SIDE:サイト・ヒラガ
「知らない天井だ」
あまりにもこのシュチュエーションがアレだったので思わず使ってしまった。
「あ、起きました? すぐにミス・ヴァリエール様を呼んできますね」
はて、ここは?
原作通りならルーンを刻まれて悶絶したはず。
しかし、ここは見たこともない部屋だ。
しかもさっき出ていったのはシエスタだったな。それもアニメ版の。
「マジで?」
いや何がって、左手のルーンですよ。
まさにガンダールヴのルーンじゃ!
机にあるペーパーナイフを握ったら体が羽のように軽くなった。
マジか!体重が感じなくなるってこんな感じか。
なんつうか、水の中で浮いてるみたい。
マジでΣ( ゚Д゚)
ってなっちゃうね。
あらゆる武器を使いこなす。
身体能力の向上。
たった二つだが原動力が心の震えっていうわけわからん仕様。
なんというチート。
サイトは初めから理解してなかったから徐々に覚醒していって強くなったみたいだが、俺は既に知っている。
たしか七万を相手にしたとき衝撃波みたいなので複数人をぶっ飛ばしてたよな。
つまりは最終的には鍛えれば音速を超える剣術を扱えるってわけだ。
マッハパンチならぬマッハ切りだ。
「ちょっと、あんた何やってんのよ?」
「げぇ、ルイズ」
オーバーリアクションで驚いて見せる。
「呼び捨てにしないで」
「すいません」
ルイズの表情が、険しいものになった。色々と思うところがあるらしい。
乙女心はわからん。
「……なんであんたはのこのこ召喚されたの?」
「知るか」
マジで知るかってんだ。
うっかりフラグ立てちまったんだ。
「このヴァリエール家の三女が……。由緒正しい旧い家柄を誇る貴族のわたしが、なんであんたみたいなのを使い魔にしなくちゃなんないの?」
それは貴方が虚無の使い手だからです。
とりあえず、ここに長いしても意味がないのでルイズの部屋へ移動。
しかし、建築レベルは18世紀ってレベルじゃねーぞ。
魔法ってのは便利だな。
ちなみにペーパーナイフは原作通りに行かない場合も考えて懐に忍ばせておいた。
「それほんと?」
まあ、異世界の話をした反応は期待通りだった。
気絶したせいで既に夜になってるわけで。
「マジです。そもそも俺の世界は月が一つだ」
確かそんな話してたはず。
「信じられないわ」
「俺だって信じられん」
「別の世界って、どういうこと?」
並行世界だの多世界解釈の説明をしてもたぶんわかんねーだろうな。
そもそも、この世界にはガリレオもいなければニュートンもいない。
「非常に難しい解釈を説明しなければいけない上に、おそらくこの世界にいる誰も理解できないと思うぜぇ」
「何よそれ? 貴族をバカにしてるの?」
「そーゆうわけじゃないよ。というか、俺が異世界から来たって信じてないでしょ?」
「当たり前よ!」
当たり前ですか。じゃあ説明する意味ねーじゃん。
「なんか馬鹿にしてない?」
「イヤー、そんなことナイですよ?」
俺の知ってる知識を披露したらガリレオみたく異端として扱われるかもしれない。
だとしたら、ここは黙っておいた方がいいだろ。常識的に考えて。
「とりあえず、異世界の話は置いといて。これからの話をしたほうが建設的ではありませんか? 可愛いらしいご主人さま」
「ふえ? そ、そうね。使い魔のことを教えてあげるわ」
例の知らない天井の部屋を保健室としておこう。そこで俺は見た。
いや、まあ、サイトになってたね。
鏡で顔を見たもの。
こりゃ、完全にサイトになってんじゃん。
しかも、腹筋割れてるし、隠れマッチョだった。
体の作りは鍛え抜かれた高校生ってレベルじゃねー。
いつまでも父親と決着をつけない範馬刃●って感じだった。
うん、これ個人が国家と喧嘩できるレベルじゃね?
どこぞの神様のいたずらか、とりあえず俺は話をすすめることにした。
使い魔の説明はやっぱりおんなじ。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ」
「エッチなのはいけないと思います」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」←スルーした
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬って具体的になんのこと?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……。あんた、そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」
「例えば、それらの秘薬を見つけ出したとして、ご主人さまは扱えるの?」
「うっ」
「そ、そして、これが一番なんだけど……、便い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃ無理ね……」
「そうやって無理って決めるなよ」
「平民の癖にうっさいわね!」
はぁとルイズは一息ついて続ける。
「だから、あんたにできそうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「えー」
「えー、じゃない!」
結局サイトと同じかよ。
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2011/05/21
加筆&修正