「……あはは……素晴らしいなあリア充……楽しいなあアハハ……隣人部の仲間はみんな仲良し……あはははは………」
「おい理科、タカが別世界に逝きかかってる。連れ戻せ」
「了解です」
そう返答して眼鏡をかけた少女は懐からスタンガンを取り出し、俺の右隣に座るヤンキーにスタンガンを押し当てた。
ビリビリッ!!
「~~~~~!?」
そして躊躇い無く放電。声無き悲鳴を上げるヤンキー。
ハイライトが消えた目をして、ボソボソと何かを呟いていたが、電撃により現実に帰ってこれたようだ。
頭を振り、朦朧としていた意識を覚ましている。
ヤンキーの外見はくすんだ感じのする、鈍い金髪にやや鋭い目つき。
誰が見ても、十人中十人が不良と判断する外見。
名前を羽瀬川小鷹(はせがわこだか)といい、実は小心者の一般ピープルであるという面負けなヤツである。
「タカ、貴様一人だけ意識を飛ばしてラクになろうなんて許さんぞ」
「そうですよ小鷹先輩。逃げるなんてずるいじゃないですか」
タカの右隣に座り、先程スタンガンを当てた少女も寒気を感じる笑みを浮かべながら淡々と言った。
制服の上に白衣を着てポニーテルの眼鏡っ娘という萌え要素は、その笑みとにじみ出る雰囲気でマイナス要素にしか見えない。
ふふふと引き攣った笑みを浮かべた少女は志熊理科(しぐまりか)。
天才となんとかは紙一重の天才寄りの人物である。
「……楽しい幻覚を見ていた……」
意識が戻ったら戻ったで天井を見上げ遠くを見始めるタカ。
「どんな幻覚だったんですか?」
「夜空と星奈が二人仲良く笑顔で戯れてた」
「非科学的な光景ですね」
「儚い幻想だなタカ」
「俺もそう思う」
三日月夜空(みかづきよぞら)と柏崎星奈(かしわざきせな)の二人が仲良くするなんて月が落ちてくるレベルで有り得ない。
黒く艶やかな長髪で目つきの鋭いツキは外見は文句なしの美少女である。
同じくカナも金髪碧眼でスタイル抜群の美少女だ。外見は、だがな。
「そろそろ辛くなってきたのではないか? 降参した方が身のためだぞ肉……」
タカの夢の中で笑顔を振りまいていただろうツキは現実では血走った目をして言った。
「ふふふ……そっちこそギブアップしたら? 息が上がってるわよ」
対するカナもツキと同じく血走った目で狂気が感じられる笑みを浮かべ返事をしている。
美少女だった面影などどっかに消え失せてしまった。
そして二人同時に目の前でグツグツと煮えたぎる鍋に箸を突っ込み、その中に入っていた真っ黒な『何か』を取り出して同時に口に含む。
「うぐ……っ」
「ぐぇ……っ」
口に含んだ直後、二人してカエルが潰れてような声を漏らした。
どうやら両方とも『ハズレ』だったらしい。
ツキは余りの辛さに喉をかきむしって、余計に目を血走らせている。
先程まで真っ赤に血走らせていた目を見事に漂白し、カナは白目を剥きながらダラダラと滝のような涙を流しだした。
「……まだ続けるか?」
「「当然ッ!!」」
心配して質問する俺に即答する残念美少女二人。世界は、いつだってこんなはずじゃないことばっかりだ。
別に美少女はトイレに行かないとか言いはしないが、限度ってモノがあるだろ。
返事を無駄に力んでした事で余計苦しくなった残念(略二人はほっといて他の参加者の確認をするか。
今この洋室には全部で8人の人間が、部屋の中央に置かれた丸いテーブルを囲んでいる。
タカから左に俺、タカの妹羽瀬川小鳩(はせがわこばと)、シスターの高山マリア(たかやままりあ)が座っているのだが―――
「……お兄ちゃん……兄者……悪魔が、悪魔が来るのだ……」
「あんちゃんどいて、そいつ殺せない……」
片方はともかく、魘されているらしく苦しそうな顔でおかしな寝言を言っている。
ハトの将来がかなり心配になるが、タカが何とかするだろうと俺は聞かなかった事にした。
理科の右隣にはツキが座っていて、ハトとマリアの左隣にカナが座っている。
そしてそんな二人に挟まれるように座っているのはメイド服を着た美形、楠幸村(くすのゆきむら)。
こいつは第三の性別幸村だと俺は断定している。外見が清楚で華奢な美少女にしか見えない男子など俺は認めない。
