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気をつけろ!この階は『ナーガ』によって守られている!
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「ナーガですって!?」
ルミウスが焦ったような声をあげる。
その声は未だ彼からは聞いたことの無いものであって。
「どうしたリーダー。何か問題があるのか?」
「……いやほら、エージさん以外には話したと思うけど、以前中級に挑戦したときの話」
「ああ、命からがら逃げ出したときの話じゃったか。もしやその時のモンスターというのが」
「その通り。ちょっと見惚れていた俺たちの心境を知ってか知らずか、気がつくと囲まれてしまいまして」
「見惚れる?」
疑問の声をあげる。綺麗なモンスターなのだろうか。
「ああ、えっといや……実にエージさんには言いにくい話なんだけど、
ナーガってのは女の人間の上半身と蛇の下半身を持ったモンスターでして。つまり……」
ああ、うん、そういうことね。
「成程ね。そりゃ仕方ない」
俺が頷くと、
「成程、そりゃあ仕方ねぇな」
「馬鹿じゃな」
両極端の感想を返す二人。
確かに何を呆けていたのかと言いたくなるところだろうが、しかし仕方ないだろう。
裸の女性が迫ってきたらなかなか男には対抗できないものなのだ。
「で、肝心の強さはどうなんじゃ?」
「少なくとも俺のパーティーは全滅した。でも、、、
一体だけなら多分問題ないと思う。ダンジョンボスってのが気になるところだけど……」
ぐふっとベレスが笑った。
「んじゃまぁ、リーダーが据え膳から尻尾巻いて逃げ出した情けない失敗談を聞いたところで、やり損なった女を見に行こうぜ!」
「べ、別にやるとかやらないとかの話じゃないんだけど……」
どことなく嬉々としたベレスに、まったくこいつはと苦笑した。
迷宮世界
最上階とは言っても、特別な作りをしているというわけでもなく、基本的な作りは今までの階層と変わらないようだ。
地図を埋めつつ、探索。
途中襲ってきたホビットとコボルトを特に問題なく始末する3人の動きを後方から見つめる。
「えーじさん、これお願いします」
渡されたのは木でできたステッキだ。
「了解、鑑定っと」
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それ は 透明物体感知の杖(残り:3)であることが完全に判明した。
それ は 魔法の篭った杖だ。
それ は 近くの透明なモンスター感知する。
もし店で売れば 419Gと33S ぐらいになるだろう
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!俺の全財産より高い!これは素晴らしいものを手に入れたみたいだ。そんなことを思いながら答えると、
「……今のわしらには無意味な品じゃな」
と、溜息と共にトーレル。
「でも今回はこれだけで充分元が取れたね。後で換金しよう」
「後はナーガちゃんが何を持ってるかだな」
そういや俺、戦闘面ではほとんど役に立ってないなと思うこと暫し。
鑑定という仕事はあるものの、なんとなく役に立ってないという焦りを少し感じる。
通路の途中で新たな扉を見つけ、ドアを開く。
「しっ」
と、そこでルミウスが人差し指を口に当て、囁くように声を発した。
「居た」
静かに扉を開く。
さてどんなものかと目を凝らして見つめる。
部屋の中では長い赤髪の女性が長い蛇の尻尾をくねらせながら動いているのが見える。
その上半身は少なくとも何か纏っているようには見えない
ラミアだ!
