<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

オリジナルSS投稿掲示板


[広告]


No.15492の一覧
[0] ファンタジー 迷宮物[K.Y](2010/03/27 21:14)
[1] プロローグ[K.Y](2010/01/17 20:39)
[2] 第一話[K.Y](2010/01/17 20:40)
[3] 第二話[K.Y](2010/01/21 21:44)
[4] 第三話[K.Y](2010/01/31 20:17)
[5] 第四話[K.Y](2010/03/27 15:45)
[6] 第五話[K.Y](2010/03/27 15:46)
[7] 第六話[K.Y](2010/03/27 21:14)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[15492] 第一話
Name: K.Y◆4f5df61f ID:7900bcbf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/17 20:40
 
 
 
「あ~、結構大きな笑い声が聞こえたから何事かと思ったら、君だった訳かぁ」
 
 
「・・・アズライト=ノール、状態確認と換金に来ました」
 
 
窓口の所まで来たアズライトは、掛けられた言葉に何も返さず、自分の用件を告げる。
 
アズライトに声を掛けてきたのは、ノルンの職員でありこの窓口の担当をしている受付嬢ディアンナ=ベルリアであった。
 
身長は150cmと小柄で、体系もそれに合わせたようなスレンダーだが成人であることを示すように丸みなどは余りなく、スラリとした体つきだ。
 
茶色の髪と茶色の瞳、肌も少しばかり褐色で髪は胸元まで伸びている。
 
赤いスーツを身に纏い、アズライトよりも五つ程年上の女性である。
 
 
「ん~・・・今回も態度が冷たいねぇ、結構言われてるんだが気にしなきゃ良いのに・・・
というか、原因は君にあるんだから嫌ならさっさとクラスチェンジしちゃえばいいじゃない」
 
 
アズライトの態度も気にせず、ニコニコと笑顔のままでそう言い放つディアンナ
 
その言葉に、アズライトは思い切り溜息をついてしまう。
 
 
「いやぁ・・・自分でも気にしないようにとは思ってるんだけど、どうしても頭に来るんだよね」
 
 
後半の言葉は意図的に無視し、苦笑を漏らしながらそう返答するアズライト
 
ディアンナも自分の言葉が一部無視されたことに気付き、アズライトを睨み付けるが、少しばかり意地の悪い笑みを漏らす。
 
 
「まぁ、しょうがないよ
 
約一年半もノービスのままなんて君以外いないんだからさ!・・・っと、ごめんごめん、今空いてるボックスと担当官の状態を調べるね」
 
 
反撃とばかりに言葉を紡いでいたディアンナであったが、自分の仕事が疎かになっていることに気付き、直ぐさま自分の仕事に取り掛かる。
 
こちらに軽く頭を下げた後、自分の前に置かれている開かれた大きな辞書の様な装置に手を当て、なにやら操作を始めた。
 
それを見つめながらも、アズライトはここに来た・・・いや、迷宮に挑戦しに来た初めの頃を思い出していた。
 
 
 
 
 
