今回は、タイトルの通り番外編です。
本編にはまったく関係ないので、読まなくても展開には何の関わりもありません。
それでも良い人は下に進んでください。
注意事項
・チョイ役ですがオリキャラがたくさん出ます。
・乗りで書きました。
・フェリ成分は……どうなんでしょう?
なんにせよ、始まります。
番外編 我らフェリ・ロス親衛隊
「お前ら、気合を入れろォ!!」
「「「おおおおおおおおおっ!!」」」
対抗試合の行われる野戦グランド。
そこは熱かった。熱気がグランド中を支配している。
だが、この熱気の発生源は今から試合を行う第九小隊でも、第十七小隊のものでもない。
熱気の発生源は、観客席からだった。
「LOVE!」
「「「フェーリ!!」」」
「LOVE!!」
「「「フェーリ!!!」」」
フェリ・ロス親衛隊。
完全無欠、無口だがクールなフェリの隠れファンは多く、もはや隠れてはいない熱狂的なファンが彼らだ。
野戦グランドの観客席の5分の1を占拠し、500人で応援に駆けつけた精鋭。
彼らはファンクラブを設立しており、その数はツェルニ人口の12分の1である5000人にも達すると言われている。
眉唾物の情報だが、それほどまでにフェリの人気は高いのだ。ミス・ツェルニの名声は伊達ではない。
そんな彼女を応援するフェリソング、フェリ・ロス親衛隊オリジナルの曲が流れていた。
「相変わらず凄いな、フェリちゃんのファン」
グランドから観客席の様子を覗き、そう漏らすシャーニッド。
彼もまたファンは多いが、あれとは比べ物にならない。
「どうでもいいです」
試合前だと言うのに、肝心のフェリはどうでもよさそうに本を読んでいる。
やる気がないフェリだが、実力と才能は確かであり、最近は自分の仕事はきちんとやっているのでニーナも文句は言わない。言えないのだ。
「フェリ、そろそろ始まるぞ。本を仕舞え!」
だが、試合開始時間が迫っており、ニーナにせかされてフェリは本を閉じる。
めんどくさそうにため息をつき、フェリを含めた第十七小隊のメンバーはグランドへと散った。
「「「うぉぉおおおおおおおっ!!!」」」
盛り上がるフェリ・ロス親衛隊。
第十七小隊のエース、レイフォンの活躍により第九小隊のフラッグが落ちたのだ。第十七小隊の勝利である。
当然、応援していたフェリ・ロス親衛隊のメンバーは盛り上がり、歓声を惜しみなく送る。
それでもフェリは興味なさそうに、試合終了と共に通路へと消えて言った。
「最高だよ!」
「フェリちゃん、ナイスサポート!!」
「また勝った!最近の第十七小隊、調子いいな」
熱気が静まり始めた野戦グランド。
今は次の試合に向けての準備が行われ、整備されていく。
既に第十七小隊も、第九小隊の姿もない。
それでもフェリ・ロス親衛隊の熱気は未だに下がらなかった。
「今日はこの後どうします?」
「もちろん反省会だ。ブラスバンド、音程ずれてたぞ!」
「す、すいません」
熱気を保ったまま、フェリ・ロス親衛隊隊長、エドワード・レイストは演奏していた奏者を怒鳴る。
フェリ・ロス親衛隊は大組織である故に、規律や規則が厳しいのだ。
それを取り締まるのが彼、エドワード。
武芸科の5年生であり、小隊員になれるほどの実力を持っていながらも、フェリ・ロス親衛隊の活動を優先するために小隊には所属していない。
「よしっ、じゃ、一旦グランドを出て……」
第十七小隊の試合が終わったので、もう用はない。
そのために帰り支度を始めるよう、エドワードは命じようとした。
だが、そんな彼の言葉を遮る声が響く。
「大変ですエドワードさん!!」
「ん、お前は……」
フェリ・ロス親衛隊の末席、トロイ・アレット。
主に情報収集などを担当する、一般教養科の2年生だ。
「これ見てくださいよ、これ!」
「おっ、週刊ルックンじゃん。そういえば、今日発売か。なに、フェリちゃんが表紙だと!?」
ツェルニ一の発行部数を誇る週刊ルックン。
いわゆる情報誌であり、さまざまな記事を取り扱っている。
その表紙が、なんとフェリなのである。
「おぃ、てめぇら!今すぐ書店から今週のルックン買い占めて来い!!」
「「「おお!!」」」
その表紙自体は対抗試合の前にでも取ったのか、戦闘衣姿で、そのうえ周りには第十七小隊の面々が写っている。
