今俺の眼の前ではタケルが目隠しをされている。「ぐっ……! 委員長、きつすぎだ!」「はいはい。ぎゃ~ぎゃ~言わないの」 目隠しをして小銃の組み立てをするらしい。「おまえ……わざとやってるだろ?」「……これでどう?」 少し変な"間"があった。榊……意外とお茶目なのかもしれん。「……ああ、ちょうどいい。じゃあ、始めるから」 そう言い、組み立てはじめる。 カチャカチャ…………。 本当に目隠しをしているかどうか疑問なくらいに性格に組み上げていく。(これが……皆と俺の"錬度"の違いか……気張っていかんとな)「よし、出来た」「え? もう?」 タマをはじめ他の皆も驚いた顔をしている。「教官、調整に行って来ます」 そう言いながら小銃を担ぎ、マガジンをサイドポーチに入れる。「よし、レンジへ行け。移動中はマガジンを入れるなよ」「了解」 レンジ 俺がレンジに着いたときにはタケルが調整をしていた。 ターン「どう?」「おう! こんなもんでいけると思うけど…………たまの方はどうだ?「行きますよ」 ターン 弾丸は寸分違わず目標のど真ん中に吸い込まれていった。あんな小さな身体でよくやるもんだ。「相変わらず……やるねぇ」「たしかに……すげぇな」 そう言いながら近付いていく。「さて、じゃあオレも」「俺もやってみっか」 構える。 意識で標的を貫くような感じで……。 ターン ターン「…………」 タケルの弾丸は中心から10センチ程ズレ、俺の弾丸はあさっての方向へ飛んでいった。「む……」 たどたどしい手つきで銃の調整をしていく ターン カチャカチャ ターン カチャカチャ ターン やっと端っこにだが当たった。銃は嫌いだ。そんなこと言っている場合じゃないだろうけどな。「おまえの前じゃちょっと恥ずかしいズレだな」「ええ!? どうしてどうしてっ!? 弾道見るのに2発は悪い事じゃないよ―! 最後もあの精度だよ?」「俺は3発だけどなぁ……はぁ」「マサシさんもすごいことなんだよ―!? 初めてでこの精度、普通だせないよ―!それにマサシさんの場合は狙い方は悪くないよ……ただ銃の調整がうまく言ってないだけだとおもう」「うっ…………タマ、いい娘や…(ナデナデ)」 撫でる。「あわわ…マ、マサシさん」 顔を真っ赤にしているが……まんざらでもない様だ、やっぱり猫だな。「ぷぷぷっ……たま、おまえって本当に猫っぽいよなぁ」 タケルもタマの様子をみて笑う。「たけるさんも酷いよ―!」 周りを見ると他の連中も微笑を浮かべている。良い傾向だ。徐々に、徐々にだが馴染めてきている。「――よし、今日はここまで、解散!」「――敬礼!」 やっと終わった。「う―ん、昼飯行くこうぜ」 タケルのほうをみながら言う。「ああ、皆も行こうぜ?」「うん、お腹すいたね―」「ああ、もう死にそうだ」「「「…………」」」 榊、御剣、慧がジーとこちらをみている、いやタケルと俺の両方か。「どうした? 飯食いにいくだろ?」 聞いてみる。「……そなたたちが今更どのような実力を発揮しようが、驚きはしないが」 狙撃訓練の話か……。「別にたまより凄いことやった訳じゃない。おまえらだってあのくらいできるだろう?」「……それはそうだけどね」「……東海林はともかく白銀、兵役の経験……あるんじゃないの?」 タケルが戸惑ったような顔をしている。ちょっとやばいな。「ああ、俺とタケル、俺の爺さんにいろんなこと叩き込まれたんだよ。俺は銃好きになれなかったが……タケルは猟銃とか撃ってたよな?」「あ、うん……そうだな。猟銃とか弓とか……な」 少し苦しい気もするが……。「へ―そうなんですか。」 タマがそう言いながらコッチを見ている。他の3人は疑ったような眼をしているが。「まっ俺の爺さんの話は飯を食いながらでも話してやるさ、それよりPX行こうぜ。タケルほどじゃないが腹へって死にそうだ」 そう言いながら教室から出る。「待てよ! マサシ!」 タケルが付いてくる。「あっ!まってください―」「そうだな、まずは昼食をとりにいくとしよう」「そうね、後で聞けばいいわね」「…………」 廊下「タケル、少し良いわけぐらい考えておけよ」「うっ…す、すまん」 ヒソヒソと喋りながら廊下を歩いていく。 ドンッ「うおっ」「きゃっ」 曲がり角で誰かがぶつかってきたようだ。「あ……ごめん、大丈夫?」「ん? ああ、大丈夫だよ……?」 