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No.19334の一覧
[0] 『平穏』を求めて(転生・現実→魔法少女リリカルなのは)【鬱展開注意!】(旧名:魔に導かれ師)(チラ裏からきました)[ゐを](2010/06/19 23:10)
[2] 第一話 転生しちゃいました☆[ゐを](2010/06/19 22:56)
[3] 第二話 ギルマン一族[ゐを](2010/06/19 22:57)
[4] 第三話 魔導師ランク[ゐを](2010/06/19 22:54)
[5] 第四話 恐怖[ゐを](2010/06/19 22:56)
[6] 第五話 『死』[ゐを](2010/06/19 22:56)
[7] 第六話 誓い[ゐを](2010/06/19 22:58)
[8] 第七話 去らば[ゐを](2010/06/19 22:59)
[9] 第八話 竜滅姫[ゐを](2010/06/19 22:52)
[10] 第九話 アルザス[ゐを](2010/06/19 22:59)
[11] 第十話 乖離[ゐを](2010/06/19 23:00)
[12] 第十一話 願わくはこの平穏が続きますよう[ゐを](2010/06/19 23:00)
[13] 第十二話 ただ魔を滅ぼす騎士[ゐを](2010/06/19 23:01)
[14] 第十三話 温泉[ゐを](2010/06/19 23:01)
[15] 第十四話 祭りと嘆き[ゐを](2010/06/19 23:02)
[16] 第十五話 激闘Ⅰ[ゐを](2010/06/19 23:09)
[17] 第十六話 激闘Ⅱ[ゐを](2010/06/19 23:08)
[18] 第十七話 激闘Ⅲ[ゐを](2010/06/19 23:08)
[19] 第十八話 激闘Ⅳ[ゐを](2010/06/19 23:08)
[20] 第十九話 激闘Ⅴ[ゐを](2010/06/19 23:07)
[21] 第二十話 少女の悲痛な叫び[ゐを](2010/06/19 23:07)
[22] 第二十一話 復讐姫[ゐを](2010/06/19 23:06)
[23] 第二十二話 ああ、殺し誅し戮したい[ゐを](2010/06/19 23:06)
[24] 第二十三話 愛しき人/殺したい憎い者 竜使いの少女vs竜滅姫[ゐを](2010/06/19 23:06)
[25] 第二十四話 ただいま/おかえり[ゐを](2010/06/19 23:05)
[26] 第二十五話 説明[ゐを](2010/06/14 08:05)
[27] 第二十六話 激突! 最強の魔導師vs最強の戦闘機人[ゐを](2010/06/19 23:03)
[28] 第二十七話 ギルマン最強の防人[ゐを](2010/06/19 23:04)
[29] 第二十八話 事情聴取[ゐを](2010/06/19 23:04)
[30] 第二十九話 連れ子と婚約者[ゐを](2010/06/15 09:22)
[31] 第三十話 歌い手[ゐを](2010/06/16 14:37)
[32] 第三十一話 襲来[ゐを](2010/06/16 14:36)
[33] 第三十二話 世界終焉の演奏[ゐを](2010/06/16 14:57)
[34] 第三十三話 親[ゐを](2010/06/16 22:05)
[35] 第三十四話 ギルマン式タッチフット[ゐを](2010/06/16 22:46)
[36] 第三十五話 家族会議[ゐを](2010/06/18 00:59)
[37] 第三十六話 そうだ、弁当を届けよう[ゐを](2010/06/19 07:01)
[38] 第三十七話 金色の死神vs竜滅姫[ゐを](2010/06/18 21:30)
[39] 第三十八話 砂糖吐く魔王[ゐを](2010/06/19 23:37)
[40] 第三十九話 修吾vsオージン[ゐを](2010/06/20 12:44)
[41] 第四十話 自然保護隊[ゐを](2010/06/20 12:44)
[42] 第四十一話 奪取[ゐを](2010/06/20 14:09)
[45] 第四十二話 とある二等陸佐の悩み[ゐを](2010/06/20 17:58)
[47] 第四十三話 プレゼント (もう一度修正)[ゐを](2010/06/22 00:55)
[51] 第四十四話 ヨモギ[ゐを](2010/06/22 00:56)
[52] 第四十五話 復活[ゐを](2010/06/23 01:10)
[53] 第四十六話 出会い[ゐを](2010/06/23 07:45)
[54] 第四十七話 タッチ[ゐを](2010/06/24 20:32)
[55] 第四十八話 ニュースで見る六課[ゐを](2010/06/24 22:52)
[56] 第四十九話 やってくるのは[ゐを](2010/06/28 18:21)
[57] 第五十話 ガジェットvsフェンリール・ドラゴン[ゐを](2010/06/28 15:31)
[58] 第五十一話 機動六課ライトニング隊出動[ゐを](2010/06/28 18:20)
[59] 第五十二話 理不尽な到着[ゐを](2010/06/28 18:23)
[60] 第五十三話 十の召喚魔法陣[ゐを](2010/06/29 00:12)
[61] 第五十四話 剣の騎士vs竜滅姫[ゐを](2010/06/30 08:05)
[62] 第五十五話 凡人と才能[ゐを](2010/06/30 08:04)
[63] 第五十六話 背中はただ狭く弱く[ゐを](2010/06/30 21:18)
[64] 第五十七話 記憶[ゐを](2010/07/02 18:15)
[65] 第五十八話 傷つき倒れ[ゐを](2010/07/02 22:03)
[66] 第五十九話 いまだ未熟ゆえに[ゐを](2010/07/02 23:05)
[67] 第六十話 トリッパー同士[ゐを](2010/07/03 11:06)
[68] 第六十一話 教え導く者 教え抱える者[ゐを](2010/07/04 01:00)
[69] 第六十二話 復讐する者[ゐを](2010/07/04 08:06)
[70] 第六十三話 街中での出来事[ゐを](2010/07/05 15:11)
[71] 第六十四話 ある施設よりなくなりしもの[ゐを](2010/07/05 20:49)
[72] 第六十五話 お腰につけたきび団子[ゐを](2010/07/06 08:17)
[73] 第六十六話 百合?[ゐを](2010/07/07 00:43)
[74] 第六十七話 歌い手とママ[ゐを](2010/07/10 00:07)
[75] 第六十八話 ザイオン[ゐを](2010/07/07 21:32)
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[19334] 第十七話 激闘Ⅲ
Name: ゐを◆0c67e403 ID:83ff74d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/19 23:08
 数々の宝具をその手に生み出す魔術、それこそが投影。
 それを徹底的に極めたのが錬鉄の騎士。

