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No.17964の一覧
[0] 【ネタ】厨二な俺らの漂流記【現実→異世界】[中の人](2010/09/23 01:29)
[1] ボーイ・ミーツ・ボーイ[中の人](2010/04/17 22:23)
[2] Welcome to this crazy world[中の人](2010/05/15 00:40)
[3] Metal Wolf[中の人](2010/05/18 16:13)
[4] In The Deep forest[中の人](2010/05/31 03:11)
[5] Boy meets girl[中の人](2010/07/03 03:12)
[6] 《楽園》[中の人](2010/07/03 03:34)
[7] それぞれの夜[中の人](2010/09/08 05:21)
[8] Monster on the road[中の人](2010/09/16 04:14)
[9] 姫君と騎士[中の人](2010/09/23 01:31)
[10] 厨二病症例集[中の人](2011/03/16 09:26)
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[17964] Welcome to this crazy world
Name: 中の人◆fb9d4b16 ID:dfbc6fc1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/15 00:40
 誰かが体を揺さぶっている。
 誰かが体を揺さぶり、声をかけている。
 この心地よいまどろみから目を覚ませと、誰かがわたしの体を揺さぶり囁くように声をかけてきている。
「もう少し、寝かせて……」
 揺さぶる手を払いのけて、体を丸める。もう少し、夢の世界でまどろんでいたいと目覚めを促す声を無視して、よりよい寝心地を求めて体をもぞつかせ、固い床の感触に不快さを感じ――
「え……」
 はっと、目を覚まして慌てて身を起こす。
 こんな床で眠りについた記憶なんかない。最後の記憶との現在の状況の連続性のなさに気づくと同時に、意識は一気に覚醒へと追いやられる。
「おはよう、石塚さん。そして、お静かに」
 起き上がると同時に口元を押さえられ、聞き覚えのない声で自分の名前が耳元でそっと囁かれる。
 誰がと、視線を向けた先にあったのは同性の自分でも思わず見惚れる美しい少女の顔。ただし、その顔に浮かぶのは恐ろしく真剣な表情。
「まずは、先に言っておく。絶対に大声を出したら駄目。次に、この体の中の人は安藤智也。念のために訊くけど、そちらは石塚美琴さんでいいよね。中の人が違うということは?」
 まるで誰かに声を聞かれるのを恐れるように、吐息がかかるほどに顔を近づけ囁かれる問いかけにこくこくと何度も頷く。そうして、ようやく口元から手が離される。
「安藤……君? ここはどこなの? みんなは? なにがどうなって……ひっ、ぐむっ」
 最後の記憶は白い世界。しかし、ここは薄暗く何かの小屋の中のようで空気も何か生臭い。安藤君は女装してもこんな美少女にはならなかったはずと疑問を覚えたものの、それよりも状況を知りたい一心で矢継ぎ早に質問を口にし、辺りを見回して床に転がるナニカを目にし、悲鳴を上げかけた口を塞がれた。
「どこまで状況を把握してるかわからないから、先に言う。まず、願い事は叶えられたけど願った本人と受け取り手がランダムに入れ違ってる。そして、ここは地球じゃない。そこに転がってる死体の仲間入りししたくなければ、とにかく静かにすること。わかった?」
 安藤君が何か言っているけど、それらが全て頭の中を通り過ぎる。ひとつだけ残ったのは『死体』という言葉だけ。
 床に転がっているのは、ナニカじゃない。見てしまった瞬間から視線が離せなくなってしまったソレは、まだ若い女性の死体。酷く歪んだ形相が断末魔の苦しみを今も叫んでいるようで、半ば引きちぎられた衣服と、剥き出しにされ白濁に汚れた下肢が何があったかを無言で語り、赤黒く染みが広がる衣服の残骸が、床に広がる赤い池が。あんなに血が出ていたら生きてるはずがなくて、死んでいて。生臭いのはきっと、傷口からはみ出てる腸とか内臓の臭いで。あんな傷を受けていたら絶対に死んでいて。こちらを向いている表情は歪んでいて、とても苦しそうで。あれはやっぱり死体で。こんなの嘘で、これは夢で。目覚めたら、わたしはまだバスの中で。ああやっぱり、夢だったんだとほっとして。でも、あれ? わたし死んだような。違う、あれが夢じゃないなら、これは夢で。目が覚めたら、きっと王子様に拾われて求愛されてお姫様になって――


