さて、よーやく魔王城に突入した訳ですが、騎士団や国防軍の主要戦力は外で敵勢力の逆突入を防ぐ為に防衛線を構築している。……見た目はゾンビな奴らが出たんだよ。日本だけでも千万単位の犠牲者が出たあの物語。あれのお陰で二千程度しか居ない我が軍は完全に劣勢に追い込まれてしまった。
お陰で突入出来たのは僅かに二十人程度ですよ。はぁ、欝だ。千人単位で突っ込んでロケット弾の釣瓶打ちで終らせたかったのに。
「トオル、世の中そんなに上手くは行かないものよ。歴代に比べて貧弱な私達が魔王城に辿り着けただけでも善戦しているほうよ?」
……ジャスティン、貴女いつから読心術を?
「う~ん、割と最初からかな。まぁ、状況次第の限定版だけどね」
さよですか。じゃあ、さっさと行きましょう。
ジャスティンは銃の使用をキッパリ諦め、伝家の宝刀を持って来ている。いやー、流石は貴族。良い剣、使ってるですね。他の人はAK-47とかFN MINIMIとか使ってます。
で、俺の装備はM2重機関銃×1と110mm個人携帯対戦車弾×複数。7.62mm弾と5.56mm弾無数に予備の銃を少々。……まぁ、リアカー引きながらですが。勇者に何かあったら討伐軍の根幹に係わるって後ろで支援役やってるわけですが、これって言い換えればただの荷物持ち? 新しく召喚した方が早いんだが、書で片手が塞がるからな。
ダダダダダ タタタタタ
「トオル、援護して!」
はいはい。防衛火器に阻まれて前進出来ないのね。食らえ、必殺の使い捨てロケットランチャー!
爆風ではなく、金属粉を噴出す110mmは従来の無反動砲に比べれば屋内でも比較的発射が容易なのだが、それでも後ろに立つと碌な目に遭わない。後ろに注意しながら発射しないと。
はぁ~い、撃つよ、撃つよ、撃ちますよ~。
敵の攻撃をSWATなんかで使うレベルⅣの防弾板を五枚重ねた特製防弾板に身を隠しながら発射する。これは下に小さい車輪が付いてはいるが、五枚重ねにしたことで非常に重くなってしまったので、押すのに全体重を掛けなくてはならない重量だ。
セントリーガンを無力化したのは良いが、盾がボコボコだ。流石はSFちっくな攻撃だけはあるな。次はどんな攻撃が来る?
ヴォォォォォーーーーー
で、俺たちは今、ガトリングガンの弾幕に晒されている訳です。これってあれだね。T1だね。T800とかT850とか、T1000とかT-Xとかが出てこないだけまだ良いが。この弾幕は12.7mm弾なので五枚重ねの防弾板でも貫通されかねない。つーか、現在進行形でバシバシ削られていく。もう穴が開きかけてますね。次々と新しい盾を召喚しつつ、こーゆー時は、超伝導電磁推進装置を備えた潜水艦が叛乱を起こす物語で、何故か特殊作戦は門外漢の潜水艦艦長が特殊作戦のスペシャリストである特殊警備隊の指揮官にしたアドバイスを参考にさせていただきましょう。
C4を団子状に捏ねて、信管が抜けないように中で結ぶ。外周に小銃弾を差して周辺への破片効果を増す。これをサイドスローで投げてやれば良しと。
はい、起爆。
ドカァァァーーーン!
さてと、加害状況はと。ミラーを突き出して確認。……ふむ、全損か。原作では精々テニスボール大だったのに、サッカーボール大にした甲斐が有るというもの。あ~あ~、盾がボロボロだよ。7.62mmのAP弾を防ぐレベルⅣを何枚も貫通してくれちゃって。盾と盾の間に土嚢とセラミックプレート入れて無かったら五枚重ねでも貫通されてたかもね。12.7mmの弾幕、恐るべし。
さて、T1の皆さんも残骸になったことだし、前進開始ですよ。
「トオル、次はどっち?」
う~ん、何となく下かな。本当は艦橋に真っ先に攻め込むべきなんでしょうが何故か下に行けと囁くんですよ、俺のゴーストが。
「でも、階段が無いわね」
余り使いたくないですけど、エレベーター使うしかないですかね。
「エレベーター?」
箱型昇降機ですよ。俺の世界でもワイヤーで上げたり下げたりして使われているんですが、この艦じゃどんな原理で動いているんでしょうね。
で、エレベーターらしき所まで来た俺たちですが、予想の斜め上を行ってくれた。転送ですよ転送。うわぁーい、SFだぁ。……はぁ、さっさと行こう。
そして、この転送装置。使用は一回きりで転送限界は二人とか、ちょっとご都合主義が過ぎるんじゃないの?
