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No.16611の一覧
[0] エミノート(Fate×デスノート)[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:12)
[1] プロローグ1[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:53)
[2] プロローグ2[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:54)
[3] プロローグ3[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:54)
[4] プロローグ4[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:54)
[5] プロローグ5[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:55)
[6] プロローグ6[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:55)
[7] プロローグ7[蒲生ゆひ](2010/02/19 03:55)
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[16611] プロローグ4
Name: 蒲生ゆひ◆980efe31 ID:4db69d89 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/19 03:54

くそがああああああああああ。
この、これからの世界において、絶対の正義となるはずの俺がああ!
こんなところでえ!
聖杯戦争、始ってすらいないところでえええ!
殺されるなんてえええええ!
うわああああああ、じいさあああああん!


「はっ」

悪夢の中、目が覚める。

気づいたら自分は、広いグラウンドの隅で寝ていた。
周囲には誰もいない。

夢……?
いや、でも俺は確か、青い男に殺されて。
どういうことだ……?

額にたまっていた汗が、制服にこぼれおちる。
そして気付いた。
制服の心臓部分には、赤い血の跡と、穴が開いていた。
その割に、肝心の胸には傷一つない。
さっきの青い男が、夢ではなかったことを思い知らされる。

『おっ? 起きたか』

視界の外にいたのか。
リュークが、上空から声をかけてきた。

「ど、どういうことなんだ、リューク。
俺は確か、青い男に槍を刺されたんじゃ?」

『ん? ああ、そうなんだけどさ。
なんか知らんけど、女が治していったぜ』

「女……?」

どういうことだ?
あの青い男のマスターか?
それとも赤いほうの……?

『いやー、初めて見たぜ。
すごいんだな、魔術って』

「……」

助けられた……?
この俺が……。
魔術師に……?
この世界の、諸悪の根源である魔術師に……?

「……」

『どうしたんだ、シロウ?』

ジクジクと痛み出す胸。
クラクラとする頭。
吐き気と闇、そして目の前の死神だけが今の俺の現実だった。











エミノート











くそっ!
この俺が魔術師に助けられるなんて……何ていう屈辱だ。

『助かったんだからいいじゃないか。
お前ってそんなにプライド高かったっけ』

「……。
キラによって犯罪が極力抑止されたこの世界……。
それでも行方不明者が多いのは何故だ。
気がつけば家一つ無くなってるのは何故だ。
あげくのはてには街一つが死滅させられることもある。」

その背景には―――必ずといっていいほど、魔術師の影がある。
調べれば調べるほど、情報を収集すればするほど。
魔術師というものが、どれだけ社会に、微量ながらも確実に影響を与えているかが分かる。

