今回からスラル編に突入です。
ただ、この魔王も残ってるのが設定ぐらいで詳しいことはわかりません。
ですので、このスラルは作者の妄想?の塊みたいな感じです。
読者様の予想したスラルとは、まったく違うモノの可能性があります。
それを含めたうえで、この作品を読んでください。
完成した魔王城。
無駄に大きい魔王のための部屋。
今そこには、大量の本が散らばっている。
それらの本の多くは、マギーホアが所有していた本でもある。
人間というメインプレイヤーの登場とともに、歴史というものが記されることになった。
今回の魔王は人間である。
力はないが、知識を多く持つ魔王となった。
そのため、今までの歴史に興味を持った。
今まで誰も気にしたことはなかった。
否、トロス以外というのが正しいだろう。
トロスは創造主のために世界を保つため、スラルに知識を与えたかった。
そのために、わざわざ文献を魔王に渡していった。
魔王にとって、文献や歴史というのは素晴らしいものだった。
自分には知識しかない。
それが今の魔王の考えであった。
しかし、調べていくうちに思った。
(私は死ぬのだろうか?)
こんな疑問を持ったのは、歴代の魔王の資料を見たからである。
人間という自分よりも、遥か遠い存在である歴代の魔王。
その全てが、寿命などではなく、他者に殺されている。
(死にたくない)
それが彼女の中に渦巻く感情となっていく。
もとが人間であるスラルは死というものに恐怖した。
死というものが怖くて仕方がない。
本来の魔王の考えではなく、人間のような思考だっただろう。
だから彼女は探す。
この世で最も強いとされる魔人を使って。
自分を最強にしてくれるような存在を。
自分を死なない様にしてくれる存在を。
求め、ただ飢え欲した。
自分自身で、あらゆる文献をあさり、読み、調べつくした。
そして、少しの希望を見つけた。
そこに何があるかは分からない。
だが、可能性があるならそれに縋り付く。
それほど、彼女のなかで死という言葉は重いものになっていた。
だが一人で行くのは危険である。
だいたい、これに記されていることだって、本当かどうか分からない。
だから、彼女は呼ぶ。
自分が最も信頼し、魔人の中において、最強だと言える人物を。
そして、到ってみせると誓う。
そこはとてもじゃないが、人間である彼女では届かない存在が居る場所。
彼女の創りし存在が君臨する隠された神殿。
「超神、プランナー・・・・・」
ひとり呟く彼女。
そこに希望があるからこそ、彼女は縋り付く。
ただそれだけを、追い求めて、ここまでたどり着いた。
本来、その存在には気付かない。
だが彼女は諦めなかった。
それは、もとが人間である彼女だからできたことかもしれない。
この世において、最も欲が深いのは、人間なのだから。
「何故分からないんですか!ケイブリス、世の中は力だけでは生きていけないんですよ!」
「魔王さま~、許してくれよ。
俺は考えるのは苦手なんだよ、そんなのトロスに任せてればいいじゃないですか」
身長てきには、あまり変わらないケイブリスとスラルが言い合う。
これについて簡単にいってしまうなら、教育だ。
スラルはケイブリスの頭の無さが許せないのだ。
ケイブリスは、もともと考える事をしない。
直観的に動き、行動する。
これがケイブリスのいい所であるが、欠点でもある。
スラルはスラルなりに、ケイブリスの心配をしているのだ。
この魔人の中で最弱の存在が死なない様に、生きる術を教えようとする。
しかし、ケイブリスにとってこれは邪魔でしかない。
いつもこれで生き抜いてきた。
それがケイブリスの強さである。
日々進化していく丸い者であるケイブリスに過去は存在していないのだ。
軽く言い争った後、スラルは、コホンと咳払いして魔人の方を向く。
「失礼、取り乱してしまいました。
今日もいつも通りでお願いします」
いつも通りというのは、探索のことだ。
「カミーラとメガラスは上空から。
ケイブリスは、そこらへん適当に走って探しなさい」
ケイブリスの扱いが別に酷いわけではない。
ただ、飛ぶことも文献を読むこともできない。
故に出来る事が限られているだけなのだ。
「トロスは私と此処に残ってください。話したいことがあります」
