「さすがに疲れたみたいね」 香月女史がそう言う。確かに疲れた、身体検査から血液検査まで一通り隣にいる青年 白銀武と受けさせられたのだ。 隣にいる白銀は自分のことを信用してくれたと思っているのだろうか、疲れの中に喜びのようなものが窺える。「あんたは疲れてなさそうだけど?」 香月女史がそう語りかけてくる。「あ~いや、これ以上に疲れることを体験してますので大したことはないですよ」 そう、俺の祖父は少し頭のネジが飛んでるみたいで、俺が小学生低学年のころから修行と称して色々叩き込んできた。祖母も助けてくれればいいのに私も、と茶道を叩き込まれたのだ。「あっそう……」 香月女史はつまらなさそうに白銀に向き直り。「さて……あなたの要求に応じて家に調査に行かせたんだけど」「どうですか? 先生だったら、あれが『この世界」にない技術で作られてる事、わかりますよね?」 自信有りげに白銀が香月女史に聞き返す。おそらくこれに続く言葉は…。「…………なにも無かったそうよ」 白銀は何を言われたのか判らない…というような顔をしている。「……そんなばかな。さっきまでオレはあそこにいて、起きて服を着替えたりしてここまで来たんですよ?」 ということは…。「そっちのアンタの言った住所は完全な更地…瓦礫すらなかったらしいわ」 やはり…そんなことだろうと思ったよ。白銀は納得がいかないようだ…戸惑いながらも香月女史に食って掛かる「それじゃ……写真……見る?」 そう言いながら香月女史は写真を取り出す。「――!」 白銀は写真を見ながら今度こそ黙りこんでしまった。ちらりと横目で見てみたが……本当に廃墟だった…壁紙は剥がれ、窓のサッシは歪み、ベッドはスクラップ。「あなたの家を調べてくれば、話を聞かせてくれる約束だったわよね?アンタ…えーと ショウジだっけ?アンタも」「ショウジ マサシです……ええ、俺の場合は家を調べてもらうのはついでのようなもんです。こっちのことは後でお話します。まずはそちらの白銀君を先にしたらどうです?」 いまだ沈んでいる白銀のほうを先に…と促す。「ふ~ん、それじゃあなたはあっちのソファに座ってまってな「オルタネイティブ計画のことなら気にせずにどうぞ」……情報駄々漏れなのかしら?それじゃそのままでいいわ」 一瞬、香月女史の眼が『鷹の眼』の様に鋭くなったがすぐに緩めた。(流石に副指令ともなれば凄い眼力だな…)「じゃ、単刀直入に聞くわね……オルタネイティブ計画のこと、どこで知ったの?」 白銀武はポツポツと喋り始めた…初めて聞いた日の事、自分が未来から戻ってきた事、横浜基地の存在意義、オルタネイティブ4の終わり…その後5への移行、白銀は必死に語りかけていた…時間がないと。「先生はそれまでに半導体150億個の並列処理装置を何とか手のひらサイズにしなくちゃいけない!」 それまで黙って聞いていた香月女史の顔が険しくなった…白銀は気付かずに語り続ける。「先生にはやらなきゃいけないことが山ほどあるはずだ!きっと隣にある脳と脊髄だって無関係じゃないんでしょ!?」「――!?」 香月女史が驚いた顔をし、あの"眼"で白銀を睨み付ける。「そう…それで?ショウジは……何を教えてくれるのかしら?」 来た…………この状態の香月女史をうまくだます事ができるのか……?「俺が言いたい事は……こっちの白銀君が言いたいことと大して変わりません。恐らく俺と白銀君は同じBETAのいない世界そして"コッチ"の未来からこの世界へ転移してきたのでしょうから…」 白銀がこちらを振り返り驚いたような顔をしている。 俺が"リアル"から来たとは伝えられない…………それでも、白銀と同じ隊に所属しなければ色々と面倒なことになる。「そう…………あんたたち…………何が目的なの?」 そう言いながら銃をこちらに向ける。「…………オルタネイティブ5の発動を阻止して、BETAに勝利することです」「第五計画を阻止し、BETAを駆逐すること……(そして、死んで逝くであろう人達を救う事だ)」 そう、俺は"アッチ"の世界で彼女達を救いたいと思った…………たかがゲームのキャラじゃねぇかと思うだろうが……それほど悲惨すぎたのだ。「仮定は……どうなったんですか?……信じてはもらえませんか?」 これだけでは今は信じてもらえないだろう……だが…。「……あなた達が、反オルタネイティブ派の工作員である――って話の方に、より信憑性を感じるんだけど」 白銀…俺…と視線を向ける。「――ッ! 『この世界』じゃ、工作員がこんな回りくどいやり方をするんですか!?」 白銀は戸惑い、香月女史はこちらを疑っている…まぁあたりまえだろうが…。 白銀は泣きながら訴えた、先生が計画を完成させていればああはならなかった、オルタネイティブ5で多くの人を死なせたくない、前の世界で先生に助けられた…と。「あたし達は……ある種の利害が一致している……と言うことかしら?」 