題名なんかとはまったく違う内容ですよ。
本来しない音が静かな森にて交差する。
お互いがお互いを殺そうとする音が響く。
だがまだまだその速度は遅く、遊んでいるような印象が持てる。
まだ終わらせたくない。
そんな簡単に終わってしまっては意味が無い。
まだ魅ていたいのだ。感じていたいのだ。
この死を背にした現状と共に闘う様を。
力量すら量り知れない相手との闘争を深く望んでいる。
それは最早渇望に近い絶叫のようだ。
死を望み、相手の死を望む。
その闘い方はまるでそのようなもの。
自身など構う事が無い戦闘方法。
それ故に押しきれぬほどに堅く、強いのだ。
その月がお互いを曝け出しながら、血を散らせ闘う。
トロスの白刃が真傀の肌を切り刻む。
浴衣の様に浅い生地の布の上から切りつける。
それによって真傀には無数の浅い傷が付いていた。
トロスの攻撃の要は速さである。
そして不可視の刃と計測不能の刀身。
長さなど分からず、姿は見えず、恐ろしく早い。
普通ならばこれだけで方がつく。
だが、真傀相手ならば終わりはしない。
所詮トロスの攻撃とはそれだけだ。
剣を習ったわけでもなく我流ともいえぬ技。
ただ速度に任せ刀を振るう事しかできない。
それに真傀は気づいていた。
だがいきなりあの速度に付いていけと言われて、はいそうですかと言えるほど余裕はない。
用は慣れが必要なのだ。
真傀にとっての驚異はまず見えない事。
ただトロスの間合いさえ確認できればそれは安全だ。
此処まで切りあってきて分かったことがあった。
それはトロスが遠距離から攻撃することが無い事。
トロスは真傀との闘いを望み、そしてその在り方を見たい。
だからこそ、そんな真似はできない。
そう真傀は確信していた。
あとは形状は刀なのだから見慣れている真傀ならばその刀を受け切る事などわけはない。
問題は速度。
これを見きるために必要な時間が足りなかった。
互いが本気でないとはいえ、これ以上速度が上がれば死は背骨を駆けあがり命を奪う事は明らかだった。
それ故に、時間稼ぎが必要だった。
「……お主、混じりモノというのをしっておるか?」
話に乗ってこなければ負けは必須。
だが真傀には絶対的な確信があった。
トロスがこの話に乗ってくるという自身があった。
「知らないな。できれば私に教えてはくれないかな?」
そして乗る。
トロスが好奇心を抑える事こそ無理というもの。
それはトロスの在り方だからだ。
「混じりモノってのはJAPANで恐れられているモノのこと。
要するに、人と鬼や妖怪が混ざったモノ。
人が産む呪われた子供なのさ。だけど、変だとは思わぬか?
何故それを恐れるのか。混じったならばその力は半減している考えるというものではないのかと思わぬか?」
試すように、舌を舐めずりして問いかける。
「……考えられるのは二つ。それは人がその子供達を自身らと同じ存在であることに我慢できないがため違う名称が必要だったから。
そしてもう一つ。そのモノ達が、鬼や妖怪以上の力を持っていたから」
その答えを聞いた時、真傀はゲラゲラと嗤った。
「大ッ正解!答えは両方だがのう。まあ、混じりモノの中には人ではない姿をしたモノもいやのよな。鬼の血が姿に影響したものもいる。
だがその混じりモノには力があった。個人に与えられるモノは様々。
その以上さ故に人々は恐怖したのさ」
「ならば、その力も混じりモノなのか?」
トロスが聞いている内容の意味は複数ある。
一つ、トロスに付いてこれる速度を保つための足。
人であれば在りえぬ事。
二つ、仮にも神が創りし刀。その刀と打ちあって壊れぬ刀を創った事。
三つ、これこそ本命。眼の前で起こっている現象そのもの。
真傀には無数の傷跡があった筈だ。
目が慣れぬ為に幾度か切られた傷があった筈だ。
だが、今の真傀にはそれがない。
今、その傷は少しの白い煙のようなものと共に姿を消していた。
「自己再生か?自動治癒?
まさか時間逆行の類でもないだろう。世界の上から上塗りしているとでも言うのか?」
世界の上から上塗り。
それは世界で起こった出来事に対し真傀が別の事を上塗りしているという事。
傷の負ったという世界が認めた現実の上からその傷が無かったという現実を上乗せる。
時間逆行ではなく世界に干渉するような事。
だがトロスはこの考えをすぐに放棄する。
なぜならそれは在りえないから。
ルドラサウムという世界の存在があってそんな事を可能とするわけがない。
絶対不可能の方法なのだ。
ならば、答えは大体決まっている。
「まったく、その刀は忌々しい。
儂が打った刀を受けて尚傷一つ付かぬとは、それを創った者は何者じゃ?」
それは真傀のプライドに関する問題。
刀に絶対的な情熱をもつ真傀だからこそ、その現実が憎い。
「さて、誰だと思う?