 そして目の前にいるこの男は、その錬鉄の騎士と同じ能力を、持っている。




第十七話
 



 俺のとっておきのドラゴンバスター、二十六のディバインバスターをいとも簡単に防がれた。
 逃げ場がなく、一つ一つが必殺級の破壊力だったというのに。

 俺は素人だ。
 この能力はチートと呼んでもいいだろう。
 もしも俺じゃなくて別の奴がこの能力を持っていたらチートと呼ばれていただろう。

 でも俺は戦闘に関しては素人もいいところだ。
 だからこそこのチート同然のこの力を使いこなせない。

「ふん。非殺傷設定か。ぬるい。ぬるいぞ、貴様」

 ぬるい、てそんなことを言われても。
 俺は構成を弄るような真似はできない。
 というかどこをどう弄れば非殺傷設定になって殺傷設定になるかも分からないのだ。

 だから殺傷設定に切り替えようとすることすらできない。
 無理にしようとすればバランスが崩れるだけだ。

 だからぶっちゃけ丸暗記しているだけなので非殺傷設定にしかできないというのが正解だ。
 まあたとえ切り替えができたところで殺傷設定に切り替えることはないのだろうが。

 だがエミヤ風の男はその非殺傷設定というところだけを見て不機嫌気味になっている。
 なにがそんなに不機嫌というのか。

「その程度の覚悟で、武器を手に取るな。虫唾が走る」

 覚悟――だと!?

