「オルァ」
礼拝堂の壁をぶち破り轟音と共に崩れた。
烈風のごとく中に飛び込む。
「貴様……」
ワルドが呟く。
壁をぶち破り、間一髪飛び込んでの一撃をワルドは杖で受け止めていた。
ウェールズ、生きてやがる。ちっ。
「ウェールズ! お前はやるべき事をやれ」
「ああ、任したサイト」
俺と入れ替わるようにウェールズが礼拝堂を出て行った。
「サイト!」
「ルイズは下がってろ」
俺の言葉に頷きルイズは下がる。
「なぜにここがわかった? ガンダールヴ」
「結婚するって言ってたろ。ウェールズに場所は聞いといた」
二、三度ワルドに切り込む。
ワルドは高く飛び上がり、それをなんなくかわした。
「なぜ、戦う? 君はルイズと僕の結婚におめでとうといったぞ?」
「あんときゃどうにかしてたのさ」
主にウェールズのせいで。
「そうか、手合わせの時はずいぶんとお世話になったね。初めから本気を出そう。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう」
「ずいぶんと女々しいことで、俺はお前を修正してやるよ」
俺は飛びかかったが、ワルドは軽業師のように剣戟をかわしながら、呪文を唱える。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
呪文が完成すると、ワルドの体は分身した。
一つ……、二つ……、三つ……、四つ……、本体と合わせて、五体のワルドが俺を取り囲んだ。
「回す気ね? イヤらしい」
「ホモじゃないと言ってるだろ!」
「じゃあ、自分で自分の相手するのか? それなんてオナニー?」
「ダマレェ」
五体の攻撃を 剣で、受け、流す。
(ウェールズ、無事に帰ったらアンリエッタと3Pだぁああああ)
SIDE:ルイズ
何あれ? 本当に殺し合い?
いい大人のワルドがサイトの言葉に翻弄されていた。
どんな時でもサイトはいつもどおりなのだ。
サイトは五体のワルドの攻撃を器用に避けては反撃をしている。
あ、一体倒した。
「わ、私もやればできる子!」
私は呪文を詠唱し、杖を振る。『ウィンド・ブレイク』を唱える。その呪文が、三体のワルドにぶつかり、表面で爆発した。
ぼごんっ! と激しい音がして、ワルド達は消滅した。
「え? 消えた? わたしの魔法で?」
本体であるワルドと生き残った一体がこちらを見る。
「どこ見とんじゃ~」
サイトの言葉とともに一体は姿を消し、本体のワルドはその隙に距離を開けた。
「どうして死地に帰ってきた? お前を蔑むルイズのため、どうして命を捨てる? 平民の思考は理解できぬな!」
ワルドが問う。
「時間稼ぎが見え見えなんだよっ」
サイトは答えない。そのかわりに凄まじい剣撃をお見舞いしていた。
「く、お前、ルイズに恋しているな? 適わぬ恋を主人に抱いたか! こっけいなことだ! あの高慢なルイズが、貴様に振り向くことなどありえまいに! ささやかな同情を恋と勘違いしたか! 愚か者め!」
サイト、そうなの?