「・・・・・」
無言で退室するメガラス。
「・・・・・」
カミーラもなぜか、無言で退室する。
「了解、魔王様」
ケイブリスは勢いよく走りながら扉を開け放ち、飛び出していった。
扉が閉じられる。
静かになった空間で、スラルは静かに口を開く。
「トロス、あなたは、超神という存在を知っていますか?」
ここでトロスはyesと答える事もできた。
だがそれは後々面倒になると、トロスは考えていた。
だからこそ、嘘をつく。
「いえ、初耳ですね。その超神がなにか?」
冷静に、静かに、悟られぬように答える。
「・・・あなたには、私の望みを話しました。
超神とは、その願いを叶えられる存在なのです。
私は皆を使って、ある場所を探していたのです。
超神がすまう神殿。その場所だけを」
トロスはすこし考えるようにして、質問する。
「しかし、我々はそんな場所を見つけた覚えはありません。
その話をしたということは、手がかりでも見つけたのですか?」
スラルは笑顔になりながらそれに答える。
「やはり、あなたは頭がいいですね。
だからこそ、魔王から魔人トロスに命令をします」
一息ついたあと、スラルは真面目な顔をして告げた。
「私が示す場所にトロス単体で行ってもらいます。
そこで超神を見つけたなら成功だと言えるでしょう。
決して死なず、私の元に帰り、成果を報告してください」
トロスは頭を深く下げ、目の前にいる小さな魔王に返事を返す。
「了解しました、その命を全て完璧に仕上げて見せましょう」
スラルはそれを見て、微笑んだ。
「決して、死んではいけませんよ。
あなたは、誰のものでもない、私の魔人なのですから・・・」
そう言ってスラルはトロスを抱くように手を回す。
愛するように、その胸に顔を埋める。
「あなたも、メガラスも、カミーラも、ケイブリスも。
誰にも、譲れない私だけの魔人です」
「確かに魔人は魔王のものです。
しかし、そこまで言うと、なかなか欲張りですよ?」
そんな言葉にスラルは微笑んで返す。
トロスの胸から顔をあげながら、したから除きこむようにして答える。
「当たり前でしょう。なんせ私は、人間の魔王ですから」
欲が強いのは人間。
この世で最も欲があるとされる生物。
だが、だからこそ、それは強いのだろう。
なにかのために強くなり、戦う。
この魔王も同じなのだ。
自分が死にたくないから、という欲を持つが故にそれを求める。
独占欲もある。
ならばそれは、最弱にあらず。
この時も、そしてこれからも、
このスラルという魔王は歴代最弱なのではない。
歴代最強というわけでもない。
ただ一つだけ言うのならば、この魔王スラルは間違いなく。
人間のような魔王であり、魔人のことを考え、心配する。
本来魔王には無い、やさしさから来る、魅力という力を持つ魔王なのだ。
強さにおいての魅力はどこにでもある。
しかし、強いだけではなく、カリスマも必要になるだろう。
それに比べスラルは、ただやさしさの魅力を持つだけである。
それは、カリスマなどいらない。また別の力といえる。
それを持つスラルが最弱?ありえない。
ここからは、彼女のための物語なのだ。
それは誰にも邪魔できない。
たった500年という魔王にとっては短い生。
それをスラルはまだ知らない。
知る必要がどこにあるといのだろう。
今を生きる事が望みである彼女にとって、そんな事はどうでもいい。
それほどまでに、彼女は気高く、強いのだ。
誰も、彼女が生きた証を、邪魔できない。
それが神の暇つぶしのために生まれたからだと言っても関係ない。
大事な事は想いだ。
その心までは、たとえ神といえど、操ることなど出来やしないのだ。
あとがき
魔法少女系の可愛い感じで書くときもくるでしょう。
だけどスラルにだってカリスマっぽいなにかがあってもいいじゃないですか。
次の話しでは、まだガルティアとかケッセルリンクは出てきません。
ただ、この二人が魔人になった経緯がないんですよね。
ケッセルリンクはなんか、スラルにお願いされたから、
みたいなことは聞いたことあるんですけど、もう一人はいまいち分かりません。
ですので、かなり妄想が入った話しになるかもしれません。
なんか希望とかあったら、感想の方で意見を頂けたら、と思います。