「決闘だ! バカチンがぁあああああ!」
さて、乳の感触も楽しんだ。そろそろ話を聞いてやる振りをしてやるか。
「ギーシュュウウ。貴様には選択肢が二つある。
一つ、姫様の言う事聞く。
二つ、姫様の言う事を聞かないでここで死ぬ。
さあ、どっちを選ぶ?」
「な、なにを言ってるんだね?君は」
「重大な機密を知ってしまった以上貴様は我々の言う事に従わなければならない。
それがここにいる条件だぁ」
そう言ってギーシュを殴りつける。
もちろん殴った意味はない。
「そうね……、今の話を聞かれたのは、まずいわね……」
アンリエッタは空気を読んでくれた。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「え? あなたが?」
「どうすんの? 姫様?」
「ぼくも仲間に入れてくれ!」
殴られた頬を抑えながら、ギーシュはわめいた。
「どうしてだよ?」
ギーシュは、ぽっと顔を赤らめた。
「出番が、じゃなかった。姫殿下のお役に立ちたいのです……」
「姫様! こいつも連れて行ってやりてぇんですが構いませんかね?」
アンリエッタが俺を見つめる。
その後、ギーシュを見てつぶやく。
「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「親の名前を使うなぁ!」
もう一度殴ってやる。
もちろん意味はない。
「痛いな! いいじゃないか、きっと役に立つ。だから連れてってくれたまえ」
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
「自分で撒いた不幸の種を他人に狩らせる姫様をお助けてやってください。ギーシュ」
「き、君ぃ、姫殿下になんて失礼な口の聞き方だ。僕が修正してやる!」
「いいのです。ギーシュさん。彼の言うとおりなのですから」
「だってよ。がんばれよギーシュ。君に期待している。いい報告が聞けるようにここで待ってる!!」
「あんたもいくのよ!」
ちっ、だめか。
「えー」
「えー、じゃない!」
「くす」
わー、笑ってやがりますよ。この姫様。
「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
そして、すっと左手を差し出した。はいはい、キスね。
「いけません! 姫さま! そんな、使い魔にお手を許すなんて!」
「いいのですよ。この方はわたくしのために働いてくださるのです、忠誠には、報いるところがなければなりません」
アンリエッタはにっこりと俺に笑ってみせた。
俺はにっこりとアンリエッタに嗤ってみせた。
ズキューン!!
強引にアンリエッタの唇を奪う。ついでに舌も入れる。
「むぐ……」
アンリエッタの体から力が抜け、俺の手をすり抜け、そのままベッドに崩れ落ちた。
「姫殿下になにしてんのよッ! いいいいい、犬────ッ!」
「うるせー、これから戦地に向かってやるんだ。このくらいしたっていいじゃない。人間だもの」
「ぼ、僕も同じことしていいのだろうか?」
「ダメに決まってんでしょー!」
ルイズはギーシュをグーで殴った。
俺は避けた。
「い、いいのです。忠誠には報いるところがなければなりませんから」
ふん、貴様の唇を奪ったのはウェールズでもない。この俺だぁ!
ギーシュはダメージのせいか、後ろにのけぞって失神した。
「大丈夫かこいつ?」
ルイズはギーシュなど気にせず、真剣な声で言った。
「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」
「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」
「じゃあ危険なんで中止ってことで」
俺に対するスルースキルを覚えたアンリエッタは机に座ると、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためた。
「えー、何々? 愛しのウェールズ様へ」
「何読んでるんですか?」
アンリエッタが俺を睨む。
「ダメ?」
「ダメです」
そう言って俺が離れたらまた手紙を書き始めた。俺も手紙を書いた。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜くと、ルイズに手渡した。
「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」
「んじゃ、これは契約の前金ね。ちゃんとした報酬はきっちりと貰うからよろしく」
「何いってんのよ! 報酬なんていらないわ! 姫様からの命を受けた名誉で満足よ!」
「んじゃルイズはそれで、俺は報酬がないならどんな方法を使っても一歩もこの部屋からでないぞ」
「何が望みです?」
「お、話がわかるね。俺は名誉だとか要らないから一括払いの金でいいよ?」
「おいくらですか? 私が払える額ならば今すぐ払いましょう」
「エキュー金貨で一億。新金貨なら二億ね」
ブフゥとルイズとギーシュが咳き込む。ギーシュはいつの間にか復活していた。
「ちょっと国家予算レベルじゃない!」
「そうだよ。君、何にそんなお金使うかしらないがボッタクリだぞ?」
「いーや、正当な報酬額だね。むしろ安い方だ」
アンリエッタは( ゚д゚)ポカーンとしている。
「手紙が回収できなかったら戦争になるんだろ? だったら国家予算レベルで金かかるじゃん? それも一億なんてはした金のレベルで」
「しかし、個人に支払うには大きすぎる金額ですわ」
「えー、じゃあ五千」
「二千でお願いしますわ」
「しょうがない、三千にまけよう」
「二千五百が限界です」
「まいどー、払えなかったらアンリエッタ姫の処女貰うんで」
三人は俺を悪魔を見るような目で見ていた。
照れるぜ☆
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別にアンリエッタが嫌いなわけじゃない。
扱いが酷いのは仕様ってことで。
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