町へと戻り、まず俺が最初に望んだことはお風呂に入ることだった。
洞窟内での出来事やらなにやらそういうものを解消するにはまずぽかぽかした心地良い空間が必要だったからである。
勿論それだけでなく、二日分の汚れを落としたかったというのもあるのだけど。
当然のことながら昨日の安宿には風呂などという洒落たものはなかったのであって。
しかし、そんな俺の質問にミュレンさんの答えといえば、
「風呂? なんですか、それ」
であった。
真逆……この世界には身体を洗うという習慣が存在しないのだろうかと一瞬考えたが、
いやいやそんな馬鹿なと思い直し、
「えと、お湯を貯めて身体を浸かったり、とか、そういう場所のことですけど」
と、詳しく説明してみた。
「お湯に?」
ミュレンさんは首を傾げつつ、
「水ではなくてですか?」
「え、こちらではお湯で身体を洗ったりしないのですか?」
俺は慌てて尋ねた。流石に水風呂はやだなぁと思いつつ。
「沐浴の後にぬるま湯を浴びたりってことはしますけど……」
んーと、ミュレンさんは人差し指で自分の左手を叩きつつ、
「えーじさんのところでは沐浴は水ではなくお湯で行うのですか? 清涼感がなくなりそうですけど」
「水よりもぽかぽかして気持ち良いと思うんですけどね」
まいったなと思いつつ言った。
「そんなものですか。一応沐浴場なら案内できますけど……あとは宿についてるシャワーぐらいかな。水は貯められませんけど」
「……ちなみにそのシャワーはお湯出たりします?」
俺はあまり期待せずに尋ねた。
「でますよ。小型の沐浴場みたいなものですからね」
出るらしい。にしても、
「どうしてそれで湯浴みという文化が発生しないのかな」
そんなことを疑問に思いつつ呟く。
「私としてはお湯だと身体が清められたって気がしないんじゃないかなって思うんですけど」
むー文化が違~う!
と叫びたい気分に襲われ、ふぅっと溜息。それはそれとしてシャワーのあるお奨めの宿を尋ねる。
「えと、でもちょっと高くなりそうですけど……」
虚空を叩き、ミュレンさんが検索。
そしてナヴィ検索の元に出た宿の値段は12Gとのこと。
昨日の宿の倍以上という値段に少し考えつつも、
「えとお願いします」
早速案内を頼みつつ、
「あ、その前に、そういえば換金とかってどこでやるんでしょうか」
と、尋ねた。
今の俺は金欠だが、あの魔法使いの遺産を売り払えば当面は生活できそうだなぁと思ったからであって。
だからこそ最低限の贅沢ぐらいは切り詰めなくてもいい筈だ、等とそんなことを考えつつ。
「……少し思ったのですけど、えーじさんって良く此処までこれましたよね。
それでいて手も身体も汚さなかったというのはある意味奇跡のような」
と何故か感心される。
もっとも、
「いや、身体については」
処女じゃねぇとか天使がいっていたような気がしたなぁとか少し思い出しつつ、
「え?あ、いえ、その……」
と、何故か慌てるミュレンさん。
はて、と少し考え、それから自身の言動を思い出し、ああ、成程……と納得し、
いや待て。
「あ、え、違う。違いますから。今のノーカンですよノーカン」
と、慌てて訂正する。
「…………」
「…………」
何故か少しばかり無言タイム。何この微妙な空気。マジ簡便なんだけど。
しかしその空気を解消する言葉は喉の奥に引っかかって出ては来ない。まいったな、と俺は思った。
「あ、あの」
と、その気まずい空気を切り出すかのようにミュレンさん。
「な、なんでしょう」
若干どもりつつも俺は応じる。
「何かあったら相談に乗りますから! 遠慮なく言ってくださいね!……勿論、えーじさんが良ければですけど」
と、元気付けるかのようにミュレンさん。
「……ありがとうございます」
なんだろう。暖かい心遣いが逆に嬉しくない。
迷宮世界
シャワーを浴びる。
ちゃんと石鹸があったことに安心し、身体の汚れは気分良く落とせたのだが、残念なことにシャンプーは存在しなかった。
仕方ないので石鹸で代用する。水洗いよりはマシだ。
温かい湯は荒んだ気分を癒し、冷たくなった心を溶かしてくれるそんな瞬間である。
等と二日間の鬱屈した気持ちをお湯で洗い流すこと暫し。
にしても……
「なんてーか本当女だな、俺」
等と、改めて確認し、
「ふむ」
もみもみと自身の胸を揉む。
なんていうか揉み心地いいなぁと感動しつつ、湯を浴びながら揉む。