それでもフェリが表紙なのには変わりなく、フェリ・ロス親衛隊は今週のルックンを買い占める事にした。
「そうじゃなくて!それよりも重要な事が……これを見てください!!」
トロイはルックンのとあるページを開き、そこに載っている記事をエドワードに見せた。
「ん、なになに?」
その記事と言うのは、
『特大スクープ!ミスツェルニに熱愛発覚!?お相手は第十七小隊エースの1年生』
なんて言う煽り文と共に、フェリと第十七小隊エース、レイフォンの写真が載っていた。
2人で買い物をしている様子やら、アイスを食べている様子など、数枚の写真が載っている。
その現実を叩きつけられ、
「グフッ……」
エドワードは絶望し、吐血した。
その日の夜。
某所にて、怪しい集会が行われていた。
「お前達ィ!フェリ・ロス親衛隊第一条を言ってみろ!!」
「「「抜け駆け厳禁!裏切り者には死の制裁を!!」」」
「そうだ!じゃあ、こいつは何だ!?」
「「「我らの敵です!!」」」
「ならばどうする!?」
「「「殺せ!殺せ!!殺せ!!!」」」
「そうだ!!」
張付けられたポスター大のレイフォンの写真。
それをエドワードが指し、フェリ・ロス親衛隊の面々から殺せコールが巻き起こる。
一丸となったフェリ・ロス親衛隊。彼等が望むのは、レイフォン・アルセイフの死。
「ならば我こそはと言う者、レイフォン・アルセイフを殺して来い!!」
「「「……………」」」
その言葉に、一同が視線をそらす。
別に殺しが犯罪だからとか、そう言う理由で視線をエドワードからそらしたのではない。
何も殺さなくてもいいし、二度とフェリに近づかないように半殺し程度にすればよいだけの話だ。エドワードも比喩で言っているのだろう。
だが、問題なのはレイフォン・アルセイフと言う人物。
彼は1年生で小隊に入るほどのエリートで、第十七小隊のエースと呼ばれている。
その実力はツェルニでも屈指で、第五小隊のゴルネオとシャンテのコンビネーションを1人で退けてみせたのだ。
下手をすればツェルニ最強と呼ばれるヴァンゼより強いかもしれない。
そんな人物に喧嘩を売りに行くなど、誰もしたくはない。
「なんだ?だらしないな……こうなったら俺が……」
ここにいる大多数が一般人のため、それは仕方がないと思う。
だが、フェリ・ロス親衛隊には武芸者も存在するのだ。
そんな彼等が志願しない事にため息を付きつつ、エドワードが自分でやろうと宣言しようとすると、
「何も隊長が出向くほどじゃないでしょう。俺に任せてください」
自ら立候補する者が現れた。
レオン・アレイス。武芸科3年生の、フェリ・ロス親衛隊特攻隊長。
主に荒事を取り仕切るのが彼だ。
先日、ツェルニを襲った汚染獣の幼生体を1人で3体倒したと言う実績を持つ。
第六小隊所属。
「レオンか……いいだろう。1人で大丈夫か?」
「問題ありません。必ずやよき戦果を」
「期待しているぞ」
時刻は真夜中。もはや早朝と言うべき時間。
「やっと終わった……」
レイフォンは機関掃除のバイトを終え、欠伸をしながら寮へと帰る。
「レイフォン・アルセイフだな?」
「……あなたは?」
その道中、怪しい人影、言うまでもなくレオンが行動を取った。
「恨みはない……わけないが、と言うか恨みだらけだが、そんなわけで死んでもらう」
「ちょ、いきなりどういうことですか!?」
いきなり物騒な事を言われ、動揺するレイフォン。
だが、そんな事に構わず、レオンは錬金鋼に手をかけた。
「レストレーション」
得物は剣。
それをレイフォンに向け、構える。
「本気……なんですか?」
「冗談でこんなことはやらない。死にたくなければ、錬金鋼を抜け!」
そう言い、襲い掛かるレオン。
レイフォンはそれに対し……………瞬殺した。
「隊長!特攻隊長がやられました!!」
「なにィ!?」
その知らせが、フェリ・ロス親衛隊に一夜にして知れ渡る。
特攻隊長を名乗るだけはあり、レオンの実力はこの中でも屈指のものなのだ。
それが敗れるとは、流石はツェルニ最強と噂されるレイフォンと言ったところか。
「やっぱり1人じゃ分が悪いか……こうなりゃ、卑怯な手だが数にものを言わせて……」
「その役目、俺達に任せてもらおう」
「お前らは!?」
考えるエドワードに話しかける、複数の人影。
「俺達、フェリ・ロス親衛隊四騎士が、必ずやレイフォンアルセイフを討ってみせる!!」
