皆さんこんにちは。異世界に現代兵器と共に召喚されてしまった北条透です。
何でも俺は勇者としての責務と全うしたとこの世界の神様に判断してもらえないと帰れないそうです。
何だそれは?良い迷惑です。
愚痴ってても仕方ないので早々に異世界召喚時に与えられた能力の把握をするとしましょうか。以下俺の所持品。
ガンカタログ、エアガンのカタログだったけど、実銃として召喚できるっぽいです。
兵器大全、世界中の戦車と戦闘機が載ってます他にも軍艦とか載ってるけど、使えないでしょ、これは。
自衛隊装備年鑑、F-X候補から戦闘糧食まで自衛隊の装備は載ってます。
うん。戦争できるね。問題はこれ、使えるのかだよね。
試しに89式小銃召喚。出た89式小銃。重いな。これが本物の自動小銃。
…何個まで召喚できるんだろ? 連続召喚! ドサドサドサドサ。
…うん、やりすぎました。目の前には一個中隊を編成できそうな銃器があります。
「勇者様、これは一体?」
「いや、少し書の力を把握しておこうかと思って。これは俺の世界での主力武器、自動小銃だ」
「自動小銃ですか?」
「壊れても良い鎧、有る?」
用意してもらった鎧を案山子に被せて大体20メートルくらい離れて銃を構えました。
やべぇ、これで外したら恥じゃ済まねえぞ。緊張してきた。
ターン。
乾いた銃声が響く。良かった、当たった。
でも、皆さん微妙な顔。
「…地味ですな」「地味でね」「地味ですの」
うっせーぞ! 貴族ども。
反対に騎士団は何か戦慄している。
「王室騎士団のミスリル合金の鎧が…」「反対側まで貫通している…」
何かミスリルとか聞こえたけど聞かなかったことにしときましょう。
調子に乗った俺は色々と召喚を繰り返す。
FN-MINIMI
タタタタタタタタタタ。
200発一気に撃ちつくす。銃身から湯気が立ってる。
やっぱり連射のしすぎは良くないみたいだから、途切れ途切れに引き金引かないといけないんだろうな。
でも、銃身過熱の発生する弾数なんて知らねっつの。
「おお~」「さっきに比べれば凄いですの」「さっきが地味すぎたんじゃ」
おいこら、貴族ども。隣で好き勝手言ってんじゃねえ。
「あれを連射されたら…」「一個騎士団が壊滅する」
騎士団は顔色悪いよ?現代兵器の恐ろしさを理解しているみたいだね。
次、110mm無反動砲
チュドーン!
「ファイアボールと同じくらいですかの?」「いや、高位の魔法使いならもっと威力が有るものを撃てますぞ」「…勇者、期待外れですかの」
貴族ウゼー。あんま騒ぐとテメエらの領地で気化爆弾使うぞ、コラ。
「ミスリルが融けている…」「一体、どれ程の高熱なんだ…」
騎士団は変わらず戦慄しっぱなし。まぁ、高熱は副次効果で、本当に凄いのは秒速7~8kmのメタルジェットなんだけどね。
まぁ、形成炸薬弾なめるなって事ですよ。
単一の金属板なら70センチの鉄板だって貫通するんだからな。
防ぎたきゃ複合装甲持って来い。
「勇者殿、ようこそマケドニアへ。マケドニア騎士団の名において貴殿を歓迎いたします」
「騎士団が引き取ってくれるなら」「そうですの。魔王討伐に失敗した時の負債も半端ではないことですし」「今代の勇者に投資する気にはなりませぬ」
…もうこいつら的にして良いか?
「勇者殿、お気になさらず。あの金の亡者どもはこの道具の恐ろしさに気付いていないのです。見た目の派手さなんて飾りです。偉い人にはそれが分からないんです」
「ありがとう騎士殿。現代兵器の素晴らしさに気付いてくれて」
「私はジャスティン・クライトン。マケドニア第一重装騎士団団長をしています。ジャスティンとお呼びください」
「俺は北条透。透が名前で北条が家名。透で良いよ」
「はい。トオル殿」
金と銀を足して2で割ったような髪を腰まで伸ばしたジャスティンは天使のように微笑んだ。
…思わずこれがニコポかと赤面してしまったのは余談である。
「ところで魔王って?」
「この国の北に位置する谷に存在すると言われています。強力な魔法を扱い、その配下に精強な魔王軍を有し、定期的に我が国を始めとする各国に攻めて来るのです」
「それを俺に倒せと?」
「期待していますよ。勇者殿」
「\(^o^)/」
絶望した!召喚されるときに魔法関係の書を持っていなかった俺に絶望した! 欝だ…死のうorz。
「気は済みましたか?」
「ご免、ジャスティン。もうちょっと絶望させてて」
「はい。ではお待ちしています」
「………」
「………」
「………………」
「………………」
「あの、そこに居られると凄い落ち込み難いんですけど…」
「私のことは気にせずに絶望をお続け下さい」
「………」
「………」
「………………」
「………………」
「………俺の負けです」
「絶望はもう良いのですか?」
「もう良い。自分で何が出来るか考える」
「それでこそ勇者殿です」
「その呼び方止めて凄いプレッシャーだから」
「では、トオルと。ああ、この響きは実にアナタに似合っている」
「…ジャスティンって本当にこの世界の生まれ?」
「勿論ですが、何か?」
「いや、いい」
一瞬脳裏に赤い英雄が浮んだ俺だった。
「ところで、アナタの保護責任者は私になりました。これから私の家に向かいます」
「…マジで?」
「マジです」
ジャスティンの家、と言うか首都における活動拠点は中々に大きい屋敷だった。
出迎えは年配の執事さんとメイドさんが数人。本物のメイドさん初めて見たよ。
「お帰りなさいませ、お嬢さま」
「うん、セバスチャン。今帰った」
「彼が?」
「ああ、今代の勇者だ。ミスリル製の鎧を木っ端微塵にする道具を召喚する」
「それ程の者を貴族が持って行かなかったのですか?」
「地味だからな。見た目はファイア・ボールにも劣る」
「何と!? それだけの炎にミスリルを木っ端微塵にする威力を込められるのですか!」
「凄いだろう。貴族には分からないよ」
「勇者殿、自己紹介が遅れました。私、お嬢さまの執事をしているセバスチャンと申します。以後、お見知りおきを。こちらの3人は当屋敷でメイドをしている者達でございます」
「メイド長をしているキャサリンですよろしくお願いいたします」
金の髪を後ろでまとめている優しそうな女性。マブラヴの月読さんを金髪にした感じ。
「屋敷の保全全般を担当しているエイミーです」
何と言うか無表情です。シャッフルのプリムラが無感情のまま成長したらこんな感じになったんじゃね?みたいな。
「料理を担当しているソフィーです。今日はお嬢さまが初めて屋敷に男性を招かれた記念日です。腕に縒りを掛けますわ♪」
人生、何でも楽しいです。つまらなくても楽しみます。といった感じの女性。月姫の琥珀さんみたいな?
「ちょ、ちょっとソフィー。余計なこと言わなくて良いの(赤面)」
「北条透。透が名前で北条が家名。勇者なのに現代兵器を使うイレギュラーだ。よろしく」
「「「「はい!」」」」
ちなみに、その日の料理はとても美味しかったと言っておこう。