アズライト=ノール、17歳
 
身長は175cm程度で肌は白いが、病的という事はなく色白で説明がつくぐらいだ。
 
黒髪・黒眼で髪は短めながらも前髪が視界に掛かるので邪魔にならないように上に上げて固めている。
 
体系は痩せすぎとまでは言わないが標準よりも痩せており、細身である。
 
生まれも育ちもスカンディアではあるが、両親の事は顔すら記憶にない。
 
15年前まで大陸全土で戦争が起きており、スカンディアは中立という立場を貫いたものの、他国より侵略行為を受け戦火を免れることは出来なかった。
 
アズライトの両親はスカンディア防衛の為に戦争に参加し、そこで二人とも命を落としたと聞いている。
 
父も母も冒険者だったらしく、戦場に行く前にこの都市にある孤児院の一つにアズライトを預けていったそうだ。
 
その時アズライトは1歳にもなっておらず、後からそのことを聞かされ、両親との思い出が全く無いのも当然だと納得したものだった。
 
ここスカンディアでは16歳より独り立ち、つまり成人が認められる。
 
それまでは常識や基本的な学問、この都市の仕組みや決まり事等を学校や孤児院等で教えられる。
 
逆に言えば16歳になれば余裕のない家庭や孤児院の者は、強制的に社会へと追い出されていくとも言えるのだ。
 
孤児院も都市からの支援金やギルドからの補助があるとはいえ、いつの時代も孤児院に子供がいないと言うことはない。
 
アズライトは戦争孤児と言うことになるが、戦争が収まった現在でも孤児院の前に捨てられていく子供というのは存在する。
 
孤児院にも入れず、奴隷として売られる子供も決して少なくないのだ。
 
故にアズライトも16歳になったら卒院式を迎え、強制的に独りで生活をしていかなければいけないものなのだと思っていた。
 
そして独り立ちする為に、自分がどの様な職業になるか、アズライトは数ある選択肢の中から冒険者を選んだ。
 
昔からアズライトの心を振るわせたのは英雄達の冒険譚だったし、孤児院の教育方針でもあるだろうが『独りで生活していく』という意識が強かった為でもある。
 
同期の仲間の中には、商人や職人の元に住み込みで弟子入りという形で巣立っていく、そういう者も少なくはなかった。
 
最後の決め手となったのは、両親の形見として院長より渡されたマジックアイテム『偉大なる麻袋』であった。
 
不思議な名前であるが、これは見た目が小さい麻袋ながらも、マジックアイテムである為に中に入る容量は背負い鞄よりも断然多いのだ。
 
冒険者が好んで使い、二流以上の冒険者なら必須と言われているアイテムでもある。
 
ノルンや、マジックアイテムを扱う職人に頼めば許容量を増やすことも出来るという優れものだ。
 
冒険者に限らず十分役に立つアイテムなのだが、どうせなら一番活用できる冒険者になろうと改めて心に決めたのだ。
 
そしてその『偉大なる麻袋』と都市からの自立支援金である金貨3枚を握り締めて、孤児院を後にしノルンへと直ぐさま向かったのであった。
 
それが約一年半前のことであり、ディアンナはそれ以前より受付嬢として窓口に立っていたために、お互いに軽口を言い合えるぐらいの仲になっている。
 
 
 
 
 
