~ サイト・ヒラガのクッキング教室 ~
以前、タバサとフードファイトで敗北してハシバミ草の新たなる料理を振舞ったことがある。(ゼロのひどい使い魔 8後 参照)
タバサは俺のことをハジバミ信者と勘違いしたらしく、事あるごとに新たなるハシバミ料理を作って欲しいと懇願してきていた。
「以前食べた料理が忘れられない」
とか
「あなたはハシバミの可能性を示してくれた」
など
いつもの無口はどうした?
そんなタバサも萌えるが、しかし、女の子なら自分で料理しなさい。
「そんなわけで記念すべき第一回のハシバミ料理研究会を開催する」
「わー」
シエスタがパチパチと拍手してくれた。タバサもそれにあわせて拍手をしていた。
厨房にはマルトーさん含め数人の料理人がいる。
どうも、俺の作ったレシピに興味があるようで、仕込みを手伝ってくれた。
俺がハシバミ草を中心とした料理を提供するだけの会なのだが、参加者はいた。
タバサ、こいつが言い始めたことなので参加している。
キュルケ、タバサが珍しく自ら動いたのが気になったのか参加する。
ルイズ、俺が開催するということで主人として参加する。
フーケ、どこから聞きつけてシレッと参加した。
モンモランシー、いざという時の救護班として参加させた。
ギーシュ、声もかけてないのに勝手に参加した。
「食い意地はった奴らだな、このいやしんぼ!」
「君が何かするというので気になって来てみれば美味しいものを食べさせてくれるというじゃないか」
「なんでハシバミ草なの? もっといい食材あったでしょうに」
ギーシュ、モンモランシーがイチャモンをつけてきた。
「なら帰るといい。これは私の提案」
「ははは、タバサ、これはチャンスだ。ハシバミちゅう、じゃなかった。好きになってくれるかもよ
?」
タバサは少しだけ考えて声を出す。
「期待している」
SIDE:マルトー
いや、『我らの剣』が最近『平民の賢者』だとか『変態』だと呼ばれてるのは知っていたが、料理もできるのか。
しかも俺が聞いたこともない手法を知っていた。正しく賢者だな。
ハシバミ草は苦味が強くて食べれる人を選ぶ食材だ。
出汁っていうものを使えばどんな料理も多少うまくなるらしい。
『我らの剣』のいう、ショイウだったか? 悪いが聞いたことも無い調味料だ。
なんでも大豆から作るらしい。詳しい作り方はわからないらしいが、酒と同じように大豆を発酵させると言っていた。
今度試してみることにする。
前菜はハシバミ草を油でさっと炒めた後酒に砂糖と調味料を入れ煮込んだものだった。
一口頂いたが、苦味の中にも甘みがあった。これなら子供での食べられそうだ。
次に出したのは小麦粉を水でといたものを油で揚げたものだった。
テンプラとかいう料理らしい。
こいつも頂いたが酒のつまみに合いそうだった。
しかし、長年料理をしてきているが驚きの連続だ。
小麦粉、パン粉、溶き卵、を肉につけて揚げる。器用に肉に切り込みを入れてハシバミ草を挟み込んでいた。
腕も悪くない。作るものもうまい。
料理人として生きていけそうだ。
薄切り肉入り野菜炒めを作りながら『我らの剣』がいった。
「料理は楽しいな。久々にいい食材と道具使えたし、気持ちいい食いっぷりもよろしい」
「『我らの剣』よぉ、わかるかい? 料理人の喜びよ」
剣士で、賢者で、料理人。才能のあるやつは羨ましいね。
SIDE:キュルケ
やだ、何これ、すごく可愛い。友人であるタバサを私は鑑賞する。
リスのように口をもごもごさせて一生懸命食べている様が可愛い。
もう、そんな顔いつもなら見せてくれない癖に。
「あ、おいしい」
感嘆の声が自然と出た。
