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No.16004の一覧
[0] ― 閃光の後継者 ― 【ギアス一期再構成】[賽子 青](2012/08/30 12:44)
[1] Stage,01 『白い騎士』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[2] Stage,02 『はじまりの合図』[賽子 青](2012/08/29 01:46)
[3] Stage,03 『黒い仮面』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[4] Stage,04 『一対の炎』[賽子 青](2012/08/29 01:53)
[5] Stage,05 『空からトラブル』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[6] Stage,06 『嵐の前』[賽子 青](2012/08/29 01:51)
[19] Stage,07 『粛清』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[20] Stage,08 『皇女』[賽子 青](2012/08/29 20:43)
[21] Stage,09 『嘘と真実』[賽子 青](2012/09/06 21:31)
[22] Stage,10 『7年前』[賽子 青](2012/08/30 20:08)
[23] Stage,11 『リリーシャ』[賽子 青](2012/09/01 13:43)
[24] Stage,12 『新しい決意』[賽子 青](2012/09/06 21:30)
[25] Interval 『再会』[賽子 青](2012/09/06 21:27)
[26] Stage,13 『介入者』[賽子 青](2012/09/05 21:50)
[27] Stage,14 『サイタマゲットー』[賽子 青](2012/09/06 21:26)
[28] Stage,15 『不穏な影』[賽子 青](2012/09/11 22:26)
[29] Interval 『騒乱の種』[賽子 青](2012/09/12 00:31)
[30] Stage,16 『奪われた剣』[賽子 青](2012/09/13 22:41)
[31] Stage,17 『交錯する閃光』[賽子 青](2012/09/15 13:42)
[32] Stage,18 『ゼロを騙る者[賽子 青](2012/09/20 20:54)
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[16004] Stage,18 『ゼロを騙る者
Name: 賽子 青◆e46ef2e6 ID:e3b5ec25 前を表示する
Date: 2012/09/20 20:54
 サイタマゲットーの地下。
 かつて日本だった時代に作られた雨水排出用の地下水路に、硬質な革靴の音が反響する。
 ブリタニア軍の歩兵装備をまとった青年――――ルルーシュは、まるで持久走のように軽やかにリズムを刻みながら走っていた。
 彼の息は確かに上がっているものの、息使いに乱れはない。

「はっ、はっ、はっ」

 あの時、異母姉でありこのエリア11の総督であるコーネリアの策に絡めとられ絶体絶命だった彼は、突然現れたイレギュラーに救われた。
 咄嗟に策を構築し、功に焦る純血派の部隊に紛れ込んだルルーシュは、彼らに合わせて前に出る。
 恐慌状態を演じるために『バケモノめ!』と叫びながら突撃するが、直後、槍の穂先を捕まれて絶句する。

 斬られることまでは想定内だったが、捕まれることまでは考えていなかった彼は一瞬固まった。
 ハッと我に返り、シートのインジェクションレバーを引くが間に合わない。
 穂先を斬られ、さらにMVSを握る右拳でコックピットを殴りつけられる。
 それほど強く殴られたわけではないが、ジェット噴射の始まったコックピットブロックの制動を失わせるにはそれで十分だった。
 ナイトメアの動きへの深い理解を伴った攻撃によって直線的に打ち出される。

 それを受け止めたのは純潔派のリーダー、ジェレミアの騎乗するサザーランド。
 彼によって急死に一生を得たルルーシュは、素直ではない口から感謝の声を漏らして大急ぎで戦場を脱出。今に至るというわけである。










コードギアス
    閃光の後継者

Stage,18 『ゼロを騙る者』









「くそっ!!」

 ここまでくれば安全だろうと、彼は足を止めて息を整える。
 そして煮えくりかえる感情のままに、地下道の壁を殴りつけた。

 完全なる敗北だった。

 相手は正規軍であり、こちらはテロリスト。
 それは解っていたが、前回の事もあって少々楽観していたのかもしれない。
 もしくは『ブリタニアの魔女』たる異母姉の力量を見誤っていたか。

