4次試験開始から一週間が経過した。
『ただ今をもちまして第4次試験は終了となります。
受験生の皆さんはすみやかにスタート地点へお戻りください』
ゼビル島に降り立った迎えの飛行船から、試験終了のアナウンスが流れている。
『これより一時間を期間猶予時間とさせていただきます。
それまでに戻られない方はすべて不合格とみなしますのでご注意ください。
なおスタート地点へ到着した後のプレートの移動は無効です。
確認され次第失格となりますのでご注意ください』
ハンター協会からのアナウンスに応じて
6点分のプレートを集めた受験生たちが集合場所に続々と姿をあらわした。
プロハンターを父に持つ野生児 ゴン。
天才少年 キルア。
緋の目を持つクルタ族の生き残り クラピカ。
気は優しくて力持ち、医者志望の レオリオ。
雲隠れ流の上忍 ハンゾー。
森の狩人にして弓の名手 ポックル。
質実剛健の武道家 ボドロ。
謎の顔面針男 ギタラクル。
世界最強のウ○コ野郎 ヤムチャ。
『第4次試験
プレート争奪サバイバル 合格者は9名!
合格者はネテロ会長の担当する最終試験へ!!』
・・・
ハンター協会の所有する飛行船内、その第一応接室。
ここでは最終試験に先駆けて、ハンター試験の最高責任者、ネテロ会長による面談が行われようとしていた。
「42番のヤムチャです」
「よく来たの。まあ座りなされ」
「はっ。失礼いたします」
面談の場となる第一応接室にはタタミに座布団、掛け軸や生け花といったジャポン風の内装が施されていた。
ふすまを開いて入室したヤムチャさんは、ネテロ会長にすすめられるまま座布団に腰を下ろす。
「最終試験の参考にちょいと質問させてもらうだけなんでな。
かたくるしくすることはないぞ」
「はい」
ヤムチャさんは神妙な面持ちでうなずいた。
「まず、なぜハンターになりたいのかな」
「就職先としてもっとも好待遇だったからです。
国境をフリーパスで通過できるようになる特典が魅力的でした」
(`・ω・´)ノ
「……なるほど。
おぬし以外の8人の中で今一番注目しているのは?」
「403番のレオリオと405番のゴンですね。あいつら才能ありますよ」
「では最後の質問じゃ。
8人の中で今一番戦いたくないのは?」
「特にはいません」
「ふむ、質問は以上じゃ。さがってよいぞよ」
「では失礼します。ありがとうございました」
一礼して立ち上がり、ヤムチャさんは落ち着いた様子で退室していった。
「ほっほっほ。いまどき珍しい礼儀正しい好青年じゃの」
(少々上から目線なのが気になるが、あまり裏表のない人間のようだの)
ネテロは好々爺とした笑みを浮かべると、手元の資料に目を落とす。
『非常に強力な戦闘系の念能力者。
出身地は不明だがジャポンに縁のある人物と推測される。
身体能力には眼を瞠るものがあるが、品性下劣で注意力に欠ける』
トンパごときにはめられて脱糞事件を起こしたこと、
脳筋な行動で数々の破壊行為を繰り返していることから
サトツ・メンチ・リッポーら試験官からのヤムチャさんに対する評判はあまりよろしくない。
だが…
(以前見かけた時よりも明らかに強くなっておる。
ちゅーか、あいつワシより強いんじゃね?)