青いショートカットに触角が2本……小柄な女性……。 クイーン(キング?)オブ +マイペース+ "鎧衣美琴"だ。「あっ!!」 タケルが声を上げる。「ん? どうしたの?」 鎧衣が不思議そうにタケルを見……。「おま……おま……おままま…………」 …………おま?「オマ? そんな名前の生き物は聞いたことないな―」(うん、やっぱりズレてる) 将司もかなりズレているのだが本人には気付かないものだ。「きききき……」「それ、オマの泣き声? 変わってるんだね~~」 なんだ……この不思議空間。「来たッ! 来た――――!!!」 ビクゥッ! 俺としたことが……驚いてしまった。「あ、教官のところに行くんだった」「ちょ、ちょっと待て! 待ってくれっ!!」 …………眼が血走っている……側から見るとヤバイ人にしか見えんな。「え? なに? どうしたの?」 本当に不思議そうな顔をして鎧衣が言う。「ねえねえ? どうしたの?」「…………タケル?」 ………まさか。「……なに、気色悪いことしてやがるっ!!男がそんな格好するなっ!!」「え?」 …………やっぱりか、はぁ。「脱げっ! 今すぐ脱げっ!! 目の毒……じゃなくって! とにかく気色悪いぞっ!」 と、いいながら鎧衣の服をつかむ、これじゃぁ性犯罪者だぞ……タケル。 あっ、胸触った……。「うわ、な、なにするの~?!」 キュッ「な……なにをする、マサシ」「すまん、タケル……弟分を性犯罪者にするわけにはいかんのだよ。うっ……」 泣きまねしながらタケルを締める。「ちょっ……ちが……」 カクン「…………よし、連れが迷惑をかけた……すまなかったね」「うわ―すごいね~、一瞬で落としちゃったよ」 …………マイペースここに極まれり。 PX「あ、マサシさん、たけるさん起きたよ―」 起きたか。「おう、ありがとうタマ(ナデリナデリ)」「えへへ―」 最近タマを撫でる事が日課になっているような気がするが、この際ほっておく。「白銀、私がわかる?」「…………委員長だ」「よかった。記憶の混濁はないようだな」「覚えてない?」 ガバッ!!!「マサシ! なにしやが(カコン!)っつ―!」 タケルが大声を上げようとしたので黒板消しを投げる。「弟分が犯罪に走ろうとしていたんだ、止めるに決まってるだろう!?」「そうだよっ! いきなり脱がそうとするんだもん。びっくりしちゃったよ」「ななななんでおまえっ……女なんだ(ガスン!)って―!!!」 三角定規(特大)炸裂。「失礼なヤツだな、おまえ」「この人ね、僕を見て気色悪いとか、さっきから失礼なことばっかり言うよ」「鎧衣さんが女なのは当たり前だよ。たけるさんやっぱり寝てた方がいいんじゃない?」(タケル……演技とはいえ……難儀なヤツだ。) 心でホロリと泣いておく。「鎧衣。こんな紹介でなんだが……この者が新しく加わった仲間で、白銀武という。」「んで、さっき挨拶したが俺が東海林将司だ」「えーっと、ボクは鎧衣美琴っていいます!よろしく~~!」 簡単な自己紹介をしていく、鎧衣が以前言ってた怪我で隊を離れていたこと。実際にみる鎧衣はPCで見た以上にマイペースだということがわかった。 タケルは他の皆に白い眼で見られていたが……。そりゃぁ女性にいきなりつかみ掛かればなぁ。「よしっ!飯食いに行こうか。時間がなくなるぞ?」 今度こそ皆で昼食を取りに行く。 夜「最近はヨンパチの整備してなかったからな…………香月女史に貸したしなぁ……」 "香月夕呼専用ガレージ"に止めてあるヨンパチの整備に赴く。30分ほど前に草案を提出しに言った折に。『東海林、あんたのヨンパチ私のガレージに置いてあるわ。やっぱりハーレーはいいわねぇ……ゆったりと乗れて。アレ譲ってくんない?…………なによそんな"カオ"しなくてもいいじゃない……わかったわよ、貸してくれたお礼ってワケじゃないけどガレージにある工具勝手に使って良いから。あそこだったら衛兵も近付かないから整備にもってこいでしょ。ガレージの場所は…………」 …………。「だれも講堂の裏にガレージがあるとは思わんよなぁ……奇抜なアイディアだよ、まったく」 そう講堂の裏側にガレージへの入り口があったのだ、これをみると恐らくガレージは半地下なのだろう。 ウィーン…………ガシャッ「うわ…………なにこの広さ……おっ、ヨンパチちゃんはっけー……ん?」 