SIDE:サイト・ヒラガ
魔法学院侵略防止作戦。あらため、コルベールフラグ折り作戦。
このままだと間違いなくコルベールがフラグ建築しまう。
それをさせないために手を打つ。
「コルベール先生」
「おお、サイトくん」
俺のいない間に随分ゼロ戦を弄繰り回していたようだ。
まあ、許可だしておいたからいいけど。
「いや~、実は相談がありましてね」
「ほう」
そこから俺は説明をした。
トリステインはアルビオンに攻め入り戦争になること、生徒も戦争に駆り出されること。
なにより、その戦争の隙に別働隊が、学院を占拠する可能性が高いことを話した。
「信じられん話だ。いや、戦争が始まれば確かに学院に残るのは少ない教師と女生徒のみ、占拠するにはもってこいだな」
「夜襲か早朝よりも早い時間に攻めるでしょうね。熟睡しているところを制圧、抵抗する暇もなく全員とっくかまるでしょう。なにせ、そうゆう荒行事のプロですから」
コルベールは考え込む。
俺の説明したことは今の時点では予測である。
だが、可能性は高い。もう一押しするために言葉を発する。
「ダングルテールの虐殺」
その言葉を聞いたコルベールは射ぬくように俺を見る。
気にせずに続ける。
「少し前、リッシュモンを捕まえる任務に駆り出されてましてね。おっと、これは機密なんで」
「そうか、君が……、サイトくんに隠し事は無理のようだね」
勝手に納得してコルベールはダングルテールの虐殺の事を語った。
『魔法研究所《アカデミー》実験小隊』の隊長を務めていたこと。
作戦は実は〝新教徒狩り〟だったこと。そして毎日罪の意識にさいなまれていること。
「破壊だけが……、火の見せ場ではない」
最後にそう言って締めくくった。
「その考えが広まれば生産的な社会になるでしょうねぇ」
「その通りだ」
ハゲは神妙に頷く。
「……、で、頼みごととは?」
「おそらく、いや、ほぼ間違いなくこの学院に奇襲してくる奴らを密かに制圧して欲しいんです」
「そんなことできるのかね?」
できる。はずである。
俺は説明する。
敵は船を使って空から攻めて来る。
その船に先制攻撃を加えて無力化する。
そのためには破壊の杖を使うこと。
以上を説明した。
「信じてみよう。外れたらそれに越したことはないが、サイトくんの話には現実味がある」
「おお、さすが先生。受けてくれたお礼にいいことを教えますよ」
「何かね?」
「事件の生き残りの女の子は元気で生きてます」
コルベールは嬉しいような、悲しいような顔をしていた。
「旅ってわくわくしますわね!」
シエスタの胸が当たっているわけだが。
「行き先は地獄です」
ルイズの実家へ向かう途中である。
シエスタは呑気なものだ。
草色のワンピースに編み上げブーツ。
清楚な雰囲気を出しているのはいいが、その中身は淫猥である。
「胸、当たってるんですけど?」
「あ、わざとですから」
強い女である。
人目があるといっても、御者はゴーレムである。
天は俺を見放した!!
段々とシエスタは大胆になっていく。
「……こうやって二人っきりになるのなんて、久しぶりですね」
そりゃそうだが、顔を近づけるな、耳に息を吹きかけるな。
気持ちイイ。もっとやって(ry
「いつか聞こうと思ってたんですけど、夏休みの間、ミス・ヴァリエールと何をしていたの?」
「金稼ぎしてた」
「そんな、お金のことならわたしに言ってくださればよかったのに!」
「いやぁ、それなりに稼いだからいいよぉ」
「ほんとですか? でも、入用なときには遠慮なさらずに言ってくださいね」
「はいよー」
適当に返事を返したのが悪かったのか、ひたすらくっついて来る。
悪くない。腕に当たる胸の感触を楽しみつつ、シエスタの体を触る。
「あんっ。サイトさん」
「イヤらしい娘にはお仕置きだぁ!」
ノッてきた時、馬車の屋根が吹っ飛んだ。
「ジーザス」
「私、負けませんからっ」
シエスタの尻を撫でながら空を見つめる。
SIDE:シエスタ
私はサイトさんにくっついている。『平民の賢者』と噂の人物を独り占めにしているのが楽しかった。
体を触られるのも嬉しかった。乱暴な触り方ではなく、愛でるような撫で方が一層に私を興奮させる。
屋根が無いことも忘れて、いっそ強くサイトに身体をすり寄せた。
「ねえねえサイトさん」
「いい天気だ」
空よりも私を見て欲しいと思った。
「旅行って楽しいですわね!」
「そーだね~」
何かを考えている様子だった。
一体何を考えているのだろう?
