しばらく歩くと、俺たちは開けた場所に出た。森の中の空き地といった風情である。
五人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。
「ボロッ」
「うるさいわよ」
小声でルイズが注意してきた。
主犯のフーケは側にいるしあの小屋には誰もいないのを知っているので俺は普通に話していた。
「そういえばミス・ロングビルに聞きたいことがあるんですが」
「何かしら?」
「昨日の下着の色は?」
真顔で聞いた。
「あ、ああんた何聞いてるのよ?」
「しー」
ルイズに静かにするように注意する。
「そ、それが何かこの事件と関係あるのかしら?」
「ええ、極めて重要なことです」
嘘ですけどねー☆
「当ててみましょうか? 純白の白色ですね?」
ギョッとした顔をしたフーケ。
「いや、当たってしまったみたいですね~」
「どうしてわかったんですか?」
それでもフーケは表情を秘書モードから崩さない。
「いやね、実は俺は女性の下着の色を当てることができるんですよ」
「はあ?」
ビシッとルイズに人差し指を向ける。
「ルイズは淡いピンク」
「キュルケは赤色」
「タバサは水色」
それぞれを指差して下着の色を当てる。
全員がスカートを抑えて顔を赤らめていた。
「「「なんでわかったの?」」」
「それは秘密だ。さらばだ諸君!」
そう言って俺は小屋に向かって走り出す。
「フーケ、ゴルァ!!」
扉を蹴り破る。
「ここかぁ」
机をぶち壊す。
「それともこっちかぁ」
棚をぶち壊す。
「はっけ~ん」
壊したチェストの中から出てきた。
「ミッションコンプリート」
ルイズの元を離れて『破壊の杖』を手に入れ再びルイズの元へ戻る。
その間実に三十秒。
「破壊の杖」
タバサが答えた。
「「あっけないわね!」」
ルイズとキュルケが叫んだ。
フーケはあっけに取られた顔で俺を見ていた。
すまん、やっぱりフーケも俺のハーレムに組み込むよ。
帰りの馬車。
フーケのは辺りを偵察してきます。という主張を既に破壊の杖を回収してるから意味ねーよって言いくるめた。
「気づいてるんだろ?」
ルイズたちは馬車の中で眠ってる。たいしたことしてないのに早起きで眠かったんだろう。
「はて? なんのことでしょう?」
馬車の運転席に隣りあって座ってフーケと話している。
フーケを取り込むためにも必要なんだよ。
決して、美人の隣に座りたかったってわけじゃないんだからねっ!
「アタシが土くれのフーケっだって気づいてるんだろ?」
「そーなのかー」
「とぼけるんじゃないよ」
「サーセン」
はあと毒気を抜かれたのかフーケは肩を落とした。
「いつから疑ってたんだい?」
「えー、実はパンツを見た当たりからです~」
黒ずくめの某警部補を真似てみる。
「パンツってどうゆうことだい?」
「ん~、フーケさん昨日の下着と今日の下着、同じ下着をつけてますね?」
「そ、それがどうしたってんだい?」
「不衛生なので履き替えることをおすすめしますー」
カァとフーケの顔が赤くなる。
「オホンッ、昨日見た犯人のパンツとあなたが履いているパンツが同じだったのでもしや? と思っていまして、それに、『破壊の杖』を奪われたことに気づいてすぐに調査をするのは関心できるのですが~、フフ、往復で八時間かかる道のりだけでも怪しいのにさらには聞込みまでして潜伏先を見つけたとあなたは言いました。時間的に不可能です~。さらに黒ずくめのローブを着ていましたが遠目から見て性別は判断できません~。あの話を聞いた時点であなたが犯人だと核心していました」
「はあ、とんだやつに目をつけられちまったね」
「ご愁傷様です~。ですがね。フーケさんに頼みごとがあるんです~」
そう言って俺はトリステインの城下町で思いついた清掃業のことを話した。
ハルケギニアには清掃業という概念が珍しいらしい。
「へぇ、そんなにうまくいくもんかね?」
「ま、騙されたと思って話に乗ってください。少なくとも損はさせませんよ?」
清掃業の後ろ盾はヴァリエール公爵家がやってくれると言い、年収数千エキューは固いと予測を述べた。さらにそこから事業展開して儲け話をしたら
「あんた、賢者かい?」
「まさか、誰でも考えられることですよ。それらの管理をフーケというかミス・ロングビルに頼みたいんですよ。表向きの仕事は誰かに押し付ければいいだけの話です」
「そうかい」
クククと笑い了承してくれた。秘書は仕事が軌道に乗るまでは続けるらしい。
ともかく、フーケを味方に巻き込めたことはでかい。
ワルドザマァw
「そういえばあんたの下着の色を当てるって本当なのかい?」
ふと思い出したように聞いてきた。
「いや実はいうと馬車に乗る前に全員の下着を覗いてたダケですよ」
「とんだペテン師だね」
フーケは呆れた顔をして俺を見て、こいつにはかなわないねとブツブツいってた。
学院長室で、オスマン氏は戻った五人の報告を聞いていた。
「ふむ……。土くれのフーケは見つからなかったが。見事破壊の杖を取り戻してくれた」
「HA☆HA☆HAそんなに褒めるな」
「フーケは、取り逃がしたが、『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」
オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でた。俺とフーケは断ったが。
「君たちの、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の餅位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」
三人の顔が、ぱあっと輝いた。
「ほんとうですか?」
キュルケが、驚いた声で言った。
「ほんとじゃ。いいのじゃ、君たちは、そのぐらいのことをしたんじゃから」
ルイズは、俺を見つめていた。
「……オールド・オスマン。サイトには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は貴族ではない」