「お待たせしました、6番ボックスが空いております
 
担当官のフィーメリアさんも空いておりましたので6番ボックスでお待ちになっております」
 
少しばかりぼぅっとしていたアズライトは、その声を聞くとディアンナへ「ありがとう」と言ってから6番ボックスへと向かう。
 
アズライトが言った状態確認とは、レベルアップやクラスチェンジ申請、もしくはステータス確認の事である。
 
冒険者は基本的に自分のステータスは隠す、教えてもせいぜいがクラスとレベルぐらいでそれもきわめて親しい関係の者にしか話さないのだ。
 
冒険者係と呼ばれる、この大神殿の機能を用いて冒険者のステータスを教える者もこれは見ることはできない。
 
クラスチェンジもそれ専用の施設に行き、その場で本人が何のクラスになるか伝えるといった徹底ぶりであった。
 
故に、ステータスを確認するのにも一つ一つ狭いながらも部屋があり、その中で係の者と二人のみの空間で行われるのである。
 
6番というボックスのナンバーを確認すると、アズライトは少しばかり気持ちを落ち着ける為に呼吸を整えた後、ドアノブに手を掛け中に入る。
 
 
「あっ、アズ君お久しぶり、今日もよろしくね」
 
 
「あ、はい、お久しぶりです、こちらこそよろしくお願いします」
 
 
中にいた人の笑顔にホッとした表情を浮かべた後、アズライトは顔を染め迷宮に潜るときとは別の緊張に、体を硬くしつつも椅子に座る。
 
フィーメリア=シセイ=ドリアドネ
 
水色と紫が混ざった淡い群青色をした髪を腰まで伸ばし、瞳は海を想わせるような深い青。
 
ディアンナとは違い自身の色に合わせるような青いスーツを着こなし、その上からでも解る膨らんだ胸部とくびれた腰、そして透き通るような肌が彼女に神秘性を与えていた。
 
そして人と決定的に違うのはその耳が尖っていることであろう。
 
彼女は人間とは別の種族、エルフと呼ばれる種族なのだ。
 
エルフ・・・基本的には森に住み、人より優れた身体能力と美男美女が多いことで知られる種族。
 
人間との間に様々な問題は残しているものの、現在は友好的に付き合っている種族である。
 
 
「それじゃあ始めるから少しばかり待っていてね」
 
 
アズライトのその様子も何時もの事なのか、柔らかい笑みを浮かべたまま、フィーメリアは自分とアズライトの前にある直径が30cm程の大きな水晶に左手をつけ、右手で彼女側にのみある幾何学的な模様の描かれた30個前後のボタンをいくつか押していく。
 
そうしていくと段々と水晶の中に黄色い光が輝き出す。そして全てのボタンを押し終えたのだろう彼女が手を止めると水晶は別の宝石のように黄色く光り輝いていた。
 
 
「どうぞ」
 
 
それを確認した後、アズライトへと視線を向けてそう促した。
 
 
「ありがとうございます」
 
 
そういってアズライトは右腕の皮のアームガードを外す。するとその手首には太めの真っ黒の腕輪が巻き付いていた。
 
しかも手の内側、つまり血管の所でその腕輪は途切れ腕と一体化しているように内側へと溶け込んでいるのである。
 
これがこのスカンディアの冒険者の証、ヒルドの腕輪と呼ばれるものであった。
 
これはノルンの人間も全員つけており。フィーメリアも腕輪をつけている左手を水晶に当てたのだ。
 
このヒルドの腕輪をつけて初めて、ステータス確認やクラスチェンジ申請・レベルアップ等を行えるこの水晶を扱う事ができるのである。
 
ちなみにこの腕輪は国でそれぞれ違い、腕輪を見ればどの国の所属か解る仕組みになっている。
 
腕輪の取り替えも、腕と一体化している為に、神殿でしかおこなえず、各国の入門時のチェック対象となっているのだ。
 
そしてアズライトが右手を水晶に当てると水晶の中より一枚の石版のようなモノが出てきてアズライトの目の高さにて静止する。
 
空中にありながらも質量すら感じるような石版にはアズライトのステータスが浮かび上がってくる。
 
 
 
『アズライト=ノール
 
職業:無職(ギルドに加入)
 
クラス:ノービス
 
Lv:43
 
レベルアップ:可能
 
クラスチェンジ:可能
 
戦士:クラスチェンジ可能
 
剣士:クラスチェンジ可能
 
騎士:クラスチェンジ可能 』
 
 
 
