エロ本を求めて、餌を探す熊の様にうろうろしていると、背後から声をかけられた。
「あ、三木君。そんな餌を探す熊みたいな足取りで何してるの?」
聞き覚えのある声に振り返ると、クラスメイトの女子がいた。
最近では珍しいくらいの黒髪だ。
そして何故か制服を着ている。
「委員長こそ制服で何してるんだ? コスプレ?」
「違うよ。学校の図書館に行ってたの」
休日に制服を着ていたので、てっきりコスプレでもしていたのかと思いきや、勉強をしていたらしい。
相変わらず真面目だ。
「で、三木君は?」
と、ここで質問が最初に戻る。
さて、どう答えるか。
エロ本を探しているんです、と言うわけにもいかんし。
……いや、待てよ。
委員長はかなりの物知りだ。
巷では歩く図書館と呼ばれてるし(余談だが、最近妹は現代に蘇った武神と呼ばれている)
エロ本の場所も知ってるんじゃないか?
「俺は本を探してるんだ」
「へー、本? 三木君も本とか読むんだ」
意外そうな顔で笑う委員長。
少し失礼だ。
「どんな本を探してるの?」
「エロ本」
「……」
委員長の顔が笑顔のまま固まった。
「……今、何て?」
「エロ本を探してるんだ。求めてるんだ。読みたいんだ」
「……」
「どこに売ってるか知ってるか、委員長?」
「し、知ってるわけないでしょ!」
委員長が顔を真っ赤にして、怒った。
握った拳がプルプル震えている。
そして俺の膝もその剣幕に驚いて震えている。
「す、少しくらい知ってたりしない?」
「知らない! っていうか女の子にそんなこと聞いちゃ駄目!」
「何で?」
「何でも!」
えー……と俺は不満な顔をした。
委員長は知らないらしい。
……本当に知らないのか?
あの委員長だぞ。
知らないことは無いと評判の委員長だぞ?
「ちなみにエロ本がどんな本かは知ってる?」
「知らない! 知るわけ無いでしょ!?」
知らないときた。
それはおかしくないか?
何故知らないのにここまで怒る?
もしかしたら『エロ本』というタイトルの小説かもしれないじゃないか。
本当はエロ本の在り処を知ってるんじゃないか?
……待てよ。
確か前に師匠がこんな事を言ってたな。
『清純そうな子は……意外とエロイ!』
『性の興味無さそうな子に限って……辞書でエロイ言葉を捜したりしている!』
『委員長系の子はエロイ!』
そうか!
委員長はエロイのか。
なるほど、そう考えると目の前の委員長が途轍もなくエロく見えてきたぞ。
「なあ、委員長。もういいだろ? 本当は知ってるんだろ?」
「し、知らないわよ! 大体何を根拠に私がその……エ、エロ……本の事を知ってると思うのよ!」
「だって委員長はエロイじゃん」
「な……っ!」
委員長の顔がさらに赤くなる。
「エ、エ、エ……えろ、エロ……エロくないわよ!」
「嘘だー」
「嘘じゃないわよ!」
「じゃあ今どんなパンツ履いてるの?」
「何がじゃあなのよ!? 何の関係があるのよ!?」
「もし委員長がエロくないならパンツもエロくないだろ?」
もしエロイなら、それはもう大人の色気満々の何か透けてたり、穴が開いてたりするのを履いているに違いない。
「それを確認する為に見せてくれ」
「ば、ばっかじゃないの!? 見せるわけないでしょ!?」
「やっぱり黒いスケスケの……」
「違うわよ! 白と水色のストライプよ! ……はっ!?」
失言をした、という顔で口を押さえる委員長。
どうやら本当に水色のストライプらしい。
「委員長はストライプか」
「……っ! へ、変態! この変態!」
「ちなみに俺が今履いているのも水色のストライプだったり」
「どうでもいいわよ!」
「お揃いだな。明日からストライプコンビとしてデビューしようぜ」
「しないわよ! ばか!」
委員長はばかばか連呼しながら走り去って行った。
ストライプコンビは結成して三秒で解散することになった。
しかし参った。
エロ本の場所を知ってそうな委員長がいなくなってしまった。
これからどうすればいいんだ。
俺は途方に暮れた。
ここでエロ本を探す旅は終わってしまうのか。
……イヤだ。
帰っても家にエロ本は無い。
そんなのはもうイヤだ。
我慢できない。
考えるだけで狂いそうだ。
既にエロ本が無くなって二週間。
これ以上エロ本が無い生活に送ると、真人間になってしまう。
そんなのはイヤだ。
「クソ……」
俺は電柱に寄りかかった。
目眩がした。
吐き気がした。
禁断症状が出始めたのだ。
このままじゃマズイ。
エロ本成分を摂取しなければ……!
「ああ……あ……」
でも……どうすればいい。
エロ本の場所が検討もつかない。
……。
……そうだ。
どうしてこれを思いつかなかったんだ。
簡単な話じゃないか。
俺をエロの道に導いた人物。
師匠だ。
師匠に会いに行けばいい。
師匠ならばエロ本がどこにあるか知ってるはず。
それどころか俺に新しいエロ本を授けてくれるかもしれない。
「そうだ……!」
そうと決まれば、行動だ。
俺は足を進めた。
目指すは師匠がいる学校。
女子大だ。