ハシバミ草の苦味を活かしている。
いや、苦味がいつもより和らいでいて、丁度いい苦味だ。
「あらこれもおいしいわ」
テーブルに並ぶ料理をお皿に取り分けて食べる。
みんな私と同じように一口食べた後はどんどんと料理を食べていっている。
「ちょっと! タバサ食べるの早すぎよ! 私まだそれ食べてないわ!」
ルイズがタバサに注意したが、タバサは聞く耳持たないようすで料理を口に運んでいる。
「ルイズ、私の分でよかったら少し分けてあげるわよ?」
「へ? あ、ありがと」
タバサの微笑ましい光景を私は邪魔したくなかった。
SIDE:モンモランシー
初めて食べるものが多かったわ。それにしてもいつも見ているタバサじゃないわね。
ナイフとフォークを頻りに動かしている。彼女の小さな体のどこにあんな量が入るのだろう。
体を壊したら私が診てあげるのよね。救護班って何よって初めは思ったけどタバサを見ていると納得できるわ。
「あら、これもおいしいわね」
「そうだね、モンモランシー。いや、彼は本当になんでもできるな!」
ギーシュがそういった。確かに彼のできないことって何かしら?
召喚されて一ヶ月も経ってないのに姫様から密命を受けて手柄を立てたって噂が流れてるわ。
彼のやっている商売も考えると偉業なのではないだろうか?
彼は言う、商売相手に平民も貴族もエルフもない。全て平等に扱えと。
私は言う。
『それって、共和制? だとしたらあなた』
『バーカ、ロール嬢。民主制だ。』
『誰がロール嬢よ! って民主制?』
『政治家になるなら答えてやる。長い長いお話を理解できるまで教え込むよ』
『いいわよ。断るわ』
興味があったが、政治家になるつもりなどないのでこれ以上聞かない方がいい。
彼の話に間違はない。
彼の行動に無駄はない。
きっとこの料理につられて来た人たちは彼に組み込まれた人たちだろう。
私もとっくに組み込まれてるのが悔しいわ。
SIDE:ルイズ
私はハシバミ草があまり好きではなかった。でもサイトの出すハシバミ料理は嫌いではない。
むしろ好きな方だ。ほのかな苦味。お酒に合う。
そろそろお腹も満たされた頃合いにデザートが出てきた。
「なにこれ?」
「クックベリーパイ、ハシバミ風」
私の好きな食べ物である。
「ハシバミ風ってなによ?」
「それっぽいってこと、まあ、食えよ。クックベリーパイ好きなんだろ?」
アレなんで私の好物しってるの?
疑問に思う。同時に嬉しくもある。
「ご主人の好物を出すなんて気が利くじゃない」
「気に入ったら有料で作ってやるよ?」(キラ☆)
ドキッ――
なんて顔すんのよ。
料理もできるし腕っ節もある。使い魔としてはかなり大当たりなんじゃない?
改めて私はこの使い魔を召喚できたことをよかったと思えた。
SIDE:タバサ
彼が悪い。
私はお腹をさすりそう思う。
「あら、たくさん食べたわね。なにそれ? ぷぷ」
私のお腹は妊娠したかのように膨らんでいた。
「子供ができたみたいですね」
ミス・ロングビルがそういうと周りは爆笑に包まれた。
顔が赤くなるのがわかる。
「不覚」
本当にそう思う。
少しだけ昔を思い出し彼にいたずらしてやることにした。
「彼との愛の結晶」
ビキッと空気が凍ったような気がした。
きっと気のせいだろう。
「言うわねぇ。タバサ、恐ろしい子」
キュルケがそう言った。
恐ろしいのは彼が作った料理であり私は悪くない。
そう、悪くないはずだ。
満腹感と幸福感に包まれながら私はそう思った。
――――――――――――――――――――――
外伝はどうしてもタバサになってしまうんだ……
――――――――――――――――――――――