そう映し出されたステータスを見て、アズライトは改めて重い溜息をついた。
 
現在無職・・・そう、ノービスのままだと職業としてすら、冒険者として認められないのである。
 
そして冒険者のクラスであるが、戦士・剣士・騎士の三つの他に二つ、合計五つが今の所発見されている全てである。
 
一次職という意味でではあるが。
 
ちなみに戦士にはレベル10、剣士にはレベル15、騎士にはレベル20でクラスチェンジ可能となる。
 
剣士と騎士にはレベル以外にもクラスチェンジに必要な条件があり、それを満たさないとクラスチェンジできないが。
 
つまりアズライトはクラスチェンジを申請すれば、すぐにでも一次職の最高位と言われてる騎士に挑戦できるし、一次職になれば無職でも無くなるのである。
 
後、これは冒険者の特色であるが、冒険者はクラスチェンジをするとレベルが十分の一に落ちる。
 
これは戦闘用に体を作りかえる為の加護の負荷が大きい為だとも言われている。
 
故に冒険者はクラスチェンジを申請したとしても、クラスチェンジ時の痛みに耐えきれずに気絶すれば、クラスはノービスのままレベルが十分の一に落ちるのだ。
 
もっとも死ぬ事は無いし痛みに対する耐性が刻まれ、クラスチェンジの成功率は上がるのだが・・・
 
そしてノービスのままでは大きなデメリットが一つあるのだ、迷宮『ニブルヘルム』の探索禁止という大きなデメリットが。
 
それが先程、休憩所で言われた『ファーストマスター』という名称に繋がるのだ。
 
アズライトが先程まで探索していたのは、ファーストダンジョンと呼ばれている迷宮である。
 
地下五階までしか無い小さなダンジョンで、世界にはファーストダンジョンとニブルヘルムの二つしか迷宮が存在しない。
 
ファーストダンジョンは、ニブルヘルムの同階と比べて敵も弱く、敵の種類も五種類のみと確認されている。
 
故に初心者用の迷宮と言う意味で『ファーストダンジョン』と名付けられたのだが。
 
その代わり、モンスターが尽きないという特色がある。
 
ニブルヘルムも常にモンスターはいるのだが、その階のモンスターを狩り尽くすと六時間前後モンスターが出現しなくなるのだ。
 
だがファーストダンジョンにはそれがない、幾ら狩ってもモンスターが尽きることがないのである。
 
しかし、敵が弱いからなのか血晶石の質が悪く、赤みが薄い為にニブルヘルムの物よりも半値以下で取引されるのだ。
 
そんな特性上、レベルアップをしても殆どステータスが上がらないノービスの訓練用としてはこれ以上ない練習場だった。
 
故にノルンはこう定めている。
 
『ノービスの冒険者はファーストダンジョンにて経験を積み、クラスチェンジに成功しなければニブルヘルムの探索は認められない』と
 
余談ではあるが、ファーストダンジョンにノービスの冒険者が居る期間は、2週間から3ヶ月と言われている。
 
これは戦士を目指すか騎士を目指すかにもよって変わるし、知り合いの冒険者に手伝って貰うかソロで挑むかの差もある。
 
しかしアズライトはギルドに登録してから一年半、クラスチェンジもせずにファーストダンジョンにずっと潜り続けていた。
 
だからこう呼ばれるのである「ファーストダンジョンの主」つまり「ファーストマスター」と。
 
つまりは、ベテランの初心者という意味の不名誉きわまりない言葉なのだ。
 
 
 
 
 
アズライトは石版から目を離すとフィーメリアへと視線を移す。
 
 
「レベルアップをお願いします」
 
 
(やっぱり、かぁ・・・)
 
 
その言葉を予想しては居たのだろうが、フィーメリアは軽い溜息をつく。
 
 
「レベルアップだけで良いの?そろそろクラスチェンジの申請をしてみない?」
 
 
半ば返答を確信していながらもそう聞き返した。
 
 
(ああ、やっぱりな)
 
 
「あはは・・・それはまた今度でいいです」
 
 
フィーメリアの溜息や、少しばかりこちらを攻めるような眼差しに、言われるだろうと察していたアズライトだったが、愛想笑いを浮かべそう濁すしか無かった。
 
 
「じゃあ、レベルアップの儀式を行います」
 
 
もう一度今度は重い溜息を一つつくと、フィーメリアはそう言ってまたボタンをいくつか押す。
 
すると水晶の中の黄色い光が一欠片タンポポの綿毛のように外へと現れアズライトの頭上へと跳んでいく。
 
 
パアァァァァン
 
 
少し甲高い音と共に弾けアズライトの体に黄色い光の粉が付着していく、そして全てが付着すると一瞬だけアズライトの全身が光り。
 
『レベルアップが完了しました
 
レベルが44になりました、体力が2上昇しました』
 
アズライトの脳内に無機質な声が流れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後書き
 
どうも、K・Yです。
 
久々にフィーメリアさんかくとやっぱり色々嬉しい・楽しい作者ですw
 
今回の一応の大きな変え所は「偉大なる麻袋」
 
というのも作者の気のせいかも知れないけど意外と前の名称を使ってる小説とか見掛けたので、捻くれ者の作者としては「名称変えなきゃ、なんかスッキリしない!!」とかって思ったわけですよ。
 
・・・でも正直、こんな早くこのアイテムの名前出してること忘れてましたがねw
 
もう2.3話後で出してた気がしてたのに全然早かったwww
 
 
 
 


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.027822017669678