<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.16004の一覧
[0] ― 閃光の後継者 ― 【ギアス一期再構成】[賽子 青](2012/08/30 12:44)
[1] Stage,01 『白い騎士』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[2] Stage,02 『はじまりの合図』[賽子 青](2012/08/29 01:46)
[3] Stage,03 『黒い仮面』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[4] Stage,04 『一対の炎』[賽子 青](2012/08/29 01:53)
[5] Stage,05 『空からトラブル』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[6] Stage,06 『嵐の前』[賽子 青](2012/08/29 01:51)
[19] Stage,07 『粛清』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[20] Stage,08 『皇女』[賽子 青](2012/08/29 20:43)
[21] Stage,09 『嘘と真実』[賽子 青](2012/09/06 21:31)
[22] Stage,10 『7年前』[賽子 青](2012/08/30 20:08)
[23] Stage,11 『リリーシャ』[賽子 青](2012/09/01 13:43)
[24] Stage,12 『新しい決意』[賽子 青](2012/09/06 21:30)
[25] Interval 『再会』[賽子 青](2012/09/06 21:27)
[26] Stage,13 『介入者』[賽子 青](2012/09/05 21:50)
[27] Stage,14 『サイタマゲットー』[賽子 青](2012/09/06 21:26)
[28] Stage,15 『不穏な影』[賽子 青](2012/09/11 22:26)
[29] Interval 『騒乱の種』[賽子 青](2012/09/12 00:31)
[30] Stage,16 『奪われた剣』[賽子 青](2012/09/13 22:41)
[31] Stage,17 『交錯する閃光』[賽子 青](2012/09/15 13:42)
[32] Stage,18 『ゼロを騙る者[賽子 青](2012/09/20 20:54)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16004] Stage,08 『皇女』
Name: 賽子 青◆e46ef2e6 ID:e3b5ec25 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/29 20:43

「はい、こちらライ。何か事件でも起こりましたか?


 リリーシャが慌てた様子で去った直後、ライは二人に断って席を立った。
 そのまま彼女たちに声が届かない位置に離れ、メロディを奏でる携帯電話を取り出す。
 通話先は、彼が所属する組織だった。
 通話の相手は、女でありながら、その組織を纏め上げる辣腕の騎士であり、彼を組織にスカウトした恩人でもある。

『へぇ、流石に情報が速いわね、ライ。
 君の言う通り、事件が起こってるわ。何でも、ゼロが見つかったとか』

 ゼロ、とは言うまでもなくあの仮面のテロリストの事だ。
 先日の枢木スザク強奪事件以降、多数の調査員が東京租界を探っているが、痕跡すら見つけられていない謎の人物である。

「ゼロが? 事実ですか」

『どうかしら。
 他がウチよりも情報が速いってもの納得できないし、なによりあの純血派からの情報よ。
 考えるだけ無駄ね』

 通話相手は、まるでやる気の無い声でライの質問に答える。
 その声が、途中から急に真剣みを帯びた。

『ただ、この純血派ってとこがポイントでね。
 あそこにはこのあいだ大問題を起こしたオレンジ、もといジェレミア代理執政官がいる。
 彼はゼロ発見の情報に、部下と共にサザーランド5騎で飛び出したらしいけど、』

「けど、なんでしょう?


『彼に従った部下が、この4
だけなの。それも全員純血派のメンバー。
 おかしいわよね? 代理執政官が出撃したのに、他部署には出撃要請が全く出ていない。
 たかがテロリストだからというものあるけど、ならなぜ拠点制圧用の歩兵を連れていかないのかしら?』

 通話相手の試す様な誘導に、ライはそういう事かと納得する。
 この上司とは、一年前にあのカプセルから出されて以来の付き合いだ。
 その遊び好きな性格くらいは把握している。

「つまり、この一件は純血派の内乱ってことですか」

『もしくはゲコクジョウかな。このエリアにはそんな言葉もあったわよね、確か。
 GPSによると一番近いのは君みたいだし、ちょっと見てきてくれる?
 ゼロが発見されたっていう場所の地図情報を送るから』

 相手の言葉にライが了解を返すと電話は切れ、ほどなくしてメールの着信を示すメロディが流れる。
 送られてきた地図情報が示すのは、


「では、シンジュクを。
 わたしにシンジュクを見せて下さいませんか、アーニャさん」


「へっ!?」


 不意にライの耳に届いたのは、ユーフェミアの声。
 余りにもタイミングの良すぎるひと言に、ライは思わず彼女の方を向く。
 彼の携帯電話の画面にある赤いマーカーもまた、シンジュクゲットーにある野球場跡地を示していた。









