さて、皆さんこんにちは。先のジ○リ襲来を何とか乗り越えた北条透です。
第一次防衛線は切り札の内蔵地雷を使っちゃったので半壊状態です。
空爆で終らせる心算だったのに、オ○ム恐るべし。
で、旧第一次防衛線は第二次防衛線となり、再び製作中です。
今回は凄いですよ。見た目が万里の長城なのは変わりませんが、内部に空間を設けて戦車が複数配備できるようにしました。
も○ののけ姫の踏鞴場みたいに防壁中腹からの発砲が可能になったわけですね。
で、最上部には多目的誘導弾と155㎜自走榴弾砲とMLRSに陣取ってもらいます。この程度じゃ、オ○ムクラスの敵にはしんどいんですけどね。
防壁の高さは約40m。
その手前に20mの最終トラップ内蔵の攻性防壁を設置しました。これははっきり言って爆薬の塊です。
TNT(高性能爆薬)やダイナマイト、C4(プラスチック爆弾)といった爆薬を可能な限り指向性を持たせて仕込んでいます。
どれもこれも衝撃に強い爆薬なので、こちらの指示以外で誤爆することは有り得ませんし。
全部爆発したら結構凄い事になりますね。まぁ、デイジーカッターには劣りますが、あっちは爆風の大部分が上を向きますが、こちらは横を向いています。その分、与える損害も大きい…筈。
それにしても、この半ば自爆装置、先の第一次防衛線に仕込んだのは念には念を込めた以外の何物でもなかったのに、いつの間にやら、正規装備になっちゃいましたね。
それにしても、現代兵器は巨大生物との戦いを想定していないと思い知らされます。
そうそう、戦車を増やしました。
今までは120mm滑腔砲搭載の90式戦車だけでしたが、62口径105mmライフル砲を搭載するスウェーデンの戦後第二世代戦車、Strv.103に登場してもらいます。
砲を直接車体に固定した駆逐戦車みたいな戦車ですね。
何で態々、こんな戦車を呼んだかと言うと、粘着榴弾(HESH)の使用をしたいからなんですよね。
120mm滑腔砲に比べて長射程で、榴弾よりは直撃時の効果に勝る。
まぁ、相手が甲殻類じゃなきゃ余り意味が無いですけど。
この砲弾は着弾後に装甲に粘土みたいに張り付いて起爆。装甲の裏側の剥離を引き起こして、それで内部を破壊するんですが、これ、甲殻類にも応用できそうなんですよね。
剥離が引き起こせなくても、甲殻に爆薬が張り付いた状態で爆発されて無事で済む生き物が居るとは思えませんし。何より命中性が高いのが良いですね。同じFCSを積むなら、ライフル砲は滑腔砲に命中精度で勝ります。
そして、最終型のStrv.103Cはそこそこ優秀なFCSを積んでるんですよね。精霊が何とかしてくれるにしても、下地は大切です。
それに、砲は西側戦後第二世代の標準装備、51口径105mmライフル砲を長砲身にしたモデルです。
この砲は優秀で、米国のM1や韓国のK1といった戦後第三世代にも最初はこの砲が搭載されていました。
現在でも発展途上国では普通に現役ですね。日本でも富士を除いた本州や九州には本砲装備の74式戦車しか配備されていないですし。
それに、99式155mm自走榴弾砲に比べれば直射に効果的なんですよね。あっちは長射程の曲射を目的としていますし。
ただ、砲が車体に固定されているので照準には車体ごと動かさないといけません。
この戦車が配備されるのは攻性防壁の上です。最終トラップが発動しても影響は無いですが、発動するときは退避してもらいます。
普通の戦車が良かったんですが、自動装填装置の装備されている戦車の少ないこと少ないこと。ライフル砲を積んだ第二世代ではこいつだけではないでしょうか。
先の作戦で再び使った落とし穴ですが、今回は合計で五つの落とし穴から構成されます。
しかし、内蔵する爆薬量はそれぞれ違って、一つ目は普通に対戦車地雷が埋まっている程度ですが、二つ目から四つ目は2000ポンド爆弾やトマホーク弾頭を含む大量の爆薬が埋まっています。そして、五つ目はデイジーカッターを含むトン単位の爆薬が埋まっています。
これはかなり第二次防衛線から離されて、航空攻撃の限界点でもあるここを第一次防衛線にしました。距離的には空爆と第二次防衛線からの砲撃との合間の空間に設置しています。
この外側はオ○ムの墓場ですね。これより外は爆弾が真上から降り注ぐ空爆のみのエリアなので、敵はその墓標を盾にはできません。でも、オ○ムは巨体なので良い感じにバリケードになってくれそうです。
俺はあちらこちらに出向いて工事の指示を出したり、新しい装備を召喚したりします。疲れました。最近、過労気味です。疲労困憊で要塞に帰ると何やら皆さん、慌ただしいです。
パパパパパーーーン、ドドドドドド、シュパーーン…ドゴーーン!