 ああ、くそ。いきなり惨殺死体とご対面は刺激が強すぎたか。
 智也は、死体を見つめたまま硬直し体を震わせ始めた美琴を舌打ちしたい気分で、口元を押さえたままそっと抱きしめる。
 クラスの中でも、ひっそりとしたおとなしい雰囲気の子だったが、雰囲気を裏切らず惨殺死体を目にしてあっさりと平静を失ったらしい。抱き寄せられて、縋りつくように身を寄せて、胸元へと顔を埋めて震える背中を優しく撫でて落ち着かせようとしながら溜息をつく。
 確かに、行き先は剣と魔法の世界とは聞いていた。
 聞いていたが、いきなり剣と魔法が吹き荒れている現場に放り込まれるとは聞いていない。
 耳を澄ませば、下品な声が耳に届く。悲鳴や嘆きの声も聞こえてくる。つい先ほどまでは、それらに闘争の怒号や断末魔の絶叫が混じっていた。
 気がついたらどこかの小屋の中。隣には気を失っているクラスメイト。目の前にはできたばかりの新鮮な惨殺死体。
 慌てて周囲を確認し、外から聞こえる喧騒に、窓からそっと窺った光景はしっかりと脳裏に焼きついている。刃物を振りまわす蛮族めいた粗末な衣装を着た髭面の男たち。それを迎え撃つ、やっぱり粗末な衣装を着た男たち。そして、ちょっとばかりいい装備を身につけてた男が、掌から光弾を撃ち出して髭面男の頭蓋を撃ち砕く光景が。
 自分だって、恐怖し混乱する。
 死がすぐそこにあるのだ。文字通り、板壁一枚を隔てた外側に。
 パニックに陥らないですんでいるのは、自分ひとりでなく見知った顔が隣にいたおかげだろう。そして、こうも恐怖もあらわに女の子に縋りつかれると守らないと、という意識が浮かんでくる。
 それが意識を冷ましていく。
 あるいは、人間。自分より混乱した人間を見るとかえって冷静になるという事なのか。
 美琴の背中を撫でながら、深く細く息を吐いて自分を落ち着かせていく。
 とりあえずは、この状況。おそらくは、盗賊か蛮族かが村を襲撃しているというところだろう。これをやり過ごさなければいけない。
 不本意ながらも今の自分は女で、女がどういう目にあわされるかは目の前の死体が無言で雄弁に物語っている。
 運が悪ければ犯されて殺される。運がよければ犯されて、売り飛ばされでもするのだろう。あるいは、持ち帰られて嫁にされるのかもしれないが。いずれにせよ、受け入れがたいバッドエンド。
「ああ、くそ……。こんな状況にいきなり放り込むなんて、俺たちに何か恨みでもあるのか神様……。いや、あっても不思議じゃないか」
 思わず神を呪う台詞を口走り。こんな世界へと跳ばしたヤツの顔を思い出して、そういえば神になったとか言ってかと溜息を漏らす。
 クラスの問題児扱いで、悪意漂う陰湿な悪戯をよくされていた。そんな扱いを受けていれば、恨みのひとつやふたつあっても不思議ではない。言動も態度も善人の親切という雰囲気だったが、アイツなりの意趣返しだったとしても納得できる。
 とりあえずは、この状況を無事に切り抜けるにはと溜息をつきながら考えを巡らしながら、優しく囁きかける。
「石塚さんは、どんな能力を?」
「え……?」
 何を言われてるのかわからない。そんな戸惑った様子を漂わせた声を漏らし、上目遣いに見上げてくる美琴を刺激しないように優しく言葉を重ねる。
「俺が手に入れたのは、吸血鬼の力。何がどれだけできるのか、自分で把握しきってるわけじゃないが。少なくとも、五感は鋭くなってる」
「え、でも……女の子……」
「……元のお願いが真祖の吸血鬼のお姫様らしいからね。容姿格好もそれに合わせて変わったらしい。石塚さんの姿には変化がないから、何かの異能系じゃないかと思うんだが……」
 改めて美琴へ視線を送り、何か変化がないかと観察しながら囁きかける。メガネをかけた内気な文学少女。簡単に表現をすればそんな容姿の彼女には、何の変化もないように見える。
 肉の薄い体つきも、日に当たらない白い肌も、染色も脱色もしてない黒い髪も。何の変化も見受けられない。謎めいた紋様が肌に描かれてもいないし、額に第三の目や宝石などが貼りついてもいないし、意味ありげに包帯が手足を覆ってもいないし、顔立ちが整いすぎるほどに美しく整ったりもしていない。
 目の前にいるのは、どこにでもいそうな平凡で内気な雰囲気の少女。
「…………ぁ」
 自分の言葉に目を瞑り、内面にこもるようにしていた彼女がふと声を漏らす。
「これ…は……。えっと……」
「何か、わかった?」
 何かを掴んだらしく、戸惑いがちに向けられた瞳を見つめて、そっと訊ねる。
「ええっと、何か……物を造る力みたい、です」


