<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.21737の一覧
[0] 【ネタ】マテリアル似の娘(リリカルなのは)[rattu](2010/09/06 16:05)
[1] 星光似の娘[rattu](2010/09/06 16:07)
[2] 雷刃似の娘[rattu](2010/09/06 16:09)
[3] 統べる王似の娘[rattu](2010/09/06 16:10)
[4] 中書き[rattu](2010/09/07 16:37)
[5] マテ似三人娘と父親の苦労[rattu](2010/09/07 16:39)
[6] マテ似三人娘の無限書庫見学[rattu](2010/09/07 16:41)
[7] マテ似三人娘の弟予報[rattu](2010/09/08 15:57)
[8] マテ似外伝 彼女達の幸せの形[rattu](2010/09/08 15:58)
[9] マテ似外伝2 弟が可愛すぎてお姉ちゃんどうにかなっちゃうの[rattu](2010/09/08 16:00)
[10] マテ似三人娘の劇練習[rattu](2010/09/10 17:34)
[11] マテ似三人娘の夏の一時 前編[rattu](2010/09/10 17:35)
[12] マテ似三人娘の夏の一時 後編[rattu](2010/09/10 17:36)
[13] マテ似三人娘の拾い物[rattu](2010/09/12 17:12)
[14] マテ似三人娘の暴走[rattu](2010/10/01 16:48)
[15] マテ似三人娘の禁断の姉妹愛  前編[rattu](2010/11/02 19:10)
[16] マテ似三人娘の禁断の姉妹愛  後編[rattu](2010/11/03 16:18)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21737] マテ似三人娘の暴走
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/01 16:48
無重力の暗い空間で働いている無限書庫司書達。
皆何時もの様に自分の仕事を進めている中、一つの小さな影がその司書達の側を通り抜けて行き、それに気付いた一人の司書がその影に挨拶をする。

「あ、アルフ。今日は司書長の手伝いに?」
「ああ、ユーノは向こうで良いんだよな?」

小さな影の正体は、ユーノの手伝いにやって来たアルフであり、丁度ユーノの所に向かおうとしていた所である。
丁度いい具合に挨拶をしてくれた司書に、ユーノの居場所を聞きすぐさま其方の方に向かう。
司書にユーノは何時もの所に居ると聞き、すぐにその場所に向かうアルフだが、その場所にユーノの姿は無かった。

「何処に行ったんだ?」

仕方なくその周辺を探し、近くに居た司書にユーノが何処かに行ったかを聞くが、皆何処に行ったのかは知らないらしく、仕方なく最初の所でユーノが戻ってくるのを待つ事にする。
やる事が無くしばらくボーとしており、中々戻ってこないユーノにイライラし始めたころ、丁度少し疲れた様な顔をしたユーノが戻ってくる。
ユーノは戻ってくると、そこで不機嫌そうな顔をしているアルフを見て、何も悪い事をしていないがまずいと思ってしまう。
そんなユーノを見て、少しきつめの言い方でユーノに話しかけるアルフ。

「随分遅かったね~?折角手伝いに来たって言うのに」

顔は笑っているのだが、目が笑っていないアルフに少々恐怖を感じるユーノ。
ユーノの方も、席を外していたのはそれなりの理由があるのだが、言い訳するのも怖いので素直に謝っておく。

「えと、ごめんアルフ」

そう言ったは良いが、その後アルフから何も言われないので、もしかして自分が思っている以上に起こっているのかと思い、だんだん不安になってくるユーノ。
その後しばらく、お互い無言の状態が続き、ユーノの胃が痛くなり始めた時、アルフが溜息を吐きながら喋りだした。

「まあいいさ、あんたが忙しいのは知ってるからね」

少し呆れながらも、別に怒っている様子の無いアルフをみて安心するユーノ。

「ほら、仕事始めるよ」
「あ、うん。アルフは向こうの方お願い」
「あいよ」

アルフに急かされ、ユーノも戻って来てすぐに仕事を再開する。
手伝いに来てくれたアルフに、今は何処を手伝って欲しいかを指示を出し、自分の分の仕事に手を出す。
それから暫く二人で仕事を続け、何事も無く時間が進んでいく。
このまま今日も何事も起こらず、平和に一日が終わると思っていたアルフだが、持っている通信端末にメールが入る。
他の司書達に迷惑が掛からない様に、ユーノに一言告げて人のいない所に向かう。

「まだ仕事中なのにプライベートメールって、どうしたんだ?」

普段は仕事中には連絡はせず、連絡があるとしても仕事に関しての事が殆どなので、プライベートで来るのは珍しい。
何かがあったのかと思い、どんな内容かを確認する。

「えーと、何々… !?」

内容を確認したアルフが、その送り届けられた内容を見て表情が一気に変わる。
そのまま最後まで内容を読み、そのメールの送り主に返事を送った後に急いでユーノの元に飛んで行く。
幸いユーノはまた何処かに行ってはおらず、先程と同じ所で仕事をしており、すぐさまユーノに近づいて行く。

「ユーノ!」

アルフの大きな声を聞き、声の聞こえた方を振り返ってみると、慌てた様子のアルフを見て何事かと思うユーノ。

「ど、どうしたのアルフ?とりあえず落ち着いて、ね」

まずは慌てている様に見えるアルフを落ち着かせ、冷静になって貰う。

「落ち着いた?アルフ?」
「ああ。悪いねユーノ」
「それで、一体どうしたの?随分慌ててたけど?」

ユーノの言葉が聞いたのか、何とか落ち着いたのか、何時ものアルフに戻りユーノも安心する。
落ち着いたアルフを見て、次は一体何があったのかを聞く。
先程のアルフの慌て様を見て、もしかすると家族の誰かが仕事中に大けがをしたのかと思い、そう考えると急に不安になってくる。
そんなユーノの気持ちに気付く事も無く、アルフが一体何があったのかをユーノに伝える。

「シャマルからメールが来てさ」
「シャマルさんから?なんて内容?」

連絡の主が最近はなのはと一緒に居る為、あまり仕事の方には出ていないシャマルと聞き、ちょっと疑問に思えてくる。
内容は良く解らないが、とりあえずアルフに内容を聞いてみる事にする。

