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No.16004の一覧
[0] ― 閃光の後継者 ― 【ギアス一期再構成】[賽子 青](2012/08/30 12:44)
[1] Stage,01 『白い騎士』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[2] Stage,02 『はじまりの合図』[賽子 青](2012/08/29 01:46)
[3] Stage,03 『黒い仮面』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[4] Stage,04 『一対の炎』[賽子 青](2012/08/29 01:53)
[5] Stage,05 『空からトラブル』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[6] Stage,06 『嵐の前』[賽子 青](2012/08/29 01:51)
[19] Stage,07 『粛清』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[20] Stage,08 『皇女』[賽子 青](2012/08/29 20:43)
[21] Stage,09 『嘘と真実』[賽子 青](2012/09/06 21:31)
[22] Stage,10 『7年前』[賽子 青](2012/08/30 20:08)
[23] Stage,11 『リリーシャ』[賽子 青](2012/09/01 13:43)
[24] Stage,12 『新しい決意』[賽子 青](2012/09/06 21:30)
[25] Interval 『再会』[賽子 青](2012/09/06 21:27)
[26] Stage,13 『介入者』[賽子 青](2012/09/05 21:50)
[27] Stage,14 『サイタマゲットー』[賽子 青](2012/09/06 21:26)
[28] Stage,15 『不穏な影』[賽子 青](2012/09/11 22:26)
[29] Interval 『騒乱の種』[賽子 青](2012/09/12 00:31)
[30] Stage,16 『奪われた剣』[賽子 青](2012/09/13 22:41)
[31] Stage,17 『交錯する閃光』[賽子 青](2012/09/15 13:42)
[32] Stage,18 『ゼロを騙る者[賽子 青](2012/09/20 20:54)
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[16004] Stage,11 『リリーシャ』
Name: 賽子 青◆e46ef2e6 ID:e3b5ec25 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/01 13:43

「ねぇナナリー。私、なんだか解っちゃった」

 薬の副作用で、髪が抜ける。
 兄や母は綺麗だと褒めてくれたけれど、私はこの色が嫌いだった。
 母さんやジェレミア兄さんのモスグリーンが羨ましかった。
 自分みたいな色のない髪をしているのは、歳をとった大人ばかり。

 自分は、他とは違う。そう思うとたまらなく寂しくなった。
 けれど抜け始めて、無くなってからやっと気付く。この髪も、この目も、白青い肌も。
 全部自分で、全部自分だけのものだったんだって。

「ああ、ゴメンねナナリー。
 私はお姉ちゃんなんだから、しっかりしなきゃね」

 リリーシャが横になるベッドの傍らで、ナナリーが泣いていた。
 閉じられた瞳の奥からは透明な雫がこぼれおち続け、服を濡らしている。

 初めて出来た、私の友達。
 リリーシャにとってナナリーは、自分と同じ『他と違う』存在だった。
 目が見えない。何故と聞いても、ただ見えないのだと言う。
 試しに瞼を無理やり開いてみても、それは同じらしい。
 その奥にあった綺麗な薄紫の瞳が涙でぬれているのだと思うと、胸が締め付けられる。
 泣かないで。貴女が哀しいと、私も哀しい。

「ナナリー……」

 ナナリーが握ってくれた右手が温かい。
 彼女と会って、初めて解った。私とお母様は違う。私とお兄様は違う。私と爺やは違う。
 みんな違っていて、でもそれでよかったんだ。
 ナナリーの目が見えないのだって、私が光に当れないのだって、人とちょっと違うってだけなんだって。
 それは別に変な事でも、悪い事でもなくて当たり前なんだって。

 だから、大丈夫だよ。
 一緒に入れなくなるのはつらいけれど、初めから私たちは別々で。
 別々だからこそ、離れ離れになってもお互いに想いあえるから。
 だから私のとっておきを、貴女にあげる。喜んでくれるかな?









