「皆の者、さあついてくるのです」
三人でお庭の御散歩の時間。悠陽様が言うと、その後ろを球が転がって行く。
たまに勝手な方向へ移動する球を、お付きの者がそっと戻した。
悠陽様は後をついてくる球の大群をいたく気に入った。
二体の紫の子には手ずから食事を与えるほどである。
「中川少佐、この子は武御雷に瓜二つだとは思いませぬか」
子供を見せられ、乾いた笑いをもらす亨様だった。
その時、球が激しく振動して、変形した。
「こ、これは……!」
丸っこいロボットに変形したロボットは、初めて言葉を話す。
「パパ―!」
「凄い……初めての変形を! ほら、中川少佐。呼んでおるぞ」
「パパか……パパですか……パパですよー」
「私の事も! 私の事も呼んで!」
私が言うと、小さなロボットはママ―といって推進装置を使い、飛んでくる。ああん、可愛いよぉ。
その頃、武達も子育てに勤しんでいた。
「武ちゃーん。うわぁぁぁぁぁぁん」
「純夏ぁぁぁぁぁぁ!」
「「ごめん、君達の相方はあのロボット」」
こちらの世界の武と純夏は、当然ながら互いの変わり果てた姿に気づかず、人間と00ユニットの武と純夏と感動の再会を果たした。
思わず、苦笑いをする武と純夏だった。
一方、謎だらけのロボット族の生態に夕呼は頭を抱えていた。
「ほーら、シリコンだぞー。胸の大きな女になれよ、純夏―」
「あっ武ちゃん酷いよぉ。じゃあ私は、鋼で。かっこいい武ちゃんに育ってね」
「遊んでるんじゃないわよ! 一体どうやって育ってんの、こいつら!?」
「……親の愛情」
「設計図が生成できずすみません、香月博士。やはり大人にならないと駄目なようです」
彩峰が彩峰父を抱いて言う。彩峰父が謝罪した。
「それで、ハックは出来そうかしら?」
「うん、私、子供の為……ロボタケちゃんとロボスミちゃんの為なら頑張って見せる」
「そう……じゃあ、早速今夜。やるわよ」
「はい!」
「純夏、応援してるぞ。ハックしている間、手、握っててやるからな」
その夜、純夏は反応炉の前に立った。
「ベータ……貴方に命じます。人間を、殺さないで……! うわぁぁぁ、武ちゃん。武ちゃん……!」
「純夏! 俺はここにいるぞ!」
「ああああぁああああああああああああ!!!」
「純夏ぁ!」
叫ぶ純夏を武は抱きとめる。
「武ちゃん……。どうしよう……全ての情報を取った代わりに、全ての情報を取られちゃった……。ベータが、ベータがサンプルを取りに、ロボタケちゃんを浚いにここへ攻めてくる……。でも、武ちゃん……本星の位置、取得したよ……!」
「純夏!」
「それは本当? 不味い事になったわね……早速会議よ!」
『心配要りません、マスターリモコン戦術機の状態は良好です。即座に人員を奥に避難させて下さい。私が応戦します』
「メイ!」
宙から聞こえてきた声……。横浜基地にインストールされたメイドのメイの声に、夕呼は頷いた。メイを採用してから、リモコン型の兵器を横浜基地内に大分ばら撒いている。
その時、反応炉が機能停止した。本体から切り離されただけではなく、破壊されたのだ。
「いえ、メイだけにやらせるわけにはいかないわ。至急人員配備を。武、あんたにも出てもらうわよ」
「子供達は俺が守ってやりますよ! 了解です、夕呼先生!」
そして二四時間後、絶望的な戦いが始まった。ベータにとって絶望的な戦いが。
実は、横浜基地の隣にはニークの社があるのだった。
つまり、横浜基地はニークの勢力圏内だったのである。
横浜基地に到着するなり無力化されていくベータ達。
しかし、ニークの加護も完璧ではなかった。同じ敷地内に武神の社があるからである。作戦を変えたベータは堕落の神の社と武神の社を破壊し、武神札を奪って帰って行った。
この事件で、人類のベータへの戦法は確定した。
すなわち、ニーク様の札を使って周囲のベータを無効化しながら進み、ピンポイントで頭脳級ベータを狙うのである。
一方、ベータは武神札を各地から集め、オリジナルハイヴに集中させるのだった……。