SIDE:アンリエッタ
信じられない光景を目の当たりにした。
今まで散々自分たちに砲撃を浴びせかけていた巨艦のが上空に現れた光の球に包まれた。
光の球はさらに膨れ上がり、視界すべてを覆い尽くした。
音はない。
私は咄嗟に目をつむった。
目が焼けると、錯覚するほどの光の球であった。
そして……、光が晴れたあと、艦隊は炎上していた。
巨艦『レキシントン』号を筆頭に、すべての艦の帆が、甲板が燃えていた。
あれだけトリステイン軍を苦しめた艦隊が、がくりと艦首を落とし、地面に向かって墜落していく。
地響きを立てて、艦隊は地面に滑り落ちた。
私は、しばし呆然とした。
辺りは、恐ろしいほどの静寂に包まれていた。誰も彼も、己の目にしたものが信じられなかったのだ。
「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! 伝説のフェニックスによって!」
マザリーニが大声で叫んだ。
「フェニックス? 不死鳥だって?」
動揺が走る。
「さよう! あの空飛ぶ翼を見よ! 伝説の不死鳥、フェニックスですぞ! おのおのがた! 始祖の祝福我にあり!」
するとあちこちから歓声が漏れ、すぐに大きなうねりとなった。
「うおおおおおおぉーッ! トリステイン万歳! フェニックス万歳!」
私は、マザリーニにそっと尋ねた。
「枢機卿、フエニックスとは……、まことですか? 伝説のフェニックスなど、わたしは聞いたことがありませんが」
マザリーニは、いたずらっぽく笑った。脳裏に彼の顔が重なる。
「真っ赤な嘘ですよ。しかし、今は誰もが判断力を失っておる。目の当たりにした光景が信じられんのです。この私とて同じです。しかし、現実に敵艦隊は墜落し、あのように見慣れぬ鳳が舞っているではござらぬか。ならばそれを利用せぬという法はない」
「はあ……」
「なあに、今は私の言葉が嘘か真かなど、誰も気にしませんわい。気にしておるのは、生きるか死ぬか、ですぞ。つまり、勝ち負けですな」
まるで彼が言う事を代弁しているかのような気がした。
「使えるものは、なんでも使う。政治と戦の基本ですぞ。覚えておきなさい殿下。今日からあなたはこのトリステインの王なのだから」
使えるものは何でも使う、か。
「殿下。では、勝ちに行きますか」
マザリーニが言った。私は再び強く頷くと、水晶光る杖を掲げた。
「全軍突撃ッ! 王軍ッ! 我に続けッ!」
SIDE:サイト・ヒラガ
ルイズはぐったりとしていた。まー、あんだけすげぇ魔法使えばそうか。
これが、虚無。そして、ルイズの16年分の魔法。
「よお、すごかったじゃん」
「うん、疲れた。さすが伝説ね」
「伝説? 伝説は俺とデルフだろ?」
「ちげーねぇ」
家が数件焼け焦げた村を見る。
うーん、確か原作じゃ、村が焼け焦げたんだよな。
シエスタ無事かな~。
SIDE:シエスタ
弟たちを連れて森の中に逃げるはずが、あっという間にトリステイン軍が駆けつけてくれた。
家が数件燃えた跡が見えたがそれ以上の被害はなかった。
ここを任せられている軍の人は私たちに優しくしてくれた。
戦争の被害にあった家はどうやら国が補助金を出してくれるという話だ。
夕方……。
トリステイン軍の人がアルビオン軍を倒したと言ってくれた。
村に戻ると空から爆音が聞こえた。
見上げる。
私は驚いた。『竜の羽衣』が飛んでいる。
私は駆け足で追いかけた。
SIDE:サイト・ヒラガ
思ったより被害が少ない。
ゼロ戦で村を旋回して様子を見た後、タルブの草原に着陸させた。
ルイズはすっかりと俺の腕の中で眠ってしまっている。
どうしよっかな~。
風防を開いて夕暮れに染まる空を見ていた。
「サイトさーん」
「シエスタ」
ゼロ戦から降りるわけもいかず操縦席から言葉をかけた。
「すまん、静かにしてくれ、ルイズが寝てるんだ」
シエスタは羽から登ってきて操縦席の横まで来ていた。なんという行動力。
「あら」
そう言ってルイズを見つめるシエスタ。
ちょんちょんとルイズのほっぺをつついていた。
「シエスタ、すまんこいつ頼んだ」
「ふにゃ」
寝ぼけるルイズをおいて、俺はゼロ戦から飛び出して、駆け出した。
「どこ行くんです?」
「トイレ!」
森で放尿をすました後。
ルイズの感触を思い出して抜いた。