SIDE:サイト・ヒラガ
昼過ぎ、商人達から情報収集を終えてテファの元へ帰る道のりで出会ってしまった。
鬼女ルイズ、暴走メイドのシエスタが現れた。
→逃げる。
しかし回り込まれてしまった。
「げぇ! ルイズ!」
「げぇ! じゃないわよ! なんで逃げた?」
「そうです! サイトさん! どれだけ心配したと思ってるんですか?!」
ルイズとシエスタは激しく怒っているようだ。
くそっ! やられた! 孔明の罠か?!
さてさて、どうしたものか。
「ボクハ、サイトデハアリマセン」
「何いってんのよ!! バカ! 生きてるならすぐに帰ってきなさいよ!」
「いなくなれと言ったのはルイズさんです。俺は悪くない。きっと悪くない」
ルイズはボロボロと涙を流していた。
不思議とルイズを目の前にすると、気分が良くなった。
そんなバカな。
俺は、ルイズに逢いたかっただと……?
「だからって本当に居なくなるなんて思ってなかったんだもん!」
「一ヶ月も音信不通で心配でした。サイトさんに何かあったんじゃないかって」
シエスタは抱きついてきた。しまった。胸の感触を楽しむのに気を取られた。
これじゃあ、逃げれない。
よくよく、考えるとルイズとシエスタに捕まってしまったらテファとお別れじゃないか。
しかも、黒ローブの人影が見える。
ついに、来てしまったか。
ジョセフの使い魔。
神の頭脳の人だ。
「感動の対面中で悪いんだけど私の相手になってもらうよ」
「誰?」
「お誘いありがとう。さっそく、あそこの茂みで……」
俺の発言を無視して、ルイズの問いに黒ローブが答えた。
ん?
確か、シエスタが操れるんだっけか?
しかし、シエスタがなにかする様子はない。
「はじめまして。ミス・ヴァリエール。偉大なる〝虚無の担い手〟私はシェフィールドと名乗っています。本名じゃないけどね」
「なら、げろしゃぶって名前にしない?」
「するか!」
なかなか鋭いツッコミである。
さすがは神の頭脳。
年齢は二十代後半くらいか?
ジョセフのお手つきだから寝取りになるな。
ちょっとヤル気でた。
「んで、げろしゃぶさんがなんの用で? ルイズのお知り合いか?」
「知らないわ。あんなヤツ」
シェフィールドの後ろから、何体もの騎士や戦士の格好をしたガーゴイルが現れた。
「友達居ないからってガーゴイルを連れにするなよ!」
少しだけシェフィールドが顔を歪めた。しかし、俺を無視して言葉を放つ。
「わたしの能力を教えてあげましょうか?」
「ガーゴイルオナニーの開発者?」
「違うわよ! 神の左手こと、ガンダールヴは、あらゆる武器を扱える。あなたがそうよね?」
「いいえ、俺は何も使えません。ムスコしか使えません」
なんだかシェフィールドは汚物を見るような目で俺を見ていた。
「わたしは〝神の頭脳〟ミョズニトニルン。あらゆるマジックア・アイテムを扱えるのよ」
「ミョなんとかの人! リアルな女性の人形をくれ!」
「ミョズニトニルンだよ! それにそんなものあんたにプレゼントするわけないだろ!」
「交渉決裂。仕方ないのでげろしゃぶさんを肉便器にします」
(アニエスとSMプレイ、アニエスをドMに開発ぅううう)
日本刀を抜刀、数メートル離れたシェフィールドに向けて擬似エアカッターを放つ。
スパリと黒ローブとまとっていた服が破れて全てが白昼にさらされる。
「ナイスおっぱい!」
「いやぁああああ」
ガーゴイルを放置してシェフィールドは逃げていった。
よく喋る神の頭脳だったな。
「なんだったの? アレ?」
「わからん」
ナイスおっぱいを晒したげろしゃぶ、じゃなかった。シェフィールド。
そろそろ、タバサの救出だ。
対エルフ。というか、やっかいな先住魔法の対策に俺は頭を悩ましていた。
しかし……。
一ヶ月も会っていなかったルイズ。
甘々な態度を取ってくる。
「キスしていいわ」
ルイスの先制攻撃。
知らん内に好感度が上がりまくり。断る理由も特になかったのでキスした。
なにこれ、超安心する。
「ぬ? ん~ん~」
こいつ、舌入れてきたぞ?
