「おはようございまーす、ポルナレフさん、ユーノ君!さあ、早速特訓や!!」
「はやて、確かに早起きして特訓、とは言ったけど……まだ朝五時だよ」
……すまんな、ユーノ。うちのはやてはどうも気持ちが先走りすぎるようで。
まあ、この時間から訓練するのも悪くは無い。行くとしようか。
「ええっ!ポルナレフさんまで!?」
「さあさあ、『魔法少女リリカルはやて』への第一歩や!早くして!」
「また『魔法少女』とか……言っておくけど、『魔導師』だよ」
さて。昨日偶然出会ったフェレット、ユーノ・スクライアによって告げられた危機。「ジュエルシード」という名の宝石が起こす奇妙な事件に対抗するため、私達はそれぞれの力を磨く「特訓」をすることになった。
私は「スタンド」の強化。はやてはユーノと一緒に「魔法」の習得を目指すことになる。私は一度再起不能になっていて、はやては魔法に関する知識が皆無だ。だから、それぞれの道は遠く険しいものになる。
……だが。この町の平和を、我が家の平穏を守るために、これは必要不可欠の物である。
私もはやても、頑張らなくては……
「ユーノ君、めーっけっ!洗濯機の右隣。随分遠くに隠れてたようやな」
「……すごいね、もう見つけるだなんて。やっぱり、探索魔法の素質がある」
「ユーノ君の、『リンカーコア』だっけ?それの特徴さえわかれば、一発で見つけられるんや。『魔法式』っていうのも、使うの難しい思うてたけど、なんや、コンパスと同じように使えばええんやな」
「大体あってる、かな。もっとも、更に広範囲で探すんだったら、別の役割を果たす魔法式を覚えなくちゃいけないけど」
……なんなんだアンタら。
「あ、ポルナレフさーん、こっちは順調!そっちの方はどうですかーってあれ?」
……っ!べ、別に「初めてなのに成長早すぎだろ」とか「私は十年かけてスタンドを完成させたのに、あっちは30分で実践レベルか。えらいねぇ~」とか、「これが主役と脇役の違いか……」とか思ってるわけでは、微塵もないぞ、はやて!!
「……ふーん、そない思うてたんですか、ポルナレフさん……」
はやて!?何故だ、何故解ったんだ!?まさか、口に出ていたか?36歳にもなって、典型的ギャグキャラのようなミスをする私ではないが……
「多分、あんまり感情が篭っていた呟きだったから、念話に出てしまったんだと思います」
「念話?……ああ、昨日俺がレイジングハートとやってたあれか」
「はい。念話は、心の中の意思を魔法に乗せて飛ばす技術です。だから、初心者が使うとさっきの様な事も偶に起こるんです。でも流石にこれは……」
「うん、俗に言う『カリスマブレイク』やな、ポルナレフさんの株大暴落や」
カリスマブレイク!?何だそれは!
「ささ、ユーノ君、あんなコメディ担当の三枚目は放っといてええから、練習の続きせな」
いや、そのキャラはもうとっくに卒業して……あ、待って、待ってくれ!
……やれやれ。駄目だなこれじゃあ。私も努力しなくては。
そうだ。今日は私が朝食を作ろう、スタンドの「精密動作性」を取り戻す、いい訓練になりそうだ。
キッチンに足を運ぶ。「シルバー・チャリオッツ」を出して、棚の戸を開けさせ、フライパンを取り出させたら、サラダ油を注がせる。ちなみにレイピアは壁に立てかけてある。
その間に私は冷蔵庫から卵を取り出し、二つに割ってかき混ぜる。そう、私は今己のスタンドを利用して「スクランブルエッグ」を作っているのだ。
スタンドによって時間を短縮させつつ、いつもと変わらない料理を作る。これぞ私が修行時代に編み出した技、「スタンド調理法」だっ!
本当はもっと難しい料理、例えばテリーヌとかポワレとかも作れるのだが……一応最初なので、簡単な卵料理にした。
よし。卵をフライパンに載せて、火を付ける所までは成功だ。さて、此処から卵をかき混ぜて、皿に乗せる……
『ポルナレフさん、レイジングハートと協力して、なのはと通信します。二階に来て下さい』
『む、解ったぞ……すまない、少し待っててくれないか』
『いいですけど、何してるんですか?』
いや、修行の一環でな。そうだ。通信はリビングでした方がいい。「スタンド」による料理なら、はやてを「ゾッ」とするとまではいかない物の、十分驚かせてやれるはずだ。見てろよ。
『驚かせる?……了解です。はやてにも伝えます』
「うわー、本当にスタンドで料理しとる」
「此処まで精密に操れるものなんですか、スタンドって」
ふふ……まあな。我が友承太郎の「スタープラチナ」なんかは、飛んで来た銃弾を掴む事が出来たりする。この位楽勝だよ。
「……調子に乗ってるとこ悪いんやけど、ちぃーと焦げとるでこれ」
「あ、言われれば確かに……」
何ッ!?しまった。二人に自慢するのに夢中で、火消すのを忘れてた!
「ぬふふふふふ」
おい、そんなに擦り寄って来て!ニヤニヤ笑って!一体何が言いたいんだ!
「いや、なんにも…………やっぱりギャグキャラやな、と思うて」
それを言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!
「まあまあ、二人とも……もうすぐ通信の時間ですし、そろそろ止めにして」
「なに言うとるのユーノ君!こない面白いイジリ相手、そう簡単に手放せへんで!」
「弄り相手」!?今の私の評価はそれか、そんな物なのか!?
「ジュエルシードを封印するのはなのは、お前だ。こっちでどうにかして、なるべく戦闘はさせないが……いざと言う時、自分で身を守る訓練はしたほうがいいだろうな」
「はい!それじゃあ、またあの公園で」
……ふう。なんとかプライドを守ることが出来た。一度キャラを壊したら、もうずっとそのままになるのは、「ジョースター・エジプトツアー御一行様」の時に経験済みだ。
「見て、あの人見え張っとるで、ユーノ君。あ~んな大人になったらあかんよ」
「……はやて。少しやり過ぎのような」
何か隣でひそひそ話をしている二人がいるが、別に気にしないことにしよう。いや、気にしたら負け、だ。
それから、結構な時間が経って。
「スタンド料理法」は、昼食の時に成功。通信で思いついた「常にスタンドを出しっぱなしにする」訓練も、一時間連続で出せるまでにはなった。
それでも、はやてからの「ギャグキャラ」扱いはいまだ変わらず……不味い。このままでは、本当にギャグキャラになってしまうぞ。
ああ、こんな時暴走体がいれば、戦闘シーンで何とか持ち直せるかもしれないが……
「あ、この感じは、暴走体やね。何処から来たんやろ――探索魔法、発動っと――むむ、神社の方角!」
おいおい、確かにジュエルシードは「願いを叶える宝石」だが、こんな願いまで叶えてしまうとは。
ふふ、暴走体め、覚悟しろよ。今日散々弄くられてたまった鬱憤を、晴らしてくれる。
「よーし、行くぞユーノ、はやて!」
「すっごいハイテンションやな、ポルナレフさん。ホント、必死になっててカワええなぁ。そないしてたら、もっと弄くりたくなるのに」
「はやて……もう、何も言えないよ。さて、レイジングハートに連絡、っと」
果たして、こんなんで大丈夫かポルナレフ一行!
… To Be Continued !!
あとがき
ポルポル君はやっぱり三枚目でした。「怖かろう、悔しかろう。いくらカリスマを纏おうとも、キャラの本質は変わらないのだ」みたいな、そんなお話。
……これ、外伝にしたほうが良かったかな?