話は戻るが、ユキはただただ箸を鍋と口の間で往復運動しさせている。
先程から箸は往復しているだけで鍋のグを一つも掴んでいない。
その妙な行動もユキの顔を良く見れば納得がいった。先程のタカ同様、ユキはハイライトの消えた目をしていた。
「……幸村……お前まで逝ったか……」
タカが沈痛な表情で呟いた。理科に電気ショックで蘇生させようとしていた俺は、理科を目線で止める。
残念ながらユキはタカほど耐久値が無いから、またスグにピチュると判断したからだ。
決して外見が美形だからではない。ないったら無いのだYO。
「ほら小鷹、お前も食べろ……」
「ふふふ……二人共早くしなさいよね。勝負はこれからなんだから……」
ツキがタカに、カナが俺に狂気を目に浮かべながら言ってくる。
俺は溜息を吐きながら鍋に箸を突っ込んだ。
こいうのはビビッたら負けなのだ。というか流石に個人的に三度目ともなると胃も舌も鍛えられている。後精神面も。
「うう……」
タカは泣きそうな顔で鍋へと箸を伸ばしてきた。
実際鍋からは甘いような臭いような酸っぱいような、ぶっちゃけ腐ってるような様々な異臭が漂っている。
しかし、数をこなし慣れてしまっている俺はその程度では涙は出ないし心も挫けない。
「……なあ、コレ本当に毒入ってないんだよなあ……」
「その筈です小鷹先輩……。理科のポイズンチェッカーはあらゆる毒物を完璧に検出しますから。完璧なはず、ですから……」
漂ってくる異臭に、流石の理科も自信なさげに答える。
「安心しろタカ、コレはまだマシな鍋だ」
「マジかッ!?」
鍋から取り出した『何か』を口に入れ舌に乗せ、しっかりと噛み締め、飲み込む。
タカと理科の二人が驚愕の表情で俺を見ている。最初から俺はしっかりと味わって食べているだろーに。
よく煮込まれて鍋のスープを吸った、揚げ豆腐だった。味は甘くて酸っぱくて、少し辛かったが、吐き気が来るほどじゃない。
「経験談だが、十分もしない内に全員鍋から漂う匂いにヤラれ、涙と鼻水が止まらずになった時は地獄だった」
「……我慢出来なかったのですか?」
理科が恐る恐る声をかけて来た。俺は首を左右に振り、ながら答えてやる。
「我慢して、十分耐えたんだ。早いヤツは開始30秒持たなかった」
「………それは……どんな鍋だったんだ……?」
顔を引き攣って凍らせた理科に変わり、慎重な面持ちでタカが聞いてくる。
俺は一度目の死の鍋を思い出しながら語ってやった。
「闇鍋があるなら風鍋や水鍋、火鍋があってもいいじゃないかと、馬鹿が一人いいだしたのがきっかけでな風や水はともかく火なら作れるんじゃないかという話になって、実際にやってみる事になったんだが皆考えていた火鍋が違うという最悪の事態が発生して今回みたいにとりあえず全部鍋に入れれば問題ないとかいう流れになってからが地獄で本気でフランベみたいに燃えてる火鍋を考えていた奴らと俺と同じく激辛鍋を考えていた奴らでは持ってきた材料が偏っていて普通鍋に入ってる肉とか野菜とか一切無くて激辛スナックとか豆板醤とか酷い奴は鷹の爪1パックとかあったりして鍋かどうかも怪しいが煮込み始めた時点で立ち昇る何故か赤く見える湯気が毒ガスと言われても信じれるレベルの代物で――――」
話し終えると、先程まで苦しんでいた残(ry二人も聞いていたようで、恐ろしいモノを見る目を向けている。
「……貴様、良く生きていられたな……」
「普通は死ぬでしょ、間違いなく……」
「俺は充分コレで死にそうだがな……」
「……理科も、小鷹先輩と同意見ですよ」
げんなりしたタカに理科が賛同する。
そう、何の因果か俺は、現在人生三度目となる闇鍋をやっている最中なのだ。
やりたいと言い出したのは………誰だ? ツキだったかカナだったか覚えてないな。
確か『放課後みんなで鍋』というフレーズに皆賛同してやる事になったんだが、予行練習とか意味の分からん単語も出ていた気がする。
何故あの時俺はコイツらを止めなかったのだ、漫画に集中してる場合ではなかったな………
「貴様が闇鍋などという頭がおかしなものをやりたいと言うから……!」