コードギアス
    閃光の後継者

Stage,11『リリーシャ』










 死神の俊足には、誰も追いつけないという。
 母の愛。兄の願い。親友の祈り。
 全ての善性を集めてなお、死神の鎌を退けるには足りなかった。

『何かの間違いであってほしい』

 母の切なる願いは届かず、ゴッドバルト家の所有する病院での二度にわたる精密検査の結果はいずれも悪性。
 リリーシャの身体は、成長期の彼女にとって最悪の病に冒されていた。
 即座にリリーシャには入院の措置がとられ、医師たちによる懸命の治療が施される。
 しかし元々体力もなく抵抗力の弱い彼女の身体は、一か所の疾患が二か所の疾患を生むという悪循環に陥り、病魔は確実に彼女の命を貪っていった。

 3ヶ月。たったそれだけの期間で、リリーシャの命の灯は消えようとしている。
 既に、医師はさじを投げた。
 治療と薬のもたらす苦痛をこれ以上、娘に与えるのは忍びない。
 せめて最後は安らかにと、彼女の母は震える唇と瞼でリリーシャを家に帰す事を決めた。
 モルヒネによる苦痛の緩和と温かい食事と家族。
 母も兄も、そしてナナリーも一緒に、リリーシャとの最後の時間を過ごす事にしたのだ。

「ねぇ、ナナリー……」

 無情な事に、死相というのは今を真っ直ぐに生きている者にほどよく解る。
 それは目が見えないナナリーとて例外ではなかった。
 息遣い。動きの機微。心臓の鼓動。
 むしろナナリーが、最もリリーシャの死を感じていた。彼女はもう、明日を迎える事は出来ない。

「ナナリー、最後にお願いがあるの。聞いてくれる?」

「――――っ。
 なに、リリーシャお姉ちゃん」

 途切れがちの声なのに、ナナリーにはやけにはっきりと聞こえる。
 たぶん、彼女もこれが最後の会話だと解ってるのだろう。

「眼を、開けて。ナナリー」

「リリーシャ、お姉ちゃん……」

 頬を、また涙が伝う。
 もう何回泣いただろうか。この目は、もう泣くこと以外を忘れてしまったのだろうか。

「お医者さんに聞いたんだ、ナナリーの眼はもう何ともないんだって。
 だからお願い。最後に私の顔を見て。私の事、忘れないで……」

 違う。私は心の奥で拒否しているだけだ。
 哀しい事など、見たくない。今だって、今だってこの目を開ければ、見えるのはリリーシャお姉ちゃんが、大好きな友達が死んでしまう時だ。
 だけど、なのに、私は……

「ナナリー、怖くないよ。世界は怖くない。
 悲しい事や苦しい事は多いけど、その分、楽しい事も優しい事もあるから。
 だから、世界を嫌いにならないで」

 瞼が熱い。胸の奥で、心臓が何度も心を叩く。
 頭の中で、重々しい声がする。でも、この声を聞いちゃいけない。
 だってこの声を聞いたら、リリーシャお姉ちゃんの声が聞こえない。もう、絶対に。
 私は、リリーシャお姉ちゃんが、大好きだから―――――――――――



「ナ、ナナリー……」



 その声は、誰の声だったのか。



「ナナリー様……」



 ふるりと一度、ナナリーの瞼が震える。



「ナナリー、やっぱり綺麗だね」



 縛る鎖は、砕けた。



「リリーシャお姉ちゃん。
 見えるよ、お姉ちゃんの顔が……」

 重く閉ざしていた瞼が開いた。
 そこにあるのは、澄み切った薄紫。涙を溢れさせる。純粋無垢な瞳。
 泣き腫らして真っ赤になっていても、変わらない彼女のあり方。

「私にも見えるよ。
 よかった。最後にちゃんとナナリーの事が見れて。ありがとう、お願いを聞いてくれて。
 だからナナリーには、最後にご褒美をあげなくっちゃね」

「いいよ、お姉ちゃん。私、いっぱい貰ったから。
 お姉ちゃんから、いっぱい貰ったから!!」

 二年ぶりに開いた瞳をいっぱいに広げて、ナナリーはリリーシャに縋り付く。

「もう無理はしないで。私は大丈夫だから。だから最後なんて言わないで、お姉ちゃん!」

 ナナリーは首に手をまわして、覆いかぶさるようにリリーシャを抱きしめた。
 初めて会った時はあんなに柔らかかったのに、あんなに温かかったのに。
 病と闘って闘って、命を使い果たした彼女の身体はこんなにも細くて冷たい。