「勇者殿、団長。我等、ここでお待ちしております。ご武運を」
はいはい。どうせ俺とジャスティンで決定ですよと。盾を全方位に展開して転送。上の防御が手薄だけど、物理的に無理だし仕方ないな。どうか待ち伏せされていませんように。
結果から言おう。待ち伏せは無かった。出迎えはあったけどね。
『お待ちしておりました。今代の勇者よ』
何か凄いジャスティンに似ている女性がいた。ジャスティンの髪が金と銀の中間だとすれば、彼女は完璧な銀だった。
「ウソ……そんな……どうして…ジャスティン」
ジャスティンさんや。知り合いですかい? でも俺は時と場合によっては空気を読む男。ここは黙っておきましょう。
『ジャスティン……。今代の依り代の名前でしかた。あなた方には申し訳ないことをしました。私の現界にはその世界の人間を依り代として用いなければならないのです。…ああ、自己紹介が遅れました。私、今代の魔王です』
おお、目の前にラスボスが現れた。選択肢が出現。
→戦う
道具
話す
逃げる
…どこのRPGですか。
戦う
道具
→話す
逃げる
どうやら俺が何もしなくても勝手に選択肢が選ばれてしまったらしい。
「どうして、どうしてジャスティンの身体が魔王に!?」
『魔王システム。しかし、精神体に過ぎない魔王が世界に干渉するにはその世界の住人の肉体が、依り代が必要なのです』
「だからって、どうしてジャスティンが!?」
『依り代が私に適合したからとしか言い様がありません。依り代の選出は全自動で行われます。この依り代も役目を終えればお返しします。しかし、通常は魂が先に転生を行ってしまっておりますので…………いえ、大変珍しい事例ですね。貴女の中にこの依り代の魂がある。入魂を行えばこの依り代となった人間は生き返りますね。とりあえず、今は置いておくとして、早速魔王システム最終段階に入りましょう』
どうやら強引に話をまとめたようだ。
『では、今代の勇者よ。魔王討伐を終らせましょう。貴方が私に触れ、魔王システム一時停止と念ずれば今代の魔王システムは停止します』
…てーこうしないの?
『魔王は勇者に討伐するためだけに存在します。世界の平和を護るため、世界の秩序を護るため。社会秩序を護るには共通の敵が居れば良い。少し昔話をしましょうか』
昔々、この世界は繁栄の極地に至った。行き過ぎた文明の末路は滅亡。例に漏れずにこの文明も滅んだ。世界に僅かに残った指導者達は同じく僅かに生き残った人類を物質創生機で創生した世界に放り込んだ。
その世界は文明の進化に必要とされる物質が存在しない世界。例えば石油。例えばシリコン。領土戦争が起こらないように無駄に低い人口密度。そして、何より人間同士が争わない、いや、争いようの無い環境作り。それが魔王システム。人類は魔王と言う共通の敵を得たことで戦争を止めた。
しかし、魔王システムにより人類間の戦争こそ無くなったものの、文明レベルを大きく落とされた人類は魔王システムの生み出す魔物に対処出来なかった。そこで考案されたのが勇者システム。異世界の住人を期間限定で召喚し、その人間に強力な力を持たせて魔王の一時無力化を行うということ。
『私はシステムの一部。この世界が生まれてから既に何千年と魔王を繰り返しております』
何千年とはスケールの大きい話で。疲れないの?
