
それにしても戦わない主人公だなぁと、書いてる自分でも思わないでもないです。