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No.18683の一覧
[0] コードギアス 反逆のルルーシュ~架橋のエトランジュ~[歌姫](2010/05/15 08:35)
[1] プロローグ&第一話  黒へと繋がる青い橋[歌姫](2010/07/24 08:56)
[2] 第二話  ファーストコンタクト[歌姫](2010/05/15 08:34)
[3] 第三話  ギアス国家[歌姫](2012/08/04 10:24)
[4] 挿話 エトランジュのギアス[歌姫](2010/05/23 13:41)
[5] 第四話 キョウト会談[歌姫](2010/08/07 11:59)
[6] 第五話  シャーリーと恋心の行方[歌姫](2010/06/05 16:48)
[7] 挿話  父親と娘と恋心[歌姫](2010/06/11 21:19)
[8] 第六話  同情のマオ[歌姫](2010/06/19 11:50)
[9] 第七話  魔女狩り[歌姫](2010/06/26 11:21)
[10] 第八話  それぞれのジレンマ[歌姫](2010/07/03 22:23)
[11] 第九話  上に立つ者の覚悟[歌姫](2010/07/10 11:33)
[12] 第十話  鳥籠姫からの電話[歌姫](2010/07/24 08:57)
[13] 第十一話  鏡の中のユフィ[歌姫](2010/07/24 10:10)
[15] 第十二話  海を漂う井戸[歌姫](2010/07/31 12:01)
[16] 第十三話  絡まり合うルール[歌姫](2010/08/07 11:53)
[17] 第十四話  枢木 スザクに願う[歌姫](2010/08/21 11:24)
[18] 第十五話  別れの陽が昇る時[歌姫](2010/08/21 12:57)
[19] 第十六話  アッシュフォードの少女達[歌姫](2011/02/12 10:47)
[20] 第十七話  交錯する思惑[歌姫](2010/09/11 12:52)
[21] 第十八話  盲目の愛情[歌姫](2010/09/11 12:09)
[22] 第十九話  皇子と皇女の計画[歌姫](2010/09/25 13:41)
[23] 第二十話  合縁奇縁の特区、生々流転の旅立ち[歌姫](2010/09/30 07:39)
[24] 挿話  親の心、子知らず ~反抗のカレン~[歌姫](2010/09/30 07:32)
[25] 挿話  鏡の中の幻影 ~両性のアルカディア~[歌姫](2010/10/09 10:35)
[26] 挿話  カルチャーショックプリンセス ~交流のユフィ~[歌姫](2010/10/09 11:36)
[27] 挿話  それぞれの特区[歌姫](2010/10/16 12:06)
[28] 挿話  ティアラの気持ち  ~自立のナナリー~[歌姫](2010/10/23 10:49)
[29] コードギアス R2 第一話  朱禁城の再会[歌姫](2010/10/30 15:44)
[30] 第二話  青の女王と白の皇子[歌姫](2010/11/13 11:51)
[31] 第三話  闇夜の密談[歌姫](2010/11/13 11:35)
[32] 第四話  花嫁救出劇[歌姫](2012/12/02 21:08)
[33] 第五話  外に望む世界[歌姫](2010/11/27 10:55)
[34] 第六話  束ねられた想いの力[歌姫](2010/12/11 11:48)
[35] 挿話  戦場の子供達 [歌姫](2010/12/11 11:42)
[36] 第七話  プレバレーション オブ パーティー[歌姫](2010/12/18 11:41)
[37] 第八話  束の間の邂逅[歌姫](2010/12/25 10:20)
[38] 第九話  呉越同舟狂想曲[歌姫](2011/01/08 12:02)
[39] 第十話  苦悩のコーネリア[歌姫](2011/01/08 12:00)
[40] 第十一話  零れ落ちる秘密[歌姫](2011/01/22 10:58)
[41] 第十二話  迷い子達に差し伸べられた手[歌姫](2011/01/23 14:21)
[42] 第十三話  ゼロ・レスキュー[歌姫](2011/02/05 11:54)
[43] 第十四話  届いた言の葉[歌姫](2011/02/12 10:52)
[44] 第十五話  閉じられたリンク[歌姫](2011/02/12 10:37)
[45] 第十六話  連鎖する絆[歌姫](2011/02/26 11:10)
[46] 挿話  叱責のルルーシュ[歌姫](2011/03/05 13:08)
[47] 第十七話  ブリタニアの姉妹[歌姫](2011/03/13 19:30)
[48] 挿話  伝わる想い、伝わらなかった想い[歌姫](2011/03/19 11:12)
[49] 挿話  ガールズ ラバー[歌姫](2011/03/19 11:09)
[50] 第十八話  闇の裏に灯る光[歌姫](2011/04/02 10:43)
[51] 第十九話  支配の終わりの始まり[歌姫](2011/04/02 10:35)
[52] 第二十話  事実と真実の境界にて[歌姫](2011/04/09 09:56)
[53] 第二十一話  決断のユフィ[歌姫](2011/04/16 11:36)
[54] 第二十二話  騎士の意地[歌姫](2011/04/23 11:38)
[55] 第二十三話  廻ってきた順番[歌姫](2011/04/23 11:34)
[56] 第二十四話  悲しみを超えて[歌姫](2011/05/07 09:50)
[57] 挿話  優しい世界を踏みしめ  ~開眼のナナリー~[歌姫](2011/05/07 09:52)
[58] 挿話  弟妹喧嘩のススメ  ~嫉妬のロロ~[歌姫](2011/05/14 09:34)
[59] 第二十五話  動き出した世界[歌姫](2011/05/28 09:18)
[60] 第二十六話  海上の交差点[歌姫](2011/06/04 11:05)
[61] 第二十七話  嵐への備え[歌姫](2011/06/11 10:32)
[62] 第二十八話  策謀の先回り[歌姫](2011/06/11 10:22)
[63] 第二十九話  ゼロ包囲網[歌姫](2011/06/25 11:50)
[64] 第三十話  第二次日本攻防戦[歌姫](2011/07/16 08:24)
[65] 第三十一話  閃光のマリアンヌ[歌姫](2011/07/09 09:30)
[66] 第三十二話  ロード・オブ・オレンジ[歌姫](2011/07/16 08:31)
[67] 第三十三話  無自覚な裏切り[歌姫](2011/07/23 09:01)
[68] 第三十四話  コード狩り[歌姫](2011/07/30 10:22)
[69] 第三十五話  悪意の事実と真実[歌姫](2011/08/06 13:51)
[70] 挿話  極秘査問会 ~糾弾の扇~[歌姫](2011/08/13 11:24)
[71] 第三十六話  父の帰還[歌姫](2011/08/20 10:20)
[72] 第三十七話  降ろされた重荷[歌姫](2011/09/03 11:28)
[73] 第三十八話  逆境のブリタニア[歌姫](2011/09/03 11:24)
[74] 挿話  私は貴方の物語 ~幸福のエトランジュ~[歌姫](2011/09/03 11:55)
[75] 第三十九話  変わりゆくもの[歌姫](2011/09/17 22:43)
[76] 第四十話  決意とともに行く戦場[歌姫](2012/01/07 09:24)
[77] 第四十一話  エーギル海域戦[歌姫](2013/01/20 14:53)
[78] 第四十二話  フレイヤの息吹[歌姫](2013/01/20 14:56)
[79] 第四十三話  アルフォンスの仮面[歌姫](2013/01/20 15:01)
[80] 第四十四話  光差す未来への道[歌姫](2013/01/20 15:09)
[81] 第四十五話  灰色の求婚[歌姫](2013/01/20 15:12)
[82] 第四十六話  先行く者[歌姫](2013/01/20 15:15)
[83] 第四十七話  合わせ鏡の成れの果て[歌姫](2013/01/20 14:59)
[84] 第四十八話  王の歴史[歌姫](2013/01/20 14:58)
[85] 挿話   交わる絆   ~交流のアッシュフォード~[歌姫](2012/12/30 18:51)
[86] 挿話  夜のお茶会 ~憂鬱の姫君達~[歌姫](2012/12/30 14:03)
[87] 第四十九話  その手の中の希望[歌姫](2013/02/23 12:35)
[88] 第五十話  アイギスの盾[歌姫](2013/03/22 22:11)
[89] 第五十一話  皇帝 シャルル[歌姫](2013/04/20 12:39)
[90] 第五十二話  すべてに正義を[歌姫](2013/04/20 11:22)
[91] 最終話  帰る場所&エピローグ[歌姫](2013/05/04 11:58)
[92] コードギアス 反逆のルルーシュ ~架橋のエトランジュ~ オリキャラ紹介[歌姫](2011/04/06 10:27)
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[18683] 第三十七話  降ろされた重荷
Name: 歌姫◆59f621b7 ID:e85ac49a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/03 11:28
 第三十七話  降ろされた重荷