あ~、ヤバイ、気持ちイイ。
なんだか重要なことを思い出しそうだったがキスのせいで記憶がぶっ飛んでしまった。
「ぷはぁ」
「はぁはぁ、ルイズ、大胆な子!」
うるんだ瞳で俺を見つめてくる。
なんだよ。誰だこいつ?
ベッドの上でディープキス。うるんだ瞳。
セクロスフラグ?
あると思います!
「そんなにじろじろ見ないでよ……」
「ルイズ、もうだめ。しよう!」
ルイズを押し倒す。とっくに臨戦態勢は整っている。
俺はルイズの着ているブラウスのボタンを外す。
ブラらしき下着の上から胸を触った。
その時、ルイズは、泣きそうな小さな声で言った。
「明るいじゃない……」
「じゃ、じゃあ夜になったら……?」
「か、かか、神さまと母さまにお伺いを立ててから」
もうダメぽ。
夜に続きをしようと約束を交わして俺はトイレでヌいた。
すっきりして居間に向かうと、シエスタ、アニエス、テファがいた。
アニエスは朝ごはんを作っている。
アニエスに作らせたご飯も様になってきたな。
「昨晩襲ってきた連中は、何者なんだ?」
アニエスが聞いてきた。
襲撃があった時、放置されたガーゴイルをアニエスが攻撃してやっつけてくれたのだ。
俺に鍛えられたアニエス一人で十分だった。
大分強くなってますね。
「妙な人形を操っていたな」
「ミョズニトニルン……。あらゆる魔道具を操れる能力を持ってるって……」
ルイズは正直に答えた。別に隠すことはない。
虚無のことをアニエスは知ってるはずだ。
曖昧な記憶だが、この人は知っていても所詮、アンリエッタの駒だ。問題ない。
「ルイズの系統に関することです。姫様は言いました。最高機密だと」
「つまり、私が口を挟む問題ではないということか。失礼した」
「知ってるの?」
ルイズが心配そうな顔で聞いた。
口を滑らしたと思うなら良く考えてから話せよ。このお茶目さんめ!
「よく考えろルイズ。アニエスさんは姫様の直属だぜ? 近くにいるんだからそれなりの噂とか聞くだろ。それにあの馬鹿な姫様が漏らしてるかもしれん」
「なるほど。って、姫様を馬鹿にしてるんじゃないわよ!」
やっと、いつもの調子に戻ったルイズ。
夜の約束で緊張してたのが嘘のようだ。
「まあ、二、三日、休もうじゃないか。疲れているんだろう?」
あ、ダメ人間だ。
アニエスが包丁を磨きながらそう言った。
朝ごはんをみんなで食べた後、俺はテファの家から出た。
テファの家の庭で俺はデルフと日本刀を持って構える。
二刀流。
響きあうRPGの主人公の技。
片方の剣で敵を打ち上げる。同時に飛び上がり、もう片方の剣で叩きつける。
イマイチ。
回転しながら双剣で切る。
目が回る。
対エルフに備えて、俺はコンボ技と必殺技が欲しかった。
「やい、伝説の剣。必殺技とかねーの?」
「ねーなぁ」
駄目だこいつ。早く何とかしないと。
あーでもない。こーでもない。
色々とゲームや漫画に出てくる技を試す。
エルフに剣が通じるかわからんが、必殺技があったほうが後々役立つ。
なにより、カッコいいし。
ルイズは椅子に座って俺を眺めてる。
シエスタは憧れるような目で俺を見ている。
アニエスは学ぶように俺を見ている。
テファは物珍しい物を見るように俺を見ている。
アドバイスとかねーのかよ~。
「サイト殿、一体何を考えて剣を振るっているのだ?」
アニエスが一息ついた俺に聞いてきた。
公私を分ける軍人のアニエスは人の前ではサイト殿と呼ぶことにしたらしい。
「エルフを倒すような技を思いつかないかな~と」
「なんと! しかし、いくらサイト殿でもエルフ相手に勝利することは難しいかと思いますぞ」
しかし、予定表にはエルフと戦うことが入っている。
「いや~、勝負には絶対はない。って言葉もあります。それにね。男には負けるとわかっていても戦わないとイケない時があるんですよ」
キリッ。
できれば戦いたくねーけど、タバサフラグが~。
俺の悶えた顔をどう捕らえたのかアニエスは顔を赤く染めていた。
SIDE:アニエス
私の考えは浅い。平民でもメイジに勝てる。それが誇りだった。
しかし、彼は言う。エルフに勝ちたいと。
この人には私たちの常識というものが通じないらしい。
エルフの恐ろしさは噂でよく聞く。熟練のメイジでも恐れて戦おうとしない。
メイジでさえ戦いたくない相手に彼は勝つための算段を考えている。
私には戦うという選択肢はない。
エルフが敵対した場合。命令ならば刺し違える覚悟で戦うが勝利はありえないだろう。
せいぜい、時間を稼ぐ程度が限界だ。
命令でないなら逃げる。
彼の最後の言葉、エルフでも勝てる隙があるはずらしい。
それに、負けるとわかっても挑む、か。武人だと思う。
私もそうありたい。気付くと、とうに忘れたはずの女としての感情が芽生えていた。
サイトを死なせない。
なぜ?