SIDE:サイト・ヒラガ
ルイズさん、見てないで攻撃してください。
「ワケわかんねーこといってんじゃねー。何が言いたい? 真面目に戦え!」
「真面目にやってるわ! 改めて問う。なにゆえ戦う?」
ち、時間稼ぎに付き合う気はねーのにうるせー奴だ。
「理由は単純。てめーは俺を怒らせた」
(うおおお、ウェールズ、アンリエッタ、ルイズ、そして俺。4Pだぁあああああ)
「すげぇぜ! 相棒、そうだ。心の震えが、俺を振る!!」
胴体を切り離すつもりで斬りに行ったが、さすがワルド。左腕を犠牲にして避けた。
「くそ……、この『閃光』がよもや後れを取るとは……」
「ふ、早漏勝負なら俺が負けてた」
「最後までフザケた奴だ」
ワルドは残った右腕で杖を振り、宙に浮いた。
「今回は私の完敗だ。だが、どのみちここには、すぐに我が『レコンキスタ』の大群が押し寄せる!」
そう捨て台詞を残し、ワルドは壁に穴を開けて、飛び去っていった。
「サイトォ!」
ルイズが飛び込んできた。
「すごかったな。ワルド三体も倒して俺より目立ってんじゃん」
そう言って、ルイズをナデナデしてあげた。
「あ、当たり前よ。使い魔が頑張ってるのに主人が頑張らないなんておかしいじゃない」
ヤベー、デレルイズ萌える。おっきしゃうんだお(^ω^)
「なあ、ルイズ」
「なによ?」
「このままじゃ、そのうち五万の敵に囲まれちまう。そしたらいくら俺たちでも死んじゃうよな?」
ルイズの顔が強張る。
「そうね」
「死ぬ前にキスくらいしよーぜ」
ルイズは真剣な顔で俺を見つめた。
「そ、そそそうね。死んじゃう前にそれくらいしてもいいわよね」
ルイズを抱き寄せる。
「サイト、出会えてよかった」
「うれしいこと言ってくれるじゃないの」
お互いに目をつむる。
「ん」
唇と唇が重なる。
しかし、そんな甘い時間もすぐに終わる。
ぼこっと、ルイズの横に地面が盛り上がった。
「なにごと?」
茶色の生き物が顔を出した。
巨大モグラが出てきた穴から、ひょこっとギーシュが顔を出した。
「こら! ヴェルダンデ! どこまでお前は穴を掘る気なんだね! いいけど! って……」
土に塗れたギーシュが出てきた。
抱き合っている俺たちを見てとぼけた声で言った。
「おじゃまだったかな?」
「な、なんであんたがここにいるのよ!」
「いやなに。『土くれ』のフーケとの一戦に勝利した僕たちは、寝る間も惜しんできみたちのあとを追いかけたのだ。なにせこの任務には、姫殿下の名誉がかかっているからね」
「ここは雲の上よ! どうやって!」
そのとき、ギーシュの傍らに、キュルケが顔を出した。
「タバサのシルフィードよってお楽しみ中?」
「キュルケ!」
「アルビオンについたはいいが、何せ勝手がわからぬ異国だからね。でも、このヴェルダンデが、いきなり穴を掘り始めた。後をくっついていったら、ここに出た」
巨大モグラは、フガフガとルイズの指に光る『水のルビー』に鼻を押しつけている。
「ねえ聞いて? あたし達、あのフーケを倒しちゃったの。といっても黒焦げで誰が誰だかわかんないから倒したってことでいいわよね? ところでダーリン、いつまでそうしてるの?」
フーケも上手くやったようだ。しかし、キュルケ、丸焦げ死体を幾つ作った?
意外と残忍ですね。
「ちょっと、離してよサイト」
「HAHAHA、照れるなよ。と言っている時間もないので開放」
スッと抱擁をやめるとルイズは名残惜しい顔をしていた。
ウェールズ、最後まで諦めんなよ。
礼拝堂の扉の外を見つめて願う。
「サイト、早くしたまえ」
「今行く」
ヴェルダンデが掘った穴は、アルビオン大陸の真下に通じていた。
俺たちが穴から出ると、すでにそこは雲の中である。落下する四人とモグラを、シルフィードが受け止めた。
風竜は、緩やかに降下して雲を抜けると、魔法学院を目指し、力強く羽ばたいた。
俺は、アルビオン大陸を見上げた。
「バルス!」
思わず叫んでしまったが後悔はしていない。
シルフィードの上、ギーシュは疲れたのか背びれを背もたれにして器用に眠っている。
俺はと言うと右腕にキュルケが腕を絡ませ乳を押し付けてくる。
左腕にタバサが腕を絡ませナイチチを押し付けてくる。
膝の上にルイズが座っている。尻が股間に当たってます。
「嬉しいが身動きがとれない」
「いいじゃない」
なんというハーレム。
結局俺だけ眠れなかった。