・・・
ネテロ会長による面談はトントン拍子に進んでいった。
質問内容はハンターになりたい理由、今一番注目している人物、今一番戦いたくない人物の3点である。
「ハンターになって親父に会いに行くんだ!」
「42番のヤムチャさん。すごい人だと思う」
「うーん、42・99・294・403・404……ダメだ。多過ぎて選べないよ」
「オレは医者志望だ。そのためには先立つものが必要なんだよ」
「405番だな。ここまでずっと一緒にがんばってきたし、このまま合格してほしいと思うぜ」
「42番。ありゃバケモンだ。戦っても絶対に勝てねェだろうさ」
405番ゴン、403番レオリオ、
「A級賞金首の幻影旅団を捕まえるため、賞金首ハンターを志望している」
「42番だ。彼は我々とはどこか異質な存在であるように思える」
「理由があればだれとでも戦うし、なければ誰とも戦いたくはない」
「べつになりたいわけじゃないよ。ためしに受けてみただけ」
「ゴンだね。405番のさ、同い年だし」
「53番かな。戦ってもあんまし面白そうじゃないし」
「隠者の書を探すためにハンターライセンスが欲しい。一般人じゃ入れない国にあるらしいんでな」
「99番だな。実力はあるにせよ、クソ生意気なガキだぜ」
「42番のヤムチャだ。とぼけた顔してやがるけどな、ありゃ敵に回したらダントツでヤバいぜ。」
404番クラピカ、99番キルア、294番ハンゾー、
「オレは幻獣ハンター志望だ。世界中をまわって、歴史に名を残すような仕事がしたい」
「注目しているのは404番だな。見る限り一番バランスがいい」
「403番だ。ヒソカとの戦いで爆発物を使っていたのはやつだろうからな。要注意だろう」
「資格自体に強いこだわりはない。私がハンター試験に挑むのは己を磨くためだ」
「42番だ。同じ武道家として一度手合わせしてみたい」
「405番と99番だ。子供と戦うなど考えられぬ」
「仕事で必要」
「99番」
「42番」
53番ポックル、191番ボドロ、301番ギタラクル。
以上、最終試験に臨む者たち9名全員の面談が終了した。
そして時が過ぎ、
『みなさま長らくお待たせいたしました間もなく最終試験会場に到着します』
受験者たちをのせた飛行船は最終試験の会場となるホテルへ到着した。
・・・
「さて諸君、ゆっくり休めたかな?
ここは委員会が経営するホテルじゃが、
決勝が終了するまで君たちの貸し切りとなっておる」
ホテル内の大広間に集められた受験生たちに、ネテロ会長から最終試験についての説明が行われていた。
場には各試験の試験官だったサトツ・メンチ・ブハラ・リッポーらの面々と、試験官のサポート役をつとめる黒服たちもいる。
「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。
その組み合わせは、こうじゃ」
┏━━ ゴン
┏━┫
┃ ┗━━ ハンゾー
┏━┫
┃ ┗━━━━ ポックル
┏━┫
┃ ┗━━━━━━ キルア
┏━┫
┃ ┗━━━━━━━━ ギタラクル
不合格━┫
┃ ┏━━━━ レオリオ
┃ ┏━┫
┃ ┃ ┃ ┏━━ クラピカ
┗━━━┫ ┗━┫
┃ ┗━━ ヤムチャ
┃
┗━━━━━━ ボドロ
ネテロがトーナメント表の描かれたホワイトボードを提示する。
「さて最終試験のクリア条件だが、いたって明確。
たった1勝で合格である!
すなわちこのトーナメントは勝ったものが次々ぬけていき負けたものが残るシステム!
この表の頂点は不合格を意味する!」
「つまり不合格になるにはたったの1人。あとは全員で合格できるってわけか」
思った以上に合格枠が多いことを知り、ヤムチャさんは少し嬉しそうにそう言った。
「左様。しかも誰にでも2回以上の勝つチャンスが与えられている。
戦い方も単純明快。武器OK反則無し相手に『まいった』と言わせれば勝ち!
ただし相手を死に至らしめてしまったものは即失格!
その時点で残りの者が合格、試験は終了じゃ。何か質問は?」
「組み合わせが公平でない理由は?」
武道家のボドロが質問する。彼に与えられたチャンスは最小の2回だ。
「当然の疑問じゃな。
この取り組みは今まで行われた試験の成績をもとに決められている。
簡単にいえば、成績のいいものにチャンスが多く与えられているということ」
「それって納得できないな。
もっと詳しく点数のつけ方とか教えてよ」
質問者であるキルアに与えられているチャンスはレオリオと同格の3回。
成績の順位でいえば平均よりやや下に位置することになる。
「ふむ、よかろう。
審査基準は大きく3つ。身体能力値、精神能力値、印象値から成る。
身体能力値と精神能力値は各々の総合力を評価したものじゃ。
だが、これらはどちらも参考程度。
最も重要なのは印象値!!