  

 ギアス嚮団の件が世界に知れ渡ってから、合衆国ブリタニアに住むブリタニア人達は自国の所業に唖然となり、同時に合衆国ブリタニアに参加した己の選択に安堵した。

 辺境伯という高い身分に会ったジェレミアですら実験体に使われ、身体に機械を埋め込まれたという情報が流れてからはなおさらである。
 それ以下の身分の自分達など、ほんの些細なミスを咎められるばかりか、下手をすれば言いがかりをつけられて連行され、あのような実験にかけられていたかもしれないと思うと戦慄を禁じ得なかったのだ。
 国是が国是だったため、絶対ないとは言い切れなかったからである。

 ユーフェミアは青ざめた顔でこの件についてどう対応するかとルルーシュに相談すべくダールトンとニーナを連れてゼロの部屋に足を向けると、そこには今一番名前が知れ渡っているであろうアドリスがルチアとともにいた。

 「あ、アドリス様・・・あの、このたびは我が父が恐ろしいことを・・・」

 事の経緯とジェレミアの姿を見たユーフェミアは、あまりのことに倒れたくなった。
 先ほど会ったジェレミアはユーフェミア様のせいではありませんと言ってくれたが、姉がそれを知りながら黙認していたことは彼女を打ちのめすには充分な事実である。

ユーフェミアが深々と頭を下げて己の父の所業を詫びると、アドリスはにっこりと笑みを浮かべた。

 「ええ、私をこんな身体にする原因を作ったのは確かに貴女の父親です。
 ですがそれは貴女のせいではありませんから、謝罪の必要はありません」

 父親の罪を娘に償えというつもりはないと言うアドリスに、ユーフェミアは言った。

 「ですが、私は合衆国ブリタニアの皇帝です。いずれブリタニア本国を制圧した暁には、その罪を背負うことになりましょう」

 「その覚悟はお見事です。全くあの父親に似ずしっかりなさった方だ。
 しかし、貴女とブリタニアのために申しあげておきますが、それはあまり口にしない方がいいですよ」

 「・・・それは、どうしてですか?」

 罪は償うと明言して実行に移さなくてはならないのではと言うユーフェミアに、アドリスは理由を教えた。

 「土下座外交になってしまうと今度はブリタニアが搾取される立場になりますからね。
 そうすればブリタニア人が蜂起してしまう可能性がありますから、私としてもそれは避けたい。
 ですからユーフェミア皇帝、貴女はこの件に関してはシャルル皇帝が悪いとだけコメントし、今回設立された基金に協力すると発表して下さい。
 そうすれば既に基金のみお金を出せば済みます。私がそれを賞賛しておきますから、おそらくそれ以上の要求はされないはずです」

 現在ギアス嚮団被害者代表と言った位置づけにあるアドリスがユーフェミアを擁護すれば、彼女にはさほど厳しい目は向けられない。
 さらにアドリスは続ける。

 「他国がブリタニアから賠償金をむしり取ろうと画策してくる可能性が高いのです。
 残念ながら世の中は善意で政治を動かそうとする者ばかりではありません。外交でもっとも大切なことは、『他国に付け入る隙を与えない』ことなのです」

 もしもユーフェミアが自分が罪を償うと言ってしまうと、その言葉を盾にして多大な賠償を要求してくる可能性が高い。
 もちろん正当なそれは支払うべきだが、要求というものは一度受け入れてしまうと次々に膨らんでいくものである。
 だからこそ不当な要求を跳ね除けるために、この件に関してはあえて合衆国ブリタニア一国だけでどうにかするべきではないと、アドリスは言った。

 特にブリタニアは先に手を出して他国を蹂躙し奪っていったという前科があるから、いくら以前のブリタニアとは違うとアピールしても自業自得だとしてそれを止める者は少ないだろう。

 「貴女はあの男の親ではなくて娘ですし、いくら皇帝であろうとまだ十七歳になったばかりの少女に全てを把握すべきだったなど要求する方が恥です。
 幸いアッシュフォードの方々が寄付を集めたりしているようですから、それをアピールして償う意志があると皆に印象付けるのです」

 戦争を終わらせるためにたくみにトラブルを避けられる方法を伝授してくれるアドリスに、ユーフェミアは涙が出るほど嬉しかった。

 「ありがとうございます・・・すぐに手配いたします」

 「貴女はまだ若いと侮られることも多いでしょうが、こういうときは盾にもなります。
 使えるものは何でも使うべきです。とりあえずシャルル皇帝をサンドバッグに仕立て上げて、合衆国ブリタニアに矛先が向かないようにしましょう。
 そしてEUにも全ての罪はシャルル・ジ・ブリタニアにあると表明するよう根回ししておきます」

 全くの事実なのでさして苦労はないと笑うアドリスに、ユーフェミアは嬉し涙をこぼした。
 そして自分の姉が祖国を蹂躙し、父が人体実験にかけるという迷惑ばかりで利益など何一つ与えられたことがないだろうに、便宜を図ってくれるアドリスに尋ねた。

 「いろいろお世話になります。あの、一つお伺いしてよろしいですか?」

 「なんですか?」

 「どうして私にここまでして下さるのですか?私の姉は・・・父は・・・」

 言いにくそうに口ごもるユーフェミアに、アドリスは、ああ、と諒解したように笑った。

 「私は自分を不幸にしたコーネリアとシャルル皇帝は殺してやりたいほど嫌いですよ、でも別に貴女に恨みはないですから。
 それに、貴女はエディのお友達でしょう?娘の友人に手を貸すのは普通ですから」