フェリ・ロス親衛隊四騎士、または四天王。
連携に長けた4人組であり、先の汚染獣戦では4人で15体もの幼生体を屠った。
レオンではダメだったが、彼らならばと言う期待がフェリ・ロス親衛隊を包み込む。
「よし、ならば任せたぞ」
「「「「おうっ!!」」」」
エドワードは、四騎士に期待を込めて送り出した。
「レイフォン・アルセイフ!かく……ごふっ!?」
四騎士の1人、武芸科4年生のレイ・アルフは顎に強烈なアッパーを喰らい、
「レイ!?がっ!?」
武芸科5年生のスタン・ガレットは蹴りを腹部に入れられ、
「先輩っ!!ちっくしょぉぉ!!」
武芸科2年のイアン・マルコフはレイフォンに特攻をかけるも、見事にカウンターを決められ、
「このっ、バケモンがァァ!!」
イアン・マルコフの双子の弟、武芸科2年のイワン・マルコフがレイフォンに蹴りを放つ。
だが、それをひょいとかわされ、強烈な拳を叩き込まれた。
こうして、フェリ・ロス親衛隊四騎士は全滅した。
「四騎士が全滅した?レイフォン・アルセイフは化け物か!?」
「どうします隊長?」
報告を受け、エドワードは苦々しい表情をする。
まさか四騎士でもレイフォンに歯が立たないとは思わなかったのだ。
ツェルニ最強と噂されるレイフォンだったが、ひょっとしたら彼の実力はそんな甘っちょろい言葉で済まされるものではないのかもしれない。
「こうなったら直接、俺が出向く。なぁに、真正面から挑むなんて馬鹿な真似はしねぇよ」
不敵に笑いつつ、今度はエドワード自ら出陣することにした。
「最近、どうも可笑しいんですよねぇ」
「どうしたんですか一体?」
とある休日。軽食を取るためにオープンカフェに入るレイフォンとフェリ。
レイフォンは軽く食べられる物を、フェリはケーキセットを注文し、レイフォンは最近起こった異変について考えていた。
「いや……このところ何故だかわからないんですけど、襲撃を受けるんですよ。適当に相手をして伸してますけど」
「それは穏便ではありませんね。フォンフォン、何か狙われる心当たりはないんですか?」
「それがまったく……一体どうしてでしょう?」
ため息をつきつつ、レイフォンはパスタを口にする。
甘酸っぱいミートソースが美味だった。
「それ、美味しそうですね」
「はい、美味しいですよ。食べます?」
「では……少しだけ」
レイフォンはパスタの入った皿とフォークをフェリに差し出すが、フェリは不満そうな顔でレイフォンに言った。
「食べさせてください」
「え……?」
「ですから、この間私がやったみたいに、食べさせてください」
つまりは、『あーん』だ。
それを促すように、フェリは無表情なまま小さな口を開けている。
それに呆れつつ、苦笑しながらも、レイフォンはフォークでパスタを巻きながら、フェリの口の中に入れた。
「確かに、これは美味しいですね。では……お返しです」
パスタを噛み、飲み込んでからフェリが言う。
今度は彼女がケーキを差し出し、レイフォンの口の前に持ってくる。
「僕は甘い物、苦手なんですけど……」
苦笑しつつ、レイフォンはそれを飲み込んだ。
口内には甘ったるい味が広がるが、それはそれで結構美味しかった。
「甘すぎる気もしますが、美味しいですね」
「でしょう。ここのケーキは私のお気に入りです」
苦笑し、笑い合う。
そんな二人の光景を、100メル先から覗き見る人影があった。
「……殺す」
100メル先、建物の屋上。
そこでは殺剄を使い、銃の錬金鋼を構える人物がいた。エドワードだ。
殺意を抱き、引き金に力を入れそうになる。
今まで、真正面から出向いたのが間違いなのだ。
レイフォンは強い。実力的に、白兵戦ではまさにツェルニ最強だろう。
だが、狙撃ならばどうだ?
離れたところから、手も足も出ない距離から銃で撃たれて反応できるわけがない。
「死ねやァァ!レイフォン・アルセイフ!!」
嫉妬に狂いながら、エドワードは引き金を引く。
麻痺弾なのが恨めしい。安全装置を解除し、剄弾をレイフォンの脳天にぶち込みたいところだ。
だが、それでも当たれば痛いし、麻痺で動けなくなったところを襲撃すると言う手もある。
取り合えず今は後先を考えず、怒りに任せて発砲した。
「なにっ!?」
だが、放たれた弾丸は当たらない。
はずれたのではない。狙いは完璧だったはずだ。避けられたのだ。
気づかれた?