「なのはが産気づいたって」
「あー、なのはが産気づいたんだ。じゃあ準備しようか」

アルフから内容を聞き、なんだと言った感じですぐに仕事を一旦止め、出かける準備を始める。
その様子を見てアルフがあれ?と言った表情でユーノの方を見る。
アルフの予想では、聞いた瞬間大慌てで仕事ほったらかしで、なのはのいる病院に向かうと思っていたのだが、随分と落ち着いた様子をしている。
その様子を見て、ユーノも年をかさね多少の事は動じない程に成長したと思い、アルフも少しユーノへの考えを改めようと思い始めて。
とりあえず自分も病院に向かおうと思い、出かける準備を始めると…

「…なのはが産気づいたー!?」
「今更かい!?」

しばらく準備を進めていると、急に叫び始めてアルフに突っ込まれるユーノ。
どうやらアルフから聞いた内容がすぐには完全に理解できなかったのか、しばらく動きながら準備していて、今やっと内容を全部理解したらしい。
最初のアルフの予想通り反応のユーノを見て、まったく成長していないと思い先程の考えを捨てる。

「だって、まだ予定日はもう少し先…」
「まあ予定はあくまで予定だし、前後することはあるさ。あんたの息子の割にはせっかちな子だね」
「それ関係あるの!?」

慌てているユーノを適当にあしらいつつ、他の家族にも緊急の用件で連絡を送っておくアルフ。
一通りの人達に連絡を送り、まだ混乱しているユーノの代わりに出かける準備を進める。

「まあこれ位で良いかな?さあユーノ、とっととなのはの所に行くよ!」
「あ、うん…。そうだ!アルフ!」
「ああ?なんだい?大した事じゃないなら後回しにするよ」

準備が終わり、さあ出かけようとした所を、何かを思いついたユーノに止められる。
折角良い感じで出れると思っていたアルフだが、呼び止められた所為か少々きつい言い方を返してしまう。
それにを見て少し怖くて引いてしまうユーノだが、どうしても一つ気になる事があり、一応どうするかをアルフに聞く。

「あのさ、子供達には連絡どうしよう?まだこの時間は学園だろうし」

ユーノの心配は、今はまだ学園で授業中の三人娘の事である。
まだ学園で勉強をしている時間なので、授業が終わった頃を見計らって連絡を送ろうかと思ったが、この事を知った後娘達に『どうして連絡をくれなかったの!?』と責められるのは怖い。

「んー。まあ送っても良いんじゃない?流石に授業中に抜けだしはしないだろ」

アルフが少し考えた後、連絡を送っても四女ならともかく、冷静な三女と五女なら暴走もせずに四女を止めると判断する。

「それじゃあ連絡送っとくね。 誰に送っておこうか?」

アルフから許可を貰い、早速娘達に連絡を送る事にする。
三人の内誰に送ろうかと考え、四女だと混乱して暴走するかもと思い四女は選択肢から除外する。
残りは三女と五女だが、この二人なら別にどっちに送っても良いかと思い、適当に目に入った三女の連絡先に連絡を送る。
娘達にも連絡を送り、出る準備も既にアルフが終わらせていたので、すぐになのはの元に向かうユーノ。

「それじゃあ、行ってくるね。皆、後は任せて良いかな?」
「はい。我々に任してください!あ、今度来るときは赤ちゃんの写真見せてくださいね?」

無限書庫を出る直前に司書達声をかけるユーノに、一人の司書が代表として送り出す。
他の司書も、仕事をしながらもアルフとユーノに声援を送る。
それを少し恥ずかしながらも、嬉しく思い受け入れ、二人はなのはの元に向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユーノ達が無限書庫を出た時間と同時刻 学院の同じ教室で授業中の娘達三人。
静かに授業を受けている三人の中の一人、三女のポケットの中に入っている通信端末に連絡が入った事を告げる振動が伝わる。
それに気付き、普段は真面目に授業を受けている三女だが、今授業をしている教師の話が非常につまらないの為、ちょっとだけ内容を確認する。

(授業中に連絡とは…… お父さんから?どうしたんでしょう?)

仕事中のはずの父親からの連絡だと知り、一体どうしたのかと思い内容をしっかりと読む。

(えーっと…、なんですって!?」

その内容を理解した瞬間、四女が大きな声を出し席を立つ。
静かな授業中に突然大声を出した三女に皆驚き、教師も一体どうしたのかと言った表情で三女を見る。

「ど、どうしたんですか高町さん?」
「いえ、何でもありません」

教師の質問に顔色一つ変えずに答え、そして席に座る三女。
だが四女と五女だけは、長い付き合いの為か三女の様子が明らかにおかしい事に気付く。

『どうした?随分と珍しい表情をしているではないか』
『授業中だけど 何かあったの?』

三女を心配したのか、四女と五女が念話で三女に話しかける。
顔には全く出ていないが、内心完全にパニックになっていた三女の頭も、二人の声を聞いて冷静さを取り戻す。
自分一人ではどうしようかまったく考えが浮かばないので、二人に先程の連絡の内容を話し、どうしようかを相談しようとする。
四女が暴走しない様に予め釘を打ち、二人に父親から来た連絡の内容を伝える。

『なのは母さんが病院に運ばれて……、もうすぐ赤ちゃんが産まれると言う事らしいです』
『えー!?』
『なんだと!?誰からの連絡だ』
『お父さんです。どうやらシャマルから連絡があったらしく……、今はアルフと一緒に病院に向かってるようです』

三女から内容を聞いた二人は非常に驚いたが、何とか外には出さずに出来た。
すぐに三人共授業そっちのけこの後をどうしようかを話し合う。

『ここを抜けだすと、間違いなく母さん達に怒られますね』
『だが、この機会を逃すと産まれたばかりの赤ちゃんが見れんぞ?』
『授業を取るか、赤ちゃんを取るか……、どっちかだね』

赤ちゃんに会う為には、授業を抜け出し更に母親達の怒りが来る事は明らか。
だが授業が終わるまで待っていると赤ちゃんが生まれてしまう。
どちらを選んでもマイナス面がある為、三人共非常に悩……

『どうせこのつまらない授業を聞くのも苦痛ですし、お母さんに怒られるのもこの際構いませんね。行きましょう』
『だな、私達には弟の方が重要だ』
『賛成!と言う訳で抜けだそうか』