おや、銃声です。これはAKとFN-MAGですね。最後のは無反動系の大砲。多分、110mmでしょうか? 何かあったのかな?
「撃ち方、止め! 即時移動。次弾装填、構えー!」
要塞の一角でジャスティンたちが何やら訓練に励んでいます。ハンガーの方ではJAS-39に群がって何かしていますね。見た感じ、給油と給弾の訓練でしょうか?
「ジャスティン、精が出るな。何かあったの?」
軽く耳を塞ぎながらジャスティンに訊ねます。俺の記憶にある限り、これだけ真剣に訓練に打ち込んだのは見たことが無いですし。
「ああ、トオル。…ねぇ、私達って役に立ってる? 先の襲撃でも殆ど何もできなかった。要塞の拡張にしても魔法使い以外は何もすることが無い」
「何を今更。幹部連の指揮能力や、魔法使いの能力、補給係の補給、兵隊の要塞維持、何が無くなっても立ち行かないっての」
何せ、俺は一人では何も出来ない勇者(仮)ですから。
「うん、確かに私達が討伐軍に必要なのは判ってる。でも、不可欠じゃない。本当に不可欠なのはトオルだけ。私達は何も出来ない」
そりゃね。唯一現代兵器を上回る可能性がある魔法があの有様じゃ、そんなものだべ。
「私達が今までどれだけ勇者に負んぶに抱っこだったか思い知ったわ」
今更? 勇者に頼って当然と言う空気は割と浸透してたんだな。俺もさっさと帰ることだけ考えて、その辺はスルーして来たが。
でも確かにあらゆる努力を笑い飛ばす力量を持つ勇者。並び立てるのはこの(ファンタジー)世界の住人でも極僅か。それじゃ、並び立とうとする気も失せるか。
でも、俺は多くの人間の随伴を必要として、それで幹部クラスとの戦いを目の当たりにした。今までは獣クラスの魔物としか戦いしかしてこなかったみたいだし。
事実上、国家存続の危機に対処してきたのは勇者だけか。
そもそも、国家存続の危機なのか? 敵の幹部クラスの襲来は荒野辺りから、それ以前は獣と変わらず。…何処か勇者を対象にした出来レース染みたものを感じるな。
「それを自覚しとけば問題ないんじゃね? 勇者がアホみたいな力量を持つのは事実、他の人間じゃ勇者クラスの力量を持たないのも、また事実」
力の無い者がある者を頼りにするのは悪いことではないだろう。しかし、それが依存まで行ってしまうと問題だ。人間が文明を離れて生きられないように。
「トオル…」
「勇者は所詮、一過性だ。聞いている限り、魔王はまた現れる。その時に勇者を頼るのは良い。だが、頼り切るな。俺みたいな例外が呼ばれる場合もあるんだ」
歴代の勇者の中でも例外中の例外、それが俺。俺自身には何の能力も無い。能力が自前の物ではないのは歴代も同じだが、俺は一人で完結出来ない。機甲部隊には歩兵の随伴が不可欠。戦闘機も給油と給弾をする人員は不可欠。要塞も運営する人員が必要。俺ってとことん勇者っぽくないなー。
「そうね…」
まぁ、やる気を出してくれたのは良いことですよ。
「ちなみに、ジャスティン」
「何?」
「俺的には、書類仕事を代わって貰えるだけで、とても凄く助かるんだが…」
「それは駄目」(キッパリ)
「そんな、即答しなくても」
「それは討伐軍司令官殿の仕事だもん。……そもそも、私だって書類仕事は嫌いだし(ボソ)」
「…最後、何か言わなかった?」
「気のせいよ、気のせい。とにかく、書類仕事頑張ってね。参謀の補助はつけてあげるから」
「…その参謀達が皆、目の下に隈を作ってるの、知ってる?」
「さぁ、射撃訓練、再開するわよ。第一小隊、構えー!」
「…逃げたな」
そうなのです。俺にとっては魔物の襲来より書類仕事の方が切実な問題なんですよ。
