(ん~、やっぱもうちょい東方向だったかなぁ?探索魔法使ったら、ここら辺って出たんやけど)
私は今、ユーノ君と一緒に発動前の「ジュエルシード」を探している。
何分発動前なので、発動した後の暴走体が出す「気配」よりずっと探しにくく、随分と手間が掛かっている。
「はやて、もっと細かく調べられる魔法を出して。ほら、昨日教えたやつ」
ユーノ君からのアドバイス。それに気付いた私は、その場で魔法式を展開。
魔法式というのも不思議なもので、まるでスポンジが水を吸い取るように私の頭の中へ入っていくものもあれば、何回教えてもらってもちんぷんかんぷんなものだってある。
魔法の師匠であるユーノ君に言わせると、私は向き不向きが極端らしい。向いているのが探索魔法、防御魔法で、向いていないのが攻撃魔法全般、ということだ。
なのはちゃんも同じように極端で、彼女は攻撃魔法には非凡の才能があるが、補助魔法はからっきし、らしい。
ユーノ君は基本的になんでも使えて、若干攻撃魔法が苦手。――ちゃんとした教育機関で教えてもらった結果だと言ってた。
――ふと、頭の中に光が走る。お目当てのものを見つけた時に、いつも感じるものや。
「あった!市民プール場の中、この近くや!」
私は思わず叫ぶ。
「本当なの、はやて?」
「間違いあらへんよ。私、車椅子で中はいれへんから、ユーノ君頼むで」
「任せて!」
私の肩から駆け下りて、一路プールを目指すユーノ君。
それを見送ってから、私はなのはちゃんと念話で通信することにした。
『なのはちゃん、こっちは見つかったで、そっちの首尾はどないや』
『わわっ、はやてちゃん!?今戦闘中!忙しいから後にして!』
聞こえてきたなのはちゃんの声は、いかにも焦った様子だ。
なのはちゃんとポルナレフさんは別行動で、別に見つけた暴走体を封印している途中。
そういえば。最後に念話で通信した時には、もう少しで接触する、と言ってたなぁ……念話、せんかった方が良かったかも。
それから、しばらく経って。
『ジュエルシード、シリアル20、封印!……ふう、終わったよ、はやてちゃん』
『そうかー。ごめんなぁ、あの時急に念話しちゃって』
『いいよ、謝らなくたって』
『そういえば、今回の暴走体はどやった?』
『ん~、ポルナレフさんが押さえてくれてたから、封印するのは楽だったよ。怪我も無かったし』
『へぇ。それは良かったなぁ。やっぱし、怪我ないのが一番やて』
少し、安心する。
後ろのほうで支援する私とユーノ君とは違って、なのはちゃんやポルナレフさんは直接ジュエルシードの暴走体と戦う。
せやから、いつ怪我するかわからへん。
たとえばポルナレフさんが怪我したとして、私は治療の魔法習ってないし、ユーノ君も魔力残量の関係で直すのは難しい。
そしたら暴走体と戦う時、なのはちゃん一人に無茶をさせてまう。
なのはちゃん自身は「大丈夫」言って戦い続ける思うんやけど、そのままやときっといつかどこかで無理が出る。
もしなのはちゃんまで怪我させちゃったら、今度は暴走体に手も足も出なくなる。それに、なのはちゃんの家族にもきっと迷惑を掛けてしまう。
そんなのは御免、や。
今の所は大丈夫みたいやけど、これから一体どうなるか。
もう一人か二人。欲言えば五人くらい、仲間が欲しい所やな。
近接担当が一人と、支援が一人。封印できる人が二人くらい。なんでも出来る人があと一人。いたら最高や。
それくらい人がいたら、何人かでローテーション組んでジュエルシードを捜索できるし、予想外のアクシデントにも迅速に対応できる。
――ま、無いものねだりしてもしゃあない。
今いるみんなで何とかするとして、そしたら……むぅぅ……
「はやて、ジュエルシード、見つかったよ。まだ封印が解かれてなくて、よかった……はやて?どうしたの?」
「あ、ああユーノ君。なんでもないんよ、少し考え事してて」
「そう。それじゃ、家に行こう」
「そやな。ポルナレフさんとなのはちゃんもジュエルシード封印したらしいし、これから家で会議や」
同時刻、遠見市のとあるマンション、その屋上にて――
「ふーっ、着いた着いた。しっかし、こんな辺鄙なとこで探し物なんて、いったんなんなんだろうねえ、フェイト」
「母さんから通信があったよ。『ジュエルシード』っていう魔力反応がある宝石なんだって」
「へえ、そうかい。ま、パパっと見つけて、早く家に帰ろうよ。ね」
「そうだね、アルフ。早く帰って、また母さんに笑ってもらうんだ。がんばろう――あれ、もう一通通信が来てる」
「どれどれ……ん?差出人「H・H」?誰だ一体」
「あ、そういえば母さんが『協力者』を用意してるから、使いなさいって……」
その時、二人の後ろに現れたのは。
「フェイト・テスタロッサ御一行、ここの十階にご宿泊、ってえとこかな」
「っ!あんたは誰だ!」
「おいおい、そんなに牙剥くなって。俺はおたくらの『協力者』だよ」
「『協力者』?貴方が、母さんの選んだ」
「そうよ。プレシア・テスタロッサはクライアントさ。俺は、『ジュエルシード』を集めるおたくらを援護する」
「援護?はんっ、あたしとフェイトだけで十分だよ。あんたはさっさと退きな」
チッ、チッ、と指を振って挑発するアルフ。
『協力者』とやらにはリンカーコア反応が無い。ということは、魔導師ではない。
そんな馬の骨が、私達に協力する?くだらない。
そう思っての行為であったが、相手は落ち着き払って言う。
「まあまあ落ち着いて。そうだ、一つ忠告してやろう。恐らくおたくらじゃあ『ポルナレフ』には勝てない」
「なんだって!?」
「そいつと昔、相手をしててね。今は手負いらしいが、それでもおたくらより、一枚も二枚も上手さ」
「こいつっ……」
「俺は、世界一女に優しい男だ。だから、おたくらのことを思って忠告してやるのさ。馬鹿にしてるわけじゃあないんだぜ、ベイビー」
「くっ、フェイト、こんな奴無視して、さっさと部屋に行こうよ」
「――アルフ、待って。『協力者』さん。それは本当ですか?」
「女に、それに飛びっきり美人のやつに嘘はつかないさ」
「そうですか。では、その人について、詳しく教えて下さい」
「ちょ、フェイト!」
「OKOK。ま、先ずは部屋に行こうぜ。夕食用意してやる」
二ヒヒと微笑む『協力者』。どうやらフェイト達が彼を信用したと思っているらしい。
しかし、フェイトは彼をまだ信用してはいない。
『母さんの選んだ人間だから、一応信じよう』ということである。
「あ、まだ、名前言ってなかったな」
「ふん、誰があんたの名前なんて気にするか」
その言葉を無視して、いきなり虚空から現れた銃――銃型のスタンド「皇帝」を握って、彼は宣言する。
「俺はホル・ホース。言ったと思うが、『世界一女にはやさしい男』さ」
… To Be Continued !!
あとがき
二週間くらい放置しててすみませんでした。
……いやあ、civ4ってすごいね!(マテ