……一切悩む事無く授業を抜け出す事に決めた三人。何か三女がきつい事言っているが気にしない。
そして授業を抜け出す為、一人ずつ立ち上がり教室を出る。

「先生。少し体調が悪いので早退します」
「え?ちょっと…、高町さん!?」

最初は三女が少し強引ながらも、優等生的な感じで外に出る。
普段は真面目な三女がいきなり有無を言わさず出て行ってしまい、教師が混乱をしている所に、今度は四女が立ち上がる。

「先生!先生の授業眠いから保健室で寝てきます!」
「ハラオウンさん!?えと…、確かに私は今年教師になったばっかで…、あ~出て行かないで~!?」

四女は今まで思っていた事を喋って出て行ってしまい、それを聞いた教師が泣きそうになって四女を追おうとする。
しかし次は五女が立ち上がり、教師が今度は何!?と泣きそうな顔で五女を見る。
その教師の顔を見て一瞬引いてしまうが、すぐにある事を思いついたのか、ニヤリと嫌な笑顔を浮かべた後教師に話しかける。

「先生」
「な、何?八神さん?」
「先生の授業は聞くに堪えないほどつまらない物なので、私は帰らせてもらうぞ」
「そこまでひどいの~!?」

五女の止めの言葉を聞き、完全に泣きながら倒れる教師を無視して、さっさと教室から出る五女。
泣いてうずくまっている教師と、出て行く三人娘を唖然と見送る他の生徒達だった。
教室から出た後、すぐに三人共合流し、廊下を走り学園を出る事にする。
幸い教室は色々とカオスな事になっていた為か、誰も追ってこないので三人を邪魔する物はいなかった。

「急ぎましょう。早くしないと産まれてしまいます」

三女の言葉に四女と五女もうなずく。
廊下を走り、階段を下り、早く出ようとすると、目の前に見覚えがあるシスターの姿があった。

「あなた達!何をしているんですか!」
「ちい…!?シスターシャッハか…。面倒な相手だ」

自分達の前に立ちはだかるシャッハの姿を見て、悪役見たいな言葉が出る五女。
三人とシャッハは母親の関係で昔からの顔見知りであり、シグナムやフェイトと組み手をしているのを何度も見ている為、手強い相手と言うのは三人共解っている。
今目の前の事と、これから先の事を考えると出来ればシャッハと戦うのは避けたいが、お堅いシャッハが簡単に通してくれるとは三人とも思わない。
もし戦うとしても、シャッハと自分達の実力では、1対3なら間違いなく勝てるだろうが、戦っている間に他の人が自分達の所に来てしまう。
だがこのままではどうしようもない為、仕方なく三女と五女がデバイスを機動しようとすると、四女が念話で二人に話しかけてくる。

『二人共!……』
『…解りました』
『了解した』

四女からある事を聞き、そのまま速度を落とさず走り続ける三人。
その様子を見て、真正面から三人を止めようとするシャッハ。
そのまま三人とシャッハの距離が縮まり、交錯するまで後数メートルとなった時、四女が他の二人の手を掴む。

「行くよ!シャッハ」

その言葉を聞いた瞬間、四女のデバイスが輝きだす。

「バルニフィカス!」
<ソニックムーブ!>

二人の手を掴んだ後、母親と兄譲りの高速移動で一気にシャッハの横を通り抜ける。
まさか魔法を使ってまでも通り抜けるとは思わなかったので、一瞬驚くシャッハだがそこは歴戦の剣士。

「逃がしません!ヴィンデル…」

すぐさま自分のデバイスを起動して追いかけようとすると……、

「なっ!?」

突然何かに締めつけられる感触を感じ、すぐに何が起こったのかを確認すると、別々の色のバインドが自分の身体と足に巻きついていた。
すぐに娘達の方を見ると、三女と五女がシャッハの方に手を向けており、このバインドが二人の物である事を理解する。
三人の作戦は移動は四女に任せ、その後間違いなく追ってくるシャッハを二人のバインドで縛りと言う物であった。

(油断した!あの子達は小さいとは言えあの四人の娘。同年代で彼女達に勝てる子はいない程の実力!)

何もできず三人が走って行くのを見つめ、改めて才能の遺伝を実感するシャッハ。

(…もう一人産まれて来るんですね確か。またあの子達クラスが入学してくるんでしょうか?)

少し先の未来を楽しみに思い、そして少し不安に思うシャッハだった。
そしてシャッハから逃げだせた三人だが、既に学校の外に出ており、急いで病院に向かっていた。

「僕なのは母さんが行ってる病院知らない!二人は知ってる!?」
「この前私がシャマルと一緒に行った!付いてこい!」
「さっき勝手にシャッハにバインドを使ってしまいましたし、もうこの際どれだけ魔法を使おうが同じでしょう。飛んでいきます!」

三女の半ばやけくその提案に他の二人も頷く。

「ルシフェリオン!」
「バルニフィカス!」
「エルシニアクロイツ!」

其々のデバイスを起動し、瞬時に自分達のBJに身を包み空を飛ぶ三人。
場所を知っている五女を先頭に置き、その少し後ろを二人が付いて行くように飛ぶ。

「ここからだとどれ位かかりますか?」
「私のスピードなら20分程か」
「僕ならもっと早く行けるのに…」

四女が少し不満を口に出すが、自分一人だけ先に行くのは流石に駄目だと思っているので、しっかりと二人の速度に合わせている。

「ん?……あ!?」
「な!?おい!何処に行く!」

三人でそのまま飛んでいると、何かを見つけたのか急に三女が二人から離れ別の方に飛んで行く。
どうしたのかと五女が叫び、三女が飛んで行った場所を見てみると、風船が高い所に引っ掛かっており、それを涙目で見ている少女の姿があった。
そのまま三女が風船の所に飛んでいき、引っかかっていた風船を手に取り、そのまま少女に風船を渡す。
少女は突然飛んできた三女に驚きながらも、三女から風船を手渡され一気に笑顔になる。

「ありがとう!お姉ちゃん!」
「構いませんよ。……そうだ、こうやってっと……。それでは」

今度は飛んで行かない様に、少女の手首に風船に繋いでいる糸を巻きつける。
しっかり巻かれているのを確認し、急いで二人の元に戻る三女。
それをボーっと見送る少女に、席を外していた少女の母親が戻ってくる。