 両方だと彼は再び壁を叩く。

 このままでは勝てない。ならば諦める? あり得ない!
 自分は既に異母兄のクロヴィスを手に掛けた。退路などもう無いのだ。

 母を殺した犯人の特定と復讐。
 妹ナナリーの捜索と保護。
 そして親友スザクとの約束。
 いくつもの目的が彼を突き動かし、成さねばならないことを教える。自分の目的は、神聖ブリタニア帝国を打倒すること以外には達成されない。
 自分にはあの腐りきった国を叩き潰す理由が十二分にあるのだと、ルルーシュは吠えた。
 ならば、今、すべきことは―――――――

「ちっ!」

 思考に埋没出来るのはそこまでだった。
 突然、自分の後ろから響く足音。
 ルルーシュにしてみればいきなりそこに現れたように感じる。

 彼が素早くヘルメットで顔を隠すと同時に、地下の暗がりの中を悠然と歩み彼の前に現れたのは、ゼロ、だった。
 ゼロはルルーシュの聴覚が足音を捉える瞬間まで、一切の気配を消し去っていた。
 己の存在を知らせるために靴音を鳴らさなければ、腰に挿した剣で彼を一刀で切り捨てることも可能だっただろう。

「何の用だ、ゼロ」

 そんなことには気づかず、ルルーシュはゼロに銃を向ける。
 一方のゼロはルルーシュの手前まで歩み寄り、何を言うでもなくそこに佇む。
 見る者が見れば、ゼロの取った位置取りは一足一刀の間合いであり、立ち姿も四肢から力を抜いて両脚に均等に力をかけた無形の位――――理想的な“構え”である事を読み取っただろう。
 恐らく彼にルルーシュを害する気があれば、刹那の間にゼロは腰に差した剣で彼の首を落とせたに違いない。

 日々、ブリタニアに見つからないように気を張っているルルーシュは、今になって自分の迂闊さと状況の悪さにひそかに息を呑んだ。
 ヒヤリとしたものが背筋を落ちる。

「ほう。そう呼ぶということは、私に『ゼロ』の名を譲るということか?」

「何を言っているか解らないな、ゼロ。
 私はブリタニア軍人だ。貴様を拘束する義務がある」

 ばれているのか、それともカマをかけているだけか。
 どちらにしても突っぱねる以外の選択肢はない。
 動揺と苛立ちを精神力で抑え込み、ルルーシュは目の前のゼロを観察した。
 トレードマークである黒い仮面はオリジナルである自分のものとそっくりのようで、細かい部分の造形が違う。服も同様だ。
 間違った部分の配置から、恐らくはあのオレンジ事件の時の映像を元に作ったのだろうと彼は予測した。

 一方、その中にある人物についてはまるで予測がつかない。
 服の下のツナギを押し上げる僅かな膨らみは、胸と下腹部の下の両方にある。
 ならば、男性的な骨格と筋肉のラインも本物であるかどうかわからない。
 性別すら悟らせない抜け目のなさにルルーシュは舌を打った。
 自分のものとそっくりに加工された変声機ごしの声も、ひどく彼を苛立たせる。

「こんな戦場から遠い所で待ち伏せていたとでも? 笑わせる」

「――――ッ」

 言うや、殺気がルルーシュを打つ。
 硬直した時には既に、彼が持っていた銃は叩き落とされていた。
 紫電の様な踏み込みからの、抜き打ちの一閃。
 日本武道における居合い抜きの要領で放たれた一刀が銃の遊底を薙ぎ払うと、銃は数度バウンドして水の中に落ちた。

 ルルーシュがその一瞬の出来事に呆気にとられている間にさらに踏み込んだゼロは、左手で彼の襟を掴むと脚を払ってコンクリートに投げ飛ばす。
 そこに突き付けられる剣の切っ先。
 喉元に鋭い刃の切っ先を当てられ、ルルーシュはもう動く自由すら奪われた。