「―――――っ!!」

 だから、私が温めてあげるんだ。
 お願いお姉ちゃん。
 もう何もいらないから、元気になって。

「ごめんね、ナナリー。勝手なお姉ちゃんで。
 私、気づいちゃったんだ。ナナリーの事」

 精一杯の力で抱きつくナナリーを抱きしめ返し、リリーシャは言葉を紡ぐ。
 その途端、ドクン、とナナリーの身体が凍りつく。冷たい水を浴びせられたように、血の気が引く。
 傍にいたジェレミアやリアスも息を飲んだ。

「私、一生懸命調べたんだよ。ナナリーの事。
 ねぇ、ナナリーは本当は皇女様なんだよね。あのマリアンヌ様の……」

 違う、なんて言えなかった。ずっとつき続けてきた嘘。
 もうこれ以上、リリーシャお姉ちゃんに嘘はつきたくなかった。

「でも外は危ないから、ナナリーは外に出られないんだよね。
 ずっと不思議だったんだ。お医者さんに行くときも、ずっと誰かが傍にいて、私だけじゃなくてナナリーにまで帽子と眼鏡を渡してくれた事。
 ナナリーにはそんなのいらないのに。だから、解っちゃったんだ」

 子供は、見ていないようで大人の何倍も見えている事もある。
 常識や思い込み。
 考える事に邪魔になるものが無いから、時に子供は一足飛びで答えに辿り着く事がある。
 知らなくても、感じる。
 大人の振り撒く気配を、無垢な心は敏感に感じ取る。僅かなつぶやきを聞いてしまう。

「ごめんなさい。
 今まで嘘をついてて、ごめんなさい」

「ううん、いいの。ナナリーが誰でも、ナナリーはナナリーだもん」

 不意に、リリーシャの瞳が不規則に揺れた。
 それまで二人の邪魔をしないようにじっと立っていたジェレミアとリアスが、思わず前に出てベッドに手をつく。
 最後の時が、近づいている。

 嫌だ。お姉ちゃんが死んでしまうなんて嫌だ。もう、失いたく何てない。
 なのに私は、なんでこんなにも無力なんだろう。嫌だ。逝かないで、お姉ちゃん。

「だからナナリーに、最後のプレゼントをあげる。
 私を、私の全部をナナリーにあげる。ナナリーは皇女様だけど、私はどこにでもいる女の子だから危なくないよ。
 これからは、私の分も、生きて。私が出来なかった事、たくさんして。
 ナナリー、大好きな私の友達。私の、大切な、皇女、さま……」

 ゆっくりと、リリーシャの瞼が、閉じた。


「……お姉ちゃん?」


 いくら呼びかけても、返事は返らない。
 何度ゆすっても、もう応えてはくれない。


「お姉ちゃぁぁーーーーん!!」


 リリーシャの部屋に、ナナリーの絶叫が響いた。






 / / / / / / / / /






 リリーシャの葬儀が、しめやかに営まれる。
 ナナリーはその間中ずっと泣いて、棺が埋められる時に泣いて、墓標に刻まれたリリーシャの名前を見てまた泣いた。
 泣いて、泣いて、泣いて。
 涙なんかもう出ないんじゃないかと思ったけれど、リリーシャよって開かれた瞳からは雫は止め処なく流れ続けた。
 その内に空からも雫が落ちてきて、まるで空も泣いてくれているみたいだと思った。

「お姉ちゃん……」

 一言。言葉にするだけで、また涙が流れる。
 やっとまた見えるようになったのに、もう大好きなリリーシャお姉ちゃんの姿を見れない事が悲しかった。
 お姉ちゃんの居ないベッドで泣き続けて、夜が来て、朝が来た。