 「・・・え?」

 「娘から聞きましたよ、一緒の机で仕事をして、お茶をして、励まし合ってきたと。
 表向きには公に出来ないのでしょうけど、そういう行動を取る人をですね、人は友達と呼ぶのですよ」

 ユーフェミアはそれを聞いて、目を見開いて驚いた。
 
 ずっと自分には友達などいないと思っていた。
 自分では友達だと思っていても、実際は身分という壁が主従関係を形成していた。
 スザクは友人かもしれないが同時に騎士でもあり、合衆国ブリタニアの皇帝になってからは公私混同を避けるために彼とはけじめをつけた付き合いをしていたからだ。
 
 「少なくとも、娘は公表出来ないだけで貴女を友人だと思っているようです。
 貴女は罪悪感をお持ちのようですが、家族は選べない以上そこまで自分を責めないでください。
 貴女が耐えるべきは不当な非難ではなくシャルル皇帝やコーネリアが罵倒されるという事態の方です。
 家族が罵られるというのはお辛いでしょうが、それこそブリタニアのためと思って黙ってそれを受け入れて下さい。
 私は早く戦争を終わらせて、エディを解放してあげたいのです」

 家族はユーフェミアを受け入れてくれなかった。
 姉は最後の最後になってやっとありのままのユーフェミアを受け入れてくれたけれど、他の家族は己の意にならない者は無視してきたから。

 そして家族のしたことは自分とは無関係だからと、エトランジュは自分を友人だと言ってくれた。
 その父も、戦いを終わらせ娘を平穏な暮らしへ戻すためという目的があったにせよ、それでも自分を助けようという意志があることを感じ取った。
 それだけで、ユーフェミアは嬉しかった。

 「・・・ありがとうございます。感謝します」

 「では私はこれで失礼します。後のことはルチアに任せてありますので」

 用事が終わった瞬間、いそいそと娘の元に戻ろうと車椅子を出口に向かわせるアドリスに、ルチアは冷めた口調で言った。

 「面倒事はわたくし任せですの?フォローをしろと言うからには、方法くらいは考えて頂きましてよ」

 いくら大学時代の友人とはいえ、公的には主従関係にあるはずのルチアの態度の大きい発言にユーフェミアは驚いた。

 「ミ、ミズ・ステッラ・・・!その発言は・・・」

 慌てて止めようとしたダールトンを、ルチアは淡々とした目で見つめながら言った。

 「わたくしは別にブリタニアが何をしようとも、後ろめたいものはありません。
 確かにわたくしはブリタニア貴族として生まれましたが、今はれっきとしたマグヌスファミリアの国籍を持つマグヌスファミリア人だからです。
 合衆国ブリタニアのフォローをして来たのは、エディに頼まれたからにすぎませんわ」

 堂々と言い切ったルチアに、なるほど正論だとユーフェミアは思ったが、同時に既にブリタニアなど彼女にとっては思案のする価値などないのだと知った。

 「エディのためにいろいろ動いて下さって感謝していますよルチア。
 今エディは私が戻ってきて安堵してくれていますから、出来るだけ一緒にいてやりたいのですよ。解ってくれますよね?」

 エディのためなのだからと笑うアドリスに内心で舌打ちしたルチアは、乱暴に手を振った。

 「・・・さっさとお戻りなさいなアドリス。またお話がいろいろありますので、エディが眠った後にでもゆっくり話し合いましょう」

 バチバチと二人の間に火花が散った。
 それを見たユーフェミアはこの二人の仲が悪いのだと知ったが、理由が解らずおろおろしている。

 「了解しました。
 というわけでユーフェミア皇帝、貴女もルチアのこういう態度を少しは見習った方がいいですよ。
 元来なら駄目なのでしょうが、貴女の場合はそのほうがいいですから。それでは失礼」

 要は少しくらい開き直れとユーフェミアが楽になれるコツを教えたアドリスがルチアとともに退室すると、ユーフェミアは唖然とした顔で言った。

 「・・・ルチアさん、アドリス様と仲が悪かったんですね」

 「でしょうねえ・・・」

 何故かニーナが納得したように呟いたので、何か知っているのかとユーフェミアが尋ねた。

 「ニーナはルチアさんがアドリス様と仲がよくないことを知っていたの?」

 「知っていたというか、たぶんそうじゃないかなーと話を聞いていて思ってましたから。
 マグヌスファミリアの教師になったのも、エトランジュ様のために動いていたのも、エトランジュ様の母君からの依頼だったっておっしゃっていましたし」

 「・・・・?」

 それがどうしてアドリスとルチアの仲が悪いという推測に繋がるのかとユーフェミアは首を傾げたが、ニーナはそれ以上を語らなかったので追及しなかった。
 マグヌスファミリアの前国王であるアドリスがルチアのあの態度を受け入れている以上、ユーフェミアが口を出す権利などなかったからである。

 (もしかしたら私が必要以上に引け目を感じたりしないようにとあえてあんな振る舞いをして下さったのかもしれないし、あれはあれで仲がいいのかもしれないわ。
 仲がいいからこそ本音で振る舞えているってこともあるのでしょう)

 いいようにそう解釈したユーフェミアは、ギアス嚮団で実験体にかけられたブリタニア人の詳細を把握すべく、持って行くように言われていたゼロの机に置かれていた書類を手に取った。



 ギアス嚮団に関する書類を一通り作り終えたルルーシュは、ゼロの姿で既にゼロの正体を知ったという星刻の元を訪れていた。

 「星刻、エトランジュ様から扇の査問会についての経緯を伺った。私の・・・」

 「ああゼロ、いいところに来てくれた。扇の処分についてCEOであるゼロの承認が必要だ。確認してサインをくれないか」

 星刻がルルーシュの台詞を遮って扇の罷免、そして戦争が終わるまでの拘禁処分について書かれた書類を差し出すと、ルルーシュはそれを確認し、サインした。
 書類を返された星刻はそれを処理済みと書かれた箱に入れると、溜息をつきながら言った。 

 「井上事務官から報告があったが、まだ扇は自分の非を認めず喚いているそうだ。
 他者を操る能力のせいだと、まだ認めたがらない。
 ヴィレッタ・ヌゥの方は、まさか盗撮までされていたとは知らなかったらしくてな、今となっては取り調べに従順に応じている。子供の方は過ちの末とはいえ自分の子供だから育てると言っているが・・・」

 「そうか・・・私の正体を知って超能力なるものも事実だと思い込んでいるのかもな」

 扇が吹き込まれた情報はほぼ正しいだけに、ルルーシュは扇の所業に呆れはしたが同時に少し同情してもいた。その辺りがルルーシュの味方に対する甘さなのだろう。
 
 「扇がゼロの正体をシュナイゼルから聞いたとのことだが、敵国の宰相の言うことを鵜呑みにする方がおかしい。
 よって私はあの男が扇に吹き込んだことは全て偽の情報だと思っている」

 「星刻?」

 星刻は淡々とそう告げると、話題をゼロの正体から変えた。

 「ギアスなる他者を操る超能力などと言う与太話よりも、エトランジュ様がシュナイゼルから聞いたという計画の方が重大だ。
 中華で行っていたギアス嚮団とやらも、至急解決せねばならん。扇の戯言に関わっている暇などないぞ、ゼロ」
 