剣を教えてくれたから?
違う。
ああ、そうか。私はサイトが好きなのだ。
あっさりと、納得出来た。
相変わらずでたらめに剣を振るうサイトを見る。
真剣な顔が眩しく見える。
胸が高なる。
周りにいる女性を見る。
ラ・ヴァリエール、メイドのシエスタ、ありえないモノをつけているティファニア。
皆、彼に好意的だ。私は恋を知らない。だが、負けるのは嫌いだ。
だから率直に言うことに決めた。
「失礼。サイト殿」
「ん?」
サイトは剣を止めて私に顔を向ける。
少しだけ恥ずかしくなったが躊躇わずに言う。
「どうやら私はサイト殿を好きになったらしい」
「「は?」」
私の言葉にサイトより先にラ・ヴァリエールと、シエスタが反応した。
ティファニアは驚いた顔をしていた。
「アニエスさん。今、なんて?」
シエスタが聞いてきた。肝心のサイトは黙っている。
「私はサイトが好きになったと言ったのだ」
つい、公私を忘れてしまった。
ラ・ヴァリエールは呆けた顔をし、シエスタは怒った顔をしていた。
ティファニアは顔を赤くしていた。
サイトは表情が固まっていた。
「唐突ですねぇ」
私は嬉しかった。拒否されなかった。
それに、どうもサイトは嬉しそうな顔をしている。
「わ、私が一番初めに好きになったんですから、後から出てきていきなりじゃありません?」
「恋に早いも遅いもないだろう。それとも、サイト殿は特定の誰かと付き合っているのか?」
二週間以上一緒に生活したが、浮ついた話はなかった、誰かと付き合っているということは無いだろうと当たりをつけていた。
それに付き合っている人物がいたとしたら一ヶ月もここに住み着いているわけがない。
「そ、それは、確かにサイトさんは誰とも付き合ってないですけど。ルイズさんもなんとか言ってください」
「誰が何を言おうと、サイトは私のモノよ」
ラ・ヴァリエールは自信たっぷりに言い放った。
それは、使い魔として?
しかし、あの自信。もしや、昨晩に……?
「わ、私は二番でいいです!」
「ほう、なら私は愛人でいい」
滅茶苦茶なことを言っているな。
しかし、どこかでそれでも愛されるならいいと思ってしまっている。
「結構言いますねぇ。アニエスさん、問題解決したければ姫様に一夫多妻制を認めさせればいいんじゃないっスか?」
「そ、それです! アニエスさん。お願いします。女王殿下に頼んでください!」
物凄い勢いで、シエスタは私に頼んでくる。
陳情にしては荒唐無稽にもほどがあるが、貴族達が愛人を囲っているあたり、もしかしたら賛成派は多いのでは?
いや、それをするとますます貧富の差が広がる。
金のある貴族なら格が近い貴族を囲んで自分の力を大きくするだろう。
力が大きくなれば王宮にも及ぶ。
つまりは、女王陛下に面倒な話が増えるというものだ。
それにサイトは気づいているはずだ。
「それはできん。だがサイトが貴族になり女性を囲うなら話は別だ。貴族なら愛人の一人や二人いても使用人としてごまかせるからな」
「サイトさん! 貴族になってください。私、メイドとして働きます。その、夜のオシゴトも頑張ります」
「……。え~、貴族イヤ。メンドクセ」
少し間があったが、サイトは貴族になりたくないらしい。
姫様の元に帰ったら有無をいわせず私と同じシュヴァリエにしてやろう。
同じ平民同士、同じ平民出身の貴族同士、今後サイトと接触する機会を増やさなければ。
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帰ってきたルイズさん。
気づくとアニエスが勝手にハーレムに立候補してました。
テファ?
もう少し待ってください。
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