オージンがヤンデレに挟まれて四苦八苦しながら、事情聴取している時。
とある管理世界では犯罪者が蠢いていた。
第二十六話
Side-Shugo
全くこんな面倒な任務を任せやがって、管理局のやつ。
まあいいさ。
なんせ今回は大物の魔導師。
へ、どうせ俺くらいの魔導師でないとどうにもならないだろーな。
さっさとコイツを片づけていくとするか。
どうにも遅かったキャロ保護も上手くいった、て情報も入ったし。
早速孤独で悲しんでいるキャロちゃんを、フェイトと一緒に慰めてやろうかな。
フェイトが母親で、俺が父親。くくっ、「お父さーん」て慕ってくれるんだろうな。
おっとそうなるとなのはとはやて、それにヴォルケンたちの嫉妬が怖いぜ。
まあ皆の愛を受け止めてやるからさ。ははっ。
おっとそれにファナムちゃんも早めに攻略しとかないとな。
皆を幸せにするのも辛いぜ。まあそれこそが俺の義務だろうけど。
ぶっちゃけエリオはどーでもいー。
さてと、さっさと片付けてやるとするかな。
そうして俺はカリバーンをセットアップしながら、その目的の犯罪魔導師とやらが暴れている場所に向かう。
Sランク犯罪魔導師フック・バルボッサ。
魔力変換資質『水』の使い手らしく、数々の犯罪魔導師を手下にしているとか。
だがたとえどれほど束になろうと主人公の俺に勝てるわけがねぇけどな。
さあ男なんざとっとと捕まえてとっとと管理局に戻ってやるぜ!
そう思って、フックとその仲間たちが暴れている場所に現れると――
「や、やめ、やめてく――」
「あなたたちはそうやって止めたことなどないだろう。
大丈夫。死ぬことはない。ただお前たちを狂わせていたものを取り除くだけだ」
そう言って、その女の人はある本を出して――
『おっしゃー、行くよー。ごう、だつ!』
「う、うぎゃあああああああ!!」
すると彼女が取りだしたのは、リンカーコア。
そしてフックから取り出したリンカーコアを、本の中へと納める。
『うわ、まず。リナスー、とっとと食べなよ』
「ああ、分かっている」
そしてまた本にしまったリンカーコアを、リナス自信が取りだして、それを自分の体内に入れ込んでいく。
信じられない光景だった。
ありゃあ闇の書の蒐集よりも酷い光景に見えるんじゃないか。
でもあんなフック野郎がどうなったところでなんの問題もありゃしねぇ。
ただ目の前にいるのが美少女! これが問題だ。
多分ありゃあ、リンカーコア消失事件の犯人だ!
まさかその事件の犯人がこんな美少女だなんて。
こりゃあイベント発生だな。
そんでもって仲良くなって×××やって、グフフ、こりゃあ久々に張りきってきたぞー。
「管理局員藤村修吾一等空尉だ!
君にはリンカーコア強奪事件の容疑者としてついてきてもらおう!」
さ~、どうするかな?
まあ抵抗するなら抵抗してみなよ。
そしたら俺に強さを見せつけて~、そんでもって~。
スーパー魔法攻撃→「キャー、すごーい、惚れるー。子宮がジンジン来ちゃうー」→俺ウハウハ!
来た! この展開っきゃねー!
「……管理局員か。断る。私はただ返り討ちにしただけだ」
「それでもだ! 断るというなら実力行使しかないな!」
さあ! 見せてやるぜ!
俺の魔法を見て惚れな!
そこにいるのは2人の魔導師。
他にも魔導師は”いた”。だがそれは既に過去のものであって。
リンカーコアのないS級次元犯罪者はもう既に魔導師ではなかった。
管理局員として名高い藤村修吾。
彼はまさに管理局のエースとしての存在だ。
そしておそらくは管理局最強の男としても有名だろう。
きっと彼に勝る魔導師はいるかどうか、怪しいとも言えるかもしれない。
どれほど最悪の性格であろうとも、その実力だけは確かといえるのだから。
『うわ、なに、コイツ。なんか気持ち悪い。
テンプレ、て感じするよねー』
「なに言ってるのか分からない、へヴン。まるでドクターみたい」
本型デバイスのヘルオアへヴンは融合型デバイス。
だがまだ小人状態の姿を見せてはおらず、今はただの本型としてその姿を持っている。
ただヘルオアへヴンは彼の本質を見ただけで見破っている。
『えー、ドクターみたいじゃないよー。ドクターはあれじゃん。
もっと深い人間だよー、私はあんな変人じゃないよー』
だがリナスのセリフにへヴンは抗議し始める。
因みにヘルオアへヴンには2つの管制人格が存在する。
そして片方の管制人格がへヴン、通常の管制人格としてそこに存在している。
だがとにかく目の前にいるのは敵。それが分かっただけでいい。
敵であり、そして魔導師であるのならば、狩るだけだ。
「行くぞ! カリバーン!」
『Ja!』
そしてカリバーンで攻撃を放とうとする。
纏わせるのは、電気!