 ゼロの仮面の下などどうでもいいと言わんばかりの星刻の態度にルルーシュは瞠目したが、やがてふっと笑みを浮かべた。

 「・・・そうだな、扇の件はひとまず置いておこう。
 まずギアス嚮団の件だが、様々な実験を行っていたらしい。以前捕らえたラウンズのアーニャ・アールストレイムだが、彼女もその犠牲者のようだ。書類に名前があった」

 「何だと?だが確かにあの年齢で恐ろしい戦闘能力を発揮したと思えば合点がいくが・・・まだ十代の少女になんとも恐ろしいことをするな」

 たった一人で黒の騎士団にあれほどの損害を与えた少女の強さの理由に納得した星刻は、よりにもよって祖国で天子とさほど年の違わぬ少女に非道な行為を行っていたブリタニアに憎悪の炎を燃やしていた。

 「おのれブリタニアめ・・・!天子様も中華で行われていたことだからと、いずれその目で確かめたいとおっしゃっているが、とてもお見せ出来るものではない。
 ゼロ、お前からも天子様を説得して貰えないか?」

 「ああ、私からも進言しておこう。エトランジュ様も反対して下さるだろうから、それは任せてくれ。
 それからギアス嚮団だが、命令に従うしかなかった若い嚮団員達は責任を追及出来ない。マグヌスファミリアが若年層に関しては自国で引き取りを申し出て下さった」

 「それは本当か?確かに小さな島国のマグヌスファミリアなら奇異な視線を向けられることなく暮らして行けるだろうから、うってつけだが・・・」

 いくら善悪の区別がつかなかったとはいえ、自身を人体実験にかけた嚮団の者達を引き取るとは思わなかった星刻は驚いた。

 実際は記憶をルルーシュのギアスで操作出来たとしても、それでもギアス能力者を世に解き放つわけにはいかないという思惑があってのものだった。
 彼らはコード所有者には従順に従うため、副嚮主となったE.Eことエドワーディンを崇めていることもあって、互いにとって最善の方法だったのだ。

 「一部はエドワーディン様と仲が良くなった者もいるそうだ。
 それにマグヌスファミリアは多数の死者がいて人口危機に陥っているという事情もある。これが一番丸く収まる手段だ」

 「そうか・・・アドリス様やエトランジュ様が申し出があったなら、否やはない。
 とにかくこの件を迅速に解決し、シュナイゼルの計画を阻止し、ブリタニア進攻計画を立て直すとしよう」

 「そうだな。では私は扇の様子と2、3聞きたいことがあるのでアーニャ・アールストレイムのところに行ってくる」

 「ラウンズの少女やヴィレッタ・ヌゥはともかく、扇には会わない方がいいと思うぞ?
 ヴィレッタ・ヌゥが扇を見捨てたことを話しても、ギアスによるものだ、ゼロのせいだと決めつけていたからな」

 どこの世界に盗撮を恥ずかしげもなく公言した男を好きになる女がいるのだろうかと、星刻は呆れていた。
 あの査問会で明らかになった扇の所業を聞いたヴィレッタは驚き、利用するつもりであったとはいえおぼろげに自覚のあった愛情が一気に霧散した。
 査問会でヴィレッタが一言も発しなかった理由に納得した星刻は、大人しくしていれば問題はないと、ゼロの正体を知っている者を収容所には移せないが妊婦であることもあり、井上をつけて世話に当たらせていた。
 
 「それでも、ゼロが一度も顔を合わせていないというのは対外的にまずい。
 聞きたいこともあるしな・・・」

 「それもそうだな。では私はナイトメア整備室に神虎の様子を見に行ってくる」

 くれぐれも慎重に扇と対話した方がいいと言い残して星刻が立ち去ると、ルルーシュはさすが中華の麒麟児と嬉しくなった。

 (ゼロがなくなっても、あいつがいれば黒の騎士団は大丈夫だな。
 少し天子にばかり構い過ぎるきらいがあるが、天子もだいぶ成長して来たしいずれ彼女が手綱を取ることが出来るだろう)

 ルルーシュはそう考えながら、まずは扇とヴィレッタが収容されている地下室へと足を向けた。
 
 

 ラクシャータの元で診察を受けていたジェレミアとともにルルーシュが留置所へ入ると、まずヴィレッタと面会した。
 周囲はギアスをかけてあるゼロ番隊しかいないので、話が外部に漏れることはない。

 「ジェレミア卿・・・!ゼロ・・・!」

 「事情はだいたい聞いたぞヴィレッタ。何とも複雑な経緯があったようだな」

 「・・・まさかゼロが亡きマリアンヌ様の御子息であるルルーシュ殿下だとは、思いもしなかったので」

 ゼロがブリタニア皇族と知ったヴィレッタは、皇族に対する敬意を骨の髄まで叩きこまれているために緊張しながらそう答える。
 カタカタと震えるヴィレッタを前にしたルルーシュは、仮面を外して言った。

 「ブリタニア軍人としてお前が上の命令に従っただけというのは解っている。
 だがアッシュフォード生徒会を巻き込んでくれたことが気に入らない。また同じことをされては困るからな。
 ゼロの正体を話されても困るから、この戦争が終わるまではここから出られないと思え」

 予想通りの宣告にヴィレッタは逆らわなかった。
 無様に任務に失敗した上、ブリタニアの皇子がゼロだったということはブリタニアとしても隠しておきたいことである以上、正体を知っている自分は黒の騎士団が敗北すれば口封じに殺されると考えたからである。
 
 (現にシュナイゼル殿下から命令を受け取った時も、私にゼロの正体は明かされなかった。
 つまりブリタニアとしても隠しておきたかったということだ)

 つくづくタイミングの悪い状況でいらぬことを知ってしまったものだと、ヴィレッタは己の運の悪さを呪っていた。

 出世をしてブリタニアの貴族になるという彼女の夢は、既に儚く散っていた。
 せめて己の平穏だけでもと望む場合、黒の騎士団が勝利してゼロの正体に関して沈黙の誓いを立て、どこかで子供と細々と暮らすしか道はなかった。
 
 「子供を産むつもりと聞いたが、それでいいのか?」

 ジェレミアが俯くヴィレッタに問いかけると、ヴィレッタはこくんと頷いた。

 「・・・子供に罪はありませんので」

 「そうか・・・」

 ジェレミアも知らなかったこととはいえ、ブリタニアの闇に関わってしまった結果人生を大きく歪められたヴィレッタに同情していた。
 しかし彼女はシュナイゼルと繋がりを持ち、主君を陥れようとした以上、出すわけにはいかなかったのだ。

 「いいだろう、ゼロの正体を黙っているのなら、私は出所後のお前には関与しない。
 上の命令に従っただけの下っ端を罰する訳にはいかないからな」

 「・・・承知いたしました、ルルーシュ様」

 以前なら下っ端と言われれば過剰な反応を示しただろうが、事実彼女はシュナイゼルの使い走りに過ぎなかったので、彼女は何も言わなかった。
 何も知らされることなくただ上の言うがままに動き、結果全てを失った自分を自嘲して。