 今ほど、ゼロの仮面を一切の光を通さないようにした事を後悔した事はない。
 ルルーシュの持つギアス、死すらも与える事が出来る“絶対尊守”のギアスは、相手と視線を合せなければ発動しない。
 光情報をもって相手の大脳に作用する仕組みのため、鏡などで反射が可能な反面、今のように光を通さないバイザー等には全くの無力だった。

「そこまでにしてもらおうか。
 そいつは私の契約者だからな、死なれては困る」

 何とかしてその仮面を外させなければ、そればかりを考えていた彼の頭上から、ひどく平淡な救いの声が舞い降りた。
 喉元に突き付けられた細身の西洋剣の動きに注意しつつ、慎重に首を動かすと、そこには人形めいた美貌をもつ緑髪の少女の姿がある。

「C.C.!?」

「ふん、助けに来てやったぞ。全く世話の焼けるボウヤだ」

 いつもの白い拘束衣から、ルルーシュの私服である茶色のジャケットジーンズに着替えた彼女は、右手に握る拳銃をピタリとゼロの心臓に合せていた。
 C.C.のいる位置は、ルルーシュとゼロから約5メートル離れている。
 彼女の射撃の腕がどれほどかは解らないが、胴体を狙うならばまず外す事はないだろう。

『ほう、そんなものを私が恐れるとでも?』

「少なくとも、心臓を撃ち抜かれれば生きてはおれないと思うが?」

 カチリという操作の音がやけに地下道に響いた。
 C.C.の持つ銃のレーザーサイトから赤い光線が飛び、光はマント越しに心臓を照準する。
 しかしそれでもC.C.が引き金を引かないのは、銃弾が当るよりゼロの剣がルルーシュの喉を裂く方が早いと判断しているためだ。

「―――――」

 最も有利な立場にあるC.C.だが、彼は最も不利なルルーシュと一蓮托生であるが故に膠着。沈黙が支配する。
 それを破ったのは、ゼロの機械のごしの声だった。

『ふん、まぁいい。今日はあいさつに来ただけだったことを忘れていた。
 ルルーシュ、覚えておく事だ。あまり調子に乗るようなら、私がこの首を刎ね飛ばそう。
 それとも銃弾の方がお好みかな? 君の母のように……』

「――――ッ! 貴様!?」

 付け足された一言に、ルルーシュの感情が沸騰した。
 コンクリートに両肘をついた状態から跳ねるように上半身を起こし、素早く反応したゼロに胸板を踏まれて再び地面に叩きつけられる。
 反射的にC.C.の右の人差し指に力が篭るが、それよりも早く動いた切っ先がルルーシュの首を浅く傷つけた事で動きを止めた。

「安いなルルーシュ。この程度の挑発に乗るとは。
 その激情が貴様の美点だろうが、同時に欠点でもある。
 覚悟はあっても感情がついて行かないなら、まだまだ子供だ


 つま先をこじり、体重の乗ったゼロのブーツがルルーシュの胸を圧迫する。
 胸に感じる鋭い痛みに、ルルーシュの端正な顔が歪んだ。
 彼は更なる苦痛に備えて一層の覚悟をもってゼロを睨むが、しばらく彼の顔を見ていたゼロはその脚をすんなりと放す。
 それどころか、何を思ったのか剣すらも鞘にしまい込んだ。
 鞘の鳴る音が地下道に思いのほか大きく響き、困惑のみがルルーシュには残る。

「何の真似だ?」

『なに、用が済んだのでね。帰るだけだよ。
 今日はあいさつだけだと言っただろう?
 次はこの仮面を外してお逢いしようか、ルルーシュ皇子。それと――――』

 とん、という軽い音と共に、ゼロの身体がかき消えた。
 少なくとも、寸前まで会話をしていたルルーシュの目にはそう見えた。

 何処だと首をめぐらせれば、仮面の騎士の姿はC.C.の前に在る。
 ワープ等と言ったSFめいたものではなく、ただ単純に素早く、かつ悟られぬ様に動いたのだと翻るゼロのマントが教えていた。