「自らの手を穢す覚悟もないくせに、人を殺す覚悟もないくせに、そんなもので戦場に出てくるとは。
 その程度の覚悟で戦いをするな、武器を取るな!!」

 自らの手を穢す覚悟もない、だって。

「非殺傷というふざけたものが人の覚悟を鈍らせる。非殺傷という代物があるからこそ、覚悟を穢れさせる!
 ああ、なんとふざけた玩具だ!!
 そんなものを使って戦おうなどと!」

 ふざ、けるな――

 覚悟なんて、ありわけないだろうが。

「あるわけ、ないだろうが」

 生き抜く覚悟はした。絶対に生きるって覚悟はした。
 死にたくないって覚悟はした。死なないって覚悟もした。

 でも人を殺す覚悟なんてしなかった、自らが死ぬ覚悟なんて真逆のものだ。

 非殺傷設定は確かに人を傷つける危機感を薄れされるものだ。
 そのせいで比較的気軽に使えるようになった。

 ああ、確かにそれは覚悟を鈍らせるもんだ。

 でも、いいだろうが。それで。
 もともと俺は覚悟するつもりなんてなかったんだ。
 
 俺は平穏に行きたい、ただそれだけだったから。
 人を殺す覚悟なんてしたくなかった。そんなことをする必要のある世界に行きたくはなかった。
 ただ、ただ平穏に暮らせる、そんな世界でずっといたかった。

 ――でも世界がそれを許さなかった。

 ――いや、下衆な奴らがそれを許してはくれなかった。

 神による≪天から遣わす転生車輪リンカーネイト・トラック≫の余波によって殺され、そして死んだ。

 第二の人生であるギルマン一族だった頃には、ファナムを奪い取るために俺自身を生贄にして、ゾークはフェンリール・ドラゴンを俺に襲わせて、ただ抵抗することすらさせずに俺は殺され喰われた。

 フェンリール・ドラゴンになって殺さなければ生きられない時もあった。
 あの時は特に気にしなかった。
 ギルマンの一族で狩りには一時参加していたこともあったのだから。

 覚悟していなかった。覚悟なんてできるわけがなかった。
 覚悟するつもりもなかった。覚悟なんてしたくもなかった。

 動物を狩り、それをいただく覚悟だけはあった。それをいただきますで、ただ感謝することで許してもらおうと思った。

 でも人を殺す覚悟だけは俺にはできなかった。
 いや、そもそもからして人を殺す覚悟なんてする必要は俺になかったんだから。
 
 なのにどうしてこんな理不尽に巻き込まれる。
 
 俺の方から首を突っ込んでしまったとはいえ、なんで――

「覚悟する、つもりなんて、ないん、だから」
「そんな、その程度の覚悟で武器をとるのか、きさ――」
「覚悟させてくれるくれない以前に、殺そうとするお前らになにが分かるんだ!!」

 いつもいつも、俺は平穏を望んでいるのに! 
 俺はただ幸せに暮らしたいだけなのに。
 なんでいつもそれを邪魔するんだ? 俺がなにかいけないことをしたのか?

 人を殺す覚悟をするつもりなんて毛頭ない。
 なぜなら人を殺すことを日常にするわけではないからだ。いや、もっと端的にいえば人殺しなんてしたくない。

 でも周りはそんな俺を問答無用に襲ってくる。
 神に殺され、ドラゴンに殺され――

 だから俺は武器を手にとった。
 覚悟なんていない、そんな覚悟のない手だけど、俺には抵抗するだけの力がある。
 だから俺は抵抗するだけの、その程度の力が欲しくて――

「俺が覚悟すんのはいつも! 俺と俺の大切な人を守り救う覚悟だけだ!!」

 俺が常に目を向けるのはたった一。
 他の九のことなんて気にもしない。

 だって他の九は、他の奴らが救い守るべきものなんだから。

 俺が気にかけるのは俺と、俺の大切な人と、余裕があれば目の前に広がる光景くらいだ。

「だから!! 来るな、来るな!
 俺の日常に、お前らなんて、来るな! 
 俺の平穏を、壊すなぁぁあぁぁぁ!!」

 俺は叫び声を張り上がる。
 その叫びは誰にとっての叫びか。

 目の前のエミヤ風の男に言ったわけでは決してなかった。
 その叫びは神に対してか、竜に対してか、それともゾークに対してか。
 それでも暴走ともいうべき、その叫びは。