私たちでは思いつかないようなことを考えているに違いない。
もしかしたら戦争のこと?
「いやだわ」
「ん?」
「サイトさんも、アルビオンに行くんでしょう?」
「どうだろうねぇ」
嘘だ。彼はきっと行く。
「わたし、貴族の人たちが嫌いです」
「そうだね。俺も貴族は嫌いだ」
「自分たちだけで殺し合いをすればいいのに……。わたしたち平民も巻き込んで……」
「戦争は国家が自国の安全を守るためにするもんだ。つまり、シエスタとかその他大勢の平民の安全を守る為に戦争するらしいよ」
「守るためだろうが、戦は戦です」
サイトさんの言う事は正しいのかもしれない。
でも私には関係ない。サイトさんさえ、無事ならばそれ以外はどうでもいい。
「なんでサイトさんが行かなきゃならないんですか? 関係ないじゃないですか」
「行くとは言ってないけどねぇ。関係ないかぁ、確かに平民にとっては支配国がトリステインだろうが、アルビオンだろうが、関係ないだろうねぇ」
サイトさんは分かっているのに行くつもりだ。
恐らく、ミス・ヴァリエールの為に。
そう思うと悔しかった。
「死んじゃいやです……。絶対に、死んじゃいやですからね……」
SIDE:キュルケ
魔法学院─────。
私とタバサは、がらんとしてしまったアウストリの広場を歩いていた。
「いやいや、ほんとに戦争って感じねえ」
サイトも男子生徒もいなくなってしまった。士官に志願する者、実家に帰る者。
私も志願したが、女子ということで却下された。
男性教師も出征したために、授業も半減した。
暇である。
そんな暇を持て余した女子生徒達は、寂しげにかたまり、恋人や友人たちが無事でやっているのか噂しあっている。
ベンチに座って物憂げに肘をついていたモンモランシーの姿を見つけ、私は近づいた。
「あらら、想い人がいなくって退屈なようね」
モンモランシーはまっすぐ前を見たまま、人事のようにつぶやいた。
「誰の事を指しているのかしら?」
ギーシュとサイトの顔が浮かぶ。
ギーシュとは別れ、サイトとは微妙な関係であることは見ていて分かっている。
ギーシュはしつこく復縁を求めていたがモンモランシーは断っている。
サイトは、お友達からでという曖昧な交際を申し出ている。
「今、あなたが、頭の中に浮かべてる人のことよ」
モンモランシーは顔を赤らめて呟いた。
「全く、目を離すとすぐにどっか行っちゃうんだから、ルイズも大変ね」
なるほど、モンモランシーはサイトのことを想っているのか。
私はモンモランシーの肩を叩く。
「ま、始祖ブリミルの降臨祭までには帰ってくるわよ。親愛なるあなたのお国の女王陛下や偉大なるわが国の皇帝陛下は、簡単な勝ち戦だって言ってたじゃない。それに、サイトだったらまた何か大きな功績を持って帰るわよ」
私はサイトが死ぬとは微塵も思っていない。
彼はなんだかんだで、戦争に参加するだろう。
女の勘であるが、私はそれを信じる。
「だといいんだけどね」
モンモランシーは、つぶやく。そしてため息。
「なら、賭けない? サイトが功績を持って帰って来るか来ないか。もちろん私は功績をもって帰ってくるね」
「なら賭けにならないわよ。私もそう思うし。それにサイトからの手紙には俺が帰ってくるまでに鍛えてろって書いてあったわ」
嫉妬の炎が燃え上がる。私には手紙など寄越してくれたことがない。
「なら、鍛えないとねぇ。お手伝いしてあげるわ。さあ、来なさい」
「へ? ちょ、ちょっとぉ~」
「私も手伝う」
タバサも何か思ったらしい。ふふ、可愛い娘だ。
「トライアングル二人に鍛えられるって幸運よねぇ」
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戦じゃ、その前にルイズ宅で一休み?
さて、サンホラ最高。
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