「なるほど……。銃とか爆弾は造れそう?」
 一本の鉛筆を手に、しげしげと眺めながら訊ねる。
 能力を確かめようと試してもらったら、床板に手を触れ目を瞑り何か念じてる様子を見せた後に彼女の手に出現した品だ。床板には、小さく穴が残されてるあたり材料として消費されたのだろう。鉛筆自体は、手に取り確認してもそこらで売ってそうなただのHBの鉛筆でしかないが、武器を作れるのなら心強い。
 そう思って、訊ねかけたが美琴は小さく首を横に振った。
「駄目みたい……です。リストに、その……ないから」
「ふむ……」
 言葉少なく、ぽつぽつと説明をされた内容からすると頭の中のメニューリストから造りたい品を選んで念じる感じらしい。リストの全容は本人も把握しきれてないようだが、品揃えは豊富ながらも普通に店頭で買えるような品しかないらしい。
 誰がどんな考えでこんな能力を望んだのかは知らないが、水や食糧には困らないだろうし、日用雑貨だって簡単に揃う生活的で実用的な能力ではある。
 戦闘向きではないので、現状打破には役に立ちそうにはないが。
 いや、それも使い方次第か?
 考え込みながら、自分の吸血鬼としての力はどうなのだろうと自分の内面に意識を向ける。
 美琴が自分の能力を自覚できたのなら、自分もできるはずとは思うのだが何度やっても把握したと思ったとたんに、手の中から水が零れ落ちていくように掴みきれない。
 それでも、人間とは比較にならない身体能力を持っていることは自覚できた。夜の住人たる吸血鬼らしく、夜闇に囚われる事がないことも。
 このまま息を潜めて夜を待ち、夜闇に乗じて逃げ出すのがベストか。
 心細いのか、ぴたりと肩を寄せてくる美琴の温もりを感じつつ考え込む。
 聞こえてくる略奪の喧騒はいまだ続いているが、目の前に死体が転がってるここは既に荒らされた後らしく近づいて来る様子は無い。
 目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませて周囲の気配を探る。
 武術の達人でもあるまいしと思うが、この体のスペックがいいのか周囲の気配をそれで把握できる。
 周囲に蛮人たちの気配がないのを確認すると、窓からそっと外を窺い確認する。
 目に映るのは、村の中央に広がる広場とそこに集められた若い女性とかき集められた金品と食糧。それらを山分けしている蛮族そのままの格好の髭面の男たち。
 身に着けている衣装は垢じみて汚れた物で、リーダーらしき男が毛皮のマントを身にまとっている。手にしている武器は、身長ほどの長さの槍か腕ほどの長さの刀身の剣。素材は鉄だろう。
 集められる女性も現代日本の基準で見れば、古着もいいところの古びた服を着込んでいる。男たちが山分けしている金品も、電化製品は一切見受けられない。
 そこまで確認すると、頭を引っ込めて内容を検証する。
 人種は見たところ白人系。この小屋や、外の人間の衣服や武器などからも考えて技術的には産業革命以前で大量生産の恩恵はない。電気の利用もなし。
 つまり、剣と魔法でイメージされる中世の西洋そのままの世界なのだろう、ここは。魔法というファクターがあるのは目にしているし、その影響はあるだろう。ここが文明圏の辺境で田舎で、中心部だともっと華やかだという可能性もあるが、少なくともここら辺はそうなのだろう。
 地球だとアフリカの部族抗争でもカラシニコフ振り回しているというのに、剣を振り回してるような連中が幅をきかせてるようだし。
(うわ、最悪……)
 腕の中の石塚さんを眺めて、溜息をつく。
 石塚さんの能力は現代日本の産物を造れる。中世かそれ以前の文明社会では、それはきっと高価な財貨になる。たとえば、どの家にでもあるようなありふれた鏡。鏡の向こう側にそのまま別の世界が広がってるような、クリアな鏡像を映す鏡は存在しないか、しても貴重品だろう。
 つまり、石塚さんは女としての価値だけでなく、財貨を生み出す宝の山そのもの。外の連中に能力を知られたら――きっと、考えたくもないことになる。
 銃器を造れたのなら、それを使って身を守ることもできたろうが……。
 ナイフや包丁なら造れるだろうが、それを武器として扱う技術がなければ相手を下手に刺激するだけだ。つまるところ、自分が守らなくてはきっと誰かに食い物にされて終わってしまうだろう。
 そこまで考えたところで、物が焦げる臭いにふと気づく。
 慌てて外を確認すると、男たちが建物を確認しながら火をつけている。それをすすり泣きながら女たちが見ている。
 隠れている人間がいたら炙りだすつもりなのか、それとも村の人間に仲間を殺された腹いせの焼き討ちなのか。この村を徹底的に略奪し、焼き払うつもりらしい。
 このままでは、隠れているこの小屋にまで男たちがやってくるのは時間の問題だ。
 中を確認されれば、隠れるような場所がろくにないのでまず見つかる。見つからなくても、火をつけられては男たちの目の前に逃げ出さざるをえない。状況の悪化に、マズイと背筋に冷たいものが走る。
 小屋の中に目を走らせるが、人間ふたりが隠れられるような場所はない。それ以前に、火をつけられたら焼け死ぬだけだ。
 では、逃げ出すか?
 壊れた戸板が引っかかってるだけの出入り口へと視線を走らせ、頭に浮かんだ考えを即座に却下する。
 逃げ出そうと飛び出したところで、広場からは丸見えで飛び出したとたんに見つかってしまう。
 だからといって、このままここで息を潜めても外の蛮人に見つかるか、見つからなくても小屋ごと燃やされて焼け死ぬ末路しかない。ならば、逃げ切れる可能性を信じて飛び出してみるか?
 あるいは、自分の体のスペックを信じて外の連中を撃退できると信じてみるか?
「……安藤君?」
 腕の中から聞こえてくる小さな声に、視線を落とすと不安の色もあらわに見上げてくる視線と目が合う。
 自分ひとりなら、正面から飛び出しても恐らく逃げ切れる。だが、身体能力が一般人。元のままなら、平均を下回っていた美琴が同じようにできるとは、智也には思えなかった。