これはすなわち先に挙げたデータからは測れない何か。いうなればハンターの資質評価といったところか。
それと諸君らの生の声を吟味した結果こうなった。以上じゃ!」
「……」
(試験の結果や能力面ではオレの方が上のはず。資質でオレがゴンに劣っている!?)
天才少年キルア。
同年代の子供に負けるという彼にとって初めての経験は、彼の精神に大きな衝撃を与えていた。
「それでは最終試験を開始する!!」
ネテロは新たな質問が出てこないことを確認すると、最終試験の開始を宣言した。
・・・
ホテル内の大広間。
普段は300人規模の宴席に利用されているこの場所も、トーナメントが終了するまでの間はハンター受験生同士がしのぎを削る戦場となる。
テーブルやイスなどは事前に撤去されており、受験生たちが戦うのに十分な空間が確保されている。
『第1試合 ハンゾー 対 ゴン!』
サングラスをかけた黒服の一人が前に出た。
「私は立会人をつとめさせていただきますマスタです。よろしく」
「よお久しぶり。
アンタ4次試験の間ずっと俺を尾けてたろ」
「お気づきでしたか。」
「当然。4次試験では受験生一人一人に試験官が尾行してたんだろ?
まあ他の連中も気付いてたとは思うがな」
「ええ、まあ。」
チラッ
マスタに意味深な視線を投げかけられて、ゴンは申し訳なさそうな苦笑いを浮かべた。
「礼を言っておくぜ!オレのランクが上なのはアンタの審査が正確だったからだ!」
「はぁ。どうも。」
生返事を返すマスタ。
「さてと、
念のため確認するぜ。
勝つ条件は『まいった』と言わせるしかないんだな?
気絶させてもカウントは取らないしTKOもなし」
「はい…それだけです!」
(なるほど。こいつはちっと厄介だな)
簡単には勝てそうもないなとハンゾーは表情を引き締める。
(ハンゾーさんが強いのはわかってる。
でも、オレだってヤムチャさんとレオリオと修行して強くなってるんだ)
簡単には負けない。そんな決意を込めてゴンはハンゾーに対峙する。
「それでは、はじめ!」
審判役であるマスタの合図と同時。ハンゾーはすべるように移動してゴンに手刀の一撃を見舞う。
(チッ! 浅いか!)
(よし! 反応できるぞ!)
シュババッ!
ダッ!
素早く左右の連打を繰り出すハンゾー。
ゴンは小柄な体を利して上下左右に回避する。
ダッ! ドガガガガッ!
(ガードがかたい。思った以上によく動きやがるな)
逃げるゴンとそれを追うハンゾーの図式が出来上がっていた。
「ずいぶんすばしっこいな」
「うむ。死角からの攻撃にもうまく対処できている。
目で見るのではなく気配を感じて避けているのだろう」
予期せぬゴンの善戦にポックルとボドロは感心している。
「くそっ! ゴンのやつ防戦一方じゃねェか!?」
「こりゃ勝てそうにないな」
「いや、あれでいい。ゴンの狙いはおそらく……」
レオリオ、ヤムチャ、クラピカの3人もはらはらしながら戦いを見守っていた。
変化のないまま攻防はしばらく続いた。
だがふいに、ハンゾーはゴンを追うのをピタリとやめた。
自然体で立ち止まり、深呼吸してわずかに乱れていた呼吸を整える。
「読めたぜ。オレを動きまわらせて体力勝負に持ち込もうって腹だろ」
(…! もうばれてる)
図星を突かれ、ゴンの動きが止まった。
「もうこっちから追うのはやめだ。ほら、かかってこいよ」
(こうなったら真っ向勝負だ!)
「やっ!」
ゴンはハンゾーに飛びかかり、ありったけの力を込めたラッシュを仕掛ける。
シュバババッ!
だがゴンの攻撃はことごとくハンゾーに捌かれた。
ドガッ!
攻撃後のすきを突いてハンゾーの裏拳がヒットした。ゴンは床にたたきつけられる。
「くそっ!まだまだ!」
ダッ!