「奴らの実験のせいで、どれだけの無関係な人間が血を流したか……」

『……。
別に、人間と同じで、魔術師も全部が全部、悪いわけじゃないだろ。
お前だって、それで助かってるじゃん』

「そうだ。
だからこそ、俺は自分で自分が許せない」

自分の中の信念が、少しだけぶれようとしている。
剣が、さびるように。
それが―――自分の中で、屈辱的だった。

絶対の正義になるはずの自分が、こんなにも弱く、もろいのだという事実を、直面させられたような気がして。

「…………帰ろう、リューク」

『お前ってホントに頑固だな……』





「今気付いたが、嫌な予感がする」

『何だ、どうしたんだ』

魔術師のことを忘れ、今のこの状況を考えると。
あることに勘づいた。

家までの道すがら、俺は呟く。

「さっきの青い男―――俺が死んだかどうか、確認とかしないかな」





予想通り。
部屋でデスノートをいじっていたとき、警報は鳴った。

「……リューク」

『どうした』

「俺は今日、泣くかもしれない。」





振るわれる槍。
それをうまいこと避けたとしても、飛んでくる蹴りまでは防げなかった。

吹っ飛んで行く体。
土蔵の壁に叩きつけられ、肺から空気がなくなるくらい、息を吐く。

「り、リューク。
俺は、このデスノートってやつで、知略を挑むつもりだったが―――いきなり肉弾戦でぼこられるとは、思ってもいなかったよ」

呟く。
どこかを切ったのか、頭から血が流れるが、それでもこんな減らず口が叩けられるあたり、頭は冷静なようだ。

「何なんだ、てめえは?
魔術師でも何でもねえ一般人のわりに、どうして生き返ってやがる」

目の前の男が、暴力的な口調で悪態をつく。
くそ……こんな全身タイツにここまでやられるなんて。
何て無様だ。

『デスノートには顔と名前が必要……こんな奴に、名前を聞くなんてできないなあ、シロウ』

俺にだけ見えるのだろう、リュークが、青い男の背後から言う。
まったくだ。
こんなにも問答無用でフルボッコにされるような奴に、名前なんて聞いても一蹴される。

っていうか、名前を書く暇なんてない。

「ふざけるなよ……この、絶対の正義の味方である俺が―――」

それでも、どうにかしなければならない。
二度も黙って殺されるのはごめんだ。

命乞いでも何でも、どうにかして、名前を聞きださなければ。

「ま、待て。
待ってくれ、話し合おう」

懇願する。
男の眼には、さぞや自分は無様に映っただろう。

「あぁ?
お前と何を話せっていうんだ」

「……俺は正直、何故自分がこんな目にあっているのか、さっぱりわからない」

「―――」

「だが、自分がお前に殺されるということは分かる。
その前に、名前を教えてくれないか?」

「名前だと?」

「そうだ。
俺は……名前も知らない奴に、殺されたくなんてない」

「―――」

押し黙る男。

くそっ。
だめか……。
そうだ、サーヴァントにとって真名というのは重要な意味を果たす。
俺のような見ず知らずの奴に、教えてくれるはずが―――。


「―――クー・フーリンだ」






!?

「クー・フーリンだ。
覚えておけ」

何を思ったのか、青い男は自らの真の名を、自ずから名乗った。
これが英雄。
なんという義理堅さ。
それがどういう意味を持つかも、分からずに。

『くっくっく、言ってみるもんだな。』

ああ、本当だ、言ってみるものだ。
まさか本当に素直に教えてくれるとは。

クー・フーリン……後はこれを、ノートの切れ端に書けば……。

「おい、もういいか?
そろそろ、お前を殺したいんだが」

「い、いや、待て! 待ってくれ、タンマ!
その名を、メモしておきたい。
俺は書かないと覚えられないタイプなんだ!」

「……注文の多い野郎だ。
じゃあ、1分待ってやる。
これも情けだ……何も知らねえ野郎を殺すなんて、寝覚めが悪いからな。
ただし、時間になったら確実に殺すからな」

!?

一分……だと。
一分もくれるのか。
一分あれば書きこんでから45秒まで、ギリギリ間に合う。

何て馬鹿な奴だ。
その油断と慢心、義理堅さが、お前の命取りだ。


ズボンのポケットに入れてあった、デスノートの切れ端を取り出す。
……!
やべえ、ペンがねえ!

俺は馬鹿か!
切れ端だけいつも持ってても、書くものがなければ意味がない!
何でこんなこと、今まで気づかなかったんだ、くそが!
ちくしょう!
やむをえん!

俺は、右手の親指を噛む。
そしてそのまま―――表面を噛みちぎった。

力を入れすぎたか、親指から勢いよく血が噴き出した。

「おい……お前、そこまでして俺の名をメモりたいのか……」

青い男は言った。
くそ、俺だって好きでこんなことをしているわけじゃない!

さっさと名前を書かないと。
たとえ血であろうが。
うわ、書きにくい。

『クーフーリン』

切れ端いっぱいを使いながらも、なんとか書きあげる。
血というのは、予想以上に書きにくかった。
書きだすまでに13秒……心臓麻痺までの時間を考えると、本当にギリギリだった。

『くっくっくっくっく』

リュークの笑いが、妙に耳ざわりだった。





「そういやお前、何で生き返ってんだ?
魔術師じゃないのか?」

「違うよ……気づいたら何故か生き返ってたんだ。
俺にも、よく分からない。」

いくらか、男と雑談をしながらも、40秒が経過した。

―――あと五秒。

死ぬかとも思ったが、どうやら何とかなりそうだった。

危ないものだ。
さすがは聖杯戦争か。

3、2、1


「一分だ。
じゃあ、殺すぜ」

――――――。

…………。

……。

!?
!?


え……えええ!?



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