 むしろ、彼女を囮にして自分だけが逃げに徹すれば――

 心に悪魔の誘惑が忍び寄る。
 ぎこちなく笑みを浮かべて、安心させるように彼女の頭を撫でてやりながらその誘惑を振り払う。それで助かってどうするというのか。見知らぬ世界で、知った顔を見捨てて生き延びて。
 そんな選択は、きっと死ぬほど後悔する。
 だが、考えてる時間はあまりない。このまま、ここに隠れていても見つかるのは時間の問題だ。
 正面から出れば広場から見つかる。見つからないように逃げるために、脱出口を作ろうと壁を破壊すればその物音で見つかるだろう。
 どうやれば、見つからないようにして脱出できると――いや、待て。
 掌で鉛筆を転がしながら考えを巡らし、ふと床板に目を落とした瞬間に脳内を何かが閃光のように駆け抜ける。
 脳内を一瞬で駆け抜けたそれを慌てて捕まえ手繰り寄せ、はっきりとした形を持たないそれを検証し形にしていく。
「ねえ、花火は作れる? マッチや、ライターとかも」
「え……。はい、造れるみたいです……けど?」
「じゃあ、逃げ出す準備をするとしようか」
 智也は明るく微笑み、安心させるようにそう告げた。






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Welcome to this crazy world
このいかれた世界へようこそ
君はTough girl Tough girl

……以下執筆中。
脳内BGMは世紀末。


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