もみもみもみもみもみ……。
その心地良い感触に少々満足しつつも、そこでふと疑問が飛び出す。
手の感触は気持ち良いけど、胸は特にそういうのないなぁ、ということだ。
胸だけでイッちゃうとかそういうのってなんだろうな、とかそんなことを考え、若干ちょっと興奮しつつ胸を揉む。
「まぁいいや」
胸を揉むのに飽きたのでシャワーを止め、バスタオルで身体を拭く。
あーそういや洗濯とかってどうしてんのかな。
洗濯機なんてのはないだろうし、自分で洗うのかなーとかそんなことを考える。
何しろ今日の冒険の時着ていたローブは人様が使ってたものをそのまま着ているからであって。洗ってさっぱりさせたい。気分的に。
そこらへんのことも、ミュレンさんに聞いておくべきだったか。
下着やらYシャツやらはまぁ我慢しようかとか思いつつシャワー室から出る。
さて。
ベッドへと脱ぎ置いたYシャツを再び着ようとして、ふとベッドの前に設置されている姿見に自身が映る。
手に取ったYシャツを再度ベッドへと置き直し、鏡へと近づいた。
マジマジとその姿見を見つめる。
真っ裸の女がそこに居た。
少なくともその顔は俺ではないし、身体も男ではない。
慣れ親しみのない裸の女がそこに居たのである。しかも若い女である。
その姿を眺めつつ、俺は自分の胸を揉む。
すると鏡の中の女も胸を揉み始める。酷く艶かしい。
「ふ、ふふふ」
と、何故か気分が高揚。
自身の胸を揉んだところで快感は覚えなかったが、見知らぬ女性がうっとりした顔で胸を揉んでる姿を見て高揚しない男は居ないと思う。
妙な気分である。すごく、とても。
俺が手を動かすと、鏡の女性も手を動かすのだ。
「よう、ビッチ。恥ずかしくねぇのか?」と鏡の中の女を罵る。
勿論、鏡に映っているのは自分だということはわかっていたが、そんなことは正直どうでもよかった。
身体が熱を帯び、自身の乳首が立っているのがわかる。
乳首をつまむ。
微妙にくすぐったさを感じ、俺は身体をぶるっと震わせる。
もっとも快感とは呼べないもので、また電気ショックのような感覚やらは感じず、やっぱり胸でイクって嘘だろとかそんなことを考え、
顔を鏡に近づける、何故かどきどきしつつ*ちゅ*と鏡に口付け。あはは、ナルシストかよ。
うっとりした女の顔。鏡の中の女性に親愛と滅茶苦茶にしてやりたいといったそんな感情が溢れる。
自分のアレが勃っている感覚をふと覚える。だがそれはなんというか酷くもどかしいもので。
ゆっくりと股の間に手を伸ばす。
淫蕩な顔。舌なめずりしているのが見える。*ゴクリ*と唾を飲み込む。
トイレでのあのびくっとした感覚が頭に過ぎる。
ドキドキと心臓は高鳴っている。意を決し、小さくなってしまったそれを摘む。
「あ」
声が出た。射精し、敏感になった自身のそれを触っているかのような感覚だった。
摘み、すりあげるように行為を開始する。
鏡に映っているその女性は酷く気持ちよさそうで。
「あ、あっ、あ…」
と、途切れるかのように声を漏らす。
声を抑えつつ、快感を覚えつつ、その行為を続ける。
手を動かしてるのは俺で、気持ちよさを感じてるのも俺。でも鏡に映ってるのは俺ではなく。
どことなく奇妙な気分。淫靡な顔。鏡の中の女性は俺によって犯されている。
立ってするのは疲れたのでベッドへと腰をおろし、そのまま仰向けに倒れる。
若干頭をあげる。裸でだらしなく寝そべる鏡の中の女を確認。
その姿を網膜に焼付け、目を強く瞑り、行為を再び開始。
声をださず、目を瞑り、口をパクパクとさせながら繰り返す。
徐々に何かが股の間から昇ってくるような感覚を覚え、
そしてある一定のところに来たところで、それは収束する。
射精する時にも似た感覚。
股をキュッと締め、全身を強張らせる。
何かが弾けるような感覚。網膜がスパークした。
びくんびくんと神経が収縮し、
ふぅっと溜息を吐く。若干その心地良い感覚に身を委ねること暫し。
「あー……」
次第に身体全身を巡っていた熱気のようなものが冷めてくる。先程までの感覚は嘘のよう。
所謂賢者モードである。こういうのは女性も変わらんのかもなぁとか思いつつ、
むくりと気だるい身体を起こすと、鏡の中の女性も冷めた顔をしていた。
「何やってるんだか、俺は」
呟く。なんだかやるせない気持ちがぐるぐると胸の中を動く。
股に挟み込んだ自身の手に少々湿り気のようなものを感じた。手を動かすと少々心地良い。
「あー」