コードギアス
    閃光の後継者

Stage,08 『皇女』










「キューエル卿!
 ジェレミア兄さんを粛清しようとするとは、どういうつもりですか!!」

 強烈な怒気をはらんだ声が球場跡に木霊する。
 激怒で心を満たしながらも、何とか間に合ったことに安堵した彼女は、観客席の最上段からの滑降した。
 老朽化し色あせた緑のシートを、ランスロットの脚が粉々に吹き飛ばし、そのまま勢いを利用してジェレミアとキューエルの間に割って入る。

「キューエル卿、説明してもらえますか」

 沈黙を許さないの声。彼女の背中に青白い焔が見えるようだ。
 親しい人を傷つけられた彼女の怒りは、それほどに激しい。

『その声はリリーシャくんか。退きたまえ。
 邪魔するというのなら、皇室の為にも一緒に消えてもらおう!』

 だが彼はそれを、鼻で嘲笑う。
 なまじジェレミアの肉親であるだけに、例のオレンジ疑惑では彼女にも疑惑の目は向けられている。
 だからここでジェレミアとともに彼女を葬っても、何とか言い訳はつくと判断したキューエルはリリーシャに槍を向けた。
 言い訳、が必要な状態に在る事には気付かない。

『ま、待てキューエル!! この方は―――――』

 対して、今までにない焦った声でジェレミアは制止を試みる。
 己の死を前にしてすら、見せなかったうろたえ方だが、残念ながらそれを意識できる者はこの場にいない。
 その理由を示す言葉も、当のリリーシャが会話に強引に割り込む事で止めた。

「ならば私はリリーシャ・ゴットバルトとして、私とジェレミア兄さんの為に貴方を止めさせて頂きます!」

 余計な事は言うなと、意識的に言葉を選び言い放つ。
 同時にリリーシャは、ランスロットのコクピットブロックの左右に装備された剣のうち、右の剣を抜いた。
 騎士として剣の心得があるとはいえ、残念ながらリリーシャに二刀流は荷が重いので二本目は予備である。
 白い刀身を持つその剣は、構えと同時に刀身の中央が収納されて一回り細くなり、振動で真っ赤に発光する。

『MVS、実用化されていたのか!?』

 彼が驚くのも無理はない。
 この剣は、世界でランスロットにしか実装されていない最新装備。
 刀身の高周波振動で対象を切り裂くMaser Vibration Sword(MVS)である。
 いまだ試験段階ながら高い性能を誇ると聞いていた兵器が目の前にあるのだから。

『だが、今さら退けぬ!!』

 しかしここで退いては、今度は自分たちが罰せられると判断したキューエルは止まらない。
 新型ナイトメアに乗っているとはいえ、所詮相手は小娘。士官学校を出たばかりの若輩者に何が出来るとタカを括り、気を吐く。
 オレンジもろとも始末してやるとランドスピナーを唸らせ、ランスロットに迫った。
 それを援護するために、残る機体がスラッシュハーケンを放つ。

「こんなもの!」

 だがそれらはこと悉くMVSに打ち落とされ、あるいは両断された。
 さらにその勢いのままキューエルのランスの穂先を切り裂くと、同時に足で無防備になったコックピットブロックを蹴りあげる。
 破壊こそ免れたものの、コクピットブロックを強打された衝撃で軽い脳震盪を起こしたキューエル。
 彼の窮地に、彼と入れ替わるように、別のサザーランドが突っ込んで来た。

「舐めないで下さい!」

 そのサザーランドの突きだしたランスの下に潜り込んだランスロットは、そのまま脚部を蹴りつけて相手の態勢を崩し、倒れたところでその足を切断した。
 背中から地面に伏したことで、脱出できなくなったパイロットが恐慌状態に陥ったが、リリーシャは止めは不要と背を向ける。
 さらに右から襲ってきたサザーランドの槍を左手の盾、ブレイズルミナスで跳ね上げざま、腕を一息に斬り飛ばす。

『ぐ、ならばオレンジだけでも!』

 その時、ルーキーと決めつけていたリリーシャと、試作機と侮っていたランスロットの性能を眼にして焦りを生んだキューエルが動く。
 いまだにガンガンする頭を押さえながら、彼は部下にジェレミアを襲えと命令を飛ばした。
 オレンジを消せばひとまず安心だという心理は部下にも伝播し、ランスロットが残る一体を無力化している隙をついてジェレミアのサザーランドに迫る。

