幸せとは人それぞれの捉え方。
その形も人それぞれである。
ならば彼女、ヨランダ・アンデルセンにも幸せがあった。
彼女の父が創った孤児院。
この時代にはまだ、宗教はそれほどなかった。
あったとしてもすぐに潰れるようなものだった。
この孤児院もその一つ。
教会と呼ばれながら孤児院としての役割を持っていた。
この宗教に決まっていることは大したものではない。
所詮一人の男が創ったもの。
それには戒律なんてものも無かった。
だが、父が残したその場所は彼女にとって大切であり、幸せだった。
子供達は彼女をシスターと慕っていた。
子供達にとってもこの場所は大切であり、幸せとなっていた。
それはある村の一角にあった。
村の人々はそれを邪魔扱いなどせず、親身に扱っていた。
それはこの場所では心を休める場でもあった。
これが世に広まり、正しい宗教としての在り方を貫いたのなら、
間違いなく、この宗教は世界に救いを与えたかもしれない。
だが、そんな夢物語、実現などしない。
ここで、一つの幸せは壊される。
たかが教会が壊れ、人が死んだだけと、貴方は笑うだろうか。
それを知らない者にとって、これが笑い話だったとしても、
彼女にとって、これは人生を変える瞬間になる。
幸せを失い、違う幸せを手に入れた彼女。
しかしそれは、幸せと呼ぶのかは分からない。
だが、彼女にとっては、幸せだ。
小さな村、そこで私は生まれた。
私の父は厳しかったが優しかった。
いつも、この村を守っていた。
その手に銃剣を持ち、「そうあれかし」と叫んで切る。
魔物達はそれによって逃げる。
それを何回か続ける内に、魔物はこの辺りに出なくなった。
私の自慢の父。
死んでしまった私の父。
その意志を継ごうと、これまで頑張ってきた。
血反吐に塗れても銃剣を掴んだ。
親がない子を引き取り育ててきた。
そうやって生きてきた私の人生。
なのに、どうしてだろう。
私は悪いことをしたのか?
この子供達が何か悪いことをしたのか?
「…教えてください、神様。何が、いけなかったのでしょうか…」
それに応える者もいない。
いや、応える者はいる。
だが、彼らは私の話しを聞いていないだろう。
今彼らは、子供達を犯すことに必死なのだから。
嗚呼、また一人、絶頂を迎えている。
相手をさせられている少女はもう駄目だ。
目が死んでいる。あの子は歌を歌うのが得意だったのに、その喉も白濁に塗れている。
私の前に、男が立つ。
これから私を犯すのだろうか?
だが、その前に一つ応えて欲しい。
何故こうなったか。
何故、どうしてこんな事をするのか。
それはどこからか聞こえてきた答えだった。
「運が、悪かった」
そんな適当であの子達はあんな目にあっているというのか。
父よ、貴方は間違っていたのかもしれない。
貴方は魔物を殺してきた。
危険という理由で殺していた。
それについて異を唱える気はない。
だけど、私は思ってしまった。
この世で最も恐ろしいのは人間ではないかと。
今、私の服が破かれる。
このまま犯されるのは嫌だ。
死ぬのは嫌だ。
せめて、私の信念を叶えたい。私がそれを思うと涙が溢れてきた。
それを見て、彼らは笑っている。
彼らは勘違いしているようだ。
私は、悲しくて、悔しくて泣いているわけじゃない。
今この場で、今までの人生を無下にすることに嘆いているだけなのだ。
だが、手元に銃剣は無い。
もう誰でもいい。時間さえあれば、銃剣を取ってきて殺せるのに。
その瞬間をくれるのなら何でもいい。
神でも悪魔でも、何でもいいのだ。
私の全てを捧げましょう。
だから、私の願いを聞き遂げてください。
これが私の最後の神への祈りです。
そして、私の願いは叶った。
これは盗賊達にとっては酷なことだ。
彼らはいつも通りに仕事をした。
殺し、奪い、犯していた。
それは人として間違ったことだとしても、彼らはそれしかできなかった。
因果応報。
その言葉の通り、今回彼らは今までのツケを払わされる。
ある建物で、女も子供も犯している時、それは来た。
一人の少女が呟いた時、何かが来たのだ。
窓を突き破り、翼を纏いて来た。
一瞬、本当に一瞬で、一人の男以外の命を奪っていた。
残された男は、何も考えられない。
あまりの事に思考が停止する。
思考を停止してはいけなかった。
停止せずに逃げれば、足が潰れようと腕が無くなろうと逃げれば、助かったかもしれない。
しかし、それはできない。
それは彼が人だから、人間だったから。
彼の意思が戻った時、彼は見てしまった。
まだ幼さが残る少女が、口元をニヤリとさせながら、彼に振り下ろすものを。
「ガ、ッツア、アアァァァ」
それは、彼の両目を潰し、抉り取っていた。
少女は男を見下ろしながら、男の口に無理やり布を詰める。
「嗚呼、感謝します。私の願いを聞き遂げてくれて。
今すぐにでも私はこの身を捧げたいのですが、もう少しお待ちください」
少女は再び男に向き直る。
「一応、あなたに教えておきます。
私があなたを殺すのは恨みではありません」
そう男に言い放つ。
男は目を失いながらも思った。なら何故自分を殺そうというのか、と。
「やはり人などこの程度でしょう。
私利私欲で動き、この世で生きる。父もきっとそういう人間でした。
それが人の本質なんでしょう、だからあなたがしたことは間違っていない」
少女は男の足を刺しながら続ける。
「私には、考えている事があるんですよ。
所詮この世は生き地獄とね。だから私は、これから貴方を救います」
少女は男の腕を刺しながら続ける。
「この腐った世で、人が生きるのつらいでしょう?