「こんな物をいつまでも向けたままにしないで貰おうか。不愉快だ」

 動くと同時にC.C.の右手に在る拳銃を鷲掴みにしたゼロは、流れるような動きでC.C.の手首を極めて銃を奪い取り、地下水道に捨てる。
 そのまま振り返ることすらせずに悠然と歩き去る後ろ姿を、唖然としたままのルルーシュは見送った。

「ハハッ、無様だなルルーシュ。
 コーネリアに完敗して、さらにゼロの仮面まで使われてしまったぞ?
 とうやら一筋縄ではいかないようだが、どうするんだ? お前は」

 嘲笑うような、焚きつけるような、試すような、からかうような……
 いか様にも表現でき、しかし言葉を尽くしても説明しきれない様な声音で、魔女はルルーシュへと言葉を投げかける。
 けれどそれに返ったのは、およそ彼らしくない覇気のない声。

「条件が同じならば……」

「どうした?」

 負けはしなかった、などと言いきれず言葉に詰まった。
 コーネリアの率いる親衛隊の、圧倒的な組織力。
 その親衛隊をたった一騎で蹴散らす正体不明の存在。もうひとりの“ゼロ”
 自分の思い通りにいかない世界。それすら覆す理不尽で絶対の力の存在。
 今日、己の道の厳しさをルルーシュは知った。

「怖気づいたか? ルルーシュ。
 貴様の覚悟はその程度だったのか? とんだ見込み違いだな」

 だがその程度で挫けるならば、そもそも反逆など志しはしない。

「まさか、認めてやるさ。今日は俺の負けだ」

 顔を伏せ、震えながら言葉を紡ぐ。
 人一倍高い彼のプライドは、粉々に打ち砕かれた。しかし、それ故に彼は前に進める。
 奥歯で音を鳴らし、拳を血がにじむほど握りしめて、彼は顔を上げる。

「だが、今日だけだ。次は無い 足りないと言うなら創ってやる。
 ブリタニアにも、あの偽物にも負けない、俺の軍を、人を、国をだ!
 ゼロは俺だけだと、この世界に教えてやる!!」

 ゼロは、反逆の象徴。
 未来を決める宣言は、C.C.だたひとりを立会人に、世界に向けて放たれた。



 / / / / / / / / / /



おまけ『そのころのリリーシャ』


「ねぇ、リリーシャ少尉……」

「なんですか? エリノアさん……」

 コーネリア親衛隊所属の少女と、広報部勤務の青年はは、一心不乱に白い魔物に立ち向かっていた。
 十人は座る事の出来るテーブルの木目など見えない。ひたすらに白白白、ときどき黒インクと朱肉の赤。灰色のキーボード。
 書類の山。ノートPCの群れ。死屍累々。

「いったい何時終わるんでしょうね?」

「知りません。わかりません。ごめんなさい。
 でも文句はデータを置いていたブースをヴァリスで吹っ飛ばしたゼロに言って下さい」

「………」

「………」

「………」

 流れ弾って、なんで不思議と一番都合の悪いものに当るんでしょう?
 ああ、無言で視線も書類から離さずに、しかし耳だけはしっかり反応させている皆様の声なき声が痛いです。カチカチと鳴るタイプ音が刺さります。

 誰かが「エンターキーは叩くもの」と言われました。
 その通りだと思います。
 時折聞こえる大きな音が聞こえる度に身体に電気が奔ります。
 何件かあったイレブンとのいざこざも、テロリストの自爆テロ未遂も、この空気のよりは何倍もマシです。

「うう、ゼロは悪魔です。卑劣です。なんて、なんて酷い……」

「何を解りきった事を言ってるの? さっさとやりましょう」

 こんなの、いつもの優しいエリノアさんじゃないぃーーー……

 気の抜けた断末魔の悲鳴のような声とともに、リリーシャは白い魔物の束に突っ伏した。
 書類地獄はまだまだ続く。

 はぁ、窓枠に切り取られた空が青いです。


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