『ジェレミア卿!』

 その彼への助けは、ナイトメアの膝蹴りという曲芸だった。球場のスタンドの淵を蹴り、さらなるサザーランドが乱入する。
 鋼鉄製の膝の直撃を受けて、コックピットブロックがホームランさながらにバックスクリーンに飛び込んだ。
 リリーシャに連絡を入れた後、急発進したヴィレッタが、ジェレミアの危機に間一髪のところで間に合ったのだ。

『ヴィレッタか、すまん!』

 そのままヴィレッタはジェレミアを護るようにアサルトライフルを構えた。
 リリーシャのランスロットもMVSを構えて、その前に立ち塞がる。
 負傷したジェレミアという弱点をカバーする存在が現れた事で、戦術の上でも両者の優劣が逆転した状態となる。

「もう止めてください。キューエル卿!」

『くぅ……。皆、下がれ』

 歯噛みしながらも、4騎全てが戦力を半減させた事実を受け入れたキューエルは、ジェレミアの周りから部下を下がらせた。
 それで危機を回避できたと思ったリリーシャは安堵するが、続く彼の言葉に背筋を凍りつかせる。

『ケイオス爆雷を使う』

「なっ―――――」

 ケイオス爆雷とは射出から一定時間で起動し、特定の方向に向かって無数の散弾を放出するというナイトメア用の携行兵器である。
 振り撒かれる散弾の一発一発が人間はおろかナイトメアの装甲すら打ちぬく威力と悪辣さに、職業軍人でも使用を躊躇う。
 無差別に破壊をばら撒くそれは、彼らの矜持に反する上、嗜虐性もなんら満たされない。
 戦の高揚も血への陶酔ももたらさない、無味な破壊兵器。そんな代物を、キューエルは宙に放った。




「お止めなさい!!」




 その只中へ。今まさにケイオス爆雷が散弾を吐き出そうとする球場跡地に少女の声が響いた。
 まさか、と思う。声に耳を疑う。
 だが声のした方向を見れば、桃色の長い髪を揺らしながら少女――――ユーフェミアが走り寄ってくる。

「ユフィ殿下、ダメ!」

 その後方から、必死に追いつこうとアーニャも走るが、一歩届かない。

「ウソ!?」

『何!?』

 映像で確認し、驚愕に目を見開きながらリリーシャはランスロットを動かす。
 ピリリと感じる、ランスロットの鼓動。
 マン―マシーンインターフェイスからのフィードバックを如実に感じる程に鋭敏になった感覚と引き延ばされる体感時間。
 間に合え! 失わない、これ以上!!

「―――――ッッ!!」

 息を止め、呼吸の余裕を全身に還付。紫電の操作が、白き騎士を凶弾の前へと跳び込ませた。

「アーニャ、伏せろ!」

 同時に、彼女のさらに後方から猛然と走り寄ってくる白い影があった。
 ライである。
 上着を脱ぎ捨て全力で地面を蹴り飛ばす彼は、またたく間にアーニャを追い抜き、ユーフェミアの上に覆いかぶさる。

「ライ! ユフィ!」

 悲鳴にも似たアーニャの声が球場に響いた直後、凶気が弾ける。
 軌道したケイオス爆雷は凄まじい勢いで弾丸を吐きだし、周囲を灰燼に変えた。
 それに立ちはだかる白騎士は、ブレイズルミナスを最大出力で展開し、彼女たちを庇う。

「くぅぅ……」

 散弾がルミナスと衝突し、脳を揺さぶる振動がリリーシャを襲った。
 気を失えば、終わる。跳びそうになる意識を、奥歯を軋ませて噛み堪える。
 はたしてランスロットは、散弾に四肢の先を削られながらも、なんとか後ろの者たちを護り切った。

「っ、はぁぁ。よかったぁ~」

 ユーフェミアとジェレミアとアーニャ、そしてライを護り切った事を確認したリリーシャは、そのまま前にへたり込む。
 張りつめた緊張の糸が緩んだ事で、全身から力が抜けたのだ。
 身体を縛るシートベルトが無ければ、蹲る様な体制になっていたに違いない。