 ヴィレッタは本心から沈黙の誓いを立てたのだが、やっていたことがことだったのでジェレミアですら信用しなかったため、ルルーシュは小さくジェレミアに手を振った。
 主の意図をくみ取ったジェレミアは頷くと、ギアスキャンセラーを発動する。

 ヴィレッタは目を見開いて、シンジュクでルルーシュと会いナイトメアを差し出したことを思い出していた。

 「あ・・・あの時・・・!なぜ急に思い出して・・・・」

 混乱するヴィレッタを見つめながら、ルルーシュは短く命じた。

 「俺を見ろ、ヴィレッタ・ヌゥ」

 高圧的に命じられて、皇族からの命令には瞬時に従うブリタニア人の習性に彼女は素直に従った。

 そして赤く羽ばたく羽根の紋様を浮かび上がらせたルルーシュは、続けて誰であろうとも抗うことを許されぬ絶対遵守の命令を彼女に与えた。

 「ルルーシュ・ランペルージが命じる!お前はゼロの正体について二度と口にするな」

 「・・・解りました」

 ヴィレッタにギアスをかけ終えたルルーシュは、しばらくぼうっとしているヴィレッタを見つめていた。
 やがて我に返った彼女は再びブリタニア皇族の前とあって再び緊張した態度になる。

 「・・・ヴィレッタ、ゼロの正体は?」

 「・・・存じません」

 ジェレミアの質問に目を赤く縁取らせてそう答えるヴィレッタを見て、ルルーシュはこれで彼女に用はないとばかりに踵を返した。

 最後にジェレミアが、かつての部下に向かって言った。

 「あの方もブリタニア皇族として戻るご意志がなく、ブリタニアの非道が世界各国に知られた今、今後は上にいる者ほど辛い時代になるだろう。
 そなたはその意味で運がいいと考え、せめて生むと決めた赤子とともに幸福になるがいい」

 そう言い残したジェレミアが主の後を追うと、突然戻った記憶に戸惑いながらも残されたヴィレッタはかつての上司の最後の忠告を受け入れた。

 確かに黒の騎士団が勝てば、貴族達は人体実験や侵略などの責任を問われ、厳しく罰せられることだろう。
 もしも自分が貴族だったなら、事実純血派の元で幾多の戦場を巡りシンジュクでの殲滅に関わっていた過去がある以上、自分もその列に加わる羽目になっていたかもしれないのだ。

 だが自分は貴族将校の命令に従った騎士候に過ぎず、それゆえに責任を免れたと理解したヴィレッタは心底から不幸中の幸いと安堵していたのである。

 そして扇とのことは、彼女の人生で最大の過ちだと考えていた。
 あの査問会でまさか盗撮行為をしていたなどと思ってもいなかった彼女は、あの優しさが無自覚に酷い性根によるものだったと知り、さすがにそれまで抱いていた彼への罪悪感と思慕の念が見事に吹き飛んでいた。
 よくよく聞けば扇の理論は聞いていた自分ですからおかしいものであったこともあり、彼女は扇に期待するどころかもはや関わるまいと決めていたのである。

 そんな男の子供であろうとも、同時に己の子である。
 お腹をさすりながらヴィレッタは牢のベッドに座ると、最近貧血気味のようだからと井上から渡された鉄分剤を手にとって飲み干した。

 幸いここは静かで、余計なわずらわしいものは何一つ入ってこないヴィレッタの箱庭だった。
 がむしゃらに上を目指し、神経をとがらせていた軍人時代にはなかった穏やかな日々。

 せめて今ある平穏を守ること。
 それがヴィレッタのささやかな望みだった。

 

 続けて扇との面会に入ったルルーシュとジェレミアだが、こちらは全く話にならなかった。
 お前はブリタニア皇帝になるつもりで自分達を利用したんだろう、騙されないぞと喚くばかりのその態度になるほど誰もが匙を投げるわけだと二人は納得する。

 「千草を元に戻せ!ち、千草があんなことを俺に言う訳がないんだ、お前がギアスで操ったんだろう?!」

 その発言に眉をひそめたルルーシュが扇の監視に当たっている騎士団員に事情を尋ねると、騎士団員は呆れた様子で答えた。

 「ヴィレッタ・ヌゥに会わせろと言うので彼女の本音を聞けば扇も目が覚めるだろうと考えた吉田さんと井上さんが一度だけ会わせてやったのですが・・・その時彼女からお前が盗撮をするような男だと思わなかった、自身の醜態まで他者のせいにするのは見苦しいと言われて以降はずっとこの様子でして」

 扇の盗撮行為とその後の支離滅裂な理論展開に愛想を尽かされたことまで自分のせいにされては困るとルルーシュは思い、ジェレミアはあまりのことに怒りを隠せなかった。

 「ルルーシュ様、いくらなんでもこれは酷い。
 あのような男を仲間にせずとも、もっとましな人材がいくらでもおりましたでしょうに」

 「・・・スザクを助け出す計画の時に、カレンがいたからと適当に選んだからな。
 当初は話が解る奴だったし、折衝役としても有能だったんだが・・・」

 どうしてこうなったとルルーシュも額を抑えていたが、もはやこれは修復不可能だと考えたルルーシュは、とりあえずゼロの正体とギアスのことをギアスで忘れさせた。
 今後一切ギアスやゼロの正体について口にしなければ、桐原もいずれ彼を釈放することに同意してくれるだろうと考えたからである。
 もともと自分がブリタニア皇子という事実を知って不信を抱いたようだし、それさえ忘れればまともな思考を取り戻す可能性もあった。

 やるだけの措置を行って立ち去ったルルーシュだが、扇はゼロの正体とギアスを忘れてもヴィレッタに対する愛情は残っており、連日彼女のことばかりを気にかけていた。
 そのため結局仲間達の態度は好転することがなく、徐々にカレンや吉田や井上の面会の回数が減っていき、玉城達も面会を希望することすらなくなっていった。
 自身の行為を反省することなく、扇はただ孤独に牢の中で愛した女の幻影を追い続けるのだった。


 
 一方、続けて女性ブリタニア軍人が収容されている施設に向かったルルーシュとジェレミアは、一番厳重に監視されているラウンズの少女と面会した。
 手錠をつけられたままではあったが応接室で、誰も近づかないようにしてある。

 ソファに座ったアーニャは突然の環境の変化についていけずすっかり痩せており、目の下にある隈も酷かった。

 「・・・貴方はゼロ?私に何か用?」

 「アーニャ・アールストレイムだな。
 少し聞きたいことがある・・・大事なことだから、正直に答えて欲しい」

 仮面をしたままで問いかけるルルーシュに、アーニャはどうでもよさそうな態度で別方向を向いていた。

 「君は気がついたら黒の騎士団に捕まっていたと言っていたそうだが、その前の記憶はどんなものだった?」

 「・・・陛下からエリア11を奪還するよう命じられて、モルドレッドで出撃したの。
 何体か黒の騎士団のナイトメアを壊して、次に気がついたら黒の騎士団の留置場にいた」