「そもそもあんたが鍋をやりたいなんて言い出したのが悪い!」
「最悪なのは貴様が持ってきたシュールストレミングだ!」
「ニシンだから味は悪くなかったわ。それに比べてあんたのマンゴーや苺だいふくは!」
この際だからハッキリいってやろう。
「ぶっちゃけどっちもどっちだ阿呆」
「……俺もそうおも―――」
「「何ですってぇっ!?」」
「す、すみません」
もはや何も言うまい、これ以上刺激してこっちにまで飛び火したら堪らん。
そしてタカよ、少し情けなさ過ぎるだろ。そんなんだからヘタレヤンキーと呼ばれるのだ。
つーかそれよりも、
「迷い箸してないでさっさと食べなさい」
「「うっ……」」
理科もかよ。気持ちは分からんでもないが、迷ったら迷っただけよく煮込まれてしまうぞ。
未だに言い争って責任をお互いに押し付けている残(略二ryはほっといて、タカと理科の勇姿を見守る事にする。
「…………」
同時に箸を鍋に突っ込んだ二人は真っ黒に染まった何かを取り出して息を止めて口に放り込んだ。
この日、この時の闇鍋の為にタカが作った黒いスープに見事煮込まれている。
「……理科の記憶のデータベースからこの食べ物の味に最も近いものを引き出すと……………………メチルエタノール」
タカはまだマトモな食材を引き当て事無きを得たようだが理科はそれっきり活動を停止してしまった。
これで未だに戦場に残っている戦士は4人となってしまった。
正直な話をすれば後は時間の問題だろうと俺は考えている。
見るからに残(略二ryは限界っぽいし、タカは運により生きているが一度でもぐれぇとな食材がヒットすれば即死だろう。
「では次だ……」
「わかってるわよ……」
俺達が食べえたのを見て、互いに脂汗を流しながら無理やり笑みを浮かべたツキとカナが箸を持つ。
今度は4人同時に鍋から具を取り、口に運ぶ。俺は良く噛んで飲み込み―――
「………………ぉ……ぉ……ぉぇぇぇえええええええぇぇぇっ」
「うわっ!?」
カナが爆弾投下した。
それを見届けいていたツキは、一瞬勝ち誇った顔をしたが直後顔を蒼白にして、
「……ぅ……………ぉげぇっ…………」
連鎖爆撃と相成った。
そしてそのまま二人は白目を剥き気絶して、同時に倒れダブルノックアウト。
「うわっ、ちょ、お前らほんとに大丈夫か!?」
タカが慌てて駆け寄ろうとするが、真っ黒い物体Xが鎮座している為まずは窓を開け換気をして外の新鮮な空気を吸いに行った。
予め用意しておいたお絞りで二人の口を拭いてやり、現場から遠ざけソファーに横たえる。
「とりあえずバケツと雑巾取ってきてくれ、後トイレットペーパーを」
「わ、わかった」
嫌だね、闇鍋専用の介護慣れ。物体Xを見ても黒いとしか思えなくなってるよ。
まだ胃が痙攣してないから戦えるとか脳が判断しちゃってるよ。
「……はぁ…」
理科の発明品である『火を使わなくても食べ物が似なれる土鍋(によく似たはいてく土鍋)』を停止させて蓋をする。
部屋を見渡せば魘されて倒れている幼女二人に、据わったまま活動を停止した白衣の眼鏡っ娘。
未だに箸を口元と鍋の間で反復運動させているメイド服姿の第三の性別幸村。
そしてお互いにもたれかかるように座らせた超残念美少女の二人。
聖クロニカ学園の敷地内になる礼拝堂の一室である『談話室4』。
羽瀬川小鷹残念ハーレム、通称『隣人部』。本日の部室内は死体で沢山の生き地獄と化していた。
活動内容は毎日気分で決まり一貫性なんてものは十字架にかけて忘れている。
終始変わらぬモノと言えば活動目的くらい。
隣人部活動目的『友達作り』
とっくにこの部活に集まっているメンバーは友達だと俺は思っているが他の奴らはタカも含め誰一人として認めやしない。
そんな残念な人間達が集まっている残念な部活動、羽瀬川小鷹残念ハーレムであり、通称『隣人部』である。
あと一人、女子でも男子でもいいからマトモな人間が欲しいと思う、
俺こと佐々木新(ささきしん)であった………
あとがき
酒と寝不足の勢いで書いてはいけませんね
会社で同僚にドロップくらったので書き続けるやもしれません
修正しました