俺はその初めて見る新たなファンタジー種族に少しばかり興奮しつつ、心の中で舌打ち。
「見えねぇ」
ベレスが呟く。
その通り。ナーガちゃんのプロポーションは素晴らしいということはわかるものの、肝心のおっぱいがまだ見えていないのだ。
「ちっ。おい!いくぞ!」
舌打ちの後、ベレスが声を張り上げる。
「折角気づいていないのに……」
リーダーの呟く声が俺の耳へと届く。
瞬間、どこかリラックスしているかのように思えたナーガちゃんがびくっと震え、後退りしながら尻尾をぐるぐると巻いていく。
「おほっ」
ベレスが下品な声をあげた。
ナーガちゃんは惜しみなくその素晴らしい身体を俺たちに見せ付けたのだ。
なかなかにでかい。その弾む胸に、若干心を奪われてしまう。
ちらりとベレスを見れば下半身がこんもりと立っており、まったくこいつは仕方の無いやつだなぁなんてことを思いつつ、
再びナーガちゃんへと目を戻せば、とぐろを巻いているような姿勢へと変わり、こちらを警戒するように伺っている。
成程、こんなやつが複数いたなら確かに全滅しそうになるのも当然だろう。
そんな馬鹿なことを考えていると、
「油断しないでください、来ます!」
ルミウスの声がはっと俺を現実に戻した。
彼女が地を這うように地面を滑る。手には鋭い爪。一直線にベレスへと向かっていく。
「はっ!」
ルミウスが迎撃するように剣を振るった。
*ギィン*
金属音。ナーガの爪はルミウスの剣を弾き返し、そのまま尻尾で彼の身体を弾き飛ばす―――
*ゴン*
と壁に当たる音と同時、彼女が再び腕を引き、そのままベレスの首へと爪をつきたてようとする。
慌てて剣を上げるベレス。
しかし、その動きは彼女の動きに比べ大分のろく、手遅れといわんばかりであり、
「ピギャアッ!」
彼女が鳴いた。
あとちょっとでベレスに身体が届くかといった瞬間、トーレルの斧が彼女の尾の下部分を断ち切ったのだ。
「馬鹿者!なにをやっている!」
「すまん!おっさん、助かった!」
ベレスが剣を振り上げ、止めをささんと彼女へ剣を振るう。
しかし彼女は素早く後退り、ベレスの剣は風を斬った。
彼女の長い尾っぽの一部はトーレルに断たれたものの今だ顕在であり、再びとぐろを巻きこちらを伺っている。
既にその顔は獣のように牙を剥き出され、先ほどの美しい顔は見る影も無い。
壁に叩きつけられたルミウスが少しずつ彼女の背中から近づこうとするものの、くるりと向きを変え、*シュー*と威嚇するように吐息を発する。
トーレルが斧を肩に担ぎ、じりじりとつめていく。
ベレスがその横から回るように警戒しながら近づく。
彼女は三人に対応できるようとぐろを巻いたまま身体を動かしている。
ぶるりとその大きなおっぱいが揺れた。
あれ?これってチャンスじゃね?
不意にそんなことを思い、俺は左胸に入れてあった試験管を取り出した。
「えいっ」
*パリン*
試験管が彼女に当たる。彼女がこちらを向いた。
それを好機と見て、ベレスが踏み込み、
そして彼女はベレスが辿り着く前、どさりと崩れるように倒れた。
しんと、静まり返る。
「……何投げた?」
「睡眠薬を少々」
トーレルが眠っている彼女の頭を斧でかち割る。
*シュー*と青い蒸気を噴出し始めるナーガちゃん。
心の中でそっと手を合わせつつ。
「やっぱ怖え女だな。お前」
ベレスが楽しそうに笑った。
「しかしこれでクリアじゃな。いやなかなか素晴らしい一投じゃった」
座り込みながら笑い声をあげた。
褒められるのは嬉しい。いいぞ、もって褒めろ、と少しばかり調子に乗りつつも、
「いやいや」
と、表面上は謙遜。
「さて、報酬は……」
ルミウスが蒸気を噴き出す彼女の身体を見つめる。
と、
*ドン*
遠くから奇妙な音。
「ん?」
「なんじゃ?」
*ドォン*
音は段々とこちらへ近づいてくる。
*ドォン*
再び何かが崩れるような音。
大分近い。
「違う!」
不意にルミウスが声を上げた。
何事!と彼を見れば既に彼女の姿は消え去っており、彼は剣を音の方向へと構えながら叫んだ。
「これは攻略目標じゃない!」
*ドゴン!*
壁が破壊される。
ずるりと何かが入ってくる。
壁の向こうから美しい黒髪のナーガが、その白い肌を艶かしく見せ付けるように姿を現した。
後書き
なんとか寝る前に書けた!やったー!
でももうちょっとだけ続くんじゃ