『強制転生で勝手に魔王にされますので私に選択肢は無いのです。常に殺されるために依り代を犠牲として転生し、勇者に殺される。それが私です』
「そんな…。何とか出来ないの?」
『私も色々試しては見ました。私の魔王システムを破壊するにはその代の魔王城に設置された魔王システム中枢を破壊するしか無いのですが、その入り口は強固に施錠され、更にはAMFと言われる勇者の能力を封じる装置が働いているのでどうにも出来ないのです』
ふ~ん。とりあえず、そこに案内してもらって良い? 君を殺すしか選択肢が無くてもその前に色々試してみようよ。
『歴代の勇者もそう言ってくださいました。全て無駄に終りましたが。しかし、私も無駄と思いつつも今度こそと僅かな希望に縋りながら案内する事にします』
いや、本人を前に僅かな希望とか……その通りだけど。
そうして案内されたのは本当に強固な鋼鉄製の扉。……シュールだ。考えてみてください。未来型陸上戦艦の中に、いかにもファンタジーですって鋼鉄製の扉。これをシュールと呼ばずして何と呼ぶ。
『この鋼鉄製の扉は戦艦大和のバイタルパートに匹敵する410mmもの厚さがあります。とてもではありませんが、魔法を使えない人間にどうこうできる代物ではありません』
へぇ、410mmねぇ。確かにそれだけの厚さがあれば、砲戦距離から放たれた46cm砲弾でも防げるでしょう。しかし、この部屋に入っても俺の牽いているリアカーに積まれた装備は消えていないのです。試しに新規召喚を行ったら確かに出来ませんでした。
『どうです、勇者としての能力を封じられた貴方にこの扉を破る事が出来ますか?』
まぁ、結論から言えば出来るんじゃ無いかな?
『なっ!? ウソを言わないで下さい! 歴代の勇者たちが何も出来なかったのに、歴代に比べても大きく劣る貴方に出来るはずが無い! 私が貴方達を倒さないために半端な魔王軍幹部選抜にどれだけ苦労したと思っているんです!!』
あ、やっぱり加減してくれてたんだ。だよね~。本気でファンタジーが攻めてきたら現代兵器なんて保たないよね~。駄菓子菓子! 君は俺の能力を忘れている! 俺の能力を一言で言うと?
『……貴方の世界の兵器召喚能力……まさか!?』
その通り、召喚した武器はこの部屋に持ち込んでも消えていない。そして、現代の個人携帯対戦車弾は貫通力だけなら46cm砲弾を上回る。
『では!?』
十センチに満たない孔でも穿ちまくれば、やがて人が通れるだけの空間を確保できる!
そうして、全員でマスクとゴーグルをしてリアカーに積んだ物を発射しまくる。足りなくなれば部屋から出て召喚。二人で行っても結構な時間が掛かった。部屋は反動を殺すために反対に噴射される錘である粉で部屋は非常に埃っぽい。
人が通れる位のサイズの410mmの鉄板があちらに倒れ、ゴガァーーン!! と凄まじい音を立てた。それだけの厚さがあれば重さは当然トン単位。音は既に衝撃波と言って過言でない。閃光音響弾にも劣らない大音量のお陰で頭がクラクラする。
で、部屋の中には何と言うか、その。…ホルマリン(?)漬けの脳味噌が居ました。一体何処の最高評議会ですか?