「どうしたの?空なんて見上げて?」

空を見て何もしない娘を見て、どうしたのか心配する母親だが、急に娘が笑顔で振り向きこう言いだした。

「お母さん!私魔導師になる!」

どうやら、ここに一人将来のエース候補が誕生したようである。

「まったく、急いでいるというのにお人よしだなお前は」
「すみません……、どうしても気になってしまって……」
「別に良いよ。僕達はそう言う所が好きなんだし。ね?」
「……ふん。とっとと行くぞ」

四女に話の続きをふられ、若干恥ずかしそうにしながらも病院へと進みだす五女。
それをニヤニヤしながら付いて行く四女と、否定しなかった五女に少し嬉しくなる三女。
そのまま微妙な空気で飛んでいると、急に下の方から何やら悲鳴な様な物が聞こえて来たので、どうしたのかと思い悲鳴の聞こえた方を見てみると。

「な!?おい!急げ!」
「もう行ってます!」

三人が見たのは、子供が好奇心でそうなったか、高いビルの屋上のフェンスを乗り越え足を踏み外し、今にまさに落下を始めている少年の姿があった。
それに気付き、すぐに少年の元に飛ぼうとした五女だが、既に四女が反射的に飛び出していた。
三人の中で最速の四女が向かい、この距離なら確実に間に合うと思い二人共安心するが、ある一つの事だけは心配する。

(この距離……、十分間に合う!)

自分のスピード、子供との距離、地面の高さを確認し、確実に間に合う事を確信した後、しっかり少年を捕まえる。
だがそこまでは良かったのだが、少年を助けて油断したのか、自分の進路上にある柱に気付かずそのままのスピードで派手に激突する。
かなり凄い音がし、少年が助かって安心した見物人もそれを見て一瞬うわ…と声が出てしまう。

「やっぱりしでかしたな」
「彼女が良い事をすると大抵最後にオチが付きますね」

二人が何時もの事と言った感じで四女の酷い落ちを見つめる。
その四女の方はと言うと、物凄い痛いのだがカッコ悪い所は見せられないと思い、必死で我慢していた。
鼻血を出しながら少年に怪我が無いかを尋ね、その四女の顔に若干引きつつ、怪我が無い事を伝える少年。
あまりの痛さに涙が出ている四女だが、本人は気付いていない。

「はい!今度はあんな事しちゃダメだよ!」
「うん……。でもお姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよ!?全然痛くないよ!? まあいいや それじゃあね!」

少年に突っ込まれ、あたふたして否定した後、二人の元に戻って行く。
それを見送る少年。

「カッコよかったなー…。鼻血出してたけど。僕も魔導師になれるかな?」

何か変な印象が付いてしまったが、また一人将来のエース候補が誕生した。
その後この少年と四女は再会を果たすのだが、どうしても鼻血の印象が強く残っていた所為か、四女が再度鼻血を出すまで少年は気付かなかったらしい。
そんな事はどうでも良く、微妙にフラフラしながら二人の元に戻った四女。
そして二人の元に戻った瞬間、緊張が解けたのか、一気に涙が出てくる。

「痛かった~……」
「はいはい、治癒魔法掛けてあげますからね」
「時間をかけたくないから飛びながらだがな」

三女が四女に治癒魔法をかけながら、再び病院の方に飛んで行く。
予想外の時間を食い、三人のペースも速くなる。

「それにしても二連続で面倒な事が起こったね」
「まあ流石に三回目は無いでしょう」

三女と四女がさっきまでの事を思い出す。
普段は平和な町中だが、よりにも寄って今日にこんな事が連続で起こると文句の一つも言いたくなってくる。

「そんな油断しているとまた何か起こるぞ」

三女の言葉を聞いた五女が、少し油断している三女に注意をする。

「母さん達の住んでいた世界では、『二度ある事は三度ある』ということわざが……、……本当にある物だなまったく!」

そう言いながら、今度は五女が何処かに飛んで行く。
またか…と二人が思いながら飛んで行った方を見ると、そこには苦しそうに倒れている老婆の姿があった。
周りの人も老婆が苦しんでいると言うのは解っているが、どうすればいいのか慌ててしまい何も出来ていない。
その様子に若干苛立ちを感じながらも、急いで老婆の元に向かう。
老婆の元までやってき、老婆の様態を確認するが、素人の五女に何処が悪いのかは解らない。

「おい!そこのおっさん!携帯位持ってるだろ!救急車を呼べ!」
「お、おっさ!?…わ、解った」
「他に誰か医療の知識を持った奴はいないか!?」
「あの…、私まだ看護学校に通ってますけど一応……」
「それでも構わん!素人の私よりはマシだ!」

自分だけではどうにもできないと悟り、他の人達を使いどうにか老婆を助ける五女。
最初は五女の言葉に若干不機嫌になる周りの人たちだったが、適格の指示と迫力に押され素直に言う事を聞く。
若干名幼女にきつく言われ興奮している変態が居たがまあ気にしない。
その後やって来た救急車に老婆をのせ、少し疲れた顔で二人の元に戻ってくる。

「お疲れ様です。見事な指揮ですね」
「まだ母さんには及ばんさ。昔は無能だったとか自分で言っていたが信じられんな」
「そんな事より!早く行こうよ!」

四女に急かされ、早速病院に向かいだす。
だが三人共、連続に起こるアクシデントの所為か、少しピリピリしていた。

「……流石にもう何も起きませんよね」
「幾らなんでもそれは……無いよね?」

二人共心配になって来たのか、どうにも弱気になっている。
そんな二人を見て、五女も少し微妙な表情で答える。

「もう起らんだろ……、常識的に考え…て……」

そう言いながらふと下の方を見てみると、人がたくさん集まっておりそこには……

「……あーくそ!三人で行ってとっとと終わらせるぞ!」
「はあ……仕方ありませんね……」
「もうやだー!」

そう言いながらも、助ける為に現場に向かう三人であった。




「な、何で今日に限ってこんなに面倒な事が起こるんだ……」

あれからしばらく時間が経つが、何故かそれからもちょっとした事件が沢山起こり、三人が随時それの解決、及び手伝いをした為か、一向に病院に着かない。
どうして今日に限ってこんなに面倒な事が起こるのかと、五女も疑問に思ってくる。

