※これは『もしもヤムチャさんがハンター世界を訪れたら?』を描いた世界観融合型のクロスSSです
※ここではヒソカ最強説が採用されているため、本気ヒソカ(HISOKA)は原作描写以上に強く設定されています。
※作者の都合により、初期と後期で作風(文章・改行など)が大きく変化しています。あらかじめご了承ください。
***
ザバン市にある小さな定食屋の前に一人の男が立っていた。
「ここがハンター試験会場だな。」
山吹色の胴着。
キリッと刈り上げた短髪。
ダサカッコいい頬の十字傷。
ヤムチャさんである!
「真実の愛への登竜門か。待ってろよオレのかわいこちゃん! すぐにハンターになって戻ってやるぜ!」
「いらっしゃいませ~」
「ご注文は?」
「ステーキ定食、弱火でじっくり」
「お客さん奥の部屋へどうぞー」
「おっ、うまそーだな」
案内された個室でステーキにパクつくこと数分。
チーン!
ヤムチャの乗ったエレベーターが地下100階の地下道へと到着した!
「よっしゃ、いくか!」
先に会場入りしていた連中の視線がヤムチャに集まる。
(よーし、流石に悟空やベジータみたいにバケモノじみた奴はいないな。これならオレでもなんとかなりそうだ)
試験会場までこれただけあってある程度の達人ぞろいのようだがせいぜいがチャパ王クラス。
ヤムチャの見たところ、自分よりも強そうな奴はいなかった。
だけどむさい男ばっかりで女の子は一人もいない。ヤムチャはかなしかった。
「番号札です」
「どうも、って42番かよ。縁起わりーな」
ヤムチャはちっさい豆男のマーメンから番号の書かれたプレートをもらい、周りにならって胸につけた。
「よう、新人さんだな」
「ん?」
「オレはトンパ。よろしく」
「ヤムチャだ」
16番のプレートをつけたおっさんが話しかけてくる。
(けっ、豚鼻のおっさんが話しかけてきやがって何の用だよ)
手を差し出してくるのでヤムチャは仕方なく握手をした。
ワイルドな外見とは裏腹にヤムチャさんは紳士なのだ。
「アンタからは他の奴にはないオーラを感じるぜ。」
「そ、そうか? いやー分かる奴には分かるかーオレの場合隠しててもにじみ出ちゃうんだよなあ!」
「お近づきのしるしだ。一杯飲みなよ」
「おう! トンパだったか? お前なかなか見る目があるじゃないか!」
「お互いの健闘を祈って乾杯!」
トンパとヤムチャはぐびぐびごっくんとジュースを飲み干した。
「じゃーな! 試験がんばれよ!」
「ジュースありがとな!」
にこやかに笑ってトンパが離れた10秒後。
ぐぎゅるるぅぅぅ!
「はううぅぅぅおお!?」
ヤムチャさんの腹がエマージェンシーコールを奏でた。
「なんだ!? 急に腹がっ! く、くそっ! ト、トイレは!?」
そもそも地下にはトイレなんて存在しない。出口はここに下りてきたエレベーターの一か所だけだ。
「な、なに? え、えれべーたーが1階にもどっているだとう!?」
下りてくるのを待つ余裕はない。八方ふさがりだった。
「うわぁぁぁあああ!!」
ざんねん! やむちゃのぼうけんはここでおわってしまった!
「申し訳ないっ!」
「いいよ、そんなに謝らなくても」
トンパはゴンたちに謝っていた。
(くそっ間抜けなボンボンかと思ったらとんだ野生児だぜ)
トンパは遅く会場入りしたゴン、レオリオ、クラピカの新人トリオにも強力な下剤入りのジュースを飲ませようとしたが
最初にジュースを口に含んだこの黒髪ツンツンの野生児が味が変だといいだしたせいでジュースを飲ませることができなかった。
(結局、下剤入りジュースを飲んだのは42番の変な胴着の奴と99番のガキだけか)
人からもらった飲食物は受け付けないという忍者294番ハンゾー。
持っていたノートパソコンを使って自分が新人つぶしだと見抜いた187番ニコル。
話しかけるのも憚られる顔面針男の301番ギタラクル。
(今年の新人はベテラン並みに癖のあるのがそろってやがるな)
「トンパさーん! さっきのジュースもっとくれる?」
「あ、ああいいぜ」
トンパは話しかけてきた99番の少年、キルアに、2本目、3本目と下剤入りジュースを渡す。
(おかしいな。一本目の下剤はもうとっくに効いているはずなんだが)
「心配?」
「え?」
「オレなら平気だよ、訓練してるから。毒じゃ死なない。」
(こいつ、オレが何の薬を盛ったかまではわからないのに平気で飲んだってのか!?)