『『『この部屋に至った勇者は貴殿が初めてじゃ。我等が魔王システム中枢である』』』
さよですか。つーか、音声どうやって話してるんだろ? スピーカーがあるようには見えないが…。
『『『我等を見ての初めての感想が音声か。貴殿は変わっておるの』』』
よく言われるよ。では、破壊しますか。
『『『ま、待て! 我等の言葉も聴かずに殲滅とは乱暴だろう!?』』』
いや、だって早く破壊して帰りたいし。
『『『全く。近頃の勇者は何を考えているのか』』』
何か遺言があるならどうぞ。
『『『我等はこの世界の根本を成す魔王システムの中枢ぞ! この世界を数千年に渡って管理してきた我等を排するだけの正義が貴殿にあるのか!?』』』
正義? なにそれ美味しいの? 俺が貴様等を排除する理由は魔王に同情したから。それで充分。
『『『そ、そんな理由で世界の管理者である我等を排すると言うのか!? 我等が居なくなったら世界はどうなると思っている!?』』』
知らん。そもそも、魔王システムとか過保護すぎるんだよ。人間って意外としぶといのよ? 放っておいても勝手に増えたり減ったりして存続して行くさ。
『『『この世界の人類は一度滅びかけたのだ! 人類の存続には我等の管理が必要なのだ!』』』
繁栄の末路は滅亡だ。普通だろ。まぁ、異世界だし俺には関係ないがな。
『『『貴様は我等を排した後、この世界の行く末に責任を持てるのか!』』』
持たないよ? その責任はこの世界の住人が負うべきだ。誰かに管理さられなくちゃ存続出来ない文明なんて滅んだ方が後の為だろ。つー訳で、さようなら。
『『『ま、待て! 議論はまだ終ってな……』』』
ああ、最後に一言。誰かの監督下で生存することは生きていくとは言わん。生かされていると言うんだよ。飼育と言い換えても良いがな。俺は正義やら何やらを掲げない。ただ、一人の人間としてのエゴで貴様等を排除する。
そこまで喋り終わったところで俺が話しながら設置していたC4が爆発を起こした。俺たちはドアの外に出て爆風をやりすごす。
『終ったのですか?』
そうだね。魔王システム中枢は破壊した。これで、君は転生の輪から解き放たれた。
『…永かったです。本当に永かったです』
…全く。何千年も悪役をやらされる魔王に感情を付けるんじゃないよ。
「トオル、魔王はもう現れないのね?」
ああ。
「魔王システムか。…一応、存在には理由もあったのね。ねぇ、トオル。管理者の居なくなったこの世界は滅ぶのかしら?」
そんな何千年も先の話には責任もてんな。まぁ、魔王が居なくなったから人間同士の戦争は起こるかもしれないが、滅ぶなんて事にはならないだろう。聞いた話じゃこの世界には石油すら無いらしいしな。
「……人間同士の戦争か」
野生の動物だって縄張り争いやら食料やメスを巡って争そうんだ。人間だけ闘争しないというのは無理さ。俺の世界も数千年の歴史が有るが、戦争の無かった時代なんて無い。それでも何とか世界は続いているんだ。意外と何とかなるもんなんだよ。
「管理下にある平和か、自由の末の闘争か…」
まぁ、俺的には管理下の平和も悪くは無いんだがな。実を言うとガンダム種運命でも、子供っぽい正義感で好き勝手する無印主人公より、現実的に平和のプランを実現しかけた議長の方が好きだったし。
「その割には躊躇無く爆破したようだったけど」
その管理が俺に何の影響無かったらあいつ等の考えに共感したな。俺が真っ先にここに召喚されていたらあいつ等の手先になっていた自信が有る。でもな、俺は先にジャスティンに出会った。魔王の悲壮な叫びを聞いた。その上であいつ等に共感できるほど、俺の意志は強くない。
「…格好良く言ってるけど、それってつまりは意志が貧弱って事よね?」
現代日本人の意志の貧弱さ舐めんな。そもそも、何かを犠牲にしてまで達成したい理念なんぞ持ち合わせておらんわ!
「…威張って言うことかしら?」
眉間に手を当てて頭痛を堪えるジャスティン。まぁ、誇りやら何やらより平穏を望む国民ですからね。尖閣諸島に中国船団が押し寄せたり、竹島が実効支配を受けても遺憾の意を表明するだけで政府は何もしないし。
『今代の勇者。ありがとうございました。これでようやく眠りにつけます』
良いの?
『この依り代を返さなくてはなりません。それに、私は本来精神体です。精霊同様に死という概念はありません。今代の勇者、貴方が元の世界に帰還する時は勇者システム停止と持って来た本に唱えてください』
そっか。お休み、良い夢を。
『トオル、私は貴方を愛している。……きゃっ、言っちゃいました。それと、クライトン家のご息女。私が停止したら速やかに入魂を。方法は分かりますね? それにしても、本来私の依り代は貴女になるはずでした。今の依り代は勇気と優しさを持ち合わせたのですね。八年間も身体を使ってしまい、申し訳ありませんでした』
「入魂の仕方は知っているから大丈夫。…最後に何を言えば良いのか思いつかないや。永い間お疲れ様。良い夢を」
…最後の最後にネタに走りましたよ、この娘。はぁ、締まらないな~。魔王システム停止。
微笑んだまま崩れ落ちる身体を支え、ゆっくりと横たえる。
「入魂を行うわ。そのまま支えていてね」
ところで、今更ですが入魂とは?