「僕等何か悪い事した?」

少なくとも、勝手に空を飛んだりデバイスでシスターを縛るのは良い事とは言えない。

「神様の悪戯ですか?だと言うならその喧嘩買いますよ?」

何か三女が物騒な事を言っているが、これだけ連続で色々起こっている所為か、殆どキレかかっている。
他の二人も三女程ではないが、かなりうっぷんが溜まっている為、もしこれ以上何か起きたら爆発しかねない。
実際直前のアクシデントでは、鬼気迫る三人の表情を見て子供達が泣いてしまった程である。
幸いそれ以降は何も起こらず、スムーズに進んで行き、なのはのいる病院まであと少しと言う所までやって来た。
何事も無く進み、三人のイライラも少しおさまってくる。

「後どれ位?」
「5分と行った所だろうな」
「あと、少しですね。もうすぐ弟が……」

三女の言葉を聞き、他の二人もワクワクしてきたのか、少し飛ぶスピードも速くなる。
そのまま病院の方に一直線に進んでいると、何やら左の方から光輝く物が視界の端に写った。
今度は何だとその光の方に三人が視線を向けると、遠くから何やら人が二人程此方に向かって飛んで来ていた。

「まてー!大人しく捕まれ!」
「ちっ、大した実力も無い執務官のくせに、しつこさだけは一級品か…」

この二人は現在逃亡中の犯罪魔導師と、それを追う新米執務官であった。
丁度執務官がこの犯罪魔導師の犯行を目撃し、少し戦った後援軍を呼ばれる前に逃げ出したのだが、執務官の方が頭に血が上っていたのか、一人で犯罪者を追いかけていた。

(面倒だがここで始末しておくか?どうせ一人殺した人間が増えた所で今更大差ない……、ん?)

しつこく追いかけて来る執務官が鬱陶しくなり、いっその事殺そうかと思うと、ふと自分の進路上に子供が三人いるのが見えた。
それを見て、これは利用できると思い、三人と少し距離を置いた所に止まり、自分のデバイスを三人の方にむける。
そして自分に向かってくる執務官に、大きな声で警告を促す。

「貴様!これ以上追ってくるようならこのガキ共を撃つぞ!」
「な!?」

その言葉を聞き、何とか犯罪者に近づくのを一度止める執務官。
執務官として見れば、何でこんな所で子供が飛んでいるのかと思うが、今はそれ所ではない。
何とか子供達を助ける方法をがんがえるが、新米の所為か中々良い考えが浮かばない。
その様子を見て、さっさと逃げようとする犯罪者だが、事態が良く解っていない四女が大きな声で文句を言う。

「ちょっとおっさん!僕達急いでるんだから放っておいて!」
「五月蠅い!ガキは黙ってろ!」

そう言いながら、三人に魔法弾を一発牽制で入れる。
執務官が一瞬ヒヤっとするが、外れたのを見てホッとする。
犯罪者の方も、これぐらい脅しておけば子供だし大人しくなるだろうと思っていたので、それ以上は何もしなかった。

「…殺りましょう」
「先に手を出したのは向こうだもんね…」
「ふふふ……塵芥を滅するのは気分が良いな」

だが、彼は運が悪かった。まずは手を出した相手が悪かった。そしてタイミングも完全に悪かった。
彼の犯罪人生の唯一の失敗、それは今このタイミングでこの三人に喧嘩を売った事である。

「基本陣形で行くぞ!最速でこの塵芥を潰す!」
「「了解!」」
「!?」

五女がそう叫んだ瞬間、四女がバルニフィカスを手に持ち、一気に犯罪者との距離を詰める。
五女は逆に距離を取り、三女はその二人の間の位置に陣取る。
二人の手には四女と同じ様に其々のデバイス、ルシフェリオンとエルシニアクロイツが握られていた。
そして、犯罪者に一直線に進んで行く四女が相手を射程圏にとらえ、手に持つバルニフィカスを一気に振り下ろす。

「パイロ…」
「ぬお!?」

いきなり予想以上の速さで距離を詰め、繰り出してきた鋭い一撃を何とか防ぐ。
その後、四女の連続攻撃を受け切り、生まれた隙を突こうとしてデバイスを叩き込もうとする。

「隙あり!」
「シューター!」
「な!?」

デバイスが四女に繰り出される直前、三女の放った魔法弾が犯罪者を襲う。
飛んでくるのを確認し、四女への攻撃を中断して飛んできた魔法弾の回避を優先する。
何とか全弾回避した後、邪魔になるので砲撃で撃ち落とそうとするが……

「ちぃ!あのガキ!撃ち落として……!」
「ドゥームブリンガー!」

今度は三女より遠くに居る五女が、遠距離から魔法を放ち相手の動きを制限する。
また攻撃を邪魔されて、かなりイライラしている所に、体勢を立て直した四女が再度攻撃を仕掛ける。
そして、しばらく四人の戦いが続き、犯罪者の方に焦りの色が見えてくる。

(こ、こいつ等…、ガキの癖になんて…!)

先程から少し戦いを続けるが、犯罪者の方はまったく攻める事が出来ないでいた。
基本的に四女が至近距離で戦い、一撃は軽いが手数で相手を押し、相手に攻撃の隙を与えない。
そして四女の攻撃が途切れ、隙が出来た所を三女の中距離からの攻撃で相手の動きを抑え、一番攻撃を受ける可能性が高い四女をアシストする。
最後に五女が二人と相手の動きを見て、攻撃と援護を使い分けて二人を守る。
犯罪者の方相当の腕利きであり、相手が三人の内一人なら倒せていたであろうが、三人の抜群のコンビネーションに完全に防戦一方である。

「アロンダイト!」

四女の攻撃で体勢が少し崩れた所を狙い、五女が砲撃で追撃をかける。

「くお!?」

その飛んでくる砲撃を、かなり体勢が崩れた状態で無理やりかわし、直撃は免れたが体勢はすぐには立て直せない程に崩れる。
それを見て、三女が相手の動きを止める為拘束魔法をかける。

「ここなら!ルベライト!」
「しまった!足が!」

咄嗟に発動させた為か、相手の片足の身を拘束するだけに至ったが、移動を止める事が出来たので問題無かった。
相手の動きを止めた事を確認し、四女が一気に勝負を仕掛けに掛かる。

「バルニフィカス!フルドライブで行くよ!」

その瞬間、バルニフィカスが形を変える。
自分の身長の数倍の長さを誇る大剣に姿を変え、母親譲りのザンバーフォームの形態になる。
それを両手でしっかり持ち、一気に相手との距離を詰め、止めに移る。