だから、私が救いましょう。聖者も悪も、全て殺します。
ですが、この私の考えに父は反対していたんです」
少女は男の性器を刺しながら続ける。
「父が死に、私は何が正しいかは分かりませんでした。
だからいつも通りに過ごしました。
そこに、貴方達が来てくれた。そして肯定してくれた。
この世は腐っているという考えを、だから私は救うことにします。」
男は、途切れそうな意識のなか思う。
自分達は、ついていなかった。
こんな場所に来なければよかったと。
そうすれば、こんな化け物に逢うこともなかったと。
「この行為は救いです。神は人を助けない。
なら、神すら殺して見せましょう。
人も神も殺して、私は自身の夢を埋葬しましょう」
その手に持つ銃剣が振り落とされる。
その一撃で、遂に男は事切れた。
少女は翼を持つものに振りかえり、頭を下げた。
「この時間をくださいまして、感謝の極みでございます。
すでにこの身は貴方の物。私は何をすれないいでしょう?」
「名前はなんという?私の名はトロスだ」
その質問に少女は考える。
考えて、応える。
「私はアンデルセンといいます。
この名だけで、私には十分です。アンだけでもかまいません」
「なるほど、素質は十分。
魔人になろうと意志も砕けない。
最高じゃないか、まさかこれほどとは」
少女は頭に?マークをつけながら命令を待っていた。
「行こうか、アン。
お前は魔人になるべきだ」
「魔人がなにかは知りませんが、どこへでも連れて行ってください。
あの時より、トロス様は私の神であり、全てを捧げる主なのですから」
この少女の幸せは、これで正しいものだろう。
他人が見ればそうは思わないだろう。
だが、少女は幸せを感じていた。
今まで抑えてきた想いをぶちまけて、生きた。
人にはそれぞれの幸せの形がある。
それを他人が侮辱することは許されない。
譲れないものが人にはあるのだから。
そして、少女は魔人となる。
魔王の警告すら跳ね除けて、魔人となった。
忠誠は誓っておく。
だが、少女の全てはトロスの物だった。
それだけは、少女は譲らなかった。
その場にて、血に濡れながら魔人となる少女は、美しかっただろう。
この日、少女は魔人になり、少女は女となる。
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「なるほど、なるほど。
超神め、やはり仕掛けがあったか…」
トロスは腕を必死に抑えながら呻いていた。
その体を震わせ、額から汗を流していた。
「恐れ入った、こんなことまでしようとは…
本当に、私に何をさせたい?」
震えながらも、トロスは笑っていた。
笑いながら、自分のベットに倒れこんだ。
「はあ、はあ、血が、滾る、気が、昂る」
それは体の変化でもあった。
肉体ではなく内面の進化。
丸い者としての力が、今大きなっていた。
その時、部屋の扉が開かれる。
そこから現れるのは、美しい金髪の少女。
腰まで伸ばしたその髪をなびかせ、トロスの前まで歩く。
「大丈夫でございますか?主様。
私でよろしければ、お相手致しましょうか?」
この少女は言っているのだ。
私を使ってれと、それほどまでに少女はトロスとの繋がりを欲していた。
「魔人になったばかりで大丈夫なのか?」
トロスは顔を苦痛で歪めながら聞く。
「関係ございませんね。
申し上げたはずです。私は主様の物だと」
その言葉を紡いだ後、アンデルセンは自分からベットに入って行った。
あとがき
なんかトロスとアンデルセンの会話が少なかったですね、すみません。
本来彼女は後に出そうと考えてたんですが、
この後のナイサチでは出せない上にジルだと他の魔人が多すぎて書けないと思ったので、此処に登場してもらいました。
最後の続きは皆さま個人で妄想していただけると助かります。
別に、わっふるわっふると感想に書きこまれても書くかは分かりません。
ランスシリーズにエロを入れたくて急に入れたので、なんか変になりました。
私にとってエロは戦闘描写より難しいです。
ちなみにアンデルセンの身長はロリアーカー●さんと一緒ぐらいです。
140ぐらい?ですかね。
ロリと言うほどでもないですけど、こういう背丈のキャラをランス8に入れてほしい。
スラル編はあと一話か二話で終わりにしようと思ってます。
それでは、次回も読んで感想をください。
これからの励みにして頑張ります。
指摘点なども感想板にいただけるとうれしいです。