首都と輸送機で簡単に往復できるようになったことから、報告書の提出を求められたり、法事とか家内が出産だとかで、休暇を取りたいとほざく隊員の為に色々と手回ししたり、食料品の受取りを確認したりと、明らかに勇者っぽくないことをやっています。
大学の文化祭実行委員で皆の雑用、総務部に所属してたんで慣れた物ですけど。でも、あれですね、パソコンを使いたいです。
報告書は何故か俺は読み書きできるこの世界の言語で書いているんで、日本語のパソコンじゃ何も出来ないんですよね。
俺は要塞の増築もあるから割と免除されるんですけど、参謀達は書類の処理が仕事なだけあって、寝る、食う以外に自由になる時間は一日に二時間程度です。
これ、明らかに労基法違反ですよね。訴訟を起こされたら負ける自信が有ります。この世界に労基法があればの話ですが。
それにしても、あれですね。数多くのリリカルな二次創作で無限書庫のユ○ノがク○ノに過労死させられそうな描写をよく見かけますが、こんな感じなんですかね。俺も手首が痛いです。腱鞘炎にかかっているかもしれません。
結局、この日も参謀に混じって書類仕事を片付けました。俺も休暇が欲しいです。湖でゆっくりと釣り糸を垂らしたいです。最後に休暇取ったの何時でしたっけ?
「で、何で私までここに居るのかな?」
討伐軍No.2である貴女が逃げられるとでも思っていたのですか? そんなに世の中甘くねーです。
「私、書類仕事はちょっと…」
サインするだけでしょーが。口動かしてないで、手動かせデス。
「私、部隊の訓練を監督しないと…」
マダ何カ?
「…いえ、何でもないです」(ブルブル)
涙目で震えるジャスティン。
普段なら萌えーとか言ってたかも知れないですが、無我の極地に達した我等に煩悩は存在しないです。三大欲求のうち、極端に睡眠欲が強すぎる状態ですね。
書類仕事は結局、それから食事休憩を挟みつつ32時間後に終了しました。
「うう~、何なの、この書類の量」
ジャスティンが一番燃え尽きてましたが、貴女、32時間しか仕事してないでしょうが。って言うか、マケドニアに居るときは貴女もやってたでしょ?
「首都に居るときはフィリスの面が強く出るんだけど、遠征するとジャスティンの面が強くなるの~…」
フィリス? 誰ですか、それは?
「zzz……」
…寝ちゃいましたね。まぁ、今はゆっくり休むですよ。………これで、一週間とか経ったら、また同じ量の書類が届けられるんですから。
生まれ変わった旧第一次防衛線簡易要塞
第一次防衛線、空爆可能限界領域に設定。最後尾は第二次防衛線から30キロ。合計五つの落とし穴から構成。
第二次防衛線、旧第一次防衛線。要塞から50キロ前方に存在。高さ40mの防壁と高さ20mの攻性防壁で構成される。
第二次防衛線簡易要塞常駐戦力
90式戦車 108台
Strv.103C戦車 36台
99式自走榴弾砲 108台
MLRS 12台
多目的誘導弾搭載高機動車 36台
87式自走高射機関砲 12台
討伐軍要塞 カール・ヴィンソン
F/A-18E 24機→48機
サンドトウ飛行場常駐戦力
F-15E 108機→324機
A-10 36機→108機
B-1 12機→36機
JAS-39 0機→108機
常駐機数の増加に伴って、ハンガーを拡大。
発進速度は滑走路運用の限界もあって、若干速くなった程度。
全力出撃が必要な場合は全滑走路を発進専用とし、攻撃後に機体は返還、新しい機体を召喚する。その為、兵器格納庫は拡大していない。
JAS-39は適当な空間を1km確保し、そこを舗装して第四、第五、第六滑走路とした。第四~六滑走路はJAS-39とC-130、C-17が使用。
…保有する戦力的に在日の全戦力を相手にしても普通に勝てる気がしてきた今日この頃。