「雷刃……滅殺……」
「ぐう!」

自分に迫ってくる四女を見て、動けないと言うならと、出来うる限り硬い障壁を張り、何とか堪えようとする。
その障壁が何とか間に合い、相手は防御を完全にしたが、そんな事はお構いなしに四女は最大の技を繰り出す。

「極・光・斬!!」
「なめるなガキ!その程度耐えてやる!」
「……集え、明星……、すべてを焼き消す焔となれ……」

一撃にすべてを賭け、思いっきり下の方から相手を切り上げ四女。
その斬撃を障壁で受け止め、その障壁が壊れたら今度は持っているデバイスで防ぐ。
その瞬間足に付いていた拘束魔法が解け、犯罪者の身体が斬撃の衝撃で身体が上へと飛んで行く。

「ルシフェリオン……」

何とか四女からの攻撃を耐え、自分の身体とデバイスを確認する。
デバイスは先程の攻撃を受けて、少々ぼろぼろになっているが、この程度ならまだ戦えると判断した。
四女は決め技を放ち、消耗している今なら攻めるチャンスだと思い、一気に仕留めようとするのだが……

「ガキ共が…、今度はこっちの番…」
「ブレイカー!」
「へ?」

声のした方向を見ると、大きな桃色の閃光が自分に向かってくるのが見える。
それが三女の放った物だと確認し、すぐに回避をしようとするが、既に目の前まで来ていた為、防御すらはる時間も無く直撃を受ける。

「あの子達、あの年でなんて技を…」

三人と犯罪者の戦いを見ていた執務官が、子供達の放つ技を見て驚愕する。
どう見ても子供の三人が、並みの魔導師では使えない様な魔法を使うのを見て、自分の力の無さを実感してしまった。

「おっと、とりあえずあれを食らったらもう戦闘は出来ないな。ちょっと情けないけど、あいつを逮捕した後あの子達にお礼を言わないと」

三女の攻撃が止まったことを確認し、犯罪者を捕まえる為に三女の攻撃が直撃した所に向かって飛ぶ。
予想通り三女の攻撃が止めになっていたのか、気絶していた犯罪者が落下を開始していた。
このままだと地面に激突するので、魔法で相手を拘束しようとする。のだが…

「塵芥ごときが、我らの邪魔をするとどうなるか思い知らせてやる…」

一番遠くに離れ居ていた五女が魔力をチャージしており、既に発射直前まで魔力が溜まっていた。

「あ、巻き込まれたくないから僕も離れないと」
「そこの執務官さん。危険なので距離を取ってください」
「え?…って何あれ!?」

三女から注意を促され、一体何の事かと執務官が振り向くと、そこには明らかに子供がとは思えないほどどでかい魔力を貯めている五女の姿があった。
一体あの魔力をどうするのかすぐには解らなかったが、三女の注意と自分の本能でまずいと感じ、三女の言う通り落下中の犯罪者から急いで離れる。

「吹っ飛べー!エクスカリバー!」

魔力のチャージが完了し、落下している犯罪者にエクスカリバーを発射する五女。
そして見事に犯罪者に当たり、広範囲の爆発が起こる。
三女と四女は爆破範囲が解っているので、余裕を持って範囲外に逃れたが、執務官の方はそんな事を知る訳も無く、予想以上に広い爆破範囲から一生懸命逃げていた。
幸いギリギリの所で逃れる事は出来たが、恐ろしい三人の連続攻撃を見て、唖然とした表情で落下を再開した犯罪者を見る。

「なんてデスコンボだ…」

ボソッと思った事を呟く。
四女が敵を上にあげ、三女が撃ち落とし、五女が止め刺すと言う、酷い連携攻撃である。

「ちい!手間取ったな。急ぐぞ二人共」
「はい!」
「うん!」

犯罪者を撃破した事を確認し、急いで病院に向かうのを再開する三人。
執務官が彼女達には色々言わなければいけない事があるので、追いかけようとするのだが、もう酷いとしか言いようがない程ぼろぼろの犯罪者の回収を優先する。
今まで数々の凶悪な犯行を繰り返してきた男であるが、流石にあの三連発を見ると少し同情してしまう。

「さて、こいつはこれで良いけど、あの子達はどうしよう?」

犯罪者を拘束したはいいが、子供達をどうしようか悩む執務官。
彼女達も追わなければならないし、ボロ雑巾みたいな犯罪者も連れて行かなければならない。
どうしようかと迷っていると、手助けに来た別の執務官が合流する。

「援軍に来ました!大丈夫ですか!?」
「ああ、助かります!犯罪者は捕まえたんですが…」

その援軍に女性の執務官に、先程の事を説明をする。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「着いた!」
「もう!時間かかちゃった!」
「受付で母さんの場所を聞きましょう!」

やっとの事で三人共病院に到着し、急いで他の家族の元に向かう。
受付の人に詳しい所を聞き、階段を上った先には、落ち着かなくソワソワしているユーノと、その近くでベンチでゆったりとしているアルフの姿があった。

「お父さん!」
「え!?何で三人共ここに!?」

父親を見つけ、大急ぎで駆け寄って行く三人娘。
娘達の声を聞きユーノが振り返り、どうして娘達がここに居るのかと驚く。
今はまだ授業中のはずなのに、どうしてここに居るのかを聞きだす。

「三人共まだ学校じゃ無かったの?」
「えっと……、ごめんなさい。抜け出してきました」

それを聞き、アルフがアチャーと行った感じで手を頭に当てる。
ユーノとアルフも、まさか三人共暴走するとは思わなかったので、三人が病院に来るのは予想外であった。
とは言え、折角ここまで急いで来たので、追い返す事には行かない為一緒に待つ事にする。

「まったく、帰ったら皆に怒られるよ?」
「その程度覚悟の上だ」

ユーノの言葉に迷いなく答える五女。
他の二人も同意だと言う風に俯き、ユーノとアルフと一緒に待つ。
そうして皆で待っている間も、ユーノと娘達は落ち着かない感じでソワソワしており、ユーノはそこら辺をウロウロとしている。
その様子を見て、アルフが呆れたと言った表情で話しかける。