 胸に下げる、ハート型のアクセサリーをくれた大切な人を思いながら、深い息を吐く。
 しかしずぐにハッとして、只ならぬ事態だった事を思い出し顔を上げた。

「双方とも、剣を納めなさい」

 高いソプラノの、よく通る声。毅然とした音。
 リリーシャが視線をユーフェミアに向けると、彼女は押し倒した事を詫びるライを制し、二人を従えてリリーシャとキューエルの間に歩を進める。
 その堂々とした有り様と、見覚えのある御顔に、リリーシャ達を除くもの達の頬を冷や汗が伝っていることだろう。

「我が名において命じさせて頂きます。
 わたくしはブリタニア第三皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです。
 この場はわたくしが預かります。下がりなさい!」

 それは皇女の威風とでも言えばいいのだろうか?
 彼女の父であるブリタニア皇帝には遠く及ばないが、それでも俗世の者には決して身に付かないカリスマを感じさせた。
 街で会った時はただのお嬢様にしか見えなかったのに、こうして見ると、やはり彼女は皇女なのだと納得できる。

「ま、誠に……
 誠に申し訳ありません!!」

 知らぬとは言え、皇女にケイオス爆雷を向けてしまった事にキューエルは声を震わせながら全力で詫びた。
 敵味方問わず、ナイトメアたちが一斉に膝をつき、騎士の礼をとる。
 ランスロットや、ユーフェミアの隣に侍るアーニャ、ライも同様だ。

「リリーシャ・ゴットバルト、こちらへ」

「イエス、ユア・ハイネス」

 場が落ち着いたのを感じ、ユーフェミアは声と手ぶりでリリーシャに隣に来るように告げた。
 名指しされたリリーシャは、戸惑いながらもランスロットから降りて彼女の下に走り寄り片膝をつく。
 だがそれは彼女に止められ、リリーシャはユーフェミアと並び立った。

「リリーシャ、たしか貴方はそこにいるジェレミア卿の妹さんでしたね。
 今回の事で貴方のお兄さんの命が失われなかった事は、非常に喜ばしい事です。本当に良かった」

 リリーシャの目を見て、ユーフェミア緩やかに笑った。
 その眼に、彼女は心を鷲掴みにされる。哀しみを押し殺した凪の湖。薄紫の瞳が揺れている。
 事実を改めて思い知らされたリリーシャが現実に目を見開いた。
 そうだ、あまりにも離れたが故に忘れていた。彼女は兄を亡くした。大切な人を喪ったのだ。

 クロヴィス・ラ・ブリタニア。
 権謀術数が渦巻き、むしろ敵と見るべき異母兄であっても、目の前の彼女にとっては紛れもない兄だったのだろう。

「リリーシャ。これは第三皇女としてではなく、ユーフェミア個人としてのお願いです。
 今日私は色々な事を見て、様々な事を知る事が出来ました。だからこれからも、私に貴女の知っている事を教えて欲しい。
 綺麗な事も、そうでない事も私は知りたいのです。代わりに私も、私が知っている事を全て教えて差し上げます。
 そして、一緒に考えて下さいませんか?
 これ以上、みんなの大切な人を喪わなくて済むように


 いくら個人的な願いとはいえ、ユーフェミアは皇族である以上、一介の騎士に過ぎないリリーシャに頭を下げる訳にはいかない。
 しかしこれは、それ以上に真摯な願いだった。だからこそ胸を打たれた。
 自分の立場を弁えつつも、ギリギリの譲歩をユーフェミアは示している。
 そしてこの人はクロヴィスを喪った悲しみの中でも、リリーシャがジェレミアを喪わなくてもすむように、自らの身をさらしてくれたのだ。
 借りも誠意もある。何故この願いに、否と言えるだろう。

「はい。勿体なきお言葉です。
 このリリーシャ・ゴットバルト。微力ながら、精一杯お手伝いさせて頂きます」

 膝をつき、先ほど制された騎士の礼を取り深く頭を垂れる。
 リリーシャは自身の力の及ぶ範囲で、この人の為に尽力しようと決めたのだ。

 しかし同時に、リリーシャにはひとつだけ気がかりな事があった。
 それは自身の持つ秘密の事と、ジェレミアの事。

 この場はユーフェミアのおかげで収まったが、オレンジ疑惑はそのままである以上、こんな事は遠からずまた起こるだろう。
 もう、残された時間は少ない。


「――――――」


 だからリリーシャは静かに目を瞑り、覚悟を決めた。
 己の秘密を明かそう。たとえそれが嘘でも、兄さんの為になるのならば。

「だから、どうか私の嘘を赦して下さい。お兄様


 その言葉は、誰の耳にも止まることなく風に消えた。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024688005447388