今俺の眼の前ではとてつもなく"おもしろい"ことが起こっている。「タケル……」「…………」「……いくね?」「あ、ああ……」 鎧衣の顔がタケルに近付いていく…………。 ムチュ そのような音が聞こえたような気がした。――つまみっ!――ぐいっ!――ぱかっ!「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅ~~~~~」 タケルの眼が限界というくらいに開かれる。「っはああ……ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅ~~~~~」「…………不謹慎だが、タケル……アホみたいな顔してるな」 ぼそっ「「「はぁ…………」」」 慧以外の3人は『ダメだこりゃ』というようにため息をついた。「次は止血の方法だね」 鎧衣はどんどん話を進めていく。「止血方法は全部で3通りあって、通常負傷に用いる圧迫法、動脈出欠に使う指圧法、そして、生死に関わるような負傷時には止血帯をこんなふうに……」 と良いながらタケルに止血帯を巻いていく。「いだだだだっ!!」「もうちょっと我慢してよ、男でしょ?」「屈強の訓令兵も、衛生兵の前では形無しね」 榊の言うとおり衛生兵強しだな………… PX 皆で夕飯を摂りに来たのはいいが……「ねえねえ。どうしてタケルはボクのことさけるのかなあ?」「べ、別にさけてるわけじゃないぞ」 どもりながら言う。「そうそう、あまり気にすんなよ鎧衣。こいつはただ照れてるだけだ」 カカカと笑いながら鎧衣の頭を軽く撫でる。「なーんだ、そうだったのか~」「そうそう、こいつは人に自分の呼び方まで強要するヤツだからな」「待てよマサシ! お前も「俺は、好きなように呼べとしか言ってねーぞ?」ぐぅ……」 悔しそうにしてやがる。「東海林は本当に白銀の操り方がうまいわねぇ」「うむ、まるで猿回しのようだ」「えっ! たけるさんお猿さんだったんですか?」「…………エテ公」 タケルは散々言われている。「だ――!! うるせ―うるせ―!! はやく飯食おうぜ!」「おや、美琴ちゃんじゃないかい!」 ん?ああ 京塚のおばちゃんか……みたまんまの肝っ玉母ちゃんみたいだなぁ。「またお世話になりま~~す!」「あいよっ! ……で? ひょっとしてこの子らがウワサの新人かい?」「どうも、白銀武です……」「東海林将司です、おばちゃんいつもごちそうさま」 挨拶をしつつ御礼を言う。「いいよー私に出来る事は料理を作ることぐらいさね」 おばちゃんがニカッと笑いながら背中をたたいてくる。「へぇ? 二人とも相当鍛えてるみたいだねぇ……千鶴ちゃん、なかなかいいやつらがはいってきたみたいじゃないか」「はい、性格はともかく隊の底上げになるくらいですから」 榊がニヤッとしながら言ってくる。「「ひどいな、榊(委員長)」」「あっはっはっは、おもしろいねぇガキどもだ」「それじゃ、もう少しで晩ご飯だから。まってておくれよ……ああっとそうだあんたらご飯が足りなかったらあたしのところに来な! サービスするよ」 おばちゃんはそう言いながら厨房に戻っていった。「ここで給食任務全般を担当していらっしゃる、京塚志津江曹長よ」「要するに、食堂のおばちゃんだね」 と、榊と鎧衣が言う。「食堂のおばちゃんかぁ……ぴったりな表現だな」「ああ」「頼もしい人ですよ―。彩峰さんもお世話になってるよね?」「……言わなくていい」 慧が顔をしかめる。「ん? どうした慧……知られたくない事でもあるのか?」 知っているがニヤニヤしながら聞いてみる。「ははは……彩峰は一番食事量が多いからな」「……変なこと言っちゃダメ」 顔を真っ赤にしながら言う。「隠してもダメだよ―」「…………」「ははは照れるなよ、慧」「……マー君うるさい」「「「「「あはははははははは」」」」」「……そういう鎧衣もたくさん食べてる」 あ、逃げやがったか。「あははっ! 育ち盛りだから」「ウソ言うな」 タケルが即ツッコミを入れる。「ホントだよ? 胸がね―、少しだけ大きくなったような気がするんだよ、最近」「!?」「ほ―う」 タケルは眼を泳がせている。「え―? いいなあ……。私も、もう少しおっきくなりたいな…………」「背が?」「「…………」」「白銀って……兵士としては優秀かも知れないけど……意外とカタブツね」「あがっ!!」 タケル……今日何度目かしれない落ち込み……アホだ。「ちょっとまって……? オレが悪いのか!?」「お前が悪いんだろう? ええい、恨めしそうな眼で見るな鬱陶しい」 「気にするでない。この手の冗談には、私も上手く対処できずに困っていたのだ。仲間が増えて心強く思うぞ。」「うぇっ!?」「ぷっ……くくく」「……冥夜と一緒にされるのか……それはちょっとショックだな」「う……それはどういう意味だ?」 御剣がタケルを睨む。「あ、もうカウンターに並び始めてる! 急ごうっ!」「ああそうだな、アホは放っておこう」「「なっ! ……待てっ! マサシ!」」「みんな、ちょっと聞いて」「「「「?」」」」「とうとう11月に入ったわ。総合戦闘技術評価演習までもう1ヶ月もない」「準備は……まにあう?」「ああ、オレはいつでも行ける」「全然問題ないよ」「うん」「……うん」「私も!」