結局、キルアはトンパからもらった5本目の下剤入りジュースを飲んでから悠々と去って行った。
「ちっ! つぶせたのは一人だけか、 今年の新人はとんでもねーな。」
(だが、それだけつぶしがいがあるってもんだ)
ジリリリリリリリリリ!
「ただ今をもって受付時間を終了いたします」
地下通路の脇に立っていたカールひげの黒服紳士サトツがベルを止める。
「これよりハンター試験を開始いたします」
サトツは試験ではケガをしたり死んだりする可能性があると警告し、覚悟の無いものは辞退するよう促すが、
誰一人帰ろうとはしなかった。
「承知しました。
第一次試験、404名全員参加ですね」
ここに第287回ハンター試験が開幕した。
第一次試験の課題は二次試験会場まで試験官について移動することだ。
「なるほどな」
「変なテストだね」
「さしずめ、持久力試験ってとこか」
一次試験担当官のサトツに先導されて、会場に集まった403名の受験生たちが地下通路を走っていく。
「ねぇ、きみ、年いくつ?」
「もうすぐ12歳!」
「……ふーん。やっぱ俺も走ろっと」
キルアは持っていたスケボーを使うのをやめて、ゴンと一緒に併走しはじめた。
「オレ、キルア」
「オレはゴン!」
ゴンとキルアが同い年ということで親交を深めていたころ、
(ん? これは……)
試験者たちを二次試験会場へと案内していたサトツは鼻をつく異臭に気がついた。
「かぁぁあああ、めえぇぇええ!」
「はぁああ、めぇええ!」
前方から反響してくる気合のこもった声。
下半身を露出した受験番号42番、ヤムチャさんが地下通路の端で脱糞していた。
地上のトイレには間に合わないことを悟ったヤムチャさんは瞬時の判断で通路の奥へと超高速で移動!
人気のないところで排便に勤しんでいたのである!
「波ぁああああ!!」
ヤムチャさんのお尻からぷりぷりっとひねり出されたゲーリーくんの臭気が通路に充満する。
サトツは眉をしかめながらも余裕でスルー。
さらにヤムチャさんのうずくまっているところを後続のハンター試験受験生たち(403人)がどかどかと通過していく。
「うわっ、なんだあいつ!」
「臭っ!」
「なんなんだよこの匂いは!」
「あれも受験生なのか!?」
ざわざわ、ざわざわ。
駆け抜ける受験生たちの話題の中心はヤムチャだ。とんだ羞恥プレイだった。
(あの42番、見ないと思ったら上にいかないでこんなところで糞してたのかよ)
興奮のあまり、トンパの身体から汗が噴き出した。
自分の仕掛けたことの結果とはいえ、あまりにショッキングな光景だ。
(やっぱり今年の新人は一筋縄ではいかないぜ)
ヤムチャとトンパの視線が交差する。
苦痛と絶望にゆがんだヤムチャの表情を見ると、トンパは満ち足りた優しい笑みを浮かべた。
親指、びしぃっ!!!
「お前のことは忘れないぜ!」
「だ、騙しやがったなこのブタッパナァ!!」
ごろごろごろ。
「お、おごぉぉおおお」
説明しよう!
キルアのような耐性を持たない一般人(ヤムチャ)がトンパの用意した超強力下剤を飲むと、下痢と腹痛で3日間は動けなくなるのだ!
(((あんな恥をさらしたら、もう来年は試験を受けにこれないだろうな。……来るなよ! もう絶対に来るなよ!!)))
傷つき倒れたヤムチャさんの姿が、多くの受験生たちの心を一つにしていた。
毎年、数多くの将来有望な若者たちが
新人つぶしのトンパによって再起不能にされていく。
ハンター試験には魔物がすんでいるのだ。
「ハンター第一次試験
10km地点通過
脱落者1名(試験開始の6時間前)」
(^o^) トンパのジュースに引っ掛かる間抜けなルーキーの話が書きたかった。反省は(以下略)