とび跳ねるように起きた反動を利用して、すぐさまとび蹴りを繰り出すゴン。
ブン!
バキィッ!
ゴンの蹴りが空振りしたところに、ハンゾーの回し蹴りが炸裂する。
「ぐっ」
ゴンはバウンドしながら吹き飛ばされるも、ダウンすることなく体勢を立て直した。
(結構本気でやってるんだがな。
これを喰らってもまだ動けるのかよ)
「このぉっ!」
(そのタフさは認めてやる。
だがな、ゴン。お前の攻撃は素直すぎるんだよ。
戦闘経験が圧倒的に足りてない)
ハンゾーはゴンの右ストレートにタイミングを合わせて腕をつかみ、
関節を極めて流れるような動作でゴンを押さえこんだ。
「おまえには前にも言ったよな。
オレは忍びという特殊技術を身につけた戦闘集団の一員だ。
こと戦闘において、今のお前がオレに勝つ術はねェ!(キリッ)」
「――――ッ!」
「それがどうしたって面だな。
まだあきらめないってんならこの場で腕を折るぜ。
おねがいだ。ここで『まいった』と言ってくれ」
「いやだ!」
「よく考えろよ。
ここで意地を張ると次もその次も勝てなくなるんだぜ。
ここを逃してもまだまだチャンスはあるんだ。
傷が浅いうちにギブアップして、次の試合で勝てばいいじゃねェか」
「絶対に言わない!!」
「ああそうかよ!」
ゴンの闘志がいっそう燃え上がる。それにつられてハンゾーの語気も荒くなっていった。
「メンチ、あの子やばいんじゃない?」
大きな腹を揺らして心配の声をあげたのは、2次試験で試験官をつとめていたブハラだ。
「まったく。会長の性格の悪さときたら私たちの比じゃないわね。
気軽に『まいった』なんて言える奴がここまで残ってるわけないじゃないの。
意地の張り合いの行き着く果ては拷問。なぶり殺しよ」
「成績のいいものに多くのチャンスを与えるという名目でしたが、
会長としては成績優秀者同士で潰し合いをさせる腹積もりなのでしょうね」
苦虫をかみつぶしたように語るメンチの解説を、カールひげの紳士サトツが引き継ぐ。
「クックックッ、だがその思惑に受験生たちが乗るかどうかは別の問題だ。
今年のルーキーは一筋縄ではいかんよ」
会長の思惑が外れることを愉快そうに予言するパイナッポーリッポー。
トリックタワーの罠(トラップ)を攻略してみせたルーキーたちの絆と意外性に、リッポーはゆがんだ信頼を寄せていた。
「やれやれだぜ」
心底あきれたという様子でため息をつき、
ハンゾーは腕を極めて抑え込んでいたゴンを開放して立ち上がる。
「?」
「オレがどんなに痛めつけても
お前はどうせまいったなんていわねーだろ。
死ぬほど頑固な上に特大の単純バカだからな。」
「……」
ゴンはなんとなくムスッとした顔をするが、事実なので何も言い返せなかった。
「まずは勝負の方法から決めようぜ。
お前が負けてもそれで納得できるやつにしろ」
「え、う~ん」
ハンゾーの突然の提案にとまどいながらも腕組みをして考え込むゴン。
「よっぽど不公平な競技じゃなければなんでもいいぜ。
かけっこ・高跳び・的当て・遠投・かくれんぼ。
とりあえず思いついたモン言ってみろよ」
ハンゾーは子供っぽく平和な競技を並べてみせる。すべて自分に有利な種目なのはごあいきょうだ。
「う~ん、よし! ジャンケンで勝負だ!!」
「「「ジャンケンだと~~!?」」」
ゴンの発言に会場が騒然とした。
「おま、バカ野郎ッ!
これでハンターになれるかどうかが決まる最終試験なんだぞ!?
ジャンケンなんかで決めちまっていいと思ってんのかよ!!」
外野なのになぜかヒートアップしたレオリオがほえる。
「いいぜ。
ただし5回勝負だ。先に3回勝った方の勝ち。
負けた方は素直に負けを認めて降参すること」
「わかった!」
「いやいやいや!