 しかも何故か皆自分を見て怯え、厳重に手錠をかけられて食事を配る時にさえ恐々となるその態度に自分はいったい何をしたのかとアーニャの方が怯えた。

 何も覚えていないと主張するアーニャにこれまた分厚い強化ガラス越しに精神科医が面談し、一種の記憶喪失かもしれないが状況が特殊過ぎて何とも言えないと言われ、紆余曲折を経てここに移送されたのである。

 「それ以降、記憶がなくなるということは?」

 「・・・一度もないと思う。断言は出来ないけど」

 いつも己の行動をつけている携帯がなくなったため、本当にそうかは解らないが黒の騎士団に捕えられてからは一度も自分の記憶が途切れたことはなかった。
 そして毎日同じことの繰り返しという状況は記録の必要がないというメリットもあり、その面ではアーニャは安堵していたのだがそれでも厳重監視の捕虜という環境はアーニャを不安にさせるに充分なものだったのだ。

 「そうか、解った。君の記憶が頻繁になくなる理由が判明したから、それを告げに来たんだ」

 マオからの報告で彼女がしょっちゅう己の記憶が途切れることに強い不安を抱いていたことを知っていたルルーシュの言葉に、アーニャは驚いて顔を上げた。

 「・・・どうしてゼロが知ってるの?」

 「それは今から解る。ジェレミア、やれ」
 
 「承知いたしました」

 ジェレミアが一礼してギアスキャンセラーを発動すると、アーニャは目を見開いて己の脳裏に駆け巡った己の記憶に唖然としていた。

 「あ・・・あ・・・!わ、私・・・あの日マリアンヌ様が撃たれるところを見て・・・!うああああ!!!」

 あのすべてが狂い出した夜、何か物音がしたから部屋を出て様子を見に行ったら、何やらマリアンヌが見知らぬ子供と話していた。
 てっきり他の宮殿にいた行儀見習いの子供が迷い込みでもしたのだろうかと思っていたら、突然その子供が銃でマリアンヌを撃ち、それを見て震えていたところに撃たれて呻くマリアンヌと視線が合ったのだ。

 そしてマリアンヌが入ったまま、アーニャがシャルルと会った時にそれを報告した瞬間、シャルルは厳かに命じたのだ。
 『アリエス宮での出来事を全て忘れよ』と。

 さらにマリアンヌが表に出ていた間の行動もうっすらと巡り、自分の意識のない間にマリアンヌが勝手に自分の体を鍛えている記憶を、アーニャは苦しげに見つめた。

 頭を抑えてうずくまるアーニャはやがてゆっくりと顔を上げると、ゼロの仮面を外したルルーシュを見て小さく呟いた。

 「・・・あなた、ルルーシュ、様?」

 自分を憐れみながら見つめているゼロは、ナナリーのいい遊び相手になってくれてありがとうと微笑みかけてくれた初恋の皇子のおもざしがある。
 頼み込んで一枚だけ撮らせて貰った写真は、記憶が途切れ出す前の手掛かりとして大切に取っていた。

 「そうだ、俺がゼロであり元神聖ブリタニア帝国第十一皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。
 君の記憶を奪ったのは、俺の両親だ。荒唐無稽な話と思うだろうが、聞いて貰えないだろうか?」

 「・・・聞く。私、どうなったの?」

 「君の記憶が途切れた原因は、ギアスと呼ばれる異能の存在なんだ。
 本来なら極秘にすべきことなんだが、君には知る権利がある」
 
 そう前置きしたルルーシュがマリアンヌのギアスのこと、シャルルのギアスのこと、そしてアーニャの身に起きたことを順序立てて説明すると、アーニャの顔が真っ青になった。

 「マリアンヌ様が、私の身体の中にいたの・・・?」

 「そうだ・・・それで君の身体を勝手に使っていたんだ。その間君の意識はないから、その間の出来事は空白になっていた。
 今回の日本侵攻も、やったのは母さんで君じゃない。だけど何も知らない人間から見れば君がやったように見えたから、この境遇になったんだ」

 手厚く軟禁するのが精いっぱいだったと申し訳なさそうに謝るルルーシュに、かつて尊敬していた女主人が自分の身体を乗っ取っていたと知ってアーニャはただ呆然となる。

 「・・・だから私、ラウンズになるように命令されたんだ。私、陛下に期待されているんだと思って嬉しかったのに」

 ぽつりとアーニャが呟くと、ぽろぽろと泣きだした。

 アリエス宮から出されて実家に戻ったアーニャは、たびたび記憶の齟齬が起こっていることに不安だった。
 自室にいたはずがいつの間にか実家にあったトレーニングルームにいたり、買った覚えのないナイトメアの操縦の本を手にしたりしていた。
 そのため周囲からは軍人になるつもりだと判断され、自分がだんだん解らなくなった彼女はカウンセリングの勧めもあってその答えを見つけるためにあえてその通りの道を選んだ。選ばざるを得なかったのだ。
 
 それでも記憶が途切れることはなくならず、士官学校でもそんな士官は困ると言われていた所にシャルルが声をかけてくれた。
 記憶が途切れるというだけで皆不要だと言うのに、自分を必要としてくれたシャルルに感激して忠誠を誓ってラウンズになったのに、その本人が自身の記憶を奪っていたのだ。

 「酷い・・・私不安で不安で・・・今まで何をしていたか解らなくて・・・!」

 学校で盗難事件があった時も、もしかしたら自分がやったのではないかと思ったこともある。
 常に自分が何をしているか解らないという境遇は、自分を不信に陥らせた。
 
 何よりも信じられないのが自分という事実は苦しみにしかならず、何も考えず命令に従えばいいだけの軍人はむしろ天職かも知れないとすら思い、命じられるがまま戦場を巡った日々。
 えづき泣くアーニャに己の両親の所業に舌打ちしながら、ルルーシュは言い聞かせた。

 「・・・すまなかった、アーニャ。だがこれでもう君の記憶はなくならない。
 母さんは俺が君の身体から追い出した。君の身体と記憶は、君だけのものだよ」

 「本当?もう、なくならない?」

 「約束しよう。だがアーニャにはすまないことに、このギアスは世界に知られてはならないものだ。今、全力でこれを消す努力をしている。
 だから君がされたことを公に出来ないせいで、ここからすぐに出せないんだ」

 申し訳ないと頭を下げるルルーシュに、アーニャは尋ねた。

 「・・・黒の騎士団にたくさんダメージを与えられたのが私だと思われてるから?」

 「そうだ。だがそれは先日発見されたギアス嚮団の犠牲者の一人とすることで免罪が可能になりそうだから、戦争が終わればすぐにここから出られることを約束しよう。
 身元保証人もユフィが引き受けてくれたし、それが無理でも俺がなる。
 だからもう少し待っていて貰えないだろうか?」

 もう記憶が途切れることはないし、自分の記憶を奪い操作した皇帝の元になど戻らなくていいと言うルルーシュに、アーニャはこくりと頷いた。

 「記憶が途切れなくなるなら、いい。私はここにいたい」

 記憶がなくなるという恐怖から逃れられるのなら、アーニャはこの収容所から出られなくなっても構わなかった。
 事情を理解してしまえばこの環境はアーニャにとって悪いものではなかったからだ。

