「コンバット・オープン/戦闘開始」
囁くように紡がれた言葉に応えて、ディスプレイに文字列が流れる。
M agical
E nergy
T otal
A ll
L ink
W ar
O rganic
L iving
F ullarmor
すなわち、魔導機関駆動式総合結合型戦術生体支援外殻――メタルウルフ。
両肩に搭載されたウェポンラックに無尽の弾薬を武装を内包し、理不尽なほどに強靭な装甲で身を鎧い着装者を暴力の化身へと変える戦術級装甲強化外装。
天へと吼え猛る狼のロゴが瞬き、モードが切り替わる。待機状態から戦闘状態へと切り替わり跳ね上がる出力。
背中のスラスターに青白く光が仄めいて、蹴り飛ばされたように機体が一気に加速する。立ちふさがる大気の壁を爆砕し、引きちぎりながら天の高みへと駆け上る。
急激な加速が体を軋ませる。だが、口元に浮かぶのは不敵な笑み。
眼前には敵。
人体をひと噛みで両断できそうな、巨大で凶悪な顎を開き怖気をふるう咆哮をあげるワイバーン。
その翼で大気を斬り裂き、引き裂きながらともに天の高みを目指して駆け上る眼前の敵。互いに背後を取ろうとし、絡み合う二匹の蛇のように螺旋を描いて軌跡を残しながら地上を遥か下に置き去りにしていく。
「穴あきチーズにしてやンよ!」
ウェポンラックから排出された二丁のマシンガンを手に取る。流体炸薬採用のケースレス弾は、冗談のような装弾数を実現し、毎分300発で弾丸をばら撒く。
死神の眼窩のように銃口がワイバーンを見すえ、獰猛な獣のように咆哮しタングステンカーバイドの死神達を吐き出す。
受け止めるのは地球では存在しえない天空の覇者。生物学的にありえない巨大な体躯の天を往く魔獣。
弾丸を受け止めては発光しながらその存在を知らしめるのは防御結界。結界を突き抜けても、強靭な竜鱗が弾丸を弾く。
咆哮。
蒼穹に一筋の火線が刻まれる。
ドラゴン・ブレス。術式ではなく、能力として先天的に竜の眷属が備える破壊の吐息。滅びの咆哮。それは、メタルウルフを捉える事無く無窮の空を駆け抜けてゆく。
戦術支援システムが脅威度を評価し、回避を推奨してくる。
「上等だ……」
舌なめずりして、眼前の敵へと視線を注ぐ。
そう、敵だ。
こちらが一方的に狩り殺す獲物でなく、こちらを逆に殺しうる敵だ。
咆哮。
スラスターが絶叫し機体を軋ませながら大気の壁を打ち砕いて灼熱の閃光の軌道から身をかわす。ウェポンラックが開き、ミサイルランチャーを吐き出す。手に取ると同時に花弁が開くように展開したランチャーから、無数のミサイルが飛び出していく。
鋭利な刃物のように両の翼で大気を切り裂き、踊るように天を舞い回避するワイバーンへとミサイルが猟犬のように追いすがり爆発していく。ミサイルの航跡が複雑な模様を空に描き、花火のように爆音が天を轟かす。
咆哮。
薙ぎ払うように放たれた閃光が猟犬をまとめて消し飛ばす。爆煙を引き裂き、天空の覇者が雄叫びを上げる。鋼の勇者が重なる銃声でもって、その雄叫びに応える。
音速を超えて疾駆する小さな金属製の死神に、竜鱗が火花を散らす。
憤怒にたぎる双眸がメタルウルフを睨む。マルチセンサーの両眼が冷徹にワイバーンを見すえる。両者の視線が交差し、絡み合う。
咆哮。
――お前は殺す。
明確な殺意を乗せた殺害宣告。
銃声。
――お前を倒す。
揺るがぬ戦意を告げる鋼の咆哮。
その日、北の大地で天空の覇者と鋼の勇者が激突した。
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頭文字繋げてメタルウルフ。
強引の感が否めない。
なにか、もっと適当なのに変えたいところ。
よさげな単語、ないですかねぇ……