「天を覆え!! アクセルシュータ―、複数展開!!
 崩れ堕ちる天へヴンズフォール!!」

 その魔法は俺のとっておきの魔法が一つ。
 
 ドラゴンバスターをも越える大魔法の発動。
 
 あらゆる回避すら許さない、破滅の一撃。

 俺とキャロとフリードの上にラウンドシールドを展開させる。
 そのシールドならばこれから発動する魔法攻撃に耐えきれる。

 崩れ落ちる天ヘヴンズフォール、俺のとっておきが一つ。
 空を覆い尽くすアクセルシュータ―。ありとあらゆる対比物すら許さない、空を翠に染め上げるほどのスフィアの数。
 空にあるのは翠のシュータ―のみ。それ以外を見ることすら、許されない。
 それはあまりにも圧倒的で、遠近感すら奪わせる。

「なっ!?」

 さすがのエミヤ風の男はこれに驚いたようだ。
 これで押し潰す。問答無用で押し潰す。抵抗する暇すら与えず押し潰す。

 ただただ物量で押し潰す、絶対的な魔力で押し潰す。
 それ以外にこの魔法の使用方法はなく。

 防御も回避も問答無用で――

「くっ! I am the bone of my sowrd体は剣でできている

 だがエミヤ風の男は呪文を唱える。
 そして作り出すは天空に、天に向かって投影する。

 そこにある7枚の花弁、いや――
熾天覆う七つの円環ロー・アイアス

 それはあらゆる投擲物から身を守るための盾。
 いかなるものを貫く絶対の投擲からその身を守った、絶対防壁の究極の盾。

 投擲物に対して無敵の防御を誇る盾。
 だが――

「関係、ない」

 問答無用で叩き壊す。
 幾重ものシュータ―が問答無用に叩き壊す。
 ひとつひとつは弱くとも、数があまりにも膨大で、だから数で押し潰す。
 それだけでいい。

 本来叩き壊すのに千ものシュータ―が必要なら万のシュータ―を用意しよう。
 もしも億のシュータ―が必要というのなら兆のシュータ―でぶち壊すまでだ。

 自分が奴に勝っているのは神から奪った絶対無比の魔力とそれを加工する竜の能力。
 ただそれだけが奴に勝っている点。

 一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚――

 問答無用で叩き壊れていく。
 さあ後、一枚だ! そう思っていた時だ。

熾天覆う七つの円環ロー・アイアス

 再び熾天覆う七つの円環ロー・アイアスが展開される。

 え?

 七枚目を壊したと思ったらまた現れた無敵の盾。
 なんでまだ、それがあるんだ?

「ふん。所詮貴様が持っているのはチートか。だがな、覚悟のない貴様にそれは相応しくない。相応に散れ!
 神にもらった力を見せびらかして優越感に浸っている貴様なぞ、怖くもないわ!!」

 呆然としていた。
 八枚目、九枚目、十枚目、十一枚目、十二枚目、十三枚目、十四ま――
 
 ここで止まってしまった。
 もう、アクセルシュータ―は空にない。
 これ以上はもうない。

 でも――まだ魔力は引き出せる。
 早く展開導入 ダウンロードして、それでまた 崩れ堕ちる天ヘヴンズフォールを使えば――

 俺はこういった予想外のことに弱かった。
 英霊エミヤは自分があの熾天覆う七つの円環ロー・アイアスが張っている時はもう一つ熾天覆う七つの円環ロー・アイアスなんて張れなかった。
 だからてっきりこいつもそうなのだと先入観で思ってしまっていた。

 チートを舐めていた。
 コイツも転生者なんだ。そのチートを舐めていたんだ。
 俺自身、そのチートを持っているのに。その俺自身がそのチートを舐めていたんだ。

 俺は本当に戦いについて素人もいいところだ。
 これで決まった、と思ったところで決まらない。
 予想外のことが起こればパニックが起こってしまう。
 こんなので戦いなんてできるわけがなく、その隙をつかれる――