「ん、」

 朝をカーテンの向こうに感じる。
 泣いている内に眠ってしまったらしい。頬にはまだ、涙の跡が残っている。

「あ……」

 何かに背中を押されたように、ナナリーはベッドから降りた。
 身体が早く、早くと叫ぶ。
 何もかもがもどかしくて部屋から飛び出したナナリーは、精一杯の力で廊下の窓に打ち付けられたカーテンを掴んで、引きちぎった。


「――――――ッ!!」


 途端に降り注ぐ朝の光。
 リリーシャお姉ちゃんと一緒だった頃は、実は太陽の光なんて大嫌いだった。
 光はお姉ちゃんを傷つける。自分には太陽みたいなリリーシャお姉ちゃんがいるから、本物なんて無くても平気だった。
 けれどそれは、お姉ちゃんに寄りかかっていただけなんだといま解った。
 私は眼と一緒に、心まで閉ざしていたんだと知った。

「花、空、草、土……」

 赤、青、緑、黄色にこげ茶色。水色、黄緑、朱色、黒、白、紺色、紫色。
 目の前に、色とりどりの世界が広がっている。
 雨のしずくをいっぱいに浴びて、太陽の光をいっぱいに浴びて、キラキラと輝いている。
 ナナリーはたまらずに、窓枠を乗り越えて外に出た。

「リリーシャ、お姉ちゃん……」

 足の裏に雨粒を感じる。芝生の感触、石のごつごつとした感じ。
 リリーシャお姉ちゃんが私に見せたかったのはこれだったのだと、ナナリーは思った。
 自分はカーテンの陰からこっそり覗くしかなかった世界を、その全身で感じて欲しかったのだと。


 ――――――世界は、こんなにも綺麗だから。だから、嫌いにならないで!


 不意に、そう聞こえた気がした。


「リリーシャお姉ちゃん。私、頑張るから。お姉ちゃんの分まで、頑張るから!」


 太陽の光の中に、大好きなお姉ちゃんの息遣いを感じる。
 力強くそう誓った彼女の瞳に、もう涙は無かった。










「リアスさん、ジェレミアさん。お願いがあります」

 その日の夜。
 夕食の後、ナナリーはリリーシャの母と兄を呼びとめた。
 ここ数日は眼もうつろで、食事の後はすぐに部屋に篭ってしまっていたナナリーの変化に、二人は顔を見合せながらも頷く。

「何ですか、ナナリー?」

 躾に厳しいリアスは、たとえナナリーが本当は皇女であろうとも特別扱いはしなかった。
 今は自分の執事の娘ということになっているのだから、敬称も付けない。あくまでもリリーシャの友人であり、遊び相手として彼女を扱う。
 彼女が居なくなってもそれは変わらないのだという事が解って、ナナリーは嬉しかった。

「私、決めました。あの時、リリーシャお姉ちゃんがくれたものを私は受け取ろうと思います。
 私を、リアスさんとジェレミアさんの家族に。“リリーシャ”にして下さい」

 拳を強く握り、視線はただ前に向けて。
 背筋をまっすぐにのばして、ナナリーはハッキリと言葉にした。

「……ナナリー殿下、本気ですか?」

 ジェレミアが驚きの声を彼女に向けた。余りの驚きに建前すら頭から吹っ飛んでいる。
 それを見たリアスは、息子もまだ若いとため息をつく。
 ナナリーの眼を見た瞬間、彼女は、それを否定する事も疑問に思う事も止めた。
 高貴なる紫を宿す瞳からは、強い意志がにじみ出ている。
 だが決意は聞いておかなければならない。

「貴女の歳ならばもう解っているのでしょう?
 私の娘になるという事は、貴女の本当のご両親と兄上を捨てるという事。
 皇帝陛下やマリアンヌ様、ルルーシュ様を裏切ることになるのよ?」

 嘘というものは、一度ついたら中々取り消せない。こんな人生を決めるような重大な事柄ならば尚更だ。
 だからナナリーは持っていなくてはならない。
 この嘘を一生つきとおす覚悟を。咎を背負う決意を。
 しかしナナリーの口から発せられたのは、その事への否定の言葉だった。

