ウェールズは、ファントムマスクをつけている。
額から口元までは隠れてるが、それ以外は丸見え、変装の意味ないね。
格好はどこをどう見ても平民。
杖は持ってるけど目立たないように工夫されていた。
ここは学院のテラスである。
「あんた誰?」
俺はテーブルの正面に座る人物に問いかける。
流れる金髪の髪。
「はは、相変わらずなようだね」
「ちょっと、誰なのよ?」
ルイズが俺に聞いてくる。マジでわからんのか?
テーブルにはマチルダ、ルイズ、俺、キュルケ、タバサが居る。
マチルダとキュルケはニヤニヤとルイズと俺を見ていた。
「私を頼る理由がわかったけど、さすがサイトねぇ」
キュルケがファントムマスクを被った人物を流し目で見ながら言う。
「約束は果たしましたわ。ボス、報酬は弾んでくださいね?」
マチルダはにやりと俺に微笑かけてくる。
「なんでここにいるんだよぉ。俺の手紙の指示は無視?」
「いえ、中継しただけですよ?」
絶対に違う。
「だから、誰なのよ?」
ルイズがわめく。
正体を教えるべきかどうか迷う。
「久しいね、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
そういってアホは周りを見渡し素早くマスクをとって素顔を見せた。
「あ、あなた」
もう一度ウェールズはマスクを装着。
ルイズが騒がないようにウェールズは指を口の前に立ててシーッとやる。
「驚いたわ。なんでここに?」
「キュルケの思惑か?」
マチルダは頷いた。どうせ俺とウェールズは友達だと言ったのだろう。
何かと煮え湯飲まされているのマチルダのあてつけだ。
「さーね。どう? 感動の再会じゃないの?」
「私は反対したのだが、今はしがないただの人間だ」
「べ、別に嬉しくなんてないんだからねっ!」
ウェールズは手を差し出してきた。
いや、テーブルを囲んでる女性たちが見えんのか?
し、仕方なく握手してあげるんだからねっ!
「また会えて嬉しいよ」
SIDE:マチルダ
男同士の友情ってやつかい?
二人は恥ずかしそうに握手をしていた。
本当は学院に寄る予定はなかったが、ミス・ツェルプストーが提案してくれた。
あいつに合わせたらどんな反応するか見たくない?
アタシは迷うことなく提案に乗った。
おかげでいいものが見れた。
「君には感謝しても仕切れないな。当分頭が上がりそうにないよ」
「はっ、ならなんかくれ」
女のアタシにはよくわからないが、この二人が心底喜んでいるのがわかる。
慈善行為も悪く無いね。
「生憎、今の私にはこの指輪しか無い。そうだな。私が持っていても疑われてしまう。これを受け取ってくれるかい?」
王家の指輪を軽々と渡そうとする。
あ、アレにどれだけの価値があるのかわかってるのか?
「求婚されちゃったわ。ルイズどうしよう?」
フザケた調子でミス・ヴァリエールに話を振っていた。
「しらないわよ。受けとれば?」
「えー」
言葉ではそういっているが、まんざらでもない顔をしていた。
「まあ、貰えるものは貰っとく。言っとくけど、求婚を受けたわけじゃないんだからねっ!」
「ははは、サイトくんは愉快だな。君か私、どちらかが女性だったら私たちはどうなってたろうね?」
ウェールズもサイトといい勝負である。
なるほど、一日で友人になるわけだ。
「この野郎。お前が女なら、ヒーヒー言わせてたさ。俺が女だったら姫様から寝とってやった」
「ふ、それは困った話だ。いや、男同士でよかったよ」
「ずいぶんと仲がよろしいようで」
呆気にとられている子供な女性陣をおいてアタシはいってやる。
くくく、なんだいその顔。
SIDE:ウェールズ
友人との再開は嬉しいものだ。ミス・ロングビル。
いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ。私の父親が迷惑をかけてしまった。
私はそれを聞いて素直に謝罪した。
その時は複雑な表情をしていたが、サイトくんとの約束で私を許してくれた。
私の前にいる友人には一生をかけて恩を報いる。
私は心の中でそう思った。
私はもう、迷わない。
生き恥を晒して生きる。
それだけだ。
「んで、いつまでここにいるわけ?」
「二、三日は滞在します。その後、ゲルマニアに向かいますわ」
「なら姫様にあうか?」
ドキリとする。もう二度とあえないと思っていた愛すべき人物のことだ。
「会えるのなら、そうしたいが、私がトリステインにいること自体まずいのでは?」
愛しのアンリエッタは今や聖女として崇められている。ゲルマニアとの婚姻も解消されアルビオンは惨敗した。
そしてそのままアンリエッタは女王として即位したのだ。
「情勢は日々変動してるのだよ」
SIDE:サイト・ヒラガ
情勢を考える。アルビオンはもはや虫の息。
ゲルマニアはトリステインとの同盟破棄された。国としての信頼が落ちている。
トリステインは聖女誕生と女王即位でお株上昇。
ガリアとロマリアは静観中。ガリアはアルビオンとの戦に参戦しなかったのだ。
ウェールズをアルビオンに返して王に即位させるか?
対、七万軍のフラグを折れるが、そうなる前に未だにレコンキスタが暗躍しているので殺される可能性が高い。
それに、ウェールズをアルビオン王に即位させて、アンリエッタ女王と結婚させてトリステイン、アルビオン連合国家にしてもいいが、そうなると黙っていないのがガリアだろう。
無能王ジョセフ。
狂人だっけか。無能王のレッテルを貼られているが普通に国の運営はやり手だ。
無能は魔法だけでそれ以外は有能だ。
そのことに気づかせないジョセフはおそろしいやつだ。
魔法が無能って虚無だからしょうがない。
しかも、現在では虚無の使い手として覚醒している。
エルフと手を結んでいるあたり、相当な実力だと原作読んで思ったな。
ロマリア。
確かヴィットーリオが使える虚無、『世界扉』で元の世界に帰れる。
原作で、サイトは帰らなかったが。
地球の武器を幾つも保有している危ない国だ。
さらにいえば宗教団体である。
厄介なことこの上ない。
戦うと面倒な奴らである。
結局、現状維持しかなさそうだ。
「情勢は日々変動してるのだよ」
「つまり、私がアンリエッタにあっても問題ないと?」
「子どもができなければ問題ない」
ブフォっとウェールズが飲んでいた紅茶を吐き出す。
勝った。俺は勝ったぞ~。