『東棟のターゲットのポイントB4への誘導に成功。私も東棟に向かいます』
「了解。西棟のターゲットは現在F2を通過、F4にて迎え撃ちます」
『今のところは順調・・・・・・03、西棟の刺青の男に注意を。アレは危険です』
「了解」
作戦は順調に進んでいる。
だが不安が拭えない、刺青の男の眼が02の脳裏に焼き付いて離れない。
「――こちらシスター03、そちらの様子は?」
『問題ない。相変わらず目覚める様子もないがね・・・・・・』
無線から聞こえる木山春生の声には自嘲が混じっていた。
「絶対に目覚めます。目覚めさせてみせます」
『・・・・・・ありがとう』
任務は果たしてみせる。
その決意を胸に03は行動を開始した。
◆◆
(ちっ、数多の奴は何チンタラやってやがる・・・・・・まあいい、理事会に話は通してある。数多の奴が見つけられなくても令状さえ届けば合法だ)
「ふむ・・・・・・埒が明かないね。今日のところはこれで終わりにして、また出直してくれないかな?」
「いえ、我々も上に令状を申請していますので、もう暫くお待ちくださいな。ポルターガイストがこれ以上続けばこの学園都市そのものが崩壊するかもしれない・・・・・・私はその憂いを早く取り除きたいんです」
嘘。学園都市がどうなろうと、知ったことではない。
学園都市とは学生全員をモルモットとした、レベル6に至るための実験場に過ぎない。
そう、レベル6にさえ至れば学園都市など必要ない。
テレスティーナは今、狂喜している。
数多が一方通行を完成させ、絶対能力進化実験が始まったと聞いた時には憤慨したが、内容がクローン二万人の殺害となれば、時間がいる。
数多の実験体である一方通行が二万人を殺しきるよりも早く、レベル6を完成させる。
これはそのための一歩なのだ。
冥土帰しにも妹達にも、身内にさえも。
誰にも邪魔はさせない。
『隊長、イエローとブラウン、両隊とも半数を削られ、未だに木山は見つかりません』
「――ちっ」
目の前の冥土帰しに聞こえないよう、小さく舌打ち。
(何をしてやがる、数多・・・・・・!)
「アレを準備しておけ、後十分で届かなかったら使え」
『了解しました』
あまり時間を掛けたくもない、後十分して令状が届かなければキャパシティダウンを使って妹達を始末する――そう決めて、テレスティーナは命令を伝えた。
「此処は病院だよ? 以後、通信は控えてくれるかな?」
「失礼しました。私でなければ判断できないことでしたので」
◆◆
テレスティーナが命令を伝えてから少し後。
侵入者はトラップでさらに減り、残りは東棟の3人が残るだけ。
だが最上階まで後一階のみ。
最上階への侵入を許せばその時点で負けは決まったようなもの。
それは阻止しなければならない。
(他の2人に遅れを取ることはないでしょうが、やはり02の言っていたあの刺青の男は・・・・・・危険な眼をしている)
倒すには1対1の状況を作るか、不意打ちのどちらかでなければ不可能だろう。
ならば、と03は懐から柄の短い錐のようなナイフを取り出し、構えた。
(02を待って徒に最上階に近付けるよりも、此処で終わらせる――――1、2、3!)
心の内でカウントを取り、背後から侵入者の1人に向かって取り出した3本のナイフを投擲。
「ぐっ・・・・・・?」
鋭い痛みが三カ所に走ったかと思うと、次の瞬間に床に倒れ伏す。
「ちっ・・・・・・!」
すかさずもう1人の男が銃を構えるが、突如現れた敵に照準を合わせるよりも速く、03が懐に潜り込み腹に一撃。
「がッ・・・・・・!?」
そして、さらに取り出した同型のナイフを首筋に突き刺し、もう1人の男も床に倒れ込んだ。
「――やっとお出ましか、待ちくたびれたぜぇ?」
刺青の男――木原数多が何かを呟いている間に03は距離を離す為、前に転がるように跳ぶ。
着地すると同時に銃を構え、すぐさま狙いを定める。
「投降しろ。殺しはしない」
命令口調で言い放つが、木原数多は口元の笑みを崩そうともしない。
得体の知れない寒気が03の背に走る。
「こいつらに使ったのは学園都市製の麻痺薬ってところか」
「武装を解除し、手を頭の後ろで組め」
「はっ、様になってるじゃねえか。それも訓練の賜物ってやつか?」
武装を解除、と言ったが木原数多は銃を手に持ってはいない。
懐に入ってはいるのだろうが、木原数多は侵入を開始した時から銃を構えてはいなかった。
「三度は言わない。すぐに武装を解除しろ」
値踏みするように見る木原数多に03は再度命令する。
もしもこれで命令にそぐわない行動を取った場合は迷いなく撃ち抜く――殺す気ない、尤もこの病院では誰一人殺すことはできない。
冥土帰しという医者が居る限りは。
「――――あーあー、わかったわかった、わかりましたよ。銃を捨てりゃあいいんだろ?」
木原数多は懐から銃を取り出す、そして次の瞬間にはガシャンと銃が床に落ちた。
◆◆
「――お礼ということで教えてあげる。恐らく、今日は妹達の研修日。1人だけど外に妹達が出てる。早く戻った方がいいわ」
「・・・・・・それが罠で、私の後を附ける可能性もあります」
「信じる信じないは任せるわ。――さようなら」
20000号の疑いの言葉を聞き流し、布束砥信は今度こそ踵を返し――
「・・・・・・さようなら」
少しだけ布束の後ろ姿を見つめ、20000号も踵を返して病院へと足を向けた。
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少しずつキャラが揃い始めました。
後、漸くアニメ版超電磁砲借りれた。
後後、最近軍曹の暴言がなかなか出せない。