「出産を待つのは初めてじゃ無いのに、もう少し落ち着きなよ」
「何度でも慣れないもんだよ。それに久しぶりだし」

そう言いながら、チラッと娘達の方を見るユーノ。
最後に生まれたのは五女であり、それも十年近く前の事だと言う事を思い出し、時間の流れを実感してしまう。

(思えばこの子達もあっという間に成長したなー。色々大変だったけどしっかり育ってくれたし)

今までの娘達との過ごしてきた時間を思い出し、少し懐かしく思えてくるユーノ。
そんな昔の事を思い出しているユーノを放っておき、ソワソワしながら待っている娘達の元に、ある一つの影が近づいて来る。

「ユーノ!アルフ!」
「フェイト?」

近づいて来る影の正体はフェイトであった。
まだこの時間は仕事中のフェイトが来るとは思わなかったので、娘達が来た以上に驚くユーノとアルフ。
娘達の件がある為、まさか仕事ほったらかして来たんじゃないだろうか心配になってくるが、流石にそこは立派な大人なので問題無い。
仕事をさぼったとは思われたくないので、ここに来た理由を説明するフェイト。

「なのはの事は気にはなるけど、ここに来たのは仕事のついで」
「仕事の?この病院に何かあるの?」

フェイトの仕事で来たと聞き、若干不安を覚えるユーノ達。
まさか凶悪犯が病院に隠れているなど、そんな事があったら大変である。
そんなユーノ達の不安に気付いたのか、フェイトが笑いながら病院に来た理由を話す。

「大した事じゃ無いよ。近くでちょっと事件が起きてね、その事件の解決を手伝ってくれた人がこの病院に居るから、詳しい事を聞こうと思って」

その言葉を聞き安心するユーノ達。
今だ出産に頑張っているなのはを筆頭に、他にも多くの患者いるので、危ない人が居るのは勘弁して貰いたい。

「所でその事件って何だったんだい?」

ふとアルフがフェイトの言っていた事件が気になり、どんな内容だったのかを聞いてみる。
幸い周りには身内しかいないので、特に気にせず答えるフェイト。

「うん。逃亡中の指名手配犯が見つかったって連絡があってね、それで追ってる人が一人だけだったみたいだから、近くに居た私が手伝いに行ったんだ」
「なるほどね。で、その指名手配犯はどうしたの?」
「それがね、私が到着した時にはもう倒されててね、しかも倒したのがまだ未確認だけど一般の人らしいんだ」

それを聞き驚くユーノ。
一人とは言え、執務官でも捕まえるのにてこずる相手を、一般の人が捕まえたとは信じられない。

「それで?その一般人ってどんな人なんだい?」
「うーん、私も特徴を聞いただけだからまだはっきりとは解ってないんだけど、聞いた特徴に心当たりがあってね」
「心当たりね、どんな感じ?」
「えっとね、その人の特徴なんだけど……」

アルフにどんな人なのかと聞かれ、その同僚に聞いた特徴を思い出す。
娘達は親の仕事の事なのであまり気にせず、早く弟が生まれないかとじっと待っている。
フェイトはユーノ達と話を続け、一瞬娘達の方を見た後、ユーノ達に聞かれた特徴を話しだす。

「その人はね、三人の女の子だったらしいんだ」
『!?』

フェイトのその言葉を聞き、一瞬だけビクッと身体を震わせる三人娘。
三人共すぐに先程の病院に来る前に戦った事を思い出す。

『ちょ、ちょっと!さっきの母さんが行ってた人って僕達の事!?』
『多分……、逃げてた犯罪者と執務官って言ってましたし、十中八九私達の事かと……』
『だ、だがまだ確定した訳ではないだろう!もしかしたら他に同じ様なのが居たり……』

一気に弟の事が吹き飛び、念話で緊急姉妹会議を始める三人。
そんな三人に気付かず、ユーノが話の続きをフェイトに促す。

「三人とは言え女の子がか……、凄いな。どんな感じだって?」
「えーとね」

ユーノに聞かれ、まず最初に一人、同僚から聞いた特徴を答えるフェイト。

「一人はね、黒っぽいBJを着てて、紫の杖を持ったショートの髪の10歳位の女の子だって」
「10歳位って、そこまで若いって凄いな」

フェイトの言葉を聞き、予想以上に若い子だと知り感心するユーノ。
だが娘達は、それを聞き確実に自分だと解り、ベンチから席を立ち逃げ出そうとする娘達。
それに気付いていないのか、ユーノはのほほんとフェイトと話を続ける。

「次の子がね、最初の子と同じ位の年齢で、青い髪のツインテールで、マントを着たBJで斧みたいなデバイスを持ってたって。後剣に変形したらしいよ」
「ふむふむ、…………ん?」

そこまで説明を聞き、ふとある事がユーノの頭に浮かんできた。
フェイトから聞く特徴が、今の所全部娘達に当てはまる事に気付いた。
もしかしてと思い、一応フェイトに心当たりがある人と言うのを聞いてみようとしたが、フェイトはそのまま説明を続ける。

「もう一人はね、髪が短くてね、羽がはえてて、某司令官にそっくりなんだって」
「あ、あの……、フェイト……?」

話を続けるフェイトを一旦止めようとするが、ユーノがある事に気付く。
フェイトが物凄く怖い。
顔は間違いなく笑顔なのだが、醸し出すオーラがかなり恐ろしく、ユーノもアルフも少々引いてしまう。
間違いなくフェイトは、その三人が誰なのかに気付いている。
ユーノとアルフも、フェイトから聞いた特徴で、その三人が誰であるかは気付いている。
そして娘達はと言うと、ユーノ達から少しだけ離れた所におり、後少しで階段と言う所まで来ていた。

「後、後少しで……」
「階段降りたら、このまま一気に…『ガキン!』うわい!」

後少しと安心した瞬間、三人娘の横を何やら通り過ぎ、それが地面に突き刺さり動きを止める。
飛んできた方を見てみると、フェイトが娘達に背を向けたまま、手だけが此方に向いているのが見えた。
そしてユーノが見たのは、手首のスナップだけで娘達に投げ、そのまま会話を続けるフェイトの姿だった。怖い。
ちなみに、フェイトが投げた物はと言うと……

「バルディッシュー!?」

地面突き刺さっていたのは、フェイトの長年の相棒であるバルディッシュであった。
それを投げる程今のフェイトはやばいと思い、娘達がかなりまずいと言った感情が湧きあがる。
と言うかこんな扱いしたらリニスが泣くぞ。
とりあえず、投げられたバルディッシュに壊れて所が無いか聞いてみる四女。