俺は言った。
「これでいいですよ?」
指で輪っかを作り金出せと伝える。
オスマン氏は、しょうがないのぉとポケットマネーで払ってくれることを約束してくれた。
「さてと、今日の夜は『ブリッグの舞踏会』じゃ。このとおり、『破壊の杖』も戻ってきたし、予定どおり執り行う」
キュルケの顔がばっと輝いた。
「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」
三人は、礼をするとドアに向かった。
ルイズは、俺をちらっと見つめた。そして、立ち止まる。
「先に行っていいぞ。ここからは大人のお話の時間だ」
「なによそれ」
ルイズは怪訝そうな顔をしていたがおとなしく部屋を出て行った。
「なにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな」
まあね、報酬のこととかカネのこととか金のこととか。
「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。君に爵位を授けることはできんが、せめてものお礼じゃ」
それからオスマン氏は、コルベールに退室を促した。
わくわくしながら俺の話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。
「オールドオスマン。報酬くれ。エキュー金貨で二千、新金貨なら三千でいいぞ?」
「なんじゃそりゃ? 立派な家と森つきの庭が買えるわい」
「やっぱり? んじゃいくらまで出せる?」
「五百」
「千五百でどうだ?」
「むむ、八百でどうじゃ?」
「しゃーねー、千二百」
「千じゃ、これ以上は無理じゃのう」
「じゃそれで」
ヒャッハー、千エキューゲットだぜっ。
「そんなあなたにお知らせがあります。俺はこっちの世界の人間じゃありません」
「本当かね?」
「イグザクトリー。俺は、ルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたんです」
オスマン氏は目を細めた。
「あの「破壊の杖』は、俺たちの世界の武器なんですよ。あれをここに持ってきたのは、誰なんですか?」
原作と違ったらエラいことなので聞いておく。
「アレを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
やはり、原作と同じだった。よかった。
「おぬしのこのルーン……」
話そうか悩むなオスマン。俺は知ってるんだぞ☆
「……これなら知っておるよ。ガンダールヴの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
「な、なんだってー」
ふぅ、やっと言えた。ガンダールヴ云々の話を聞き流し俺を返す方法を探すと言ってくれた。
といっても向こうじゃ死んでるから帰る気ないどね。
しっかし、自殺した人間がこうも行動的になるとはね。ニート中もひきこもりってワケじゃなかったが、ここまでアクティブでもなかった。まー、存分に異世界を楽しむさ。
もともとクリエイターの卵だった俺なんだ。何かを創造するのは得意だぜ?
オスマンからちゃっかり金を巻き上げルイズにバレないように管理する。
半額はフーケとの契約金で使ったけど、五百あれば十分だ。
アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。
タバサとフードファイトで敗北しハシバミ草の新たなる料理ハシバミ草で肉を巻いたお手軽料理を振舞った。ちなみにハシバミ草はピーマンを一段階苦くしたような味だった。
ハシバミ中毒者をいなしてバルコニーで休憩する。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」
お代官の紹介かよってツッコミたかったがお腹一杯だったから無視した。
ホールでは、貴族たちが優雅にダンスを踊っていた。
ルイズは誰の誘いをも断ると、バルコニーに寂しく佇む俺に気づき、近寄ってきた。
「楽しんでるみたいね」
「まあな」
デルフリンガーがルイズに気づき、「おお、馬子《まご》にも衣装じゃねえか」と言った。
デルフ、空気嫁。
「うるさいわね」
「ルイズは、踊らないのか?」
正直苦しいから踊りを断りたい。
「相手がいないのよ」
ルイズは手を広げた。
「いっぱい、誘われてたじゃん」
ルイズは、答えずに、すっと手を差し伸べた。
「踊ってあげても、よくってよ」
「えー」
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」
そう言われたら紳士な俺は断れない。
「ダンスなんてしたことねーよ?」
ルイズは「わたしに合わせて」と言って、俺の手を軽く握った。
見よう見まねでもなんとかなるもんだ
ルイズに合わせて踊りだす。
「ねえ、サイト。信じてあげるわ」
「なにをぉ?」
「……その、あんたが別の世界から来たってこと」
「わーい。って信じてなかったのか?」
「今まで、半信半疑だったけど……。でも、あの『破壊の杖』……。あんたの世界の武器なんでしょう」
そういや、帰ってから説明したっけ。
フーケのことも正体は教えなかったが清掃事業やっから何とかしてって頼んだら意外にもオーケーしてくれた。
収入を孤児院に寄付するとか多少着色した話を感動した様子で聞いてたしな。
ミス・ロングビルがなんで担当するかって話は彼女が孤児院出身だからと嘘も着いた。
「ねえ、帰りたい?」
「別に」
そうなの?と呟いてルイズはしばらく無言で踊り始めた。
「ありがとう」
ルイズが礼を言ったので、俺はなんのことだろうと思った。
「清掃事業のこと、家に手紙送ったら二つ返事で了承してくれたわ。なんでも、国のことを考えていた私のことをえらく褒めた文章だったわ」
「気にすんな。当然だろ」
「どうして?」
「俺は……、ヤバ、ゴメン。トイレ」
そう言ってルイズをほっぽり出してトイレに駆け込む。
「オエエエエ」
吐いちゃった☆