「雷神剣!!」
修吾は電気を纏わせた魔力斬を放つ。
SSSランクの魔導師が魔力変換して纏わせた雷撃の斬撃は並の防御魔法では防ぎきれず、かといって避けることもままならない。
さあどうす――
「ならば、押し切る」
「なっ!?」
「アーシア、力を貸してください。ディステニー」
『はいはーい。デバイスチェンジ、ディステニー!』
すると本は突然としてその形を変え、そして戦斧へとその形状を変えていく。
それはフォルムチェンジなどといったような生易しい変形ではなく、寧ろデバイス自体が入れ替わったかのような感じがする。
そしてそれは正解。
入れ替わるのは、かつての仲間が使っていた戦斧。
そして雷神剣と立ち向かうのは――
「はぁ!」
「な!」
雷神剣相手に、斧で立ち向かう。
どういうわけか、武器がデスティニーになったことに戸惑っている。
しかもその形はバルディッシュにそっくりである。
「ど、どういてお前がバルディッシュを――」
「答える必要は、ない」
さすがの修吾も焦っている。
だがリナスはそんな修吾の焦りという隙を逃しなどしない。
ただこのまま戦斧にて圧倒するのみ。
だがさすがの修吾といえど、いつまでも圧倒されるわけにはいかない。
すると一旦彼は距離をとり、纏わせる魔力を変化させる。
「チィ! 勝ったら話を聞くとするか! まさかプロジェクトFでフェイトの遺伝子でも組み込まれたのか!?
いちいち考えても埒が明かない!
行くぞ、カリバーン、炎神剣!」
纏いし魔力は全てを焼き尽くす紅蓮の炎。
修吾が持っている希少技能として、魔力変換資質『電気』『炎熱』『氷結』の三つが存在する。
それはつまり相手に対して三つの能力を使い分けて戦うことができるというわけだ。
『電気』によって相手の防御を抜くか、それとも『炎熱』のパワーで焼くか、それとも『氷結』で相手の妨害を施すか。
そのどれもが修吾の気分次第で使える。
なんとも厄介な能力なのである。
だがそんなことはリナスには関係ない。
なぜならばリナスは『リリカルなのはStrikers最強の魔導師型戦闘機人』略して、リナス・サノマウンなのだから。
たとえ相手がSSSランクだろうと、三つの魔力変換資質を持っていようと。
そんなものは彼女にはなんの問題などありはしないのだ。
そして相手が炎熱を以てして向かってくるというのならば――
「我が友アルサムよ。汝の力を借りましょう。
ディステニー、デバイスチェンジ」
そして再びバルディッシュの形態もまたその姿を変えていく。
戦斧の姿より、新たなデバイスの姿へと。
『Yes,device change! Mode [Frostine]』
「フロスティン」
その手にあるのは冷気を纏いし剣。
その剣に切り裂けぬものなどありはしない、冷徹なる刃。
ならば裂くのは当然。
たとえ相手が炎熱だろうとも、この剣に宿りし冷気が炎熱ごと切り裂くのみ。
かつてのアルハザード第八騎士アルサムの愛魔導器≪フロスティン≫。
それはいかなるものをも切り裂く凍気の刃。
修吾の炎神剣に対抗するために、彼女が魂よりデバイスを具現化したものはフロスティンという名の剣型デバイスであったのだ。
「ま、まるで、それじゃあレヴァンティンじゃ――」
「凍てつけ、蒼穹一閃」
それは蒼穹のような輝きを以てして凍気を生み出す剣。
その斬撃はあらゆるものを凍てつかせる一撃となる!
「ぐ、グアアアアア!!」
リナスの斬撃による一撃が、修吾の体を凍てつかせ、凍りつかせる。
だがすぐさまに修吾は魔力変換資質『炎熱』によってその冷気をすぐさまに焼き尽くし、凍結を免れる。
「ま、まさか、コイツ、トリッパーじゃ――!」
「ほう、ドクターを知っているのか。どこで知ったかは知らんが、まあ隠すことでもない。
別段話すことでもないがな。だが――」
リナスは戦闘機人だ。
戦闘機人だからこそ、彼女は作られた存在である。
ゆえに彼女を作ったのは『オリッシュ・トリッパー』という男。
リナスを作ったコンセプトは『リリカルなのはStrikers最強の魔導師型戦闘機人』であり、そして実際に作られたのが、リナス・サノマウンなのである。
ゆえにこそたとえ相手がSSSランク魔導師であろうと、リナスには敵うまい。
そういう風に作られているのだから――
だが修吾とてただのSSSランクではない、彼は――オリ主なのであり、トリッパー、なのだから。
「ふざけるなぁぁぁ! 喰らえ、トライアングル――」
「だからこそ、潰させてもらおう。
イルタ。力を貸してもらうぞ。師である私に、その力を貸してくれ」
魔力を集めようとする矢先に、リナスもまたデバイスの形状を再び変える。
それはきっと、なにをも破壊する、最強の一撃であって――
「フロスティン、デバイスチェンジ、ヘルツォクエアーデ」
『Yes,device change! Mode [Herzog Erde]』
全てを凍てつかせる剣はその形を変えていく。
それは一撃絶壊、何もかもを問答無用に叩き壊していく究極の破壊の権化。
それは槌、なにもかもを絶対破壊する、大地の公爵。
そしてその槌より放たれる最強の破壊魔法が、撃たれる!!
「絶対破壊、テラント・エアート・ベーベン!!」
「アースブレイカー!!」
槌型デバイス・ヘルツォクエアーデの槌はドンドン巨大化していき――
そして三つの魔力が同時に募っていき――
――瞬間、世界より音が消え、その世界では大地震が発生した。