 「代わりと言ってはなんだが、これをプレゼントしよう。記憶が途切れないという証を立てるといい」

 そう言ってルルーシュが差し出したのは、ピンク色の表紙の日記帳だった。
 携帯を取り上げられて自分の記憶としていた物を取り上げられたことに不安に思っていたアーニャは驚き、そして笑みを浮かべて日記帳を手にした。

 「ありがとう、ルルーシュ様」

 「一応話は通してあるが、万が一見られても困らないようギアスやゼロの正体については書かないで貰いたい。それ以外は自由にしてくれ」

 「解った、そうする」

 「母さんとあの男が迷惑をかけて、本当にすまなかった。
 あの勝手な親は、俺が必ずカタをつける。君はここで吉報を待ってくれ」

 「うん、待ってる。ここを出たら、ルルーシュ様とナナリー様のところに行ってもいい?」

 「それは解らないが、自由に会えるようになるさ。
 収容所で不便がないよう、こちらでも便宜を図るから何かあったら言ってくれ」

 たまにこちらの手の者に様子を見に来させると言ってくれたルルーシュに、アーニャは無表情だったが内心嬉しく思いながら了承する。

 「では俺はこれで戻る。本当に迷惑をかけてすまなかった」

 再度頭を下げるルルーシュに、アーニャは尋ねた。

 「そのギアスはルルーシュ様が解いてくれたの?」

 「いや、違う。それはブリタニアの実験でギアスキャンセルの能力を得たジェレミアだ。
 彼もあの男の被害者で、アリエス宮にいたのだが、憶えているだろうか?」

 ルルーシュの横に立つ男に視線を移したアーニャは、小さく頷いた。

 「思い出した・・・マリアンヌ様にお目通りをした時、感涙してた人」

 「・・・ええ、アリエス宮の警備をおおせつかってお会いした時に。懐かしい思い出ですな」

 自分の記憶と相手の記憶が一致したことに安堵しながら、アーニャは久方ぶりに笑顔を浮かべた。

 「よかった・・・私の記憶、戻った」

 「そうか、よかったな。ではアーニャ、ギアスのことだけはくれぐれも口外しなくてくれ。
 それさえしてくれたなら、後のことは俺が何とかする」

 再度念を押すルルーシュにアーニャは真剣な顔で了承した。

 「約束する・・・絶対話さない。私、ブリタニアに戻りたくない。
 記憶がなくなるのはもう嫌だから・・・」

 もっともなアーニャの台詞にルルーシュ溜息をつくと、ゼロの仮面をかぶってアーニャに割り当てられている独房へと送り届けた。

 「ではアーニャ、もう少し辛抱してくれ。いずれ迎えに来るから」

 そう言ってルルーシュがジェレミアとともに立ち去ると、アーニャはさっそくルルーシュから贈られた日記帳を開き、その日の出来事を記し始めた。

 その翌日、アーニャ・アールストレイムもギアス嚮団の実験体だったという情報が流れ、第二次日本防衛戦での彼女の様子と捕縛後の様子が全く違っていたという状況証拠もあり、アーニャに対する恐怖の視線は年齢もあって同情へと変化した。
 恐怖から牢から決められた日時以外出ることを許されなかったのだが、それも緩和されて彼女の待遇は格段に良くなった。

 だが何よりもアーニャを幸福な気分にさせたのは、失った記憶を取り戻せたことと何よりも記憶が途切れないという願ってやまないものを手に入れたことだった。

 自分が何をしていたのか解らないということが一切なくなったアーニャは喜び、少しずつ自由を許されて施設を歩き回るようになり、それを正確に日記に書きとめられるというだけで嬉しくてたまらなかったのだ。

 早くブリタニアが負けて自分の記憶を操りいいように使った恐ろしい皇帝が倒れればいい。
 そして自分の大切な物を取り戻してくれたルルーシュが自分を迎えに来てくれればいい。
 
 その日が来るのを待ち焦がれながら、アーニャは日記を綴り続けた。
 


 一方、アーニャをその能力で救ったジェレミアについては、黒の騎士団内でも物議をかもしていた。
 日本人を虐殺した純血派のリーダー、だが同時にゼロにつきギアス嚮団の場所を報告した功があり、さらに彼自身も実験体として使われていたという同情すべき境遇という複雑な事情が絡まり合っていたからである。

 さらにゼロの正体と事情を知る者はスザク救出事件、いわゆるオレンジ事件での時点でルルーシュに従っていたと認識していたせいで、藤堂などは多少なりと便宜を図ってやりたいと考えていた。

 ルルーシュは考えた末にゼロ番隊に監視も出来るという理由をつけて所属させ、自身の傍に置くことに成功した。
 彼は自分としても必要だったし、彼の忠義に報いることが出来、かつ黒の騎士団内でも一番混乱がないと踏んだからである。

 ゼロ番隊と言えばゼロの直属であり、いわばエリート部隊とも呼ばれている部署だったのでジェレミアに妬みの視線をぶつける者もいたが、カレンや藤堂が認めたとあってはそれ以上は出来ない。

 こうしてギアス嚮団についてはある程度処理が済んだある日、ナイトメアのシュミレーションルームでカレンはスザクと鉢合わせした。

 「やあカレン、君も紅蓮の訓練かい?」

 「ええ、今度また大幅な改造をすることになったからデータを取りにね。ランスロットもでしょ?」

 「やっと予算の認可が下りたからね、ロイドさんも大張りきりだよ」

 「聞いたわよ、紅蓮の改造にロイドさんがアイデアを出したってラクシャータさんが怒ってさ・・・勝手な改造案を出すな―って。
 でも確かに強力なものだってうっかり口にしちゃったものだから、それを聞いたお父さんが是非って乗り気になっちゃったの」

 カレンの父のシュタットフェルトは、娘をナイトメアに乗せることを認める代わり、紅蓮の強化に口と資金を湯水のように出していた。
 その結果紅蓮のコックピット周りの強度は黒の騎士団随一を誇り、お陰で第二次防衛戦ではあれほどの衝撃で落下したにも関わらず、カレンは擦り傷程度の傷で済んでいた。

 「スポンサーの意向には逆らえないってことで、ラクシャータさんもしぶしぶいくつかの案を組み入れてくれたけど。
 代わりにランスロットの方で案を出させろってことで、今すっごいピリピリしてるのよねあの二人・・・」

 皮肉にもそれが原因でナイトメアの精度と能力が上がっていくという結果を生みだしているので、ナイトメアパイロット達は大喜びである。

 「イリアスゲートシリーズもアルカディア様が入院中だから、セシルさんが中心になって設計してくれてるみたい。
 ロイドさんやラクシャータさんも手を貸してくれてるそうだから、退院したらアルカディア様も喜んでくれるわ」

