あの、恐ろしく奇妙な遭遇劇の後。
まず、なのはちゃん達三人組は揃って塾に急ぎ、私たちはこの出来事のきっかけになった(と思われる)フェレットを動物病院に連れて行くことになった。
そしてその後、塾が終わった後に待ち合わせをして、フェレットの飼い主を決めるのだ。
勿論、はやての携帯の中には、なのはちゃんの電話番号が入れてある。世の中も便利になったものだ。
はやては、「自分がフェレット君の飼い主になる」と躍起である。
私も特に反対はしていない。はやてほどしっかりしているならば世話などは安心して任せられるし、何よりはやてのスタンド能力を引き出したかもしれないフェレットだから、もしかしたら「スタンド使い」かもしれない。興味がある。
そして、フェレットが身に着けていた赤い宝玉…これは、今私の手の中にある。唯のビー玉のようにも見えるが、フェレットが持ち運ぶには分不相応の大きさだ。
何か意味のあるものだ。そう私は確信していた。
「いや~、楽しみですね、ペットが我が家に来るのは」
「はやて、言っておくが、まだ私たちの所に来るわけじゃあないんだぞ」
「だーいじょうぶですって!アリサちゃんとすずかちゃんは別のペット飼ってる言いますし、なのはちゃんは親御さん飲食業やっててペットはご法度。となると消去法で私の家しか候補ありませんよ!」
「…詳しいな。なのはちゃんのはともかく、他は何処で調べたんだ」
「塾の休み時間。携帯で連絡取り合ってたんです。みんなそれでいいって言ってましたよ」
…ライバルにはすでに根回し済みか。手が早い。だいたい、これじゃあ私たちの家で飼うこと確定だ。相談も何もありはしないな。
「ちゃんと自分で世話するんだぞ、いいか」
「はーい」
「…あ、ポルナレフさん。なのはちゃん達塾終わったみたいですよ」
「そうか。集合場所は?」
「塾の近くの公園、ですって」
「ようし。行くぞ」
やってきたのは小さな公園。
そこにいた三人は、私を見て三者三様の顔つきをしていた。
まず高町なのは。一応笑顔なのだが…ほほが引きつっている。まだ喫茶店の一件を引きずっているようだ。
いきなり出したとはいえ、「シルバー・チャリオッツ」はそこまで怖い人相じゃあないのだが…
次に月村すずか。…なんというか、ごく普通の表情である。まあ、そこまで深いかかわりもないしな。
最後にアリサ・バニングス。とてつもなく警戒されている。「近くに来たら警察呼ぶぞこのド変態」的なオーラを身にまとっている。私が何をした。
一応みんな誤解は解けている…らしいが、この態度を見るとまだ「信頼」を勝ち取るには至ってないのだろう。
…と思ったら。
「あ、みんなこんにちは」
「こんにちは、はやてちゃん。ほら、アリサちゃんも」
すずかがアリサを押し立てている。アリサは少し縮こまりながらはやてに言う。
「はやて…その、あの時はごめん、疑っちゃって」
「いいんやよアリサちゃん。ホント偶然やったし、お互い誤解は解けたんだし」
「…そうね。改めて、よろしく」
「私たちからも、改めて。よろしくね、はやてちゃん」
「なのはちゃん、すずかちゃん…みんな、よろしゅうな」
私だけ蚊帳の外、である。
みんな同年代というのもあるのだろうが、仲良くなるのが早すぎだろう、この四人。
…ああそうか、メールでやり取りしてたからか。それにしても早すぎる気がしないでもないが。
「とまあ、そんなわけで。ポルナレフさん、『スタンド』以下諸々の説明、お願いしますわ」
私を見るとたんに、元の表情に戻る三人。…正直、かなり落ち込む。
まあいい。いまだ解かれていないであろう誤解を解くためにも、話さなければな。
「スタンド」に関する事、私とはやての事情等を話していると、なのはの顔は次第に緩んでいったのだが、アリサのそれは尚更きつくなってきた。
仕方のないことだ。なのはちゃんとは違い、アリサちゃんにはスタンドが見えない。見えないものを「在る」と説明されても訳が解らないというものだ。
「なのは!ほんとに『スタンド』ってのが見えるの?嘘じゃあないのね?」
「ほんとだよアリサちゃん、だから肩つかんで揺するの止めてくれないかな」
「む~…まあいいわ。ポルナレフとか言ったわね。あんたの言葉、信じてあげる」
…良かった。最後の砦、アリサちゃんにも何とか信じてもらえた。
「えーと、ポルナレフさん。フェレットはそちらで飼ってもらうことで本当にいいですか?」
すずかちゃんが話しかけてくる。勿論答えはYES!YES!YES!だ。
「やったー!これで家族が三人目や」
これにはやては大喜びだ。…だがなはやて、「三人目」という表現は少しおかしいと思うぞ。
あらかた相談がまとまり、そろそろお開きと相成った頃に、なのはちゃんが問いかけてきた。
「えーと、ポルナレフさん。とりあえず『スタンド』に関しては良く解りましたけど、私のスタンドって一体どういう物なんですか」
「もしかして、私と同じタイプなんやろか。ほら、なのはちゃんも私と同じように「声」が聞こえたんやろ?」
なのはちゃんの質問にはやてはこう返したが、一概にそうとは言い切れない。
スタンド能力のバリエーションはまさしく無限大だ。能力の一部が被っているだけで、実質的には全く違うものかもしれない。
ともかく、なのはちゃんには自分が「スタンド使い」だと自覚してもらいたい。無意識での「スタンド」発現ほど怖いものは無いからな。何が起こるかわかったもんじゃない。
「いやあ、動物病院から引き取るのが楽しみですよ。名前、なんにしよか」
家に帰って夕飯を作っている時も、はやての話題はフェレットの事ばかりだ。そんなに良いものなんだろうか、ペットを飼うのは。
出来た料理も若干作りこみが足りなかったし、今のはやてはどこか浮ついている。
まあ、いい傾向なのだろう。はやて自身から聞いたことなのだが、私に会うまでのはやてはあまり笑わなかったという。
それがどうだ、このいかにも「幸せ」といった顔は。これだけでも、私が此処に来た意味があるのかもしれない。
…む?妙だなこれは。何か凶暴な物の気配がする。こんな静かな夜に?何故だ?
「…!」
はやてがお玉を取り落とす。…どうやらかなりヤバイらしいな、これは。
「ポルナレフさん!フェレット君が、フェレット君が…」
何を「見た」のだろうか、青ざめた顔のはやて。安心させるために、優しく話しかける。
「大丈夫だはやて、フェレットもお前も私が守る。だから、何を見たか話してくれ」
「ええと、まあるい毛むくじゃらの怪物にフェレット君が追われてて、フェレット君は誰かを呼んでて」
早く助けてあげて、というはやての言葉を背に、私は飛び出した。
… To Be Continued !!
あとがき
超遅筆でごめんなさい。これからも超不定期更新になるかもしれません(一応週一が目標ですが)。