「干将・莫耶、連続投影。
 疾く死ね」
「え?」

 迫るのは十二の黒白の夫婦剣。
 一気に六セットもの投影を完成させたのか、この男は。

 そして舞うのは黒白、そして俺の周りを舞って――

 俺は咄嗟にプロテクションを張ろうとした、でも――

壊れた幻想ブロークン・ファンタズム

 十二の宝具は同時爆破される。

 本来宝具とは膨大な魔力の圧縮・集積体。それを己の意思で壊すことによって魔力の奔流を引き起こし、同時に大破壊を伴う爆発を発生させる。
 
 その破壊は凄まじく、十二の 壊れた幻想ブロークン・ファンタズムは俺を襲った。




Side-Caro

 何が起こったのか、分からなかった。
 突然あの紅い外套を纏った人が私を見てオージンさんに怒りの顔を見せた。
 私はあんな人知らない。
 
 でも私はあの人が嫌いだ。
 だって私は幸せだもん。オージンさんとフリードと一緒にいる時間が。

 なのにあの人は私のためとか言っておきながらオージンさんを殺そうとする。
 おかしな矛盾だ。私のために、私の幸せを壊そうとするだなんて。

 オージンさんのドラゴンバスターでさえも簡単に避け、しかもたった一つの槍で無効化するだなんて、あまりにも凄すぎる。
 オージンさんのバスターはたった一つでも並のバスターでないのに。

 でもオージンさんにはもう一つのとっておきがある。
 あれがある以上、オージンさんの攻撃を防げる術なんてない。

 無限に天を覆う究極の必殺技。
 でもその必殺技ですら、いとも簡単に無効化されてしまった。
 
 あの紅い外套を纏った人はたった2つの盾を召喚するだけであの数のアクセルシューターを、崩れ堕ちる天 ヘヴンズフォールを受け切ってしまうだなんて。
 私はその光景を見た時、なんてありえないと、そう思ってしまったのだ。

 でも十二個の、黒と白の短剣がオージンさんの周りに舞って、次の瞬間――

 ――その全てが爆発してしまった。

 なんで? どうして? オージンさん、オージンさん、オージンさん、オー――

「おとうさああああああああああああああああああンッッッ!!」
 
 私の悲痛な叫びは、空に木霊した。

「お父さん! お父さん! お父さん! お父さん!」

 必死になって爆発したところへ行こうとする。
 オージンさんならきっと、きっと無事だ。無事のはずなんだ!
 
 でもそう思っても頭ではあの爆発ではもう死んでいると判断してしまう。
 憎い、そんなことを考えるな。

 私のケリュケイオンの回復魔法で直すんだ。
 あの人は回復魔法が苦手だった。
 いつも回復しようとすると過剰回復のせいで逆に体を痛めてしまうくらい、回復魔法が苦手な人だった。
 だから私が必死になって回復魔法を覚えた。その成果をここで見せるんだ!

 オージンさんなら、お父さんなら、きっと大丈夫だから!
 私が必死になって治せば、回復魔法を施せばきっと大丈夫だから!
 だから私はすぐにオージンさんの元へと向かう。

 でも――

「君、向こうは危ないよ。
 さあここから離れるんだ。僕と来るがいい。
 大丈夫、君の心を弄んでいた外道は死んだ。だから――」

 うるさい、うるさい、うるさい!
 早く、早く、早くいかないと!!
 
 でも紅い外套を着た人は私を止める。
 私じゃこの人には敵わない。力の差じゃ簡単に止められる。
 
 それでも、それでも、それでも私はお父さんを――

 そうやって爆発してまだ煙が舞っているところから――声が響く。

「GUOOOOO……」
 
 それは唸り声。
 響くのは獣の息遣い。

 私はこの声を知っている、この息遣いを知っている。
 私も、フリードも、知っている。

「お父さん……」
「キュウ」

 知っている。この声は、この息遣いは。
 だから立ち上がって、お願い、早く、その姿を、見せて。

「お父さぁぁぁぁンッ!!」
「キュクーーーーーー!!」
「GUAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
「なっ!?」

 現れたのは一体の獣の竜。
 あらゆるものを粉砕する凶悪なまでの獣の竜。
 全てを憎み、全てを喰らい、ただただ破壊することのみを考える獣の竜。
 
 そんなわけがない。
 ただ生きているだけだ。そのためだけに獣の竜は生きる。そのためだけに破壊を起こす。
 
 でも目の前にいるのはドラゴン。
 最強の、フェンリール・ドラゴンが、姿を顕現する。

「GAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 オージン、その身に食われしはフェンリール・ドラゴン。
 そして自らがそのフェンリールとなり、ドラゴンとなり、ただ敵を喰らいつく。


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