まあ、私を負かしたならば教えてやろう」
その言葉で、真傀の眼付が変わった。
真傀にとっての時間稼ぎは終了。
最早必要などあらじ。
後は、勝つための術をぶつけるのみ。
「世に人在るが故人を切る。
世に鬼在るが故鬼を切る。
妖怪も国も大地も命も世界も全てを切り捨て、我は更なる高みへ登らん。
全てを切りて、我は神すら切り捨てる。
――――我が鍛えし刀に、切れモノなど、何もない――――」
真傀は刀を一度鞘に納め直し、居合い切りの容量で切りつける。
ただの居合いと思えば死ぬ。
その速度はトロスの動く速度するも越えて見せた。
まさに限界を越えるための刀。
一体どれほどの犠牲を払えば其処までの境地に立ちうる事ができるのであろう。
トロスの眼は笑う事をやめた。
ふざけた遊びをやめた。
此処からが、本番。
トロスにとっての現実が始まる時間であった。
「それほどの技。お前個人では不可能。
ならば、どれほどの犠牲を払ってその刀を創りえた?」
待っていたと言わんばかりに真傀の口元が歪む。
それに応えながらも、真傀が刀の柄から手を離す事はなかった。
「気づいたか。なに簡単明白な事。想いとは人が持つ最高の素材でもあった。
その血も骨も最高の素材。鬼も妖怪も同じであった。
後は鉄とうまく混じるからだけ。混じりし刀とは、混じりモノにしか使えんよ」
「私が聞きたいのはそうじゃない。どうやって、一つの刀から複数の刀を再構成した?
そんなことは見たことがない。まったくもって不可思議な事だ」
最初から普通ではなかった。
折れず、あわよくばトロスの刀を折ろうとする姿。
それは刀が刀を喰らおうとするようにも見える。
それだけならば良かった。
良くは無いがそれだけならばマシであった。
だが、その刀は違った、
まったくもって違った。
真傀が抜いた時、その刀は別物であった。
長さ、色、といったものからして違う。
つまり、元が違うのだ。
まったく新しくなって出てきた刀。
だが真傀は一本しか持っていない。
不可思議な事であった。
だが考えみれば変わったところがあった。
真傀は抜く際必ず何かしらの詠唱をする。
最初は心構えかと思っていた。
だが違うのだ。
それは鍵であり、その刀をそのまま表している。
神を切るための刀。
そう言ったものが必ず入る。
それは決意の表れである。
そして真傀は混じりモノであった。
「まさか、言霊か?そして空間転移?
いや、空間転移はない。その言葉を鍵として姿を変えるなど、ありえない」
トロスは考える。
だがトロスは大事な事を考えては無い。
それは――――
「――――ありえない事などありえない。
言葉を鍵としているのは正解。形が変わるのは想いが故。
この刀を打つために、多くの血や命を使った。
そして、創り終えた後に、儂は千の数を切った」
その言葉意味がトロスには分からなかった。
千を切る。何を?
答えは簡単だ。
最初から言っていた素材。
それを使い、そしてそれを千体切ったのだ。
「つまり、人も鬼も妖怪も、儂は各々千体切ってみせたのだ!!
呪いも、恨みも、悲しみも、全てを背負った結果の刀。
長き時を掛けて進化せし我が爪牙也……!」
それは答えは、トロスを動かすたる理由になる。
その想いにトロスは魅せられる。
その在り方が美しく、素晴らしいから、トロスは動かずにはいわれない。
「ふ、ふは、ひゃっはっははは。素晴らしいきかな真傀よ。
それほどまでに憎かったのか?
神が憎いか?お前を其処まで駆り立てるほど神は憎き存在であったか!?」
トロスは飛び出す。
叫び、飛び出し、ただ不意を打った一撃。
柄に手を掛けておきながら反応に遅れた真傀。
この時ほど彼女が無様であった時はないだろう。
油断はなかった筈だった。
驕ったわけでもなかった。
たった一言。
その一言だけで彼女は揺れた。
その隙によって、決定的な一撃を受けた。
「ッグ、クソ、がぁぁぁぁぁぁ……!!」
その腹からの出血は収まらず止まらない。
トロスがした一撃とは刀を使わず爪のみでその腹を刺した。
貫通しなかったとはいえその痛みは激しい。
背骨まで届かずともその一撃は重たかった。
「なんだ、終わるのか?その程度なのか?」
そのトロスの言葉に真傀は睨む。
憎悪をこめた眼で睨みつける。
「卑怯者が!不意を突いておきながら、そのような戯言を……!」
「不意を付けれたのはお前の失態だ。責任を他人に擦り付けるなよ。
だがまぁ、汚い事なのは確かだ。
だから、早く傷を治せ。その間、話をしようじゃないか。
直ったら、続きをしよう。条件をつけてだがな」
トロスは近くの石に腰をすえながら勝手に話を進める。
それほどまでに余裕がないのだ。
トロスが望む結果のためには相手に有無を言わさず進めるしかなかった。
「条件だと?生きるか死ぬかの闘争に条件がいるのか?」
「勿論だ。なんせ私はお前を殺さぬからだ。
私がだす条件。それは、お前が欲しい。ただそれだけだ」
「は?欲しい、だと。そんなものを了承すると思うのか?」
ニヤニヤとしながらも真傀は内心焦っていた。
わけがわからず戸惑う。
欲しいというのは戦力的な意味合いだと感じたが理解できなかった。
「儂は混じりモノだ。何故欲する?」
「関係ないな、そんな事。欲しいのはそうやって育ってきたお前だ。
魔人として欲しい。それほでまでに魅力的なのだ」
「ふん、戯言を。もし儂が勝てばどうする?