「そうです……オレの情報は、先生がいなきゃ何の役にも立たないんだ……先生だってそれなりのポジションにいるんでしょ? だったら気の済むまでオレのこと調べて下さいよ!! さっきの検査だってそのためだったんだろ!?」 白銀が訴え続ける。オレを信じてくれと、世界を救うためにと。「『あなたがワケわかんなくったって、事実は変わらない』」「……え?」「『この世界』を夢だって言い張って……現実だと認めないオレに……先生が言った言葉ですよ……」 二人は黙り込んでしまった。俺は…「俺も……前の"コッチ"の世界に来るまではBETAも何もいない世界にいました。"コッチ"に来た時、御世話になった貴女にオルタネイティブ4の成果を警護するために移民船団に乗ってくれと言われました。地球を出て2ヶ月経った時に船体に異常が発生しました。……恐らく極小さな塵が降り注いだんでしょう……船体が爆発し次に気がついたときはこちらに戻ってきていました」 ………少し苦しかったか?「そうね……ちょっとまちなさい」 銃口をこちらに向けたまま香月女史はパソコンのキーを叩いた。白銀は俯いたまま動かない。 チャッ「……まったく……面白い事になったわね……」 そう言いながら銃口を下に向ける。「…………確かに……あり得ない話じゃないのよ」「先生……あの、工作員じゃないって……証明されたんですか?」 どうやら信じてくれたようだ……まさかあんな話が通るなんて。「…………こんなもの構えることになるなんて……思わなかったわ」 だろうな研究一筋の香月女史が射撃訓練を受けたはずもない。「……先生は射撃訓練の類はやってないはずなんですけど」「……あら」「訓練なしにいきなり9ミリじゃぁ、両手で構えてもあたりませ「それ以前に……月並みですがセーフティかけたままですよ」…ぷっ!本当だ」「…………」 お……なんか顔が赤くなったな カチャ パンッパンッ「……なにか言った?」 俺と白銀の足元に弾痕が二つ…………。「「い……いいえ」」「そう。じゃあ、しきり直しということで……」 て……照れ隠しなのか?……こええぇ。 それから香月女史と白銀と話し合った…以前の世界での香月女史の事、白銀が本来いるはずの世界の事、幼馴染である"鑑 純夏"がコッチの世界にはいないと言う事、"社 霞"の事…そして。「第207衛士訓練小隊に訓練兵として……」「俺は機械化歩兵大隊に所属していました。」「なるほど……白銀に関しては、我ながらいいアイディアだわ……今回もそうしましょう。東海林アンタも207小隊に入りなさい」 良しっ! 心の中でガッツポーズをする。「先生……さっきも言いましたが時間がないんです」 白銀が言う。焦っているのだろう。「おいおい白銀君、この条件でもかなり良いほうなんだぞ?それに…香月女史は俺らを100%信用したワケじゃないんだ」「そうよ、東海林理解ってるじゃない。 さっそく手続きをするわ…………あなたたちは……」 白銀と二人グラウンドを目指す ―――全ての準備を整えたわ。グラウンドに行って頂戴。いちいち場所はいわなくてもわかるわよね?――― 香月女史にそう言われたからだ「なぁ…東海林さん。あの未来を変えられると思うか?」 白銀が聞いてくる。「うーん俺ら二人じゃ無理だろうな…「でもっ!俺らは未来を知っているじゃないか!」落ち着け白銀君、例え未来を知っていてもだ……その未来を変えるんだろう?未来に起こりうる出来事通りには進まなくなるぞ? それにだ、俺たち二人だけが衛士ってワケじゃない。207隊やほかの連中がいるんだぞ?」 そうこの時期の白銀は全て一人で抱え込んでしまっていた、それをうまく緩和し【オルタ】の世界通りにしないようにするのが俺の目標だ。「焦る気持ちも判るけどな……焦りすぎは禁物だ。まずは207隊と合流しなくちゃな」「わ…判りました。」「それとだ、俺の事はマサシでいい。敬語もいらない」 白銀は一瞬驚いた顔をし……少し笑いながら、「それじゃ俺はタケルって呼んでくれ」「了解だ。これからよろしくなタケル」「おう、よろしくなマサシ!」 二人で話をしながら歩いていると……「もし……そこのお二方」「「ん?」」 そこには、御剣冥夜が立っていた。続く(´・ω・`)こにゃにゃちわ、かんとりーろーどですまだまだ脳みそ混沌です。ただいま戦力増強案を考えております。00ユニットやスサノオー、XM3だけじゃまだ足りないよなぁと思ったわけで…新型の戦術機を作るのはストーリーの期間上無理ですし…………どうしましょうかねぇ………新戦力の増強とオリキャラ、オリキャラがタケルを支えられればいいなぁと思っとります。だってタケル一人で悩みすぎだしね。さーて次回から207隊に所属です!隊の歌のお兄さん的役割になればいいかなぁと思いますよ…ええ ケンタ○ーお兄さんです。そいでは ばいちゃ~