 「でも完成まで時間がかかりそうだって言ってたよ。
 早くしないと向こうも態勢を整えられるから、その時期を見極めないといけないってダールトン将軍が心配してた」

 お互い損害を被った以上、態勢を早く整えた方が有利だとルルーシュも言っていたため、既に勝負は始まっているのだと二人は気を引き締めた。

 「シュナイゼルの計画の方にも気を配らないといけないし、アドリス様がお戻りになったとはいえまだ気は抜けないわね」

 「そうだね、ユーフェミア様もアドリス様からアドバイスを貰ったとかで喜んでた。
 やっぱりエトランジュ様の父君なだけあって、優しい人だなあ」

 アドリスがユーフェミアにアドバイスを送ったのは特別彼女に気を使ったわけではなく、後のトラブルを回避し娘にいらぬ苦労をさせずに済むようにするのが主目的だった。
 つまりはひたすらエトランジュのためなのだが、そんなことは知る由も無いスザクとカレンはのん気に笑いあう

 「そうね、今もエトランジュ様のお仕事を治療の合間を縫ってはお手伝いなさっているって聞いたわ。
 あまり無理をなさらないでほしいけど、エトランジュ様が心配だっておっしゃるのも解るからアルカディア様も強く注意出来ないみたい」

 「そうだよね・・・でもまた倒れたらエトランジュ様もお可哀想だし、桐原さんもその辺りを危惧してあまり仕事を回さないようにしてるって神楽耶から聞いたよ。
 ・・・早くお身体の治療法が見つかるといいね」

 まったくだとカレンは頷くと、病み衰えた身体で車椅子に乗っていたアドリスに同情の溜息をつくのだった。

 

 黒の騎士団および超合集国連合、さらには第三国の人間からの同情の視線を集めた当の本人は、娘の部屋で我が世の春を謳歌していた。

 現在のアドリスの肩書は“マグヌスファミリア国王補佐”であるため、彼女の利益を最優先に考えて動くことが許されていた。
 さらにブリタニアに捕まり実験にかけられてようやく救出され、それでも娘のためにこの戦争を早く終わらせたいというコメントのお陰で堂々とエトランジュへの愛を叫びながら仕事が出来る状況に満足したのだ。

 国王時代とは見違えるほどのやる気を出したアドリスは、姉であるエリザベスを国王補佐秘書の肩書で呼び寄せ、書類の整理を手伝って貰いながら的確な処理をしていった。

 「EUのほうはこのまま共闘態勢でいくようフランス大使に伝えましょう。
 ギアス嚮団員はすみやかにコニミュティに移送し、アイン兄さんに一任して下さい。
 イリアスゲートのほうはアルフォンスに設計図を確認して貰ったら、クライス君にシミュレーションをするように連絡してください」
 
 本来ならエトランジュがすべき仕事なのだが、皆で協議する手間がない分自分がやった方が速いとアドリスはエトランジュが最終的にサインをするだけで終わるように進めて行く。
 事実上国王に復帰したアドリスは、戦争を終わらせてマグヌスファミリアを戦後のゴタゴタからいち早く抜けさせるために余念がなかった。

 「お父様、お疲れ様です。お茶をお淹れしました」

 にこにこと無邪気な笑みを浮かべてトレイにティーセットを乗せて運んできたエトランジュに、アドリスは途端に表情をにこやかなものに変えてエトランジュを手招きした。

 「ありがとう、エディ。ちょうど喉が乾いたところです。
 ああ、ジンジャークッキーも焼いてくれたのですね。頂きましょう」

 「はい、お父様!」

 父親の隣に座ってべったりと抱きつくエトランジュを見て、エリザベスは小さく肩をすくめた。

 アドリスが戻って来てからと言うもの、エトランジュは父親の傍から離れたがらない。
 いつもエトランジュはアドリスの傍にいて、夜眠るときですら手を握って貰わなければ眠りにつこうとしなかった。

 初めこそは父の負担になってはいけないと自重しようとしていたエトランジュだが、当の父親がタガが外れたように娘を甘やかし放題甘やかしだしてしまい、怖い思いや面倒なことは二度とさせまいとばかりに仕事すらも取り上げ、形式的なことしかさせなかった。
 そのせいもあってもともと困ったことがあれば他者を頼り甘える傾向のあったエトランジュはすっかりマグヌスファミリアが占領された時の・・・いや、それ以前の性格に戻ってしまい、人形を抱き締めて父親の傍にいる日々に安心しきってしまっていた。

 父親とともに会議にやってきたエトランジュの変わりように皆驚いたが、彼女の境遇からして無理はないと誰もが思ったし、アドリスも容体が安定していて仕事が出来る状態なら彼も張り切って仕事をしたがるのも当然かと何も言えなかった。
  
 特に星刻はかつて天子の祖父である前皇帝に子供を甘やかし過ぎるのはよくないと忠告していた本人がやることとは思えなかったが、それまでのエトランジュはしっかりとした考えを持ち、見事に責任を果たしていたためにそれまでの反動だろうと理解した。 
 天子とて平和になり他人に政治を任せてもいいとなったのなら、同じ状態になるのかもしれない。

 その立場、その血筋こそが、彼女が平凡な少女でいることを許さなかった。
 たとえ本人が望んだのは、大切な家族からの愛情とささやかな幸せであったとしても。

 「アルフォンス様がおっしゃっていたのですが、エトランジュ様はもともとああいうご性格だったのだとか。
 お医者様も一種の幼児返りを起こしているだけだから、少し経てば元に戻るだろうとのことですから見守って差し上げましょう」

 幸い今は戦闘も小康状態だし、エトランジュも無条件に甘えられる父親が戻って来たことに気が抜けたのだからと言う神楽耶の言に同意した。
 娘の友人だからとアドリスは天子や神楽耶にも積極的に関わって大事にしたという経緯もあり、アドリスの好感度は高かった。

 こうしてほのぼのした幸せを満喫していたアドリスだが、裏では政略結婚を申し込んできた連中を笑顔の圧力をかけて薙ぎ払い、さらに自分はある程度仕事が出来ているとはいえまだ辛いなどと言って仕事を他国に振り分けていく。

 (今でこそマグヌスファミリアは世界で注目を集めている国家ですが、戦争後もそれが続くのは好ましくない。
 元通りの静かな国を取り戻すためにも、ギアス絡み以外ではなるべくマグヌスファミリアを関わらせないようにしなくては)

 たとえコードとギアスがなくなっても、マグヌスファミリアが小国であることに変わりはない。
 小さな国が大きな権力を持つとつけ込まれる隙しかないと理解しているアドリスは、戦後のことも視野に入れて動いていた。

 (私の大事な宝物(エトランジュ)、怖いことが二度と起こらないようにしてあげましょう。
 戦争が終わったのなら楽しいことだけがあるように、幸せだけがその手に残るように。
 みんなで仲良くいつまでも暮らせるようにしてあげましょう)

 コードがなくなれば自分はいつ死ぬか解らない。
 身体機能が衰えており、どうなるか予想がつかない分楽観は出来なかった。

 かつての中華の前皇帝の気持ちが今になって痛いほど解ったアドリスの頭にあったのは、ひたすらエトランジュの幸福のことだけだった。

 平和になりさえすれば、エトランジュは確実に幸せになれるはずなのだ。
 だからそのためにはどんな手でも使う。

 その決意を瞳に秘めて、アドリスは自分の前で楽しそうに歌う愛娘を見つめていた。


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