おかしいだろうが! テメェらハンター試験なめてんのか!?」
「彼らが話し合いで決めたことだ。我々が口をはさむ筋合いではないよ」
今にも乱入しそうな勢いのレオリオをクラピカがいさめた。
(なるほど、腕力でも頭脳でも勝てそうにないから運否天賦で勝負しようってわけか。
意外と抜け目のないヤツだぜ。
だがまだまだ甘ェ。ただのジャンケン勝負なら確率は五分五分だろうが、
複数回の勝負となれば相手の裏をかく心理戦がものをいう。
誤算だったな。オレたち忍は相手の心の動きを読む訓練も積んでるんだよ。
この勝負もらったッ!)
そんなハンゾーの確信は――
「最初はグー!
ジャンケンポン!」
――脆く儚く崩れ去った。
「勝者! ゴン!!」
orz。
ずーん。
「やべえよ、マジやべえって、なんでオレこんなガキに負けてんだよ。
ありえねえだろ。はっ、はははっ、これで霧隠れ流の上忍なんだぜ。
笑えよ。笑えばいいさ。オレの17年間って何だったんだろうな」
ずずーん。
うつうつとした闇を抱えて、ハンゾーは這いつくばっていた。
対戦成績0勝3敗。
ハンゾーはゴンとのジャンケン対決にストレートで完敗したのであった。
「ナイスファイトだった! おまえなら勝てると信じてたぞ!」
「おめでとう!」
「ハンター試験合格第一号だな!」
「えへへ」
思い思いに祝福の言葉をかけるヤムチャ・レオリオ・クラピカにゴンは笑顔で応える。
その一方で、
敗者となったハンゾーにはキルアが声をかけていた。
「なぁ。なんでジャンケン勝負なんかしたんだよ。
まともにやればアンタが勝ってた。
まいったと言わせる方法なんてごまんとあるだろ」
キルアの探るような問いかけに、ハンゾーはため息一つ。
「なら、お前さんだったらどうしたよ。
まいったと言わせるために友達と戦って、拷問して、屈服させて。
そんなんで合格して満足か?
オレは御免だ。オレが痛めつけたせいでゴンが不合格になったんじゃ納得できん。」
「……ゴンとは、べつに友達ってわけじゃないよ」
「ハァ? おまえら友達なんじゃないのかよ」
「オレはその、ゴンとは友達になれたらいいなとは思ってるけどさ、あいつはどう思ってるか分かんないし」
ほほう。キルアの歯切れの悪さにハンゾーはにんまりと人の悪い笑みを浮かべる。
「おーい! キルアの奴がゴンに話したいことがあるんだってよ!」
「な!?」
「どうしたの?」
「キルアがお前さんと友達になりたいんだと。」
「? もう友達じゃん」
ゴンのあっけらかんとした言葉に、キルアは自らの心の壁が崩れるような感覚を覚えた。
「ゴン……合格おめでと。」
「うん!」
パン!
2人の少年はハイタッチを交わす。
家庭の事情により友達いない歴12年を更新中だったキルアはこの瞬間、一匹オオカミを卒業したのだった。
そんな様子をニヨニヨと生温かい視線で見つめるブラックニンジャ。
「オレも友達になってやろうか?」
「……ふん」
キルアは鼻を鳴らすと、照れ隠しにそっぽを向いた。
・・
『第2試合 クラピカ 対 ヤムチャ!』
マスタによって次の対戦者がコールされる。
「いよいよオレの出番だな」
ヤムチャさんは不敵な表情でビッと帯を締めなおす。気合十分だ。
「相手は自分とおなじ人間だなんて思うんじゃなーぞ。かなわないと思ったらソッコー降参しろよ」
「心配は無用だ」
レオリオのアドバイスを聞き流して、クラピカは部屋の中央へと足を進める。
クラピカはヤムチャさんの正面――5mほどの距離――で立ち止まり、
「最初に言っておきたいことがある。
4次試験でニコルのプレートを奪ったのは私だ。」
その言葉を口にした。