「私の本当の名前はフィリスって言うの。ジャスティンは妹の名前。八年前に私の身代わりになって身体は消え、魂は私と融合した。その融合した魂を二つに戻して、ジャスティンの魂を身体に戻す。…入魂!」
…ビックリ。ジャスティン、いや、フィリスの髪が純粋な金髪になっちゃいました。
「……うーん?」
「ジャスティン!」
「お姉ちゃん? そっか。私、戻ったんだ」
その後は姉妹が抱きしめ合っての号泣。俺は空気を読んで退出しましたよ。
その後、数十分後。
「「トオル」」
あ、終ったのね。
「これで貴方は故郷に帰ってしまうのね」
そうだね。ここは俺の世界じゃないし。願わくはこの世界が二度と勇者を必要としないことを。
「帰る前に一回、マケドニアに寄ってもらって良いかしら?」
別に急いでいる訳じゃ無いから構わんぞ。
「「良かった」」
…君たち、何か企んでません?
「「べっつに~?」」
こうして俺の異世界での魔王討伐は終了した。その後、あんな事になろうとはその時の俺は予想もしていませんでした。
俺たちは中継点を幾つか経由してヘリで要塞まで帰還。その後、要塞と飛行場は引き払い、俺たちは輸送機でマケドニアに帰還した。
で、今は王国を挙げての祝勝会中。で、俺は一組の夫婦に色々と絡まれている(?)。
「娘たちを頼むよ、トオルくん。…くっ、これが娘を嫁に出す親の気分か」
「ジャスティンを連れて帰ってくれてありがとう。そのまま、御嫁に貰ってね?」
あの、俺、元の世界に帰るんですが…。
「娘たちが付いて行くそうだ」
いや、ちょい待ち。付いてくる?
「「不束者ですがよろしくお願いします」」
…あの~、ジャスティンさんにフィリスさん。貴女達はどうしてウェディングドレスを着ているのでせうか?
「では、セバスチャン!」
「ははっ、旦那様!」
セバスチャンさんが合図をするとエイミーさんとソフィーさんが祝勝会と書かれた横断幕を紐で落とすと、その下からクライトン家、ホージョー家、結婚式と書かれた横断幕が参上しました。
あの、俺、結婚とか初耳なんですが!?
「「トオルは私達が嫌いなの?(ウルウル)」」
いえ、どちらかと言わなくても好きですが。それとこれとは話が……。
「ははは! トオルくん。覚悟を決めたまえ! 親の私が言うのも何だが、二人とも器量よしだぞ! 実家を捨てて異世界まで付いて行くというのに何が不満だと言うのかね!?」
いや、オッサン怖い。その暑苦しい顔、近づけないで!
「ホホホ、トオルさん。娘たちを頼みましたわ。…まさかここまで女に覚悟を決めさせておいて断ったりはしませんよね?」
奥さんもその黒い笑顔止めて! 怖い、怖いから!
「トオルさま、お嬢さま方を泣かすような事になれば異世界まで(ピーー!)しに行きますので、くれぐれも頼みますわね」
あの、キャサリンさん。その素敵笑顔止めて! 奥さんに負けず劣らす怖いから! あと、その伏字には何が入るの!?
「大丈夫ですよ、トオル殿。皆さん冗談を仰ってるだけですから。……四割程度は」
セバスチャンさん、それは半分以上本気と言う事ですよね!?
「汝、ジャスティン・クライトン、フィリス・クライトン。順境にあっても、逆境にあっても、トオル・ホージョーを夫とし、生涯を共にすることを誓いますか?」
「「はい!」」
何と、俺を差し置いて結婚式が進行していました。
「ほほほ、やったもん勝ちなのですよ、トオル殿」
おい、こら、神官長。アンタ、今までの登場じゃシリアスキャラだったよな!?
「では誓いのキスを」
無視か!?
「「ンチューー」」
…はぁ、もうなるようになれですよ。
そうして、俺は日本での戸籍やら何やらといった問題を全部先送りにして二人の可愛い嫁さんをもらったのですよ。……そこ! リア充とか言わない!