「状況は把握した。そして貴様らがどうしようもないクズだということも理解した」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目覚めてすぐ02と03の腹を殴打、2人は言葉も出せずに這いつくばっている。
02の表情には若干の喜悦があるようにも見えるが。
「さて」
20000号は木山春生に向き直り、向き直られた木山は反射的に身構える。
「巻き込んでしまってすまない。約束は果たそう。貴方の生徒たちの快復方法と事故の原因の究明。必ず弾き出してみせます」
「・・・・・・そう、か――ありがとう」
「だが少し準備に時間がかかる。調整も受けずに引っ張って来られたからな」
「も、申し訳ありません・・・・・・」
調整。
十四日間でオリジナルと同程度まで成長する妹達だが、その寿命は短い。
急速な成長を促すホルモンや薬物の除去を行わなければ、の話だが。
「まずは即刻、此処を離れる必要があります。妹達の反逆というこの件に研究者たちがどう動くかは分かりません。処理係を差し向けるのか、それとも泳がせるのかどうかも」
確率としては後者の方が高い。が、下手な動きを見せれば研究者たちにではなく“暗部”に消される。
実験について警備員に通報でもしたら確実に暗部が動く。
それに小娘3人の首輪が外れたところで、研究者たちにとっては大した痛手ではない。
単価にして18万円、設備さえあればボタン一つで作り出せるクローンだ。
――彼女たちにとって最良の道は、実験が完全に中止になること。
だが、それはつまり最強の能力者 一方通行が敗れるということに他ならない。
「――身を隠す、というのなら一つ心当たりがある。命の保証という点ではそれ以上の場所は知らない」
「・・・・・・ではそこに案内してください」
安全ではなく命の保証、というのが気になったが、20000号は彼女の意見に従うことにした。
◆◆
「患者に必要な物なら僕は何でも用意するよ?」
ゲコ太パネェ。
それが彼女たちの偽らざる感想であった。
冥土帰しとも呼ばれる医者。
彼について木山春生が知ったのは幻想御手の使用者が5千人ほどになった頃だ。
人伝に聞いた話。凄腕の医者。だが今更、止めることなど出来なかった。
しかし今は違う。
幻想御手を用いた樹形図の設計者の代替品の作成は失敗に終わり、また一からの練り直し。
今なら藁にもすがる思いで彼の下を訪ねられる。
・・・・・・尤も、計画が失敗に終わった時点では彼のことなど忘れていたが。
当然だ、計画が失敗に終わるということは警備員に捕まり刑務所行き。
訪ねられるはずもない。
「――子ども、たちを」
もしかしたら。
「うん?」
彼ならば。
「――子どもたちを助けてくれ・・・・・・っ。お願い、します・・・・・・子どもたちを助けてください」
助けてくれるかもしれない。
悲痛な表情で彼に縋る木山春生。
そんな彼女に彼は、こう言う。
「――患者はどこだい?」
「これでは私たちの立場がありませんね、と02はどうしたものかと考え込みます」
「なに、もう一つは私たちの仕事だ。木山春生の生徒たちが被験者となった実験、その失敗の原因の究明はな」
「しかしどうやって? と03は軍曹に尋ねます」
そんなことも分からないのか、とでも言いたげな表情で20000号は03を見やる。
「今更戻れんのだ。反逆者は反逆者らしく、造物主に逆らえばいい――――身体の調整や銃器の到達、その他の準備には長く見積もって1ヶ月と少し。その時期ならば妹達はまだ1万人近く残っている、十分だろう」
「・・・・・・成る程、と03は軍曹の考えていることを理解して戦慄を隠しきれません」
木山春生が1万人の脳で演算を行おうとしたように、彼女たちもそれを行うつもりなのだ。
――1万人の妹達を使って。
「――我々の次の作戦は約1ヶ月後。作戦内容は上位個体 最終信号の奪取。理解したか?」
「sir,Yes,sir!」
「sir,Yes,sir!」
――奇しくも作戦実行の日は八月三十一日。
一方通行と打ち止めが出逢う、その日である。
無論、それよりも少しばかり早く一方通行はある無能力者に敗れ、実験は止まるのだが――――今の彼女たちが知る由もない。
今はただ、来たるべき時まで体を休め、牙を磨く。
任務を果たすその時まで、シスターズの戦いは終わらない。
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最後はやっぱりゲコ太のターン。
エピローグということで短め・・・。
元々ネタなのでご都合主義なのは勘弁な!
オマケでシスターズの現在の戦力↓
シスター01
復活の軍曹。
能力の強度・・・?
シスター02
軍曹大好き狙撃手。
能力の強度・・・3
シスター03
これといって特徴のない娘。
能力の強度・・・3程度
木山春生 New!
絶賛手配中 ネットワークの“元”管理人。
今のところ、子どもたちの快復と実験失敗の原因が究明されたら大人しく自首するつもり。今のところ。
ゲコ太 New!
おいしいところを持って行く人。
もうこの人だけでいいんじゃないかな。