「おう、準備はできている」「一応二人には言っておくわ。演習と言っても、死人が出ることもあるからね?」「わかってる。覚悟してるよ」「ああ、それはわかっているさ」「これに合格することは基礎訓練の終了を意味し、戦術気の訓練に移行するということだ」「「ああ」」 二人でうなずく……。「ボク達は夏に1度落ちてるからね、もう後がないんだ……」「涼宮涼宮……」「彩峰……余計な事言わないで」「「……涼宮……」」 涼宮茜か……。「前回の総戦技演習で戦術機操縦課程に上がった隊の分隊長さん」「207隊はそれまでは2チームあったんだよ」「ほう……」「へえ~……」「とにかくっ! 私達は失敗するわけに行かないの! それ、肝に銘じておいて」「大丈夫だよ! 今回はタケルとマサシがいるじゃない?」「そうだな、油断は禁物だが、不安材料が確実に減っているのもまた確かだ」 改めて期待されると照れるな。「委員長、浮かない顔してるな?」「別に……」 タケルもそこそこ"怪しい"発言をしなくなってきたな……良い傾向だ。だが……ちょっと鈍感なところがあるのが問題か?「……どうした、タケル?」「ん? いや、何でもないよ冥夜」「当ててみせましょうか、考えていたこと」「……え?」「ん?」「どうして前回、私たちが合格しなかったか……ってことじゃないの?」 雲行きが怪しくなってきたな……まぁこの隊の問題である"あの問題"か……はぁ、やっかいだな。「いや、そんなことは……」「仲間としては気にならない?」「いや、気にならない訳じゃないけど……」 膿は先に出してしまっておいたほうがいいか。「……チームをまとめられない無能な分隊長と、指示に従わない部下、見切りをつけて独断した部下……主にこれが理由」「さ、榊さん……」「ど、どうしてそんなことわざわざ言い出すの?」 タマと鎧衣が戸惑っている。「……違うね。最後はアンタの指示に従って、地雷原の餌食になったんだ……」「彩峰さんまで!?」「……鎧衣は迂回するべきだと言っていた。鎧衣の勘が尊重されるべきことは事前に了解済みだと思っていたのだがな……」「冥夜さんっ!」 御剣まで言葉に棘がある……。「あわわ……どうしよう?」「どうしようって言われても―……」 可愛そうに相当参ってるな。「あのさ……どうしてわざわざそんなことを言い出したのか……オレにはいまいち理解できないけどさ、ひとつ言っていいか?」 あの話か……。「なに?」「率直に言うぞ?」「……いいよ」「みんな甘すぎたんだよ」「「……」」 みんながタケルを見つめる。 タケルが言った事……簡単にまとめるとこんな感じだ。―――何かをしようとするとき組織は絶対だ、今のうちはまだ"未熟"ですむがもし"戦場"に出たときはどうする。どんな理由があってもリーダーに逆らうやつは組織に必要ない。だがリーダーは部下の命を蔑ろにして良いわけじゃない。命令を出す側にとって目的達成が第一で部下の命は二の次になるのは仕方がない。――― かなり極端な話ではあるが……確かに間違ってはいないのだろう……だが俺はついこの前まで"リアル"で一般人として過ごしていた……。こいつらみたいな"覚悟"が足りてないと思う……だが【オルタ】で死ぬはずの人間……彼等、彼女等を助けたい……その"決意"は本物だと思う。それに……ここには惚れた女がいるんだ……まだ死ぬわけにはいかないよな。「……色々言っておいて何だけど」「何?」「確かにオレ達はまだ、人間のつながりとか、仲間意識みたいな感覚でまとまっていけるとおもう」「……うん」「だから今はそれでもいいんだ。ただ……」「それで済まなくなった時のお話だよね?」「あと、ボク達が卒業してバラバラになって、どこかに配属されたときの話……」「…だな」 少し間が空いてみんなバラバラに部屋に戻っていった……。 夜「…………そろそろ佐渡島からBETA上陸……か、これがタケルの未来修正の起点になるんだよな……だが」 そうまだだ、俺が動くのはまだ後だ……今出来る事はタケルを支えてやる事……そして。「こいつの草案を固める事か……この世界の技術ならば……出来るはずだ」 手元には大方出来上がってきた戦術機の"支援構想"その草案が握られている。「ふぅ…………そろそろ…寝るか……」 ゴソゴソ……パチン♪~♪♪~~♪~ヴーンヴーン「ん……朝か……」 PI! 携帯の目覚し機能を切って懐に入れる。服を着替え顔を洗い外にでる…………。 ぼふっ「んおっ?」 なにかとぶつかった様だ。なんだ…?「……………」 見下ろすとそこには。「えーっと……君は?」 黒いウサギ…もとい"社霞"がいた。「…………」「…………」 ジ―――っと見詰め合う。「…………」「…………」 そーっ。昔みた映画"ET"の真似事をしてみる。もちろんそのシーンを頭に思い浮かべながら。「…………」「…………」 ピトッ「お………」「あ………」 未知との遭遇……たしかに俺は遭遇したのだった。続く(´・ω・`)CUBEとか難しい映画を観ながらネタを練っているかんとりーろーどです!今回は京塚のおばちゃん、霞との顔合わせをさせるための話といっても過言ではないです。ただ将司、ちょっと覚悟を決めました。そして、支援草案の完成間近です。それではCUBE2を観ながらネタを練ってきたいとおもいます! ばいちゃ~