「えーと、大丈夫?バルディッシュ?」
<……問題ありません>
(痛いんだな)
(痛いんですね)

大丈夫と言いながらも、何か泣きそう雰囲気を醸し出すバルディッシュ。やっぱり痛かったらしい。
だが三人共バルディッシュに気が行っていた為か、後ろから迫るフェイトに気付いていなかった。
ゆっくりと娘達の元に近づき、静かに三人に話しかけるフェイト。

「ねえ……、三人共?」
『はい!?』

フェイトに話しかけられ、変な声を出しながら振り返る三人。
そこには笑顔でありながら、下手なホラー映画より怖いフェイトの姿があった。
普段は三人の母親の中で一番優しく、きつくは怒らないフェイトであるが、今回は何時もとは色々と大きく違いがある。
学校を抜け出す位ならまだしも、勝手に空を飛んだりあまつさえ凶悪犯と一戦交えるなど、執務官として色々我慢できない所が多い。

「私と……、【お話】しようか?」

三人で抱き合いガタガタ震える三人が、助けを求めようとユーノとアルフを見る。
だが二人共こんな怖いフェイトと話しあいたくない為、すぐに顔を横に向き目線をそらす。

「ここだと他の患者さんの迷惑になるから、ちょっと場所を変えようか」
「父さんとアルフの薄情者~!」

三人共フェイトに捕まり、何処かに連れて行かれる。
最後に四女が大声で叫ぶが、聞かなかった事にするユーノとアルフ。
連れて行かれる三人を見送り、姿が見えなくなった後、ふとアルフが一言呟く。

「あの子達……、大丈夫かな?」
「幾ら怒っているとは言え、そこまで酷い事はしないだろうね。………多分」

アルフの心配に、フェイトなら大丈夫と答えるユーノだが、正直さっきの様子を見るとそれも少し自信が無くなる。
しかし、もう連れて行かれてしまったので、フェイトが暴走しない事を祈り、なのはの出産を待つのを続けることにした。
と言うか、先程のやり取りで一瞬なのはの事を忘れていたのは、ユーノとアルフの二人だけの秘密。

「それにしても長いね。なのはは大丈夫なのかい?」
「あまり不安を煽る様な事は言わないでよ、アルフ」

アルフの言葉を聞いて、一気に心配になってくユーノ。
とりあえず何かあったら教えてくれると医者に事前に教えて貰ったので、中から誰かが出て来るまではじっとしておこうと思う二人。
そうして二人でしばらく待っていると、扉が開き中から看護師の女性が出てくる。
もしかしてと思いユーノとアルフが立ち上がると、看護師の女性がニッコリとほほ笑み…

「スクライアさん、お子様が産まれましたよ。元気な男の子です」
「本当ですか!?」
「はい、中の方にどうぞ」
「あたしは他の皆に産まれた事を報告してくるよ」

看護師に促され、なのはと産まれたばかりの息子に会いに行くユーノ。
アルフは他の家族に連絡する為、一旦病院を出る。
はやてを始め、家族の皆に連絡をした後、話を聞ける状況かは解らないが、一応フェイトと娘達にも伝える為、四人を探すため歩きだしたアルフ。
色々あったが、こうしてまた、この一家に家族が一人増えた事になる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ほら、急ぎますよ二人共」
「解ってるよー」
「解っているならさっさと歩け。置いて行くぞ」

なのはの出産から一晩明け、娘達は産まれたばかりの弟の元に行く為、現在病院に向かっている所である。
先日は、あの後少しフェイトに怒られて後、家に帰って本格的に怒られる事となった。
まずは最初にフェイト、次に連絡を受けて早めに帰って来たはやてと、最後に病院に居るなのはにモニター越しにと、ジェットストリームアタック的な感じで怒られた。
流石に他の家族が可哀想だと思ったのか、皆がユーノを味方に引き入れ何とか日付が変わる前にはなのは達も怒るのをやめた。
そして、ちゃんと学校を終わらせ、一度家に帰ってからと言う条件で、病院に来ても良いと言う事になった。

「赤ちゃんどんな感じなんだろね?」
「はやてお母さんの話だと、お父さんに似ている様です」
「父さん似か、まあ楽しみだな」

弟が父親であるユーノ似と聞き、少し楽しみになってくる娘達。
そしてしばらく歩いていると、四女がふと放った言葉に、他の二人が大きく反応する。

「赤ちゃん抱っこ出来るかな?」
「ちょっと待て、私が先にだぞ」
「勝手に決めないでください」

弟の抱っこの順番を巡って、歩きながら言いあいになる娘達。
傍から見ればどうでもいい事だろうが、彼女達にとっては大きな問題である。

「もう、こうなったら向こうに着いた時にじゃんけんで決めましょう。それなら文句ありませんね?」
「仕方ないか、また母さん達に怒られるのはやだもんね」
「まったくだ……、二日続けて昨日のあれは勘弁して貰いたい」

結局話し合った結果、じゃんけんで決める事になった。
二人共完全に納得した訳ではないが、昨日の事を思い出し、あまり他の家族に迷惑がかかる事は出来るだけ避けたいと思っている。
そして、そのまま歩き続け、病院まで後少しと言った所まで来ると、いきなり四女が立ち止まる。
もう少しで弟に会えるのに、一体どうしたのかと思うと、ふと上を見上げながら呟く四女。

「ねえ?二人共?」
「何ですか?」

何時もと違う雰囲気の四女を見て、一体どうしたのかと思う二人。
そんな二人の考えてる事など気にせず、四女が満面の笑顔で二人に喋りかける。

「僕達三人……、絶対に良いお姉ちゃんになろうね!」
「……そうですね!」
「当たり前だろうが、馬鹿者」

四女の言葉に、笑顔で答える三女と、ちょっときつい言い方ながらも、笑いながら答える五女。
弟が生まれた日は、彼女達がお姉ちゃんになった日。
これから弟と過ごす時間は色々あるだろうが、間違いなく楽しくやって行けるだろう。若干暴走はするだろうが。
三人でそう約束をし、可愛い弟の元へ向かって行く。
弟との初対面がどうなったかは、また別のお話。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024446964263916