そんなに平凡ではない「スタンド使い」である私、ジャン・ピエール・ポルナレフに訪れた小さな事件。
出会ったのは優しい少女。手に入れたのは、守るべき『日常』。
平和な時間は、戦いに疲れていた私を癒す。
……しかし、世の中は、そう簡単にはいかないようで。
目覚めるはやての「力」
小動物をめぐっての奇妙な遭遇劇
そして、「まあるい毛むくじゃらの怪物」
……今、私は再び戦いの「非日常」に戻る。
さて。勢いきって家を飛び出したはいいが、「まあるい毛むくじゃらの怪物」とやらは一体何処にいるのだろうか。
此処までやっておいて何もありませんでした、では締りがつかない。
……む?腰のポケットの辺りに何か違和感が。中にあるものは確か、あの赤い宝玉。関係があるのだろうか?
『……どうか、私の声が聞こえるのならば、答えてください。どうか……』
この声は!?耳で直接聞くのではなく、心に直接響いてくる。宝玉からの物か?
応答できるのか?やってみよう。
『赤い宝玉だな?私はジャン・ピエール・ポルナレフ。君は?』
『貴方……念話が出来るのですね。見たところリンカーコアは持っていないようですが……』
リンカーコア?何だそれは?君は一体何なんだ?
『私はレイジングハート。インテリジェンスデバイスです』
『……インテリジェンスデバイス?』
突如出てきた単語に頭を捻る。直訳では「知能機器」だが、一体?
『説明は後でします。それより急がないと、ユーノが危ない』
『ユーノとは……あのフェレットか』
『はい。本名はユーノ・スクライア。私の外部所有者、ゲストであり、魔導師です』
今度は魔導師。これは「魔法使い」と同義なんだろうが、さっきから未知の単語ばかりだ。
「何かある」と感じた私の勘は、間違っていなかったようだな。
まあいい。すぐユーノ・スクライアのいるところに行こう。彼に聞けば、詳しいことも解る。
たどり着いた動物病院は、ずいぶん派手にブッ壊れていた。
無残なもので、鉄筋コンクリートの壁に半径二メートルくらいの穴がボコボコ開いていた。パワー:B以上の「スタンド」でもないと、此処まで壊せはしないだろう。
結構手強いかもしれないな。まあ、破壊の跡が無秩序だったし、ただの馬鹿力である可能性が高いが。
『……Mr,ポルナレフ!ゲスト・ユーノです!』
つい半日前に保護したフェレットが、こちらに駆け寄ってくる。かなり汚れているのを見ると、ずいぶん長い間逃げ回っていたらしい。
「はあ、はあ……来てくれたんですね!僕の声を聞いて!」
……あたかも私自身が彼の「声」を聞いたみたいな口ぶりだ。後で誤解されてはなんなので、訂正する。
「いや、声を聞いたのは私ではない。同居人の少女だ」
「ええっ!?貴方じゃあないんですか!?」
「ああ、彼女がえらく怖がっていたので、少し怪物とやらをたたっ斬ってやろうかと」
「そん、な……それじゃあ『ジュエルシード』は……」
ジュエルシード?またまた意味不明の単語登場だ。
「ともかく、その人を此処に連れてきてください。こちらはまだ何とかなるので」
『私からもお願いします』
「……残念なことに、彼女は足が不自由でな。君の役に立つとは思えない」
「それでもいいです!その人がいないとあの化け物は封印できないんです!」
……ほう?それでもいい?か弱い車椅子の少女なんだぞ?
はやてをこんな物騒な場所に放り込ませる訳には行かない。彼らは一旦無視して、今迫りつつある「まあるい毛むくじゃらの怪物」に取り掛かろう。
ヤツの目の前に「シルバー・チャリオッツ」を出す。ヤツは一瞬怯んだが、勢いを更に増して飛び込んでくる。
……突進を受け流しつつ、チャリオッツでヤツの身体を切り刻む。手ごたえは十分。肉を斬る感触がスタンドを通じてこちらに伝わる程だ。
「なっ……」
後ろでフェレットが驚いている。見ろ。わざわざはやてを危険にさらす必要は無いではないか。私だってわざわざ此処まで来たんだ。勝算くらいは持っているんだよ。
「駄目です、それじゃ!」
おい、何を言っている?もう敵はとっくに微塵になって……なにっ!
「ジュエルシードを封印しないと、ヤツは幾らでも立ち上がるんです!」
彼の言う通りだった。さっき千切ってやったヤツの身体が、もう治っている。
いいさ、ならば、もう一回斬る!今度は縦横に斬って、サイコロステーキにしてやる!
『無駄です、Mr,ポルナレフ!』
忌々しいことだ、宝玉の言葉どうりヤツはまた復活しつつある。
今まで何回も切り刻んでいるというのに、その力に弱体化の気配はない。
流石に「スタンド」の維持にも疲れてきた。後一回千本串刺しにしたらおしまい、というところだ。
今はヤツを何とか押さえ込んであるが、このままだとジリ貧でこちらが競い負けてしまう。
どうしたものか……
「ですから、そのはやてとかいう子を……」
黙れフェレット。はやては巻き込まないと、何度も言っただろう!大体、そのはやてに「守って」と頼まれたのに、彼女を危険にさらすのは本末転倒だ。
「……解っています。でも、彼女にしか魔力はありません。僕は消耗していますし、貴方にはリンカーコアが無い。彼女を呼ぶしか、方法は無いんです」
っ、むう……どうにもならないのか。だが、はやてにはこの「非日常」に入ってもらいたくない。彼女には「日常」のほうが合っている。
考えてみると、つまらない理屈である。こちらは緊急事態だし、そんな理屈を守るために死ぬのは馬鹿げている。……しかし、しかしはやてだけは!
「グ、グルルルル……」
ヤツが起き始めた。まったく、タフガイである。今まで、斬ること7000余回。突いたのは12000回以上だ。ここまでして立っていられる相手はいないと思ったが……世の中は広い。
此処で逃げるわけには行かない、かといって噛み殺されるのも情けない。
……どうするか?
と、その時。
「ポルナレフさん!?あなたもここに……」
私たちの元に駆け寄ってきたのは、高町なのはであった。
「君は、もしかして! RH、確認してくれ」
『はい、ユーノの思う通り、魔力を持っています』
魔力を持つ?……なるほど、前に「はやてと似ている」と感じたのはそのせいか。
「良かった!ポルナレフさん、早くRHを!」
フェレットの言うように、宝玉を彼女に投げて渡す。
「え、えーと?わたし、状況が良く解らないのですが、一体これってなんなのでしょうか?」
「詳しい説明はフェレットに聞け!私はこいつを抑える」
そう言って注意をなのはちゃんから化け物に向ける。何回も切り刻んだせいなのか、最初に見たときとは全く違う、どこかグロテスクな姿に変貌している。
「シルバー・チャリオッツ!」
起き上がろうとしたヤツを斬って押さえ込む。しばらくそのままにしておくと、背後でものすごい量の光が走った。
「成功だ……!」
フェレットがそう言った直後、光が消えて、やたら派手な服を着たなのはちゃんが飛び出てきた。
「さあ、封印を!やり方は、頭の中に浮かんでくるはずです!」
「わ、わかった、やってみる!」
そして、なのはちゃんがなにやら呪文を唱えると、今まで私を散々苦労させていた化け物は、すっかり消え去り、代わりに一つの宝石が現れていた。
… To Be Continued !!
あとがき
だんだん指が進まなくなって来る。
この調子で、春までに一期終わるのだろうか……