気配は殺剄で殺していたはずだ。だと言うのに気づき、レイフォンは避けた。
いくら殺剄と言えど、銃を撃つ瞬間まで気配を殺してはおけない。銃に剄を通し、引き金を引く瞬間に剄が、気配が漏れる。
それに気づいたのか?
レイフォンの姿はオープンカフェのテーブルにはない。
どこだ?どこに行った?
「いきなり発砲するって、非常識じゃありませんか?」
「っ!?」
声は背後から聞こえた。
すぐさま振り返ると、そこにはエドワード達の憎き敵、レイフォンの姿がある。
(今の一瞬で背後まで回った!?一体どんな身体能力だ……)
あそこからここまで、距離にして100メルはある。
そんなに遠くもないが、決して近くもない距離。
その距離を一瞬で詰め、自分の背後に立っている。
レイフォンの技量に、身体能力に、活剄の密度に、エドワードは驚愕する。
「で、何のつもりなんです?ひょっとして、ここ最近襲ってきた人達の仲間ですか?僕としては、恨まれる覚えはないんですけど」
良く言うと、エドワードは内心で舌打ちを打つ。
言うなれば存在自体が憎い。
フェリとデートして、『あーん』なんて恋人イベントを行っていること自体が憎悪の対象だ。
殺したい、今すぐにでも。
いけしゃあしゃあと言うレイフォンに殺意を抱きつつ、銃をレイフォンに向ける。
近距離での戦闘には向かない銃だが、レイフォンは素手。剣帯に錬金鋼は入っているものの、復元すらされていない。
「こっちには恨みなんて腐るほどあるんだよ!取り合えず死ねやァ!!」
ならばこちらのほうが速いはず。
そう確信し、再び引き金を引こうとするも、
「あー、もうっ!何なんですか本当に!?」
半ば自棄になり、訳がわからないままにレイフォンが反撃をする。
錬金鋼を抜くまでもなく、エドワードが引き金を引くよりも速く、レイフォンの蹴りが決まった。
錬金鋼を取り落とし、崩れ落ちるエドワード。
「どうしたんですか?フォンフォン」
「あ、フェリ」
エドワードを仕留めたレイフォンに、フェリの念威端子が語りかけてくる。
「さっき言ってたじゃないですか?襲撃を受けているって。これがそれの犯人、または関係者なんですよ。どうしましょう?」
レイフォンは倒れているエドワードを指差し、困ったように返答した。
「捨て置きましょう。それよりフォンフォン、この後はどうしますか?」
「そうですね……レジャー施設にでも行ってみます?僕がグレンダンに居たころは、そういうところに行った覚えがないんですよ」
話題をデートの事に切り替え、エドワードは放置する。
なぜならこの会話の方が、その何倍も有意義だからだ。
「私はそういった、人が多いところは苦手です……」
「まぁまぁ、たまにはいいじゃないですか」
他愛のない話をしながら、レイフォンとフェリは去って行った。
気絶から目覚めたエドワードは、仰向けとなって空を見上げ、エアフィルター越しに見える太陽を見てつぶやく。
「ああ……眩しいなぁ……」
その姿はとても、哀愁が漂っていた。
「だがな、諦めないぞ!諦めてなるものか!!」
見事に負け犬の遠吠えを叫びながら、エドワードは、フェリ・ロス親衛隊は一致団結する。
「レイフォン・アルセイフは俺達の何だ!?」
「「「敵!憎むべき相手!!殺意の対象!!!」」」
「ならばどうする!?」
「「「殺せ!殺せ!!殺せ!!!」」」
「戦闘力で勝てないからって諦めるのか!?」
「「「ノー!殺せ!!殺せ!!!殺せ!!!!」」」
「ならば呪え!全身全霊をかけてレイフォン・アルセイフを呪い、地獄へ叩き落せ!!」
「「「おおおおおおおおおお!!!」」」
言うや否や、一斉に藁人形と釘、金槌を取り出して打ち続ける親衛隊メンバー。
彼らの憎悪はその藁人形に、レイフォン・アルセイフに向いていた。
だが、彼らは知らない。人を呪わば穴二つと言う言葉を。
レイフォン・アルセイフと敵対することの危険さ、愚かさを……彼らは知らなかった。
あとがき
えー、書いてみて、相変わらず落ちが弱いから没にしようと思ったんですがせっかくなので上げました。
なんなんだこれは?
乗りと乗りと乗りで書かれたこの作品……いかがだったでしょうか?
うん、やはりレイフォンに喧嘩を売るのはまずすぎますね(汗