と声を出し、そんな感覚に溜息を吐き、
「最低だ、俺って」
そんなことを呟いてみたら、不思議なことに少々気分がよくなった。
はははと俺は笑う。
とりあえず情けないような良い気分のような微妙な心持のままバスタオルでそれを拭い、
それから置いてあったYシャツを着て、パンティを履き、そして再びベッドへとダイブした。
先程の行為でどっと疲れが出たからである。
なんていうかとても眠い。俺はそのまま目を瞑り、その気だるさに身を委ねた。
***
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好感度 の 変動 がありました。
ナヴィの修道騎士 ミュレン の 好感度 が上がった。
現在 の 好感度 は 【友好的】 です。
あなた は 剣術 の 理解 を深めた。
あなた は アイテム鑑定 の 理解 を深めた。
能力 の 変動 がありました。
あなた の 力 が 2 上がった。
あなた の 耐久 が 1 上がった。
あなた の 魅力 が 1 上がった。
あなた は 身体を休め3% の 潜在能力 をアップさせた。
あなた は 9時間眠り 気分をリフレッシュさせた。
あなた は 目を覚ました。
おはようございます! プレイヤー えいじ
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奇妙なログを目覚める前に見ていたような気がするが、どうにも思い出せない。
はて、と働かない頭で考えること暫し。
考えても全く意味がないようなので、起き上がり、腰を捻って軽くストレッチ。
さて、今日はどうしようか。
若干動いてきた頭で考えつつ、
そこでふと自身の財布の中身を思い出すこと暫し。
「とりあえずは換金だな」
と呟き、
ついでに着替えと下着も買わないとなーとかそんなことを考えて、溜息を吐いた。
ステータス
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所持金 6G 75S
カルマ -2
筋力 7 Great
耐久 7 Great
器用 7 Great
感覚 5 Good
習得 11 Great
意思 5 Good
魔力 0 Nothing
魅力 11 Good
クラス アイテム師
信仰神 ドルーグ
獲得スキル 交渉Lv.2 剣技Lv.1 言語Lv.Max アイテム鑑定Lv.2 アイテム効果上昇
状態異常 なし
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装備
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鉛の刀(4d3)
それは鉛で出来ている
それは錆びにくい
それは(4d3)のダメージを与える(貫通率20%)
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☆艶やかなる法衣『さようなら現世』 [7,0]
それは布で出来ている
それはDVを7あげ、PVを0減少させる
それは習得を維持する
それは体力回復を強化する*
それは剣術の理解を深める**
それは重装備での行動を阻害する****
それは盲目を無効にする
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布のズボン [3,0]
それは布で出来ている
それはDVを3あげ、PVを0減少させる
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皮の靴 [2,4]
それは皮で出来ている
それはDVを2あげ、PVを4上昇させる
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銅の腕輪 [0,1]
それは銅で出来ている
それは酸では錆びない
それはDVを0あげ、PVを1上昇させる
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後書き
書いてたらなんか文章が乗ってしまわれた……。
ちなみに最初書きあげた文章の表現は明らかにやばかったため、ちょっと柔らかくしました。
うむ。これくらいならR指定ぐらいで問題ない筈。
てことで一章終了です。