やぁやぁ、皆さんこんにちは。アルビオン王国第2王子のヘンリーだよ。
実は皆さんにご報告があるんだ。
それはね
結婚することになったんだ。
相手はアルビオン王国の名門ヨーク大公家の公女キャサリン・ハロルド・ヨークっていうんだ。可愛い名前でしょ?僕と同い年の20歳なんだよ。
あれ?
・・・・どぅええええええええええ????????!?!?!?!?!?
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ハルケギニア~俺と嫁と、時々息子~(子の心、親知らず)
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「いや、お。おま、ちょ、ちょちちょ・・・・」
「で、殿下、すこし落ち着いて下され」
アルバートに代わってヘンリーの侍従になったエセックス男爵(塩爺)が、混乱する自らの主人を必死に落ち着かせようとする。
「ヘンリーよ、嬉しいのはわかるが、少し落ち着かんか」
「でででで、でもの、その、あの、そのそそそそそ、ちちうえうえうえ?!」
エドワード12世は自らの息子の乱心ともいえる言動に困惑していた。
元々、好奇心旺盛な性格で、何にでも興味を持つ息子であった。それが長じるにつれて、新しい政策を考え出すきっかけとなったようで、最近では政治に積極的に関わり、そのいくつかは目覚しい結果を出している。エドワードは息子の成長を喜んだ。真面目だが頭の固いところのある皇太子のジェームズを補佐するには、柔軟な思考を持つヘンリーの様なタイプが望ましいと考えていた。将来は兄を補佐して、国を支える柱石になって欲しい。
そのためには何が必要か?
(まず身を固めさせんとな)
エドワードは、性格というものがそう簡単に変えられるものではないということを経験的に知っていた。ヘンリーも今年で20歳、いつ結婚してもおかしくない年齢だ。こやつの落ち着きのなさは生来のものであろう。結婚すると人は自然と受身に、守りの姿勢になる。ヘンリーが人間として成長する上でも、政治家として一皮向けるためにも、一刻も早い結婚を・・・王はそう考えた。
国王には第2王子を「トリステインに婿養子に出す」という考えは「全く」存在しなかった。
原作展開を知るはずもないエドワード12世。当然、目の前の王子の錯乱状態の理由は知るはずもない。ましてや、それが自分に原因があるとは
「あわんわわあわわわわ・・・・あれ、あのそうのう、そ、す、そ、」
やれやれ・・・エドワードは苦笑した。政治では年齢に似合わない慎重な行動をとる息子も、人並みの「恥ずかしい」という気持ちがあるのか・・・いや、こやつは元々感受性の強い性格であったな。最近、子供達に『スキンシップ』を嫌がられ、寂しい気持ちを覚えることの多かったエドワード。息子の見せる過剰ともいえる反応に、困惑と同時に、ちょっとした懐かしさと嬉しさも覚えていた。
親の心子知らず
逆もまた真なり
子の心親知らず
「どわなお・・・おあにな、け、けけけけけけけえええええ・・・・!」
「結婚でございます、殿下」
エセックス男爵が、もはや落ち着かせることを諦めてつぶやく。
「け、け、結婚?!」
「そうでございます」
「誰が!?」
「殿下でございます」
「だ、だ、誰と?!」
「ですから、ヨーク大公のご息女であられる、キャサリン・ハロルド・ヨーク・・・」
「だ、だっだだだだ!誰だよそれ?!」
「ですから!ハロルド2世陛下3男がエドガー・ハロルド公を祖とし、アルビオン西部の要所、プリマスを代々受け継ぎ・・・」
「だ、だれ?!だれなの?!」
「でー、すー、かー、ら!!」
(人の話聞いてるのか、この馬鹿は!)
心中では不遜な言葉でヘンリーを罵りながら、塩爺は顔を真っ赤にしている。額に浮き出た血管は、いまにもはちきれんばかりだ。
二人の言葉はどこまでもすれ違い、互いの真意が伝わることはない。
なぜならエセックス男爵は、ヘンリーが結婚したくないという一心で駄々をこねているか、または余りのショックに現実を受け入れるのを拒否しているか、そのどちらかだと考えていたからだ。
(ならば何度でも言って聞かせるだけじゃ!)
老男爵は「瞬間湯沸かし器」とあだ名される普段の気の短さが嘘のように、何度も何度も、何度も何度も、何度も、王子に同じ言葉を繰り返す。
一方のヘンリー
(キャサリンって誰?!)
そんな言葉が頭の中で何度もぐるぐると壊れたレコードのように繰り返され、思考が停止した彼に、エセックス男爵が同じ事を何度も繰り返す。
曰く
「ブリミル暦3546年、当時のアルビオン国王のハロルド2世の3男であるエドガー・ハロルド公を祖とするヨーク大公家」
「アルビオン西部ペンウィズ半島の中心都市であるプリマスを代々受け継ぎ、歴代の国王に忠誠を誓ってきた名門大公家で、半島の南半分全土を領有する大地主」
「王家への忠誠心が高く、かの『四十年戦争』では、国土の半分が敵国に制圧されてもなお敢然と戦い続けた忠君の家柄」
etc・・・
しかしながら、ヘンリーが知りたいのはそういったことではない。大体、それくらいのことならその辺の幼児でも知っている。それくらヨーク大公家というのは名門なのだ。
ヘンリーが知りたいこと、それは
「なんで歴史が変わっちゃったの?!」
「「「「「「「「「「「お・ま・え・の・せ・い・だ!!!」」」」」」」」」」
「という数知れぬつっこみが飛んだような気がする・・・」
「何を言っておられるのですか、さっきから・・・」
目の前では両肩で息をつくエセックス男爵と、愉快そうに口髭を撫でるエドワード12世。ヘンリーはエセックス男爵の突っ込みでようやく冷静さを取り戻した。しかし、その脳内ではスパコンも真っ青の「打算」という名の計算を繰り返している。
(うおおおお!やべえ!やべえよこれは!どれくらいやばいかというと、目玉焼きに醤油じゃなくてバルサミコソースかけたくらいやべえよ!!食えないよ目玉焼き・・・って、ちっがあああう!!そういうことじゃねえってぇぇぇ!!原作崩壊どころの騒ぎじゃねえよ!!!アンリエッタ産まれねえよ!お父さんになれないよ!娘が、娘が!むすめが・・・俺がずっとコツコツ考えてきた『娘との思い出を作る45年計画』が!うおおおお~~~!!!!)
・・・こいつは
(は!アンリエッタ生まれないって事はどうなるの?!ルイズはただの胸無しツンデレまな板になるの?!!「アルビオンに恋文取りに言ってね、おねがい♪」任務は?!ないの!?!?!ワルドの裏切りは?サイトとのまな板をめぐる恋の大戦争は?!・・・・てか、そもそも『ウェールズ=アンリエッタ同君連合、いけいけ恋の同盟大作戦』はどうなるの!?)
そもそもそんな大作戦は存在しない
ヘンリーは叫んだ。心の赴くままに。叫ばずに入られなかった
「うがああああ!!!認めん、俺は認めんぞおおおおおお!!!!俺の『娘との思い出アルバム311の道のり計画』が、こんな、こんなところでえええええ!!!途中で、こんなところで!認めん!俺は認め(バキッ)へっぷ?(バタッ)
へんりーハ、タオレタ!
しおじいハ、経験値ガ「3」アガッタ!
「ヘンリー王子は喜んでお話を御受けになるそうです」
「そ、そうか」
えどわーどハ、「見て見ぬふり」ヲ覚エタ!
えどわーどハ、子離レガススンダ!