ヨンパチよ丁度反対側、そこには黄色の"ランチアストラトス"があった。「うっは―! ストラトスだ! (やっぱこっちの世界にもあったんだなぁ)はじめてみた……これが"マルチェロ・ガンディーニ"の傑作かぁ……」 ストラトスを舐めるように見る……。30分くらいは眺めていただろうか。ここに来た理由を思い出し、ハッとする。「おっと……ヨンパチの整備に来たんだった」 ガレージの隅にあったアウトドア用のイスに座りながら整備を始める。 カチャカチャ…コト……キュッキュッ「んあ~、プラグ真っ黒じゃん……香月女史……どんな乗り方したんだ?」 カチャッカチャギュッギュッ「ワックスも借りちゃうもんね~、このぐらいいいだろう」 なんか高そうなワックスを勝手に使う。 キュッキュッキュッ「ん? だれかいるのかい?」 ふと、人の気配がした。振り返ってみるとそこには。「ほう、ハーレーEL1200 パンヘッド……通称ヨンパチか……良い趣味をしている、貴様のか?」 ………………んなっ!「貴様のではないの「いえっ! 自分のです!」そうか……」 なんでこんなところに"月詠真那"がいるんだっ!? 彼女は"武御雷"の輸送と同時にこちらに来るんじゃなかったっか!?「あ…いやその、 失礼いたしました! 私は第207衛士訓練小隊所属"東海林将司"訓練兵でありますっ!」 ドクッドクッドクッドクッドク 破裂するのではないか、というほど鼓動が早くなる。「私は帝國斯衛衛軍 第19独立警護小隊"月詠真那"中尉だ」 やべぇ…………【エクストラ編】の月詠さんも好みだったが……"コッチ"の月詠さん凛々しすぎだ……。「貴様に少し聞きたいことがある…………」 カツカツと音を響かせて近付いてくる。「なんでしょうか?」 カツ………眼の前で止まる。「貴様…………一体何者だ?」「はっ?」「"東海林将司"という人間は城内省のデータベースには存在しない……」 …………しまった!城内省の事を忘れていた……国連のデータベースは完璧だろうがこっちは疑ってるだろう……。「…………俺は……俺です。"東海林将司"それ以上でも以下でもない。」「……ふざけるなっ!冥夜様が目的で近付いたのだろう!」 胸倉をつかまれ壁に押し付けられる。女性とはいえエース級の衛士、なんて力だ。「グッ…………。俺は御剣、ましてや207隊の皆を仲間だと思っている!それに俺の目的は……」「……なんだ」「この世界をBETAから救う事ですよ…………月詠中尉」「…………ふん、まぁいい……」 そういいながら手を離す。「ゲホッゲホッ……。この世界を救いたいと思っているのは本当なんです。そのために俺は…………」 月詠さんがジッと眼を見つめてくる。こちらも見つめ返す。「…………」「…………」 言葉もなく睨みあう。 ザッ 月詠さんが出口のほうに向き。 「月詠さん…………俺を警戒するのはわかる……だが……身内を警戒していたほうがいいですよ」 ここで……"あの事件"のための伏線を張っておかないと……次会うのは……もっと先になってしまう。「…………」 無視をしているのか考え事をしているのか……。よし……ここはタケルを見習って。「それと……………。月詠中尉のこと"真那"さんって呼んでいいですか?」 コケッ……カッカッカッカッカ!「ななななななな、何を言っているのだ貴様は!」 男に名前で呼ばれるのは慣れていないのだろう顔を真っ赤に詰め寄ってくる……あんがい可愛い。「あ……いや、信頼してもらうためにまずは名前で「だめだっ!」え―」 だめらしい。「いいじゃないですか、減るもんじゃ無し「私の精神が磨り減る!」」 磨り減るらしい。「貴様と話をすると疲れる! 失礼する!」 そう言いながら今度こそ出て行ってしまった。「………………やべっ、惚れたかも」 そのくらい可愛かったのだ。続く(´・ω・`)マナマナさまマンセーなかんとりーろーどです。ちょっと早めですが月詠さん登場!主人公には飄々ととマナマナさまをからかってもらおうと思います。【エクストラ編】の月詠さんはショ○でデレデレするところは思いっきりデレデレしてましたので、軽い"ツンデレ"になってもらおうかなぁと(´・ω・`)bそれに男の人に名前で呼ばれるの慣れていないだろうと思いこんな設定にしました。次回は少しペースを上げて行きたいと思います。それでは、ばいちゃ~