「いいえ、私は“ナナリー”も捨てません。
 そんなこと、お姉ちゃんは望んでいなかったと思うから。
 だから私はナナリーであり、リリーシャでもあるように生きようと思います。
 私はお母様に貰った脚で外に出て、お姉ちゃんに貰った眼で、この綺麗で残酷な世界の全てを見てみたいと思うんです。
 そしてお母様とお兄様とお姉ちゃんと、リアスさんやジェレミアさんや、これまで出会った全ての人に貰った優しさを、世界中の人に分けてあげたいんです。
 だからお願いします。
 リリーシャお姉ちゃんを私に下さい。私を、リアスさんの娘にして下さい」

 そう言ってナナリーは、小さな頭を精一杯下げた。
 彼女の発した言霊はリアスを打ち、胸へと吸い込まれる。
 眼の前にいるこの子は、もう日本に人身御供として送られた儚い姫ではない。
 雨が降って地面が固まるように、リリーシャが死んで流し続けた涙が、この子を強くした。リアスの娘の命が、この子を磨き上げた。
 ナナリーは今、心を開いて全身で世界と向かい合っている。

 リアスは、知らずに胸元を握りしめた。
 眼の前にいる、この少女が教えてくれた。
 リリーシャが生まれた意味を。愛娘は、務めを果たしたのだとリアスは確信した。

「ナナリー、貴女の決意は解りました。けれど、その道はとても険しい。
 そう言う私もまだ人生の半分くらいしか知らないけど、それでもここまで一生懸命に、全力で歩いてきたわ。
 なのに貴女は、それを人の二倍歩くと言ってるの。それでもいいの?」

「はい、私はもう決めました。リリーシャとナナリーと。
 二つの名前を持って生きていきます。どっちも、私にとって本当の名前にしたいです」

 即答だった。揺るぎない声と、眼光。
 ナナリーはお転婆なリリーシャの事を太陽に例えたけれど、それは違う。
 リアスは、このナナリーこそが太陽だと思った。

 あの子の願いは、あの子の希望は、このナナリーの中で生きている。
 そしてそれを受け止められるだけの器と心の強さが、ナナリーにはあると確信した。
 時に地平線に隠れる事はあっても、この子は決して挫けず、再び東の空に昇るのだろう。

「貴女の想いは解ったわ。その願い、叶えましょう。
 だからナナリー……いいえ、リリーシャ。ひとつだけ約束してくれる?」

 眼を細め、この手から喪った愛娘を想う。
 あの子なら、絶対にこの約束をナナリーにさせたと思ったから。

「私のことを、ちゃんと『お母さん』って呼ぶのよ。ジェレミアの事も『お兄ちゃん』って呼びなさい。私たちはもう貴女の家族なんだから、辛い時は頼っていいの。
 貴女はこれから、人の二倍の苦労をすると思うわ。だから貴女には、人の二倍、頼る人が必要よ。いいわね?」

「~~~~っっ!!」

 リアスが言葉に込めた、親愛の情。
 これは予想外だったのだろう。
 怒鳴られる事も覚悟して、震える手を力いっぱい握りしめて胸の内を言葉にしたナナリーの心が弾けた。
 まだまだ幼い女の子が決めた精一杯の想いは、正しくリアスとジェレミアに伝わった。
 自分を見るリアスの眼も、ジェレミアの眼も優しさに満ちていて、ナナリーは溢れる涙を止められなかった。


 ――――私、頑張るから!


 そっと、ジェレミアがハンカチでナナリーの涙を拭った。
 そしてリアスが、彼女の小さな身体を抱きしめる。
 新しい母に縋り付いて泣き、ナナリーはそのまま彼女の胸の中で眠りについた。
 温かさに包まれてナナリーが夢で見たのは、リリーシャと笑いあう光景。


 リリーシャお姉ちゃん、私、貴女の分まで頑張るから!
 お姉ちゃんがやりたかった事。全部やるから!
 だからありがとう。私に新しい家族をくれて。

 私はお姉ちゃんに出会えて、本当に良かった。
 お姉ちゃんに会えたから、私は前に進めるようになれた。

 だから、本当にありがとう。
 私の大好きな、本当に大切な、リリーシャお姉ちゃん。


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