警備ロボ・・・単価120万
ミサカ・・・単価18万
「分かるか、貴様らは無機物にも劣る。価値のないウジ虫だ!」
「sir,Yes,sir!」
「sir,Yes,sir!」
訓練が開始してから1ヶ月と少し。
ほぼ完璧と言えるほどにミサカたちの洗脳は完了していた。
例えば服装。
迷彩服に身を包み、ブーツの紐はキツく締められている。
例えば思考。
常に襲撃される危険性を配慮し、隙はない。
例えば口調。
妹達特有の口調が少し変化し、シスターというコールサインに変わり、さらにその後に続く補足は油断を誘うためのブラフへと変化していた。
「――今日から特殊な訓練を開始する。嬉しいか?」
「sir,Yes,sir!」
「sir,Yes,sir!」
うむ、と20000号は満足そうに(とは悟られぬように)頷く。
「実戦を想定した訓練であり、貴様らが私の想像を超えるクズだった場合は死ぬだろう。訓練内容は――」
七月二十日
「吐け! “幻想御手”とは何だ! とシスター03は尋問します」
「テメェこそ何だ!? 風紀委員だとしてもこれは横暴過ぎるだろうがっ!」
ターゲットの溜まり場である路地裏を走り回り、漸く見つけたターゲット。
所謂、不良。
ミサカ19998号――シスター03の行動は迅速だった。
発見と同時に無力化、地面へと組み伏せる。
「へっ、どうしても聞きたいってんならその貧相な体でも使ってみたらどうだ?」
小馬鹿にしたような態度。
他の妹達であるならば体を使う、という意味を理解できなかっただろうが、たった3人のシスターズだけは理解していた。
「必要ならはそうします、とフェラ豚であるシスター03は肯定します」
「は・・・・・・?」
自身を組み伏せる少女の口から出た言葉に呆けた声を出す不良は間違いなく童貞。
「ですが、この状況ではそうするよりもこうした方が速いです、とシスター03は徐にあなたの右手の親指に手を添えます」
――そして。
ベキッ、と嫌な音と一瞬遅れて耳障りな悲鳴が路地裏に響いた。
「ぎゃあああああ!? い、言う! 言うからやめてくれ!」
◆◆
「幻想御手とは音楽ソフトであり、それにより共感覚性を利用し、テスタメントと同様の効果を齎していると推測されます」
「ほう」
20000号は19998号が得た情報と幻想御手を研究員(訓練を命令した者と同一人物)へ提出。
「しかし使用者と思われる学生が相次いで昏睡状態に陥っており、間違いなく欠陥品であります」
「君たちと同じでね」
「・・・・・・はっ」
何の感情の変化も見せず、20000号は肯定。
愉快そうに研究員は顔を歪め、白衣のポケットからリモコンを取り出した。
「・・・・・・?」
「絶対能力に到達するには20000通りの方法で君たちを殺害しなければならない」
「はっ、存じております」
「ならば一人、寝込みを襲われて死亡というのもいいだろう? どうせ教官役の代わりは山ほどいるんだ」
そう言われれば20000号には理解できた。
研究員が何をしようとしているのか。
「共感覚性を利用していると言ったな。なら聴覚への刺激を強くすれば共感覚も大きくなる。もしかすればレベル5へ到達できるかもしれん」
豚のような笑みを浮かべ、耳栓をした研究員がスイッチを押した。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「――ッ」
気絶から覚めた20000号はすぐに状況を確認。
あまりの大音量に気絶していたらしい。
鼓膜は破れており、何も聴こえない。
「・・・・・・大した問題はありません」
周囲を見回すも研究員の姿はない。
後は勝手にしろということか。
「・・・・・・レベルは本当に上がっているようですね」
耳が聴こえない状態での発声に慣れるため、独り言として状態を報告する。
自己判断としてはレベル2から――――レベル5、超電磁砲に匹敵するまでに成長している。
そのおかげで、体から出ている電磁波も強力になり、聴こえない耳の代わりにはなりそうだ(半径10メートル内の異変を感知できる程度だが)。
「・・・・・・とりあえず訓練に戻りましょう。昏睡状態に陥るまでは個人差があるようですし」
◆◆
「シスター02よりシスター03、軍曹と連絡は?」
『こちらシスター03、未だ取れず。02は監視を継続しろ』
「シスター02、了解」
ザザッというノイズと共にインカムからの声は途切れ、19999号、シスター02はスコープ越しに見えるターゲットに意識を集中する。
「窓際の席を選ぶとは愚かな、とシスター02はオリジナルとその仲間たちを侮蔑します」
彼女が見つめるのは喫茶店の一角。
其処に座る妹達のオリジナル 御坂美琴と風紀委員、そしてもう一人、研究者らしき女性。
シスター02が彼女たちを発見したのは偶然だ。
訓練には何の関係もないオリジナルを見つけたところで何も思わなかったが、彼女たちの会話(無論、声が聞こえたわけではなく唇の動き)の中に『幻想御手』というものがあれば話は別だ。
「――あれは」
シスター02のスコープがターゲットの席の窓に外からへばり付く2人を捉えた。
そう。それはまるでターゲットを庇うように――
「ッ、流石はオリジナル。あんな大胆に護衛を配置するとは」
言うまでもないが、その人影は風紀委員 初春飾利とその友人 佐天涙子である。断じて御坂美琴の護衛などではない。
結局、02はオリジナルの大胆不敵な策略(勘違い)に戦々兢々としながらもスコープを覗き続けた。
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人物&用語紹介
20000号(コールサイン シスター01)
下の2人の教官役であり、軍曹(サージェント)。
彼女の間違った知識からハートマン式訓練が始まった。
一応主人公であり、今回幻想御手によりレベル5に覚醒、最強主人公(笑)。
色々と間違った知識が多い。
口調は基本的に堅いが、気に入った相手には姉をファックさせようとするなどはっちゃける(本人に自覚はない)。
19999号(シスター02)
狙撃手。
立派な軍人になりました。
銃を媒介とした電磁砲(レールガン)による銃撃戦が得意分野。
口調はミサカがコールサインに変わっただけ。
19998号(シスター03)
フェラ豚。
立派な軍人になりました。
白兵戦が得意分野。
能力のレベルは三人の中で一番低い、が元から能力に大した差はない。
口調はミサカがコールサインに変わっただけ。
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感想貰えるとは思わなかったから調子に乗って投稿。訓練中のおはなし。