首を差し出すだけでは足りぬぞ」
その答えは的を射ている。
だがトロスにはそれに対応できるものを持っていた。
「……神の名と、居場所を教えてやろう。
もしお前が勝てば、お前にだけ教えてやろう」
その答を聞き、真傀は了承する。
元々神の場所など知らぬ故にわらをも掴むための結果だった。
半信半疑ではなかった。
心のどこかで信じていたのだ。
その眼が嘘をついているようにも見えなかった。
命を賭ける勝負。
たまにはこういうのも悪くない。
そう思い、真傀は了承した。
だがいまだ真傀の傷は癒えない。
そんな簡単に治癒できるほど浅い傷ではないだから。
このまま時間が過ぎ去るわけもなく、トロスは口を開く。
「では、そろそろ聞こうか」
「何を聞くというのだ?」
「簡単な事だ。お前が神を恨む理由を聞こう。
あまりすぐに応えてくれるなよ。時間をかけて私を楽しませてくれ」
好奇心は猫をも殺す。
その猫がトロス?
そんな事があろうはずがない。
トロスは知りたいのだ。
知的好奇心を満たしたいという願望もある。
元が元であるが故、トロスは知りたいのだ。
この先の未来を知りたいわけではない。理解したいわけではない。
その場で起こり、それを自身が見届け、全てを理解したい。知りたい。
言葉で表すには難しい。
観測したい?その謎を解析したい?
分かるわけがない。
なんせトロスという存在はただ一人。
トロス同じモノなど存在しない。
できるわけがないのだ。
だからこそ、トロスの気持ちもその他の全てを知り得ることは叶わない。
真傀はトロスと対峙する。
もしかすれば、その精神は破綻する結果になるかもしれない。
矛盾した考えは悪くない。
どんな考えだろうと悪くない。
ただ答えを持っていなければ、その全てを無情に帰す。
全てをトロスが壊し尽くす。
解がなければ意味が無い。
全てが無意味。
故にトロスは真傀に問うのだ。
結果によっては、先の条件は全て破棄となる。
その場で真傀は死ぬことになる。
そのような結果、今回においては在る筈も無かった。
あとがき
疲れた。というより感想をください。
なんか真傀イラネなのでしょうか?
まあ、仮にそうだとしても書くんですけどね。
正直に言いましょう。
個人で刀を創るのは無理です!!
刀工。
研師。
鞘師。
白銀師。
柄巻師。
塗師。
この方々は必要です。
ですので今回の話もですが凄い矛盾があります。
まあ真傀一人で全部した事にすればいいんですけどね。
どうせなんで天下五剣の説明でもしましょうか。
※現実での天下五剣なんでこの作品とはなんの関わりもございません。
詳しくはwikiでお願いします。
・童子切
国宝指定名称は「太刀 銘安綱(名物童子切安綱)附糸巻太刀、梨子地葵紋散太刀箱」
刃長二尺六寸五分(約80、3㎝)
・鬼丸
皇室御物でもある日本刀です。鬼丸国綱とも呼ばれてます。
正式名称は「太刀 銘 国綱(名物鬼丸国綱)附 革包太刀拵」
・三日月宗近(戦国編で出したい一本でもあります)
国宝指定名称は「太刀 銘三条(名物三日月宗近) 附 糸巻太刀拵鞘」
天下五剣の中でも最も美しいとされる一本です。
・大典太
名称は二通りあります。
紹介する気がでない剣。
凄い刀であることは確かです。
・数珠丸
これは日本の重要文化財に指定されてます。
名前からも分かりますが数珠を付けてる?だったかな。
柄に数珠を付けた事があったからこの名前だった気がします。
主に日蓮に関係あった筈です。
現在は兵庫県尼崎市の本興寺に所蔵されています。
これって見れたっけ?
兵庫県在住なので見れるならば見に行ってみたいです。
見れたなら作品に登場の可能性もあります。
中途半端は説明で申し訳ない。
ただ名